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理解と同意

投稿日時:2008/07/11(金) 19:33rss

●私が40代後半だったある日のこと、名古屋市内にある電気設備会社のE会長(70歳)からこんなことを言われました。

「武沢くん、男も還暦を超えるとね、若いときのようなパワーや欲望が薄らいできて、自分のエネルギーのはけ口をコントロールしなきゃならんのですよ。限られてくるからね、エネルギーが。きっと何年かしたら、あなたもそれを実感するときが来るに違いない」
「はぁ、そんなものですか。ノートパソコンみたくパワーマネジメントが必要ですかね、ハハ」

●このE会長、その枯れたセリフに似つかわしくない漆黒のテスタロッサを操りながら、私を名古屋駅まで送ってくれました。

「今から東京出張だね、がんばってきなさいよ、向こうには全国からすごいヤツらが集まってきてるから、気を抜くんじゃないよ」
「はい、がんばってきます」
「まるで出征兵を送りだすみたいだね、ワハハ」

新幹線に乗りこみ、E会長の言葉を反すうしてみました。
「男も還暦を気にする…、あなたもそれを実感するときが来るに違いない。あと12年か……」

●それから6年経ち、私も54歳になりましたが、故人となられたE会長のあの笑顔と言葉と運転技術の確かさは忘れることができません。しかし、その意見にはいまでも「同意」していません
●加齢によってパワーが落ちるのは一般的なことですので、当然「理解」はできます。しかし、私は「そんな歳のとりかたはしたくない」と思っているので、「同意」はしていません。あくまで、「理解」と「同意」は別物です。トレーニングジムやヨガ教室に通って体を鍛えていますし、精神的にも老けることを拒否しようとしています。ですから、仮に若い世代の経営者とキャバクラへ行くことがあってもホステスさんとは話題に事欠かないようにしているつもりです。

●キャバクラのことはさておき、「理解」と「同意」は別物という話に戻りましょう。経営者としてのあなたが示す会社の方針や目標は、部下に「理解」されるだけでなく、「同意」されているでしょうか? 「部下が動いてくれなくて…」と悩むリーダーは、「理解」と「同意」、どちらの手前で止まっているのかをチェックしてみましょう。また、あなた自身も、部下の意見や気持ちを「理解」しているのか、それとも「同意」しているのか、考えてみてください。

●「理解」を得るだけなら、一度の説明で済むかもしれません。ところが「同意」を得るためには、繰り返しくりかえし、さらにはくり返して反復することや、感情に訴えかけるようなメッセージで共感を得なければなりません同時に、相手の意見や気持ちも積極的に聞かなければなりません

そんな取り組みがあって初めて、「理解」が「同意」に進化していくのだと思います理解と同意は別だということをいつも忘れずにいたいものです

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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