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起業家とサラリーマン

投稿日時:2010/02/26(金) 13:48rss

●私が50才になったとき、ある経営者から『50代からの選択』(大前研一著 集英社)をプレゼントされました。
この本は大前氏がサラリーマンに送る檄文のような内容でしたが、楽しく痛快に読むことができました。
「サラリーマン同士でつるむな」、「やりたいことを10以上あげることができるか」、「死ぬときは貯蓄ゼロでいい」など、相変わらず歯切れがいい"大前節"を堪能させてもらいました。

●しかし異論もあります。たとえばこの箇所。

・・・
サラリーマンは常に上司によって、「人に言われたことをきちんとこなす力があるかどうか」で評価される。20代にこうやって育てられると、言われたことはやる、言われないことはやらない、という思考・行動パターンが習慣化する。これは、サラリーマンの生活習慣病みたいなもので、数年のうちに「お手」といわれたら、サッと手を出すという“サラリーマン染色体”に染まってしまうのだ。
・・・

サラリと読んでしまえば問題ないのかもしれませんが、私は少々引っかかっりました
私も30才になるまでは真面目で勤勉なサラリーマンでしたが、著者が言う「サラリーマン染色体」には染まっていません。

というより、勢いのある中小企業やベンチャー企業では、そうした染色体に染まる要素がないと思うのです。また、官僚的になってしまった巨大企業のサラリーマンだったとしても、本人の自覚次第で染色体まで染まるような愚はさけられるはずです。
●ですから、サラリーマンという立場の人を必要以上にワルモノにし、断罪するのは危険なことだと思います。
サラリーマンが悪いのではなく、"サラリーマン根性"が悪いわけで、その根性を要求したり、許容したりする仕組みの方が悪いと考えてみてはどうでしょうか。
サラリーマンの中にも経営者マインドに富んだ人がいる一方で、経営者の中にもサラリーマン根性の人がいます。大切なのは"根性"、つまり意識の方なのです

●では、具体的に「根性」や「意識」はどうあるべきでしょうか。
『イノベーションと起業家精神』でドラッカーが訴えているのは、サラリーマン根性を涵養するような組織ではなく、起業家精神を涵養する組織を作れということです。

昔から「諸行無常、万物流転」と言いますが、ドラッカーも、「人の手によるものに絶対のもの、永遠のものは存在しない。あらゆるものがやがて陳腐化する。そして進歩する。それが文明というものである。だからあらゆるものにイノベーションと起業家精神が必要となる。しかも常時必要となる。イノベーションと起業家精神が当たり前に存在し、継続していく起業家社会が必要なのだ」と説いています。

サラリーマン根性を育てかねない仕組みや制度があればすみやかに廃止し、逆に起業家精神を涵養する仕組みを考案しましょう
それには、あなたがなぜ起業家的であるのかをよく考えてみれば、そのヒントが見つかるはずです。

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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