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2006年10月06日(金)更新

十三の徳

●アメリカ資本主義の育ての親、ベンジャミン・フランクリンをご存知の方も多いと思います。岩波文庫『フランクリン自伝』でもおなじみですね。

●そのフランクリンを称して、「Selfmade man」(自らを創り上げた人)という言い方をします。この表現に込められた意味は、“人生の成功は自己啓発の成功にほかならない”、ということです。

●フランクリンは、印刷工から身を起こし、実業界で立身出世。科学者、出版業者、哲学者、経済学者、政治家、そしてさまざまな啓蒙活動を通してアメリカ資本主義の原点を作った人物です。

●彼は、独立宣言書の起草者でもあります。そのフランクリンが25歳の頃、借金を背負って印刷会社を経営しつつ子供が誕生。いままで以上に、自分が精進しなければならない、と発奮して「十三の徳」を樹立しました。

生まれながらの性癖や習慣、交友のために陥りがちな過ちを克服したい、との動機から生まれたこの「十三の徳」は、フランクリンにとっての成功のパスポートでした。

第一 節制・・・飽くほど食うなかれ、酔うほど飲むなかれ
第二 沈黙・・・自他に益なきことを語るなかれ、駄弁を弄するなかれ
第三 規律・・・物はすべて所を定めて置くべし。仕事はすべて時を定めてなすべし。
第四 決断・・・なすべきことをなさんと決心すべし。決心したることは必ず実行すべし。
第五 節約・・・自他に益なきことに金銭を費やすなかれ。すなわち浪費するなかれ。
第六 勤勉・・・時間を空費することなかれ。つねに何か益あることに従うべし。無用の行いはすべて絶つべし。
第七 誠実・・・いつわりを用いて人を害するなかれ。心事は無邪気に公正に保つべし。口に出すこともまた然るべし。
第八 正義・・・他人の利益を傷つけ、あるいは与うべきを与えずして人に損害を及ぼすべからず。
第九 中庸・・・極端を避くべし。たとえ不法を受け、憤りに値すと思うとも、激怒を慎むべし。
第十 清潔・・・身体、衣服、住居に不潔を黙認すべからず。
第十一 平静・・・小事、日常茶飯事、または避けがたき出来事に平静を失うなかれ。
第十二 純潔・・・性交はもっぱら健康ないし子孫のためにのみ行い、これに耽りて頭脳を鈍らせ、身体を弱め、または自他に平安ないし信用を傷つけるがごときこと、あるべからず。
第十三 謙譲・・・イエスおよびソクラテスに見習うべし

●彼が、これらの徳を作りあげるときに気をつけたのは、ひとつの「徳」に多数の内容を盛り込みすぎないことでした。その結果、名称は増えても、おのおのに含まれる意味は、狭く限定しようと考えたのです。

●この「十三の徳」は、もちろん各人各様でアレンジできることは言うまでもありません。

●私自身も15年ほど前、セールス関係の会社にいた頃に、自分と部下のためにこの「十三の徳」を応用しました。仕事に密着した内容に改め、「時間」「読書」「情熱」「集中」などの項目を取り入れ、実践しました。

●フランクリンは、これらの徳を自らの第二の天性である習慣にまで育て上げるために、さらに工夫を凝らしています。次回は、その知恵と応用に関してお伝えしましょう。