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2006年08月11日(金)更新

イノベーション

●日本で最初に創られた株式会社は、坂本竜馬の「亀山社中」だといわれています。その後、明治に入り渋沢栄一らによって日本の資本主義の原型ができあがっていくわけですが、商業だけに限ってみれば、歴史は更にそれ以前にまでさかのぼります。

資本主義発展の歴史をみてみると、おおきなうねりの中で事業の栄枯盛衰が手に取るようによくわかります

●たとえば、私が子供のころ(昭和30年代半ば)には、母親たちの買い物は今と全然ちがっていました。買い物かごを手にもって、子供の手を引きながら近くの八百屋、魚屋、肉屋、乾物屋、金物屋などを転々としたものです。しかも冷蔵庫が十分に普及しておらず、買いだめはできません。当然家事は専業主婦でないとつとまらないほど多忙を極めたはずです。

●この当時、八百屋や乾物屋などを営む人たちにとって、誠実な商いを毎日つづけることこそ「企業努力」でした。自動車やバイクがないので、おのずと商圏はとても狭い範囲に限定されました。

●顧客の大半は地元のリピーターです。完全な地域密着商売です。ご近所とのつきあいを大切にし、常連客の家族構成を記憶しておくことや、気持ちのよい接客をすることなどで信用を築いていきました。いずれにせよ、きわめて緩やかな競争環境でもあったのです。

●それからわずか10年、電化製品や自動車の急速な普及により、主婦たちの家事労働は大幅に軽減され、おりからの経済発展も手伝って買い物の目的や方法が劇的に変わりはじめました。郊外に駐車場付きのスーパーが誕生し、食品も衣料品も玩具も文具もすべてが一カ所でまかなうことができる、主婦にとって、たいへん便利な時代が到来しました。

●このような時代の変化を見抜き、地方の小さな小売店にすぎなかったダイエー、イトーヨーカドー、ジャスコ、ユニー、ニチイなどが全国展開し、続々と株式公開を果たします。ちょうど、今のIT関連企業の公開ラッシュと似ています

●さて、この話の本質は何か?
●イノベーション(革新)の重要性です。自らすすんで過去の成功体験を捨てた所が勝ち組になったのです。ダイエー(薬局)もジャスコ(呉服屋)もヨーカドー(衣料品)もユニー(薬剤店・ふとん屋)も、地方小売店として当時からある程度の成功をおさめていました。にもかかわらず、過去と訣別する決意をし、店舗の総合化や大型化を一気にすすめたわけです。
同時に経営の近代化にも着手。商いの精神にサイエンスを導入し、より大きなビジョンに向かって合併する企業も相次ぎました。

●国内の商店街の大半は、こうしたイノベーション組によって大打撃を受けました。そもそもこうした時代の変化が、我が商店にどのような影響をあたえるのかに気づいていなかった所も多いのです。怠慢ゆえに時代を読み誤った会社は淘汰されていきました

●また、「変わらなきゃ」とばかり努力する会社でも、イノベーションに成功できなかった会社がたくさんありました。イノベーション(革新)を成功させるためには、変革の目的が必要です。何をめざして変わるのかという大義名分や名目が必要なのです。
先に実名をあげた企業には、その大義名分が備わっていたのです。

それは・・・、 <続きは次号で>