大きくする 標準 小さくする

2007年02月16日(金)更新

人材に関するインフラ整備<その1>

●企業経営の基盤を確固たるものにするためには、優秀な人材の獲得とその定着・育成が欠かせません。つまり、求人活動から始まって、採用・定着・育成に至る一貫したインフラ(基盤)を整備していくことが求められるのです。

●そうした「人」にまつわる一連のインフラを、次の6つのグループに分類しました。この6つの合計値の高さが、「企業力」を左右すると言っても良いでしょう。

1.採用インフラ・・・求人採用に関する基盤
2.組織インフラ・・・組織を運営するための規則・規定などの基盤
3.環境インフラ・・・仕事をしやすいハード・ソフト両面の環境整備基盤
4.人間インフラ・・・目標とすべき先輩・上司の存在という基盤
5.育成インフラ・・・人を育てるための基盤
6.ビジョンインフラ・・・人の情熱や意欲をかりたてるための基盤

今週は、もっとも重要と思われる「採用インフラ」に絞って詳しく説明しましょう。
「人材獲得合戦からバトルが始まっている」。これが私の考えです。
●プロ野球では、シーズンオフになると同時にFAやドラフト、トレードといった「人」の動きが活発になります。この期間中に効果的な補強ができたチームが、次年度のシーズンを有利に戦えるのです。

●球団としての選手登録人数枠が決まっているなかで最高の布陣を敷くために、フロントやスカウトが何年も前から学生や社会人と接触して、人材獲得競争に血道をあげています。

●他方、一般企業には登録選手枠がありません。あるとすれば、あなたの会社の要員計画の数値だけなので、予算があれば何人獲得しても構いません。逆に、予算がなければ補強しなくても構いません。

●そもそもビジネスには、シーズンオフという概念がありませんから、通年で好きなときに補強できるのも特徴です。

●人事部がない会社や、あってもその規模が1~2名の会社では、社長自らが採用活動のリーダーシップをとるべきでしょう。とりわけ中小企業では、一人の人材に対する依存度がきわめて高いので、優秀な人材を獲得できるかどうかが、その後の栄枯盛衰を決めると言っても過言ではないのです。

●採用活動を進める上で大切と思うことを列挙してみました。そして、これらは人事担当者任せではなく、経営者が自分自身で決めるべきことです。

①獲得したい人材像を具体的にイメージする
②求人予算の決定する
③採用媒体の選択と、自社の魅力を存分に表現した広告誌面づくり
④インパクトが大きい会社説明会の企画・運営
⑤企業訪問や手紙のやりとりなど、面接以外の方法により採用活動

●採用で真っ先にすべきは、欲しい人材のイメージや人数を決めることです。たとえば中途採用の場合、

「30~40歳の営業管理者。建設業界での営業経験者で、設計図面が読めること及びパソコンが使えること。健康で情熱的なプラス発想の人。年収は500~600万程度を目安とする。」

などと決めておきます。理想通りの人に出会えるとは限りませんが、採用活動のスタートはこうした目標設定から始まります。

●新卒採用や中途採用にかける費用には、適正基準というものがありません。
一人当たり10万円以下で成果を出している会社もあれば、100万円を超すケースもあります。雇用情勢によって必要額も変化しますが、最近は以下の額が一つの目安ではないでしょうか。

新卒採用・・・一人当たり30万円
中途採用(一般職)・・・一人当たり30万円
中途採用(コア人材)・・・一人当たり100万円

●人材斡旋会社の成功報酬は、獲得人材の年収の3割というところが多いので、コア人材の採用ではその金額がおおむね上限予算となります。仮に年収500万円の人材をとるのであれば、その3割(150万円)が上限。ただし、会社案内などの制作物を除いた予算額と考えてください。

●採用媒体というと大手しか考えない会社も多いですが、それでは工夫が足りません。欲しい人材のイメージを明確にすれば、求人方法や予算も変わってくるものです

●たとえば、ある総菜店では大手媒体誌に掲載した求人広告により4名の応募がありましたが、いずれも満足できる人材ではなかったそうです。そこで、喫茶調理に関する専門学校に求人案内を掲載したところ、半額の経費で2倍の応募があり、めでたく採用につながったのだとか。

●結論として、「採用インフラ」を強化するとは、優秀な人材を獲得する確率を高めることです。そして、その成否をにぎるのは、社長みずからが採用活動に参画するかどうか、なのです。

<次号につづく>