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2008年10月03日(金)更新

書斎を持とう

●「小説を書いてみたい」。

私が10年以上前から持ち続けている願望です。最近、その思いがますます強くなり、敬愛する司馬遼太郎さんの記念館に行ってきました。二年ぶり二度目の見学なのですが、前回は司馬さんの一ファンとして足を運び、今回は作家になったつもりで、蔵書や書斎がどのようになっているのかに焦点を絞っての見学です。

司馬さんは一冊の本を書くのに何百冊、何千冊の本や史料、資料を読破し、その中から一滴、二滴としずくを搾りだすように文章を書いていったそうです。それを裏付けるように、司馬さんの蔵書は5万冊とも6万冊とも言われており、記念館にあった2万冊の展示も実に圧巻でした。

●私のオフィスにある書棚は1000冊くらいで一杯になってしまいます。そのほとんどが300ページ以内の薄い本です。もちろん、この程度では収まりきらないので、2~3か月に一度は書棚のメンテナンスをして不要な本を処分しています。

●オフィスも自宅もスペースに限りがありますので、それ以上の蔵書は持たないようにしてきたのですが、ついにこの秋、書棚を増設することにしました。司馬さんに影響されたのもありますが、やはり1000冊では少なすぎます。今回の増設で2000冊程度なら収められるようになりましたが、それでも焼け石に水かもしれません。

整理術の基本は「いつでも手に入るものは手元に持たない」だそうですが、蔵書はそういう訳にはいきません。書きたいときに参照する本が手元にないと困ることが多いのです。
●経営者も読書好きであってほしいと思います。ビジネス分野はもちろん、あらゆる分野の本を読むことが、人間としての幅や厚みを持たせてくれる元になります。そして、読んだ内容を整理し、自分や自社に当てはめて考える。そうした思索のためにも、本を保管するスペースが経営者には必要ではないでしょうか。

●そこで、私は経営者のみなさんに提案します。
「本を読もう」「大きい書棚をもとう」「書斎をもとう」と。

●ところが私たちの多くは、結婚と同時に書斎や書棚どころか、一人になれるスペースをも失います。“結婚は知的退化の始まり”という評論家もいますが、仮にも経営者たる者が自宅にもオフィスにも書棚がないとか、ゆっくり本を読める場所をもっていないというのは大問題ではないでしょうか。

●『書斎の造りかた』(光文社)を書いた林望さんは、書斎確保のためには家庭内別居も必要だと説いていますが、そこまではしなくとも、狭くても良いので一人になれるスペースを確保したいものです。そこを読書や沈思黙考の拠点として、明日のビジョンや経営方針について考える知的生産に励みましょう

●多くの企業では“社長は穴熊になってはいけない”として、社長室を取り壊してきた歴史があります。一理はあるのですが、社長室と同時に社長が本来行なうべき知的生産活動を放棄してしまっては本末転倒です。

●ブースで仕切るだけではダメ。行きつけの喫茶店でもダメ。内から施錠できる物理的空間をオフィスに確保しましょう。それを「社長の知的生産工場」にするのです。

取り戻せ、社長室! 新設しよう、社長室!! 作れ、書斎!!!