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2009年11月06日(金)更新

社員に「上機嫌」を演じさせよう

●ある映画のロケ現場にて。

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「シーン11、カット6、スタート!」。カシャッ。
「・・・」
「はい、カット」

以下、監督と俳優・渥美太(仮名)のやりとり。

監督:「渥美ちゃん、ムスッとした顔してどうしたの。ここはあんたがニコッと笑う絵が
    欲しいのよ。わかる? 笑顔だよ? じゃ、もう一回行ってみよう」
渥美:「・・・監督、たのむ。今日は勘弁してほしいんだ」
監督:「勘弁してほしいって何よ。笑顔くらい作れるでしょうが」
渥美:「実は、ちょっと今悩んでることがあって笑える気分じゃないんだよ」
監督:「はぁ?」

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●もし、こんな役者が本当にいたらどうでしょうか。おそらく、二度と仕事は回ってこないでしょう。

役者の仕事は、台本通り、あるいはそれ以上に役を演じ切ることです。今の自分の気分がどうであれ、瞬時に期待された役を演じなければなりません。それがプロの役者です。

これは、別に役者に限った話ではありません。たとえば、ディズニーランドでミッキーの着ぐるみに入っているキャストが、今日はブルーな気分だからといってステップを踏まずに、パーク内をトボトボと歩きまわるでしょうか? そんなことはありえません。

●では、会社のなかではどうでしょう。私たちが演じるべきことは何でしょうか。
●会社や組織など複数の人で仕事をするならば、「笑顔をみせる」、「時間を守る」、「お辞儀をする」、「あいさつする」、「報告する」などが、基本的な演技です。もちろん、顧客に笑顔を見せてはいけない仕事や、あいさつしてはいけない仕事もあるでしょう。ですが、一般的な職場内では、それらが要求されます。これは、本人の気が向く・向かないかとか、納得できる・できないの問題ではありません。それが仕事なのです。それが演じるべき行為なのです

●「こうした行為が、仕事そのものなのだ」ということをしっかりと社員に教えましょう。仕事だから笑う、仕事だから時間を守るというような義務感で行なうのではなく、自然にできるように鍛えるのです

●経営者は社員の成長を期待しましょう。成長するとは、必要によって本能に逆らえるようなることでもあるのです

●フランスの哲学者・アランの言葉に、次のようなものがあります。

「もし道徳論を書くようなことがあったら、私は『上機嫌』を義務の第一位におくだろう」

「上機嫌」を演じきれる社員を、育てましょう