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2011年07月15日(金)更新

熱狂する社員

●給湯室で社員同士がおしゃべり。
 
A子:「ねぇねぇ、夕べのあのドラマ見た?」
B子:「あ、あれでしょ、見たよ。すごいねえ。あれってさあ・・・」
たまたまそこに通りかかったC課長が、「君たち、何してるの。さっき休憩時間が終わったばかりじゃないか。勤務中の私語は慎みなさい!」
 
A子、B子:「は~い、すみません」
こんな様子で仕事にもどったとしても良い仕事ができるとは思えません。いついかなるときでも「私語や勝手な休憩は禁止」で良いのでしょうか。
 
●昔、私は人事部で働いていたことがあります。先輩にむかって「これからは社員のモティベーションを高めることが重要だと思います」というようなこと言ったときでした。
 
先輩はこう言いました。
 
「いいか、武沢。そもそも企業というところは社員のモティベーションに期待するようではいけないんだ。モティベーションが高かろうが低かろうが、誰がやっても同じような仕事ができて、同じような結果が出るようにすることが仕組みの力だ。これからは仕組みの勝負なんだ」
 
●「じゃあ人事部は何をするところですか?」と聞いても先輩は口ごもって教えてくれませんでした。
たしかに先輩が言うことにも一理あるとは思います。もともとやる気には個人差があり、個人差があるものに依存していては一定の成果が出ません。最初からそれに依存しないほうが良い、というのも分からぬでもありません。
 
●しかし、今や画一的な生産やサービスが行われれば良い時代は終わりました。一人一人の仕事が高度化し、高いコミュニケーション力や臨機応変の対応力が問われる時代なのです。社員の仕事はプロ化し、モティベーションは高くなければならないのです。
 
●『熱狂する社員』(デビッド・シロタ著、英治出版)という本があります。これは、情熱にあふれた社員を作るための本なのですが、それによれば、情熱的な社員が働く会社は調査全体の企業の13.8%に過ぎないそうです(1972年以降最近までの米国における調査)。
日本でも上場企業の20~30才代の4分の3が無気力を感じ、2分の1が潜在的な転職願望をもっているといいます(2005年野村総研調査)。
つまり、米国でも日本でも社員が情熱的な会社は少数しかないということでもあるのです。
 
●なぜそうなるのでしょうか。
 
会社も社員もそれを望んでいるはずなのに、なぜモティベーションが上がらないのか?
 
それは、無気力な社員が悪いのではなく、会社が社員をそのようにしてしまっていると考えられています。社員は一度でも「この会社を辞めたい」という選択肢が芽生えると、仕事中、時々その考えが思い起こされるようになり、やがて頭の片隅にいつもある状態になります。そうなってしまうと、仕事の成果はいちじるしく低下していきます。
 
●『熱狂する社員』では、モティベーションの三要素として、
 
・いかに公平感を感じるか
・いかに達成感を感じるか
・いかに連帯感を感じるか
 
をあげています。
「公平感」「達成感」「連帯感」。それぞれの要素でプラスになることや妨げになることは何なのかを考え、手を打っていく必要があるのです。