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社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
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2011年08月12日(金)更新
三人のコーチ
●某月某日、オフィスでビールを飲んでいました。
18時から21時まで、アポ不要。自分のアルコールかソフトドリンクとおつまみをご持参ください、というオープンオフィスイベントの日なのです。
●始まって間もないころ、ある販売会社のA社長が来られました。
「武沢さん、ちょっとご相談があるのですが、今よろしいですか?」
私は他の来客者にも目で確認しながら、「はい、この状況でもよろしければどうぞ」と言いました。
A社長はウーロン茶で口を潤し、おもむろに話し始めました。
●偶然ですが、同席したのはマーケティング関係のコンサルタントばかり3人。皆、だまってA社長の長い長いお話を最後まで口を挟まず聞きました。
彼の、相談というより状況説明は15分ほど続いたでしょうか。コンサルタントは我慢強く、表情も変えずに、相手に最後まで気持ちよく語ってもらう仕事です。とは言え、相談内容がどこにあるのか分かりづらい話を15分聞くのは相当な辛抱が必要でした。
●「・・・・・・・という訳ですので、ご意見をお聞きしたいのですが」とA社長。
要するに、ある輸入製品を売りたいのだが日本ではまだ市場がない。しかも自社は代理店の下の位の販売店という立場。できれば正規代理店になってメーカーと直接取り引きもしたい。だが、今の代理店とケンカはしたくない。どのような優先順位で行動すべきだろうか?ということのようです。
●この話を聞いていた3人が順に意見を述べていきました。
面白いことに全員の意見が異なっていたのです。
・一人目の意見。
あなたの「絶対成功する」という信念は大切だが、特定商品への思い入れだけが強いのは危険だ。
"市場に聞け"ということばがあるように、まずは営業活動に出向くことだ。その製品で売上げや利益を確保できるという見通しが持てるようになることが最優先の課題ではないだろうか。結果次第では、その製品ではダメだと結論づける事だってあり得る。決めるのはお客だ。
・二人目の意見。
気の毒だが日本での成功は大変むずかしい製品だと思う。今のあなたの話を聞いて、私自身が消費者になりたいとは思えなかった。お客のゴリヤクが何なのかを分かりやすく語れるようになることが、あなたの一番の優先順位ではないだろうか。また、今まで日本でこの製品がなぜ売れてこなかったのかをもっと調べることも大切だ。もっと冷静になって、あなたにふさわしい他の製品をさがした方がよいと思う。
・三人目の意見。
ユニークという意味でとても面白い製品を見つけてきたと思う。簡単に売れるとは思わないが、ある程度の市場が日本にもあるように思う。僕だったら、すぐにそのメーカーにアポをとって外国に飛ぶ。そして、こちら側の熱意とか希望を伝えに行く。メーカーの熱意も聞いてみたい。そして、安心して日本国内での販売活動が続けられるような供給体制やアフターサービスなどを確認し、販売計画をメーカーと共有してくる。
●三人目は売れると言い、二人目は売れないと言い、一人目は市場(お客)に聞けと、それぞれが違うことを述べています。
未知の商品だけに悩ましいところですが、私はこのときのAさんの態度が相談者として好ましいものではなかったと感じました。
●助言に対して議論してしまうのです。Aさんはこの製品を愛しているのでしょうが、自分にとって好ましい意見には耳を傾け、好ましくないものには反論する、という態度では他人の助言を冷静に聞くことができなくなります。
●しかしコンサルタントの三人はコーチング的なメソッドを持ち合わせていました。
誰一人感情的にならず、最後には彼が明日から何をすべきかを焦点を絞るための質問を発していったのです。
売れると思うか、売れないと思うか、という相談には主観で回答するしかありませんが、明日からどうすべきかという相談であれば質問で回答できるのです。
質問に答えながらA社長が自分で自分のことが分かってくる、それがコーチング的なメソッドなのでしょう。A社長にとって、お得な30分になったはずです。