大きくする 標準 小さくする

2013年03月08日(金)更新

大きなテーマ、大きな疑問符

●考えても考えても答えがみつからない。そんなテーマをあなたはお持ちだろうか。
たとえば、ビジネス目標。是が非でもこの目標を達成したい。だが、どうやったらそれができるのか分からない。だからこそ、学ぶのであり人の話を聞くのである。
だが、やり方が分からない目標を考えるのが面倒くさいのか、やれそうなことしか目標にしない会社が多いのはもったいない話である。
 
●私たちのビジネスや人生でブレイクスルーを起こすためには、心にいつも大きな疑問符を灯しつづけることが大切だ。スケールを大きく考えて、ノーベル賞を取れるくらいの大きな社会変革を起こそうではないか。
ひとつのテーマに対してひとつのアイデアだけで終わらせず、あらゆる角度からアプローチした答えを用意する。しかもひたすら掘りさげて掘りさげて、心の芯に届くまで考えぬきフィールドで検証していく。
 
●そもそもノーベル賞をとるような学者の多くは、先人の業績を尊重し学びながらも同時に、その上にさらに新しいことを積み上げようとするものである。日本では京都にそうした気性のもちぬしが多いのだろうか、自然科学分野における日本人のノーベル賞受賞者15名のうち、なんと5名が京都大学出身者(旧帝大含む)なのだ。
ゆかりのある人も加えると倍になるだろう。
 
●京都大学出身のノーベル賞受賞者(自然科学部門)
 
<物理学賞>
湯川秀樹氏
朝永振一郎氏
<化学賞>
福井謙一氏
野依良治氏
<医学生理学賞>
利根川進氏
 
●そのあたり、元・京大総長の平澤興氏は『現代の覚者たち』(致知出版社)で次のように話す。
 
・・・湯川、朝永、江崎の三氏は物理学での受賞です。これにはいろいろの原因があり、京都の自然とか、京大の個性を尊ぶ自由の空気なども関係しているでしょう。しかし京都の三高に物理学の先生で、森総之助という素晴らしい独創的な物理学の先生がおられたんです。この三氏は、森先生の教え子です。つまり、ノーベル賞のもとは森総之助なんです。で、湯川君なんかは頭の回転の早い、いわゆる頭のいい人じゃなかったようです。大体、頭がいいとか悪いということが、実際どういうことなのか私にもよくわかりませんが、湯川君なんかは、すぐわかったような気持ちになる粗末な頭ではなく、わかるまで徹底的に考えぬく、限りない深さをもった頭ですね。(後略)
・・・
 
※『現代の覚者たち』(致知出版社)
 
 
●偶然かどうか、私が京都で定例勉強会をひらいていたころ、講義のあとにかならず議論を吹きかけてくる若者がいた。「武沢さんの講演を聞いてどうにも納得できない箇所があるのでお尋ねしたい」と二次会の宴席になって執拗にくいさがってくる好青年・T君もたしか京都大学の理工系出身者だったことを思い出す。
 
●安易にわかったようなふりをしないことが学ぶ上では大切なことだ。だからといって、錯覚してはならないことがある。わかったふりをしないとは言っても、熱心に聞くことが大切なのは言うまでもない。聞く姿勢まで懐疑的・批判的・傍観者的であってはならないのだ。
 
●そのためには、最前列正面に腰かけるのが良い。それができなければ、少なくとも前から3列目までに腰かけることが重要だ。そうした学習者に対しては講師としても真剣に接しようという気になる。そもそも後方で聞くと、それだけで人間心理として講師や会に対して傍観者的になってしまうものである。
そんなもったいない聴き方にならないためにも、まずは大きなテーマをもつことである。そのテーマに関するヒントを求めて人の話を聞こうとする。そうすればおのずと前の方に座りたくなるものである。