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2008年01月25日(金)更新

儲けのカラクリ

●昔から「隣の芝生は青い」とよく言われますが、「もっと楽に儲かるビジネスが他にあるのではないか」と思っている社長はけっこう多いようです。でも、本当に隣の芝生は青いのでしょうか?

●たとえば『図解 儲けのカラクリ』(インタービジョン21著 三笠書房)のような、業界の利益構造を丸裸にする本を読んでみると、どの業界においてもそれなりに利益を出すのは容易じゃないことがわかります。一方、他業種のビジネスモデルを知ることで、新しい発想が生まれてくる可能性もあります

●先の本で取りあげられている「焼き芋の屋台販売」事業を例に考えてみましょう。

◇焼き芋の屋台販売事業

・客単価400円×一日客数90人×25日営業=90万円(月間売上高)
・芋の原価率は38%なので、粗利益率は62%となり、粗利益は月間558,000円となる
・経費は屋台と釜のレンタル料が125,000円、燃料代とガソリンが70,000円と195,000円

以上の計算から、36万円強が人件費を差し引く前の営業利益となります。
●しかし、これをみて「フーン、なるほど」で終わってはいけません。この事業例を見て、そこからさらに何かを考えなければならないのです。例えば次のようにです。

・一日あたり仮に12時間営業だとすると、仕込みと片づけを入れれば15時間労働。
・月間では375時間労働となり、営業利益が36万円ということは、時給にすると960円。
・ここで仮に、時間給750円のアルバイトに運営させたら、一時間あたりの利益が210円になる。これを10台、100台の規模にしたら悪くはないかもしれない。

さらに、「ガソリンが高騰すると利益はどのくらい減るのだろう?」「芋が売れない夏場には何を売ろうか?」…など、考えるネタはいくらでもあります。

●場合によっては、本当に屋台と機材を借りてきて、新入社員研修の一環として焼き芋を売り、収支計算を自分でやらせてみるのも良いでしょう。

●マンガ喫茶や居酒屋、学習塾、シティホテルについても同様に考えてみましょう。

[ケース1:マンガ喫茶]
・お店には最低でも何冊のマンガを揃えると良いとされるだろうか?
・一部の有力店は今、どのようにして差別化を推し進めているのだろうか?

[ケース2:居酒屋]
・居酒屋でもっとも原価の安いメニューといえば何だろうか?
・「どこの店でもこのメニューは絶対ある」というような定番品といえるのは?

[ケース3:学習塾]
・少子化の流れは学習塾の経営にプラスなのかマイナスなのか?
・プラスにするために、どのような取り組みが行われているのだろうか?

[ケース4:シティホテル]
・ホテルの売上げは、都内のシティホテルの場合で宴会60%、宿泊25%、飲食15%といわれる。業界は今、どの部門の売上を伸ばそうと躍起になっているのだろうか?

儲けの構造を解説した本を、スラスラ読んでおしまいにするのはもったいないので、そこから社員教育に役立てたりしましょう。つまり、本を元にして社長が講師となり、社員に貸借対照表や損益計算書の構造も教えていくのです。

●もしあなた自身に先生役がつとまりそうもなければ、担当の税理士さんにお願いしてみるのもいいでしょう。社員がグングンとビジネスに強くなれるはずです。

社員のビジネスセンスを高めていくには、儲けのカラクリを理解させることが一番の早道なのです

2008年01月18日(金)更新

誰を選ぶべきか

●「優秀な人材が優秀な部門にいる」。会社ではよくある話です。ですが仮に、一番優秀な人材を一番問題のある部門に異動させたら、どうなるでしょうか

●こんな例があります。かの名著『ビジョナリー・カンパニー2』(ジェームズ・C・コリンズ著 山岡 洋一訳 日経BP社)でもたびたび対比して紹介されている、「キャメル」で有名なR・J・レイノルズ社と、「マルボロ」でおなじみのフリップ・モリス社の話です。

●両社とも世界的に有名なタバコ会社ですが、実は経営力における格差は相当あり、フィリップ・モリスのほうが格段に上のようです。

●1960年代の初頭の話です。両社ともに売上高の大部分は国内(アメリカ)事業部のみによるものでした。その頃は、R・J・レイノルズがフィリップ・モリスより勝っていたそうです。
●やがて、両社とも国際事業を展開していくことになったのですが、当時の経営陣の意思決定が未来の命運を決めることになります。

●R・J・レイノルズの経営者は、当時のビジネスウィーク誌のインタビューで「世界のどこかにいる外国人が『キャメル』を買いたいというのなら、電話をかけてくればいいんだ」と答えました。
●つまり「欲しいのなら買いに来い」という姿勢です。これはトップの発言だけにとどまりません。事実、同社はしばらくそういった経営姿勢にのっとった販売戦略を展開していました。

●一方、フィリップ・モリスのCEOだったカルマンはどうしたか。当時、まだ1%に満たない国際事業こそが長期的な成長の宝庫とみていた彼は、そのための戦略を考え続け、ついにある結論に達しました。戦略として「何をすべきか」を考えるのではなく、「責任者として誰を選ぶべきか」を決めることが、自分の役目だと気づいたのです

●カルマンは、社内でもっとも優秀だったジョージ・ワイスマンに白羽の矢を立てました。全売上のうち99%を占める国内事業の責任者だった彼に、国際事業部を任せる決断を下したのです。

●当時の国際事業部は、名ばかりの不採算部門でした。当然、そこへの異動が決まったワイスマンは、最初は左遷だ、降格だ、と社内外で騒ぎ立てられましたが、カルマンはワイスマンを支援し続けました。

●その後、国際事業部はフィリップ・モリスでもっとも高い成長率を記録。最大規模を誇る部門になるとともに、看板商品の「マルボロ」はアメリカ国内市場よりも3年早く、世界市場で首位に立ったのです。この頃には、件の人事も「天才的なものであった」と評価されるようになりました。

●フィリップ・モリス社の話は、問題部門やお荷物整理に優秀な人材をあてるのがよい、という単純な話ではありません。今は不振でも、将来的に成長の見込みが高い部門には優秀な人材を当てるのが良い、ということです

社長の決断には「何をすべきか」だけではなく、「誰を選ぶべきか」もとても重要なのです
(参考:『ビジョナリーカンパニー2』ジェームズ・C・コリンズ著 山岡 洋一訳 日経BP社)

2008年01月11日(金)更新

女神に好かれる

●プロ野球の中継を見ていると、コールドゲームのように大差で決着がつく試合が、年に数回あります。最初から一方的な展開の場合は、途中でチャンネルを替えてしまいますが、なかには中盤まで拮抗していたのに、たったワンプレイで流れが変わり、結果として大差で終わる試合もあります。

●そのような試合は、終わった後に「あのエラーがなければ…」「あの投手交代さえもう少し早ければ…」と思うもの。たった一つのプレーや采配で勝負の流れが一気に決まったとき、流れとか勢いといったものの凄さ・怖さというものを再認識させられます。

●もちろん、会社経営にも通じるものがあります。経営者としては、組織の勢いを大切にしなければなりません。さもなければ、会社を目標達成に導いてくれる勝利の女神は去ってしまうのです。しかも、一度去ってしまうとなかなか戻ってくれません。

●では、勝利の女神はどこにいるのでしょうか。私は、毎日の何気ない仕事の中に潜んでいると思っています。つまり、日ごろのちょっとした仕事ぶりが、良きにしろ悪きにしろ会社の勢いを左右してしまうのです
●決して、大々的なセールやキャンペーンだけが本当の勝負ではありません。その日その日の日常業務もまた勝負なのです。

●こんな名言があるのはご存じでしょうか?

・「革命とは車輪を回すことである」(音楽家:イーゴリ・ストラビンスキー )
・「功を奏するとどめの一撃などない。小さなステップの積み重ねだ」(リーマンブラザーズ元会長:ピーター・コーエン )
・「雨だれ石をうがつ」(日本のことわざ)

上記のいずれも「毎日の継続した努力こそが、将来の大きな成果に結びつくカギである」と教えてくれる名言です。

●そろそろお正月気分もおしまいにして、この一年に勝利するための闘争心をあらわにしていきたいものです。会社や個人の目的意識や挑戦意欲をリフレッシュし、勢いを呼び込めるような毎日を過ごしましょう。

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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