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2008年04月25日(金)更新

テイスティングと切り売り

●温泉地の土産店の入り口で、まんじゅうを蒸かしています。浴衣でそぞろ歩きしながら、ホカホカのまんじゅうを食べるのはとても風情があって気に入っています。さて、そんな土産店に関する面白い調査結果を紹介しましょう。まんじゅうを無料で配っているお店と、一個100円で売っているお店との業績の違いです。あなたはどちらが勝つと思いますか、無料派? それとも有料派?

●正解は有料派の方です。有料で売って店内でお茶でも振る舞いながら他のお土産を買ってもらうスタイルの方が、売上げが伸びるのです。無料の場合は、たくさんのお客さんがまんじゅうを食べてくれますが、ほとんどがその場から立ち去っていくというのです。

●安くても構わない、まずはお客さんとして遇してあげようという意味では温泉まんじゅうは「入り口商品」「フロントエンド商品」と考えることができます。

●最近はもう一歩進んで、「本命商品」「バックエンド商品」も小口に切り分けて購入しやすくするというアイデアが広まっています。
●私はときどき一風変わったワインバーに出向きます。都内にあるそのお店は、カウンター越しに400種類ものワインがずらりと並んでいます。その中から好みのワインをオーダーするのですが、発注単位がユニークで、グラス、ボトルという単位の他に50cc、100ccという単位もあるのです。

●1本3万円もするワインを飲む機会はそんなに多くはありませんが、50ccなら2000円程度で飲める。これなら毎週だってOKじゃありませんか。ちなみに、この店舗のシステムを支えるのは特許出願中のワインセーバーだとか。小口販売してもワインが酸化しない技術を開発したからこそ可能になったビジネスモデルです。

キーワードは、小口に分けて切り売りするということ。クイックマッサージやコインパーキングなども小口の切り売りの一種です。魚の切り身にしても小口の切り売りなので、決して今に始まったアイデアではありませんが、あなたの事業にそれを当てはめることでまったく新しい可能性も出てくると思います。一度社内で議論してみてはいかがでしょうか?

2008年04月18日(金)更新

効率的である前に効果的たれ

ドラッカーさんのおかげで、「劣後順位」という言葉がずいぶん普及しました

●私の友人の早崎速男君(仮名)は、その名の通りスピード感あふれる仕事ぶりが信条。「シューッ」といつも口からジェット音のような音を出しながら仕事をするので、仲間から「シュー」と陰口をたたかれています。
30歳になった昨年の春、念願かなって行政書士の資格をとり、個人事務所を開業しました。

●いつもノートパソコンと携帯ツールを併用する彼は、「ビジネスはスピードが命」が口ぐせ。彼と一緒にお酒を飲むときは、まず終わりの時刻を決め、議題を決めてから飲みはじめます。そして定刻になると腕時計のタイマーがなって閉会となります。ちょっとイヤな感じはしますが、それが彼のスタイルだから尊重しています。

●ある日のこと、早崎君が、私のオフィスにやってきました。開業後の成果は決して順調とは言えないようです。

早崎「武沢さん、目標の半分ちょっとくらいのペースで推移しています。もちろん満足はしていません。異業種交流会にも出席したり、経営者団体にも入会したりして人脈を拡大しています。来月からは私が主催する交流会もスタートします。今後の見通しは明るいですよ」

武沢「素晴らしいですね。ところで、早崎君の当面の優先順位を聞かせてよ」
●彼は“待ってました!”とばかりに、携帯ツールを取り出し計画を語ってくれました。それを聞く限り、彼の今後の優先順位は実に明確でした。やるべきこと、やりたいことなどが、身体全体からほとばしり出ているようです。

●そこで私はちょっと気になって、次の質問をしました。
劣後順位はなに?

●「劣後順位」とは、優先順位と逆の意味で使われます。やらないこと、やってはいけないことのリストです。目標に到達するためには、何をすべきかと同時に、何はすべきでないかということも決めておかねばならないからです。

●早崎君のスピード感あふれる仕事ぶりがいかに立派でカッコ良くても、時間管理がいかに上手であっても、お客様がいなければ成果には結びつきません。「効率的」であることと「効果的」であることとは別だ、ということです。

●「効率的である前に効果的たれ」。効果的であるためには、優先順位と劣後順位を決めて紙に書いておけ。という助言を早崎君にして差し上げました。

さて、今度彼が現れるときにはどのように変わっているのか注目です。

2008年04月11日(金)更新

もう一度思い切り仕事がしてみたい

●「ワークライフバランス」という言葉が流行っています。仕事とプライベートを調和させることが大切だ、ということなのですが、言われなくても当たり前の話だと思います。仕事に没頭するだけではなく、生活とのバランスが大切であるという意味の「ワークライフバランス」ですが、仕事の中身や質が充実していなければ、そのバランスは成立しないのではないでしょうか。

・・・
「もう一度思い切り仕事がしてみたい」
病床で井植は弟に向かってつぶやいた。でも井植には、女性に喜ばれる仕事ができたという充実感があった。
・・・

●上に紹介したのは、NHK「プロジェクトX 家電元年・最強営業マン立つ」でのラストシーンで主人公が語ったセリフです。洗濯機の開発に命を懸けた男・井植が、余命いくばくもない状況に追い込まれ、病院のベッドから外を眺めて言ったのが、「もう一度思い切り仕事がしてみたい」という言葉だったのです。
●「もっと仕事がしたかった」と言える人生ってなんて素晴らしいのでしょう。仕事の時間がそれだけ光り輝いていた証明ではないでしょうか。

●以前目にした、「ソニーの重役は他社とどこが違うか」を分析した記事を紹介しましょう。株主総会で開示された主要企業5社の役員報酬を比較した「ソニーの重役 大研究」という特集で、「週刊現代」2002/7/20号に掲載されたものです。少し古い数字になりますが、役員一人当たりの平均年収データを引用します。

・新日本製鉄     2,883万円(役員数 41人)
・三井住友銀行   2,826万円( 〃   23人)
・東芝         2,456万円( 〃   16人)
・大同生命保険   1,872万円( 〃   22人)
・ソニー        8,307万円( 〃   13人)

●ソニーの役員は少数精鋭で報酬が高くなっていることがわかります。重役出勤が許されない激務のようですが、「週刊現代」の記事は、「ソニーのような“ハッピーワーカーホリック”で大金を勝ち取るなら非難されるいわれはない。めざせ、サラリーマンの夢」と結んでありました。

ささやかな幸せには目をつむり、気力・体力・知力のすべてに全力投入を要求されるようなタフな仕事こそが面白い。一生を通してそんな仕事をし続けることはできないかも知れませんが、そうした時間がどれだけあったかが勝負です。しかもその仕事は、他人が運んできてくれるわけではありません。自ら作り出すものでなければならないのです。

●洗濯機の開発に命を懸けた三洋電機の井植のように、私たちはいま思い切り仕事をしているか、と自問してみたいものです。

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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