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2008年06月27日(金)更新

Thank you と I love you、I need you

●社会人になってすぐのころ、職場の先輩から「武沢、サンキュー上手になれよ」と教わったのを思い出します。「サンキュー上手ってなんですか?」と聞くと、“気持ちよくお礼を言える人間になれ”ということでした。そのためには、「少なくともお礼は三度言え」とまで言われました。

●たとえば、夕食をご馳走になったとき、一度目はその場でお礼を言う。二度目は翌朝、会社で会ってすぐにお礼を言う。三度目は後日何かの会話のときにさりげなく「そういえば、あそこの唐揚げうまかったですね」とご馳走になった話題をする。そこまでされると先輩から、「こいつは、おごり甲斐があるヤツだな」と可愛がられます。「周囲から引き立てられる必要がある若者は、サンキュー上手になってナンボ」と教えてくれた先輩に、今も感謝しています。

●それから10年たって結婚したときには、「サンキュー上手だけでなく、アイラブユー上手にもなろう」と心に決めました。でも、これはなかなかうまく言えませんでした。

●「アイラブユーって先週言ったでしょう。だから今日は言う必要はないんだ」という理屈は通らないとはわかっていても、そうそう言えるものではありません。本当は「 I love you 」の気持ちが変わっていないかぎり、惜しまずに今日もそれを言葉で伝えるべきなのかもしれません。受け手にとって、愛情メッセージは満たされた瞬間に消滅し始め、すぐに飢えてしまうもので、たえず補給が必要なビタミンのようなものです。
●しかし、与える側はどうでしょう? 四六時中「 I love you 」と言えるものではありません。ですから、言葉と態度でそれを表そうとしました。

●それから10年たって40歳で経営コンサルタントとして独立し、会社を作りました。初めて採用したアルバイトは女性でした。職場で「アイラブユー」と言うわけにはいきませんから、「アイニードユー(I need you)」という気分で仕事をお願いしました。

●今、オフィスには私を含めて5人が働いていますが、「サンキュー、アイラブユー、アイニードユー」という気持ちを忘れないようにしています。同時に、スタッフから「サンキュー、アイラブユー、アイニードユー」と言われる自分でいたいとも思っています。

2008年06月20日(金)更新

ファシリテーション

●あるプロジェクトがひと段落したあとの、ご苦労さんパーティでのことです。一人の女性幹部が、ビールグラス片手に私のところにやってきたのですが、とんがった口元をみると、何か不満げな様子です。

「武沢さん、ちょっと聞いてほしいのですが……。うちの部長は気まぐれなんだから」
「何かあったのですか?」
「部長が『アイデアを自由に出せ』って言うから、いろいろと突飛なことや奇想天外なアイデアを言ったのに、その場ですぐに否定されてしまうの。ときには、怒り出しちゃったりもする」
「へぇ、そうなんですか」
「そう。たとえば私が何かのアイデアを出すとするでしょ。そうすると、『どうやってそれを実現するんだ!』とか、『我々に与えられた予算や時間という制約条件を無視するな』とか言って、ホワイトボードに私のアイデアすら書いてくれない」
「それはちょっとつらいね」
「でしょ? それでもって自分のアイデアはどんなにつまらないものでも、ホワイトボードの目立つ位置にデカデカと書くわけ。これもひとつの『パワーハラスメント』じゃないかってメンバーとひそひそ話しているの」

●たしかに、彼女がかわいそうですね。全員の感情参加が必要なこうした会議では、進行者の何気ない発言や態度によって、参加メンバーの気持ちが左右されていることを忘れてはなりません。会議やミーティングにはいろいろな目的や手法がありますが、アイデアを幅広く求めるときには、アイデアを出すことそのものを目的にすべきです。アイデアの実現可能性や、達成への方法論を問いかけてはいけません。もちろん、誰の発言かによってアイデアを差別するのも禁止です。

●ミーティングや会議の運営を「ファシリテーション(促進)」と言い、米国では、この専門家「ファシリテーター(促進者)」のプロには高い値がつくといいます。日本でも組織の風通しの良い会社には、必ず一人はファシリテーターの役を果たせる人がいます。的確なミーティング運営ができる人は、コミュニケーションの達人として高く評価すべきです
●「お前も意見を言え」と強制的に発言させるのではなく、意見を言いたくなるようにメンバーの感情をコントロールできるファシリテーション法をマスターしましょう。たとえば、
・いつも、「今、考えてほしい、発言してほしいテーマは何か」を明確にする
・どんな小さなこと、間違ったことでも構わない。発言すること自体が貴重であるという雰囲気づくり
・発言された内容は無視されたり批判を浴びることがない
・誰が正しいかではなく、何が正しいかをみなで考える
・特定個人が発言を独占することがない
・特定個人の発言に影響されないように、まずは発言内容を全員が前もって紙に書き、それを読み上げていくことからミーティングが始まる
いつ始まり、いつ終わるかを明確にして会議に専念させる
・否定的意見や批判的意見が出て会議のムードが暗くなっても、明るく全体を鼓舞させる進行
などなど。

●ファシリテーションをマスターした人は、それだけで市場で1000万円の値が付くと私は思います。さっそく明日の朝礼からでも、そうした運営をこころがけてみてはいかがでしょうか?

2008年06月13日(金)更新

新しいリソース

●あるミーティングでのことです。
「武沢さん、今回のプロジェクトを成功させるために、あなたはどのような新しいリソース(資源)を提供してくれますか?
と質問されました。
「どういう意味ですか?」
と逆質問すると、
「あなたは今回、審判でも観客でもなくプレイヤーです。一人のプレイヤーとしてチームのためにどのような貢献をしていただけますか?」
とのことでした。

●質問を投げかけてきたのは、大橋禅太郎さん。『すごい会議』、『すごいやり方』などのベストセラーを書いた日本でも屈指のビジネスコーチです。愛知県のある会社が、社内改革のために『すごい会議』のやり方を導入することになり、その会社の社長と友人だった私も、「メンバーとして参画してほしい」と要請され、キックオフミーティングに参加したのでした。冒頭の質問はそのときのものです。

●実は、こんな「がちんこバトル」になるとは思っていませんでした。あくまで、私は研修オブザーバーのようなつもりで、大橋さんのコーチぶりやこの会社の変容ぶりを見とどけたかったのです。しかし、大橋さんはそんな生やさしいメンバーの存在を許しませんでした。そればかりか、他のメンバーにも「空砲での射撃練習」ではなく、あくまで、「実弾射撃」でミーティングを進めていきました。そして、この会社の主力製品の「売上げを半年以内に2倍にする」というチャレンジテーマをもって、毎回のミーティングをやることが決まったのです。
●あれよあれよという間にメンバーは目標を鮮明にし、役割分担と個々の目標に対するコミットメント(誓約)をしていきました。ベテランメンバーからは、批判の声も上がりましたし、途中で挫折して退職する人も出ました。しかし、責任者であるY社長が大橋さんを支持していたので、「新しいリソースを使え」という号令のもと、私もY社長も飛び込み営業をやって目標達成に邁進しました。

●そして半年後、売上げは1.5倍以上になりました。惜しくも目標は未達成でしたが、メンバー全員が大きく成長しました。得られた成果は数字だけではありません。新しいことに挑戦するときには、新しいリソースを各人に要求するということがとても大切だ、ということを学習しあったのです。

●ベテランが「昔取ったきねづか」で仕事をするのは悪いこととは言いませんが、その真逆にある「新しいリソース」を使った挑戦も欠かせないということです。

2008年06月06日(金)更新

才能とは何か?

●みなさんは成功する条件は何だと思いますか? 次の項目がその条件に当てはまるかどうか、「YES」か「NO」でお答えください。

1. 成功するためには、ハンサム・美人でなければならない
2. 成功するには、身長が高いほどよい
3. 成功は、「学歴×コネ」の値に正比例する
4. 成功者とは、才能に恵まれた人たちのことだ

●きっと多くの方が、1~3については「NO」と答えるでしょう。私も同じ意見です。では、4はどうでしょうか? 才能は必要ですが、まず、「才能とは何か」、「どのようにそれを得ることができるか」という点を明確にしておかなければ、「YES」か「NO」か、答えることは難しいかもしれません。

●私の友人・田中得夫さんが発行するメールマガジン「成功への道しるべ」に、次のような逸話が紹介されていました。おもしろかったので、引用させていただきましょう。

・・・
随分以前に、米国の雑誌に出ていた記事ですが、中南米のエクアドルでのことです。中風で完全に動けなくなった患者ばかりが入院している病室に、ニシキヘビのような大蛇が入ってきたというのです。さて、動けない患者たちはどのように反応したでしょうか。

1. 動けないので大声を出して助けを求めた。
2. 声をひそめて大蛇がどこかへ行ってしまうのをじっと待った。

正解は、そのいずれでもありません。何と、「全員ベッドから飛び降り、病室から逃げ出した」というのです。

生命が危機に瀕するようなできごとに遭遇して、潜在能力がつかわれたのです。普段は完全に動けない患者なのに、大蛇の前では動くことができたのです。その潜在能力のことを別名「第二の力」と言いますが、「第一の力」すなわち通常の能力を使い切ったあとになってようやく引き出されてくる能力です
・・・

なるほど、私も思い当たることがあります。
●あるときの私は、早朝4時にバチッと目が覚め、日の出前に「がんばれ社長!」を書き始めます。午前7時には書き終え、家族が起きてきたらそろって朝食。シャワーを浴び、歩いて1時間かけてオフィスに出社。一日平均15,000歩あるきます。日中は精力的に働き、帰宅前にはジムで汗を流します。夕食と家族団らんのあと、就寝前には、何より楽しみな読書タイム。朝から晩まで、目標に意識が集中し、心地よい緊張感とあふれる充実感でぐっすり熟睡しているので疲れをまったく知りません。自然に人にも優しくなれます。

●一方、別の私は、やる気がなく、昼近くに目覚めます。すでに遅刻しているのであわててタクシーに飛び乗ります。出社後はすぐにランチ。オフィスにもどると、しばしネットサーフィン。眠気が襲ってくるのでしばし昼寝。昼寝が終わると、メールチェックを済ませ、数時間かけてメルマガを発行。もうそれだけでグッタリし、仕事を終えます。午後6時になると友人をさそって酒を飲みにネオン街へ。たらふく食べて飲んで騒いで、家にもどるのは午前様。翌朝はまた寝坊します。

●さて、この「二人の武沢信行」は、まぎれもなく同一人物です。決して、そっくりさんではありません。この差は、意識と習慣の違いですが、それが続くと決定的な「才能」格差を生み出します。

●才能とは何か? それは、自らの中に眠る潜在能力を引き出す能力のことです。顕在的な能力(第一の力)を出し切った人だけが開くことができる「ハッチ」の向こうに、今までまったく気づかなかった、無尽蔵に湧き出るパワー源(第二の力)があるのです。そのパワーを活用できること――それが、才能なのです。

●疲れたと思ったらもっと働く。眠いと思ったらもっと働く。帰ろうと思ったらもう一仕事。特に若いうちにそうした仕事をしてきた人は、潜在能力が顕在化していくのです。潜在能力を味方につけるためにも、顕在能力を使い切る必要があるのです。だから、「もう一番」「もう一丁」の精神が大切だと思うのです。

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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