大きくする 標準 小さくする

2008年07月18日(金)更新

話し方講座にて

●世間には、自分と自社に自信をもてない経営者もいますが、年配経営者に多いのはその逆で、過信の方です。
「わが実力の不十分なるを知るこそ、わが実力の充実なれ」(オーガスチン)という言葉がありますが、どうも自慢話ばかりしたがる経営者が多いようです。「自慢話ばかりする=自分を過信している=謙虚さがなくなる=裸の王様になる」ということがわからないのでしょうか?
そう思っていたら、自分もそうだった、というお話。

●ある日のこと、日本を代表する話し方教室の事務局長さんから「武沢さんも話し方講座に参加されませんか」と誘われました。
「え、私が? なぜ」と思いました。「話はうまいほうだし、少なくとも下手ではない。そんな自分が今さら『話し方講座』に参加するなんてとんでもない」
とはいえ、ちょっと義理もあって結局受講することにしました。

●朝から晩まで、1日10時間の研修が3日間続きます。「そんなに長い時間、いったい何をやるのだろう?」とおそるおそる参加したのですが、「もし、つまらない内容だったら受講料はフイになっても構わないのでこっそり抜け出そう」と考えていました。
●初日の第一講座が90分間で終わると、休憩時間となり、トイレに行く人、携帯で電話をする人、タバコを吸う人たちが一斉に席を立ちます。しかし、私は席を立てませんでした。講師の話を聞いて、号泣しているこの顔を誰にも見られたくなかったからで、しかも、放心状態になっていて体が動きませんでした。

●決して涙もろいほうではない私がいったいどうして泣いているのか、自分でも不思議でした。講師の先生の心に染み入るお話を聞き、私の魂の琴線にふれたのでしょうか。まるでマグマが吹き上げてくるように、湧き出る涙が止まりませんでした。つい先ほどまで、会場を抜け出す算段をしていた自分が恥ずかしくなり、「上手だと思っていた自分の話し方を根本から変えなくては」と、覚悟した瞬間でした。

●自分は話し上手なんかじゃない。ただ、場慣れしていただけの自意識過剰な人間なのだと知って、「今日からの3日間を天からの贈り物にしよう」と決意した次第です。

<次回につづく>

2008年07月11日(金)更新

理解と同意

●私が40代後半だったある日のこと、名古屋市内にある電気設備会社のE会長(70歳)からこんなことを言われました。

「武沢くん、男も還暦を超えるとね、若いときのようなパワーや欲望が薄らいできて、自分のエネルギーのはけ口をコントロールしなきゃならんのですよ。限られてくるからね、エネルギーが。きっと何年かしたら、あなたもそれを実感するときが来るに違いない」
「はぁ、そんなものですか。ノートパソコンみたくパワーマネジメントが必要ですかね、ハハ」

●このE会長、その枯れたセリフに似つかわしくない漆黒のテスタロッサを操りながら、私を名古屋駅まで送ってくれました。

「今から東京出張だね、がんばってきなさいよ、向こうには全国からすごいヤツらが集まってきてるから、気を抜くんじゃないよ」
「はい、がんばってきます」
「まるで出征兵を送りだすみたいだね、ワハハ」

新幹線に乗りこみ、E会長の言葉を反すうしてみました。
「男も還暦を気にする…、あなたもそれを実感するときが来るに違いない。あと12年か……」

●それから6年経ち、私も54歳になりましたが、故人となられたE会長のあの笑顔と言葉と運転技術の確かさは忘れることができません。しかし、その意見にはいまでも「同意」していません
●加齢によってパワーが落ちるのは一般的なことですので、当然「理解」はできます。しかし、私は「そんな歳のとりかたはしたくない」と思っているので、「同意」はしていません。あくまで、「理解」と「同意」は別物です。トレーニングジムやヨガ教室に通って体を鍛えていますし、精神的にも老けることを拒否しようとしています。ですから、仮に若い世代の経営者とキャバクラへ行くことがあってもホステスさんとは話題に事欠かないようにしているつもりです。

●キャバクラのことはさておき、「理解」と「同意」は別物という話に戻りましょう。経営者としてのあなたが示す会社の方針や目標は、部下に「理解」されるだけでなく、「同意」されているでしょうか? 「部下が動いてくれなくて…」と悩むリーダーは、「理解」と「同意」、どちらの手前で止まっているのかをチェックしてみましょう。また、あなた自身も、部下の意見や気持ちを「理解」しているのか、それとも「同意」しているのか、考えてみてください。

●「理解」を得るだけなら、一度の説明で済むかもしれません。ところが「同意」を得るためには、繰り返しくりかえし、さらにはくり返して反復することや、感情に訴えかけるようなメッセージで共感を得なければなりません同時に、相手の意見や気持ちも積極的に聞かなければなりません

そんな取り組みがあって初めて、「理解」が「同意」に進化していくのだと思います理解と同意は別だということをいつも忘れずにいたいものです

2008年07月08日(火)更新

Wish Listの成長

●某日、牛島社長(仮名)がやってきました。

「やりましたよ、武沢さん。ついにWish Listの数が500個になりました。よろしかったら、ちょっと見ていただけませんか」
※「Wish List」とは、夢や願望や問題を箇条書きにリストアップしたものです。

「へぇ500個とは凄い! さっそく拝見します」

●『2009年 私のWish List』と題したレポート用紙には、次のような項目が並んでいました。

・ドバイに行きたい
・マカオに行きたい
・香港か上海に進出したい
・都内に行きつけの寿司屋を見つけたい
・年商を5億円にしたい(3年以内)
・経常利益を5,000万円にしたい(3年以内)
・役員報酬を3,000万円にしたい(3年以内)
・資本金を1億円にしたい(2年以内)
・35歳までに結婚したい(今31歳)
・○○に関する技術で世界一になる
・IPO(株式公開)したい
・IPOしてから本を書きたい
・新卒学生を採用したい
・強力な右腕幹部がほしい
・人前で堂々とプレゼンできるようになりたい
・「青年の船」のような研修船に乗ってみたい
・美人秘書がほしい
・美人受付を置きたい
・レクサスハイブリッドに乗る
・毎月10冊、本を読む
・WEBを改造したい

ここまで読むと、個性があってなかなか良いリストだと思いますが、いかんせん、ほしいものばかりが並んでいました
●私も牛島さんと同じ31歳のころに作った「Wish List」は、このような内容だったと記憶しています。自分が得たいものが何なのか、ご褒美ばかりが並んでいたのです。肝心の、「自分が何者になりたいのか、何を成し遂げたいのか」があまりわかっていなかったのです

●私は牛島さんに質問しました。以下、そのやり取りを紹介すると・・・。

「10年後、このWish Listのうち何パーセントくらいが実現していると思いますか?」
「う~ん、20%くらいだと思います」
「その数字を40、60、80へと上げていって、Wish Listがお遊びで終わらないようにするための最重要課題は何ですか?」
「自己管理だと思います。Wish Listが達成できるような人間に自分がなることが
最大のポイントだと思います」

●さすがは牛島さんです。自分の「Wish List」にある危うさに、ちゃんと気づいていたのです。「レクサスに乗るならレクサスにふさわしい人間になろう。それはどのような人間なのかを定義し、それもWishとして書き出すことが大切だ」と、牛島さんは気づいていたのです。

Wish Listの成長が本人の成長であり、年々進化する人だけが、実際にWishを実現することになるのでしょう

●今年も後半戦に入りました。“下半期のお正月”ともいえるこの時期に、
 もう一度Wish Listのメンテナンスをしてみませんか?

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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