武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
2008年08月25日(月)更新
話し方講座にて(その3)
●ある話し方講座に参加してみたときのことです。講師に「“外的要求“を“内的欲求“に切り替えることができるかどうかが勝負だ」と教えられました。
●話し手に必要なのは、何といっても思いの強さです。友人と世間話をするときなどの軽いおしゃべりならいざ知らず、経営者として社員や客先、取引先に対して語るには、内容に加えて思いの強さを相手に感じさせなければなりません。経営理念や方針、ビジョンに関する内容であればなおさらです。
●その話し方講座では「自宅でスピーチを30回練習してくるように」という宿題が出されたので、帰宅した私は子どもたちを前に、早速宿題にとりかかりました。
●スピーチのタイトルは「私を変えた二人の社長」と設定しました。内容は私が20代前半で仕えたA社長と20代後半で仕えたB社長のリーダーシップを対比させたものです。A社長を反面教師、B社長を教師として、私が育んできた人生訓を2分間にまとめました。
●中学生と小学生の息子を椅子に座らせて、彼らの前に立ち
「16番、武沢信行です。今から『私を変えた二人の社長』についてお話しいたします。どうぞよろしくお願いします」
と、話し方の講師にならい、最初に深々とお辞儀をしてから話をはじめたところ、彼らは目が点になったようにびっくりしていました。
●スピーチを初めて3回目くらいまでは、息子たちの反応を見ている余裕がなく、ただ、自分のスピーチをどう組み立てるか、それだけを考えて喋っていました。
●それが5回目、6回目あたりになったころでしょうか。聞き手の反応を見る余裕も生まれてきたのですが、彼らは実につまらなさそうな顔をして、「早く終わって欲しい」と目で訴えかけてきます。
●そこで私は、「そうだった。話は自分だけでするのではなく、聞き手に理解してもらい、興味をもってもらい、共感してもらうためのものだった」と思い出しました。そこから、中学生や小学生でも理解できるような言葉づかいに変えていきました。
●そうして15回目を数えるころには、さっきの目線とはまるで違って、子どもが真剣に聞いてくれているのがわかるようになり、25回目、30回目となると、今度は私自身が変わっていきました。
●練習を始めた時とは別人のようになっていた私は、あまりに話したくてしかたがなかったので、風呂に入っていた家内と娘を部屋に呼び「お父さんの話を聞いてくれ」と強要していました。それだけでは飽き足らず、翌朝も午前5時に、眠りこけている息子の枕元に正座して、「私を変えた二人の社長についてお話しします」と一人で練習もしました。
●「スピーチの練習をしている」という感覚が消え、この話を聞かせたい、語らずにはいられないという状態になっていたのです。私のスピーチが、「“宿題”という外的要求」によるものから「“話したい”という内的欲求」によるものへと変わった瞬間でした。
●話し方講座の二日目の朝、一人ずつ全員が前に出て2分間スピーチをしましたが、みんな見違えるように素晴らしい話をしていました。もちろん、私も緊張はしましたがあがることもなく、無事成功しました。
●ところが、明らかに練習してこなかったような人も数名いました。「あの~」、「え~」、「その~」が多くて目線も定まらず、声に力がないのです。考えながら話し、話しながら考えるという、「内的欲求」で話しているとはとても思えないレベルでした。
●歴代の米国大統領の中でも、屈指のスピーチ上手といわれるウッドローはこう言っています。
・私に1時間の話をせよと言うなら、準備の時間はいらない
・私に20分の話をせよと言うなら、2時間の準備時間がほしい
・私に5分の話をせよと言うなら、一日と一晩ほしい
●長々と話せるのなら準備は要らないのかもしれません。しかし、経営者が社員の前で話せる時間は長くても30分程度でしょう。ということは、ウッドローが言うように、何時間、何十回かの準備と練習をしなければなりません。その練習によって、上手な話し方ができるようになるだけでなく、あなたのメッセージに対するあなた自身の思いも強く、熱くさせてくれるのです。
●「外的要求」から「内的欲求」へ。スピーチをするときは、このキーワードを覚えておきましょう。
●話し手に必要なのは、何といっても思いの強さです。友人と世間話をするときなどの軽いおしゃべりならいざ知らず、経営者として社員や客先、取引先に対して語るには、内容に加えて思いの強さを相手に感じさせなければなりません。経営理念や方針、ビジョンに関する内容であればなおさらです。
●その話し方講座では「自宅でスピーチを30回練習してくるように」という宿題が出されたので、帰宅した私は子どもたちを前に、早速宿題にとりかかりました。
●スピーチのタイトルは「私を変えた二人の社長」と設定しました。内容は私が20代前半で仕えたA社長と20代後半で仕えたB社長のリーダーシップを対比させたものです。A社長を反面教師、B社長を教師として、私が育んできた人生訓を2分間にまとめました。
●中学生と小学生の息子を椅子に座らせて、彼らの前に立ち
「16番、武沢信行です。今から『私を変えた二人の社長』についてお話しいたします。どうぞよろしくお願いします」
と、話し方の講師にならい、最初に深々とお辞儀をしてから話をはじめたところ、彼らは目が点になったようにびっくりしていました。
●スピーチを初めて3回目くらいまでは、息子たちの反応を見ている余裕がなく、ただ、自分のスピーチをどう組み立てるか、それだけを考えて喋っていました。
●それが5回目、6回目あたりになったころでしょうか。聞き手の反応を見る余裕も生まれてきたのですが、彼らは実につまらなさそうな顔をして、「早く終わって欲しい」と目で訴えかけてきます。
●そこで私は、「そうだった。話は自分だけでするのではなく、聞き手に理解してもらい、興味をもってもらい、共感してもらうためのものだった」と思い出しました。そこから、中学生や小学生でも理解できるような言葉づかいに変えていきました。
●そうして15回目を数えるころには、さっきの目線とはまるで違って、子どもが真剣に聞いてくれているのがわかるようになり、25回目、30回目となると、今度は私自身が変わっていきました。
●練習を始めた時とは別人のようになっていた私は、あまりに話したくてしかたがなかったので、風呂に入っていた家内と娘を部屋に呼び「お父さんの話を聞いてくれ」と強要していました。それだけでは飽き足らず、翌朝も午前5時に、眠りこけている息子の枕元に正座して、「私を変えた二人の社長についてお話しします」と一人で練習もしました。
●「スピーチの練習をしている」という感覚が消え、この話を聞かせたい、語らずにはいられないという状態になっていたのです。私のスピーチが、「“宿題”という外的要求」によるものから「“話したい”という内的欲求」によるものへと変わった瞬間でした。
●話し方講座の二日目の朝、一人ずつ全員が前に出て2分間スピーチをしましたが、みんな見違えるように素晴らしい話をしていました。もちろん、私も緊張はしましたがあがることもなく、無事成功しました。
●ところが、明らかに練習してこなかったような人も数名いました。「あの~」、「え~」、「その~」が多くて目線も定まらず、声に力がないのです。考えながら話し、話しながら考えるという、「内的欲求」で話しているとはとても思えないレベルでした。
●歴代の米国大統領の中でも、屈指のスピーチ上手といわれるウッドローはこう言っています。
・私に1時間の話をせよと言うなら、準備の時間はいらない
・私に20分の話をせよと言うなら、2時間の準備時間がほしい
・私に5分の話をせよと言うなら、一日と一晩ほしい
●長々と話せるのなら準備は要らないのかもしれません。しかし、経営者が社員の前で話せる時間は長くても30分程度でしょう。ということは、ウッドローが言うように、何時間、何十回かの準備と練習をしなければなりません。その練習によって、上手な話し方ができるようになるだけでなく、あなたのメッセージに対するあなた自身の思いも強く、熱くさせてくれるのです。
●「外的要求」から「内的欲求」へ。スピーチをするときは、このキーワードを覚えておきましょう。
2008年08月01日(金)更新
話し方講座にて(その2)
●「つまらなかったら、抜け出そう」と、軽い気持ちで参加した「話し方講座」。しかし、「自分は話し上手なんかじゃない。ただ、場慣れしていただけだった」ということがわかり、態度を改めて、受講することにしました。というのが、前回までのお話。
●私の一番の克服課題は“あがり症”であること。50歳になってもあがり症が直らないのだから困ったものです。場慣れすることで、徐々に緊張のボルテージもやわらいではきたものの、知らない人ばかりの場所へ行くと、今でもアウェーの気分になり、会場から逃げ出したくなります。
●なぜあがるのでしょうか?
講師いわく「自意識過剰だから」ということでした。「私はつまらない話をして失笑を買うような人間ではない」という思いが強すぎて、上手に話そうと思い過ぎてしまうようです。もっと肩の力を抜けばいいのに、こういう性格の人間はそれもできません。そうなると、対策はひとつしかありません。十分な練習をすることです。十分な練習ほど自信の素になるものはないのです。
●そこで、原稿を作ることになりました。講師は、「スピーチにおいて大切なことは、論旨が明確であること。つまり、主題が明らかであることと、主題が一つであることが欠かせない」と説明しながら、一人ひとりの受講者に、白い紙を配りました。そして、配り終えると、こんな要求をしました。
●「明日は、朝からみなさんに2分間スピーチをやっていただきます。今お配りした紙に線を引いてください。上の部分には、主題、つまり何を伝えたいのかを30文字以内で書いてください。下の余白には、主題を伝えるためのネタや素材を箇条書きにしていってください。10分ほどでその作業を終えてください。ではどうぞ」
●結婚式の祝辞に例えるならば次のようになります。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
主題:新郎の田中君と新婦の陽子さんに心からオメデトウを言ってあげたい
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
素材:田中君と私とは20年来の友だち
高校生のとき一緒に山に登ったときの体験
受験のときのあのがんばり
社会人になって間もなくお酒で失敗したあのエピソード
新婦の陽子さんとの出会った直後の田中君
プロポーズ成功の翌日、二人で祝い酒を交わした思い出
これからも家族づきあいしたい
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
このようにまず、主題と素材を明確にし、頭の中で何度も繰り返してシナリオを完成させるのです。
●さて、何を書こうかと考えていると、「原稿を書く上で、決してスピーカーがやってはならないこと」を教えてくれました。それは、「全文原稿を作ること」です。全文原稿は緊張のあまり丸忘れにつながるだけではなく、聞き手に顔を向けることができない、という重大な問題もあるからです。
●私もウンウンうなりながら、主題と素材を書き出しました。これで話の準備ができた……と思いきや、いえいえ、まだまだこれからです。料理で言えば、レシピを揃えた段階に過ぎません。ここからが準備の本番なのです。
それは、
・声に出して話す
・30回練習する
・時間を計る
ということです。
●「え~、30回も練習? 2分スピーチ×30回だから最低でも1時間は練習かぁ」と、受講者からため息が漏れてきましたが、実は、この30回練習が私の人生観を変えたのです。とても大きな気づきを与えてくれる結果になるのですが、今日は紙面が尽きたようです。
<次回につづく>
●私の一番の克服課題は“あがり症”であること。50歳になってもあがり症が直らないのだから困ったものです。場慣れすることで、徐々に緊張のボルテージもやわらいではきたものの、知らない人ばかりの場所へ行くと、今でもアウェーの気分になり、会場から逃げ出したくなります。
●なぜあがるのでしょうか?
講師いわく「自意識過剰だから」ということでした。「私はつまらない話をして失笑を買うような人間ではない」という思いが強すぎて、上手に話そうと思い過ぎてしまうようです。もっと肩の力を抜けばいいのに、こういう性格の人間はそれもできません。そうなると、対策はひとつしかありません。十分な練習をすることです。十分な練習ほど自信の素になるものはないのです。
●そこで、原稿を作ることになりました。講師は、「スピーチにおいて大切なことは、論旨が明確であること。つまり、主題が明らかであることと、主題が一つであることが欠かせない」と説明しながら、一人ひとりの受講者に、白い紙を配りました。そして、配り終えると、こんな要求をしました。
●「明日は、朝からみなさんに2分間スピーチをやっていただきます。今お配りした紙に線を引いてください。上の部分には、主題、つまり何を伝えたいのかを30文字以内で書いてください。下の余白には、主題を伝えるためのネタや素材を箇条書きにしていってください。10分ほどでその作業を終えてください。ではどうぞ」
●結婚式の祝辞に例えるならば次のようになります。
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主題:新郎の田中君と新婦の陽子さんに心からオメデトウを言ってあげたい
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素材:田中君と私とは20年来の友だち
高校生のとき一緒に山に登ったときの体験
受験のときのあのがんばり
社会人になって間もなくお酒で失敗したあのエピソード
新婦の陽子さんとの出会った直後の田中君
プロポーズ成功の翌日、二人で祝い酒を交わした思い出
これからも家族づきあいしたい
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このようにまず、主題と素材を明確にし、頭の中で何度も繰り返してシナリオを完成させるのです。
●さて、何を書こうかと考えていると、「原稿を書く上で、決してスピーカーがやってはならないこと」を教えてくれました。それは、「全文原稿を作ること」です。全文原稿は緊張のあまり丸忘れにつながるだけではなく、聞き手に顔を向けることができない、という重大な問題もあるからです。
●私もウンウンうなりながら、主題と素材を書き出しました。これで話の準備ができた……と思いきや、いえいえ、まだまだこれからです。料理で言えば、レシピを揃えた段階に過ぎません。ここからが準備の本番なのです。
それは、
・声に出して話す
・30回練習する
・時間を計る
ということです。
●「え~、30回も練習? 2分スピーチ×30回だから最低でも1時間は練習かぁ」と、受講者からため息が漏れてきましたが、実は、この30回練習が私の人生観を変えたのです。とても大きな気づきを与えてくれる結果になるのですが、今日は紙面が尽きたようです。
<次回につづく>
ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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