大きくする 標準 小さくする

2009年10月30日(金)更新

利益を出す意欲

●フジテレビの軽部アナウンサーがトム・クルーズにインタビューしたときのことです。軽部アナに「私とあなたは同い年なのに、あなたがそんなに若々しいのはなぜですか。最近僕はすぐに疲れるようになってしまったので、なにか秘訣があれば教えてほしい」と聞かれたトム・クルーズは、ガッツポーズを作りながら、「僕は人生を生きる意欲が強いから」と明るく答えていました。

●私から見れば、軽部アナも一般的な同世代とくらべたらずいぶん若い感覚の持ち主だと思うのですが、それにしても「トムにかなわない原因が生きる意欲とは面白い」と感じました。

経営者も、生きる意欲を強くもつのは当然ですが、会社をよくする意欲も強くもつ必要があります。とくに大切なことは、目の前の現実を好転させることです。つまり、利益を出し、現金収支をプラスにすることに強い意欲をたぎらせるのです。それなくして、次のステージには進めません。

●私は経営者に会うことを職業にしてから25年になりますが、この間に何社もの経営者が世代交代しました。中小企業経営者の平均在任年数が30年だとすれば、世の中にある大半の企業で経営陣が入れ替わったことになります。
●世代別に比較すると、若い経営者はお金や利益に対する意欲が、戦前・戦中生まれの経営者より乏しくなってきているようです。とくに、団塊以前と団塊ジュニアの世代を比べると、あきらかに精神構造が違っています。

●「お金がそれほど欲しいわけでもなく、いい生活をしたいわけでもない。かといって、欲しいものがそんなにあるわけでもない。だから、儲けはホドホドにして好きなことをしていたい」という若手経営者がたくさんいますが、経営者が現状に満足してしまっては会社の未来がありません。経営者という立場にはいつもハングリー精神が求められ、それを養うことは社長の責任なのです。

利益を上げ、資金力をつけることにもっともっと強い意欲をもちましょう。「なぜ、当社は利益を追求するのか」について、社員にわかりやすく語りましょう。それを通じて、自分自身の気持ちを鼓舞するのです。

あなたが利益を求める理由は何かを自問してみてください。そして、トム・クルーズのようなパッションで、利益を追求する意味を語ってみてください

2009年10月23日(金)更新

コンサルタントの秘密

●スイスの哲学者・アミエルの言葉に、「より良い習慣を学ぶことが万事である」というものがあります。

たとえば、食習慣について考えてみましょう。

人間は食べることで体が作られるので、何を好んで食べるかが、その人の身体の骨格や構造、性能を決定し、さらにはメンタルにまで影響を及ぼします。私は甘いものが大好物なので、朝昼晩と口に入れていました。その結果として今の体が作られたのですが、最近はお酒も辛いものもよく口にするので、みるみるうちにメタボ体型に拍車がかかってきました。

●習慣とは、なにも食習慣に限りません。運動習慣、学習習慣、勤務習慣、生活習慣など、おおよそ人間のやることの大半は、習慣で行なわれています。

習慣とは、言い換えれば個々人がもっている常識や標準のことであり、自分のもつ常識や標準を変えていくということは、新しい自分をつくることと同義です。そうした常識や標準を変えるためには、自分から非常識な人や会社、本などに触れる必要があります。ただし、単に非常識なだけのものではだめで、成果が伴っているものでなければなりません
●私の書棚にも非常識な本が並んでいます。なかでも、『コンサルタントの秘密』(G・M・ワインバーグ著、共立出版)は、コンサルタント人生を歩み出した当時の私にとって非常識な内容が多く、読んで驚いた記憶があります。違和感をもったところも多々ありましたが、私がそれまでうまくいかなかった理由や、今後うまくやっていくためのヒントを、この本からたくさん見つけることができました。

●その中から、とりわけ印象的だったところを紹介します。なお、作者が「コンサルタント」や「依頼主」などと表現している箇所は、それぞれ「営業マン」や「取引先」など、あなたの状況にあわせて置きかえてください。

・・・
コンサルタントのあなたは、依頼主が「自分は問題を抱えている」ということを言わずに済ませてあげるようにしよう。それには、問題に対して「技術的問題」というレッテルを貼ることである。それは本当は依頼主の責任ではなく、専門分野に必要な人材を全部揃えておくなどということはまずできないので、外部の専門家を雇う必要性を認めてあげることなのだ。

予算レビューの時でも、経営上のコンサルティング料などの科目ではなく、技術上のコンサルティング料として計上することによって体面を保つチャンスを与えてあげることなのだ。誰だって外部からの助力を必要とすることがある。だったら、抵抗なくそれをさせてあげるよう配慮しよう。
・・・

相手のメンツを立てながら仕事を取る必要があると彼は言うのです。また、こんな箇所もあります。

・・・
仕事の成果を誰の手柄になるかを気にしていたら、何も達成できない。しかし、コンサルタントが手柄を認めてもらうためには、逆説的なことながら、一見何も達成していないように見える必要がある。あとでまた呼んでもらえるのは、そうしたコンサルタントだけである。

「有能な」コンサルタントがいる場所では、「依頼主が」問題を解決する、ということである
・・・

●私はこれを読んで、なるほどと膝を打ちました。それと同時に、「あの会社は、私の指導によって売上げが伸びた」などと吹聴するコンサルタントには、もしそれが事実であったとしても、次の依頼がこなくなるのだとわかりました

●コンサルタントや何かの専門家の方、それ以外の方でも、本書から得られる教訓はたくさんあると思います。ぜひ、読んでみてください。

★『コンサルタントの秘密』(G・M・ワインバーグ著、共立出版)
 http://www.amazon.co.jp/dp/4320025377

2009年10月16日(金)更新

腕が良い、とは

●「私は特別な人間だ。特別にカッコ良いし、特別に長生きしそうだし、特別な金持ちになりそうだし、歴史に名を残すような特別な何かをなし遂げる人間」だ、とひそかに思っている人がいるかもしれません。それどころか、真剣にそう思っている人もいることでしょう。

社長やリーダーの役目としては、そう思うことが正しいし、みながそう思うように応援してあげることが大事です。

●一方で、「言うだけならタダだとわかっていても、嘘つきになりたくないから軽率なことは言わない」という考えもあると思います。しかし、社長は正確なことを話すだけでなく、いつも明るい未来を語れる人間でなければなりません

●わかりやすくするために、たとえ話をしましょう。医者が頭痛で訪れた患者を診察し、薬を渡すという場面を思い浮かべてください。そのとき、医者Aは必ず「このクスリを飲めば、あなたは必ず良くなります」と言うようにしていました。

●一方、医者Bは、ものすごく几帳面なタイプで、「このクスリがあなたに効く可能性は、データに基づくかぎり60%です。また、副作用が出てしまう危険性も20%ほどあります」と言っていました。
●患者を前にした医師として、どちらが腕が良いのでしょうか。あなたならどちらの医師の病院に行きたいですか? 時と場合にもよりますが、頭痛程度ならば「私はAのほうにかかりたい」と思う人が多いのではないでしょうか。正確な診察という点ではBかもしれませんが、おそらく多くの患者を直してみせるのはAのほうだと、私は思うのです。

●“正確さ”と“腕の良さ”は一緒ではありません。一番よいのは、“正確さを背景にした腕の良さ”であり、顧客に勇気と確信を与えられる実力・実績を持ち、そして言葉を巧みに駆使することです

●「あなたは出来る」、「あなたは治る」、「あなたは良くなる」と言えるリーダーになりましょう。そもそも、夢やビジョンといった将来のことから今月の売上にいたるまで、未来のことはすべて不確かなものなのです。

●腕の良い経営コンサルタントは、赤字だらけのクライアント社長の前でこう断言します。
「社長、僕の言う通りにやって下さい。必ず儲かるようになりますから」
「本当かい?」
「信じてください。御社の未来を」
「わかった、信じよう」

そう言う社長の目に輝きが生まれます。それは、コンサルタントを信頼したのではなく、自分と自社の未来を信頼できた瞬間なのです

こうした言葉の威力と魔力を最も必要としているのは、自分自身です。自分の中の自分、つまり潜在意識に向かって、力強く明るい未来を断言してあげましょう。「私がうまくいく可能性は57%」などと正確に表現しようとするよりは、「私の前にもはや不可能の文字はない」と断言する社長のほうが“腕が良い”のです。

2009年10月02日(金)更新

迷子にならないために

●フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によれば、「『迷子(まいご)』とは、自分の所在がわからなくなり、目的地に到達することが困難な状況に陥った子供、もしくはその状態を指す」、とあります。また、百貨店や行楽地、その他の雑踏などにおいて、本人の目的に関わりなく、引率者が子供の所在を確認できなくなった時点で迷子とみなされる、ともあります。

●迷子は子供だけがなるものではありません。大人でも迷子になります。実際私も、初めて訪れた外国の町で迷子になったことが何度もありました。しかし、子供とは違い、お金は持っていますし、携帯電話もあるのでパニックにはならないで済んでいるだけのことです。

最近は、人生の迷子、経営の迷子をよく見かけます

・目的地がどこか分からない
・目的地への道順が分からない
・そもそも、今どこにいるのか分からない

という意味での「迷子」は、全国にたくさんいるのではないでしょうか。
●私がコンサルタントを始めた15年前、ある社長からこんな話を聞きました。

「うちは創業以来20年間一度も赤字を出したことがないし、金銭的苦労をしたこともない。こんなにも会社経営って簡単なものなのに、世間では社長業って大変だなんて言っている。

そんなとき、俺も一発、社長らしいことをやってみようと、自社ビルを建てることを決め、生まれて初めて借金をした。当時の売上高の何倍もの金額を借り、ようやく完成した自社ビルの落成記念パーティの案内状を作っているとき、バブルが崩壊した。その後、あっという間に倒産の危機に見舞われ、今では社長業って本当に大変だなあと実感している」

●私が「社長、顔色もいいし、お元気そうですがよく生き残ってこられましたね」と言うと、その社長は神妙な顔でこんな話しをしてくれました。

「武沢さん、私はものすごくラッキーだったと思う。なぜなら、倒産の危機に見舞われて以来10数年間、運転資金を銀行から借りることができなくなった。そのおかげで、利益と現金が酸素のように大事なものだと実感できるようになったし、それを先行管理するための方法を考案し、社長らしい仕事をやれるようになっていったのだと思う

●そこで私が、「社長らしい仕事って何ですか」と質問すると、「現実に向き合い、将来に向き合うことでしょ」という答えが返ってきました

●この社長、資金繰りに追われて困窮しているときは、すべてを経理に任せ、自分は現実から逃げていたそうです。しかし、逃げていてはかえって不安が広がるのだと気づき、月末にいくら足りないのか、いつなら支払えるのか、来月はどんな見通しなのか、といった問題や現実に社長自身が向き合いました。その結果、会社が良い方向に向かいだしたといいます。

逃げると迷子になるのです。経営者自身が「今自社はどこにいるのか」を確認し、向かうべきゴールをもう一度フォーカスしなおす作業をちゃんとやっている会社は、どんな時代がやってきてもしなやかに対応することができます。

●2009年もいよいよ最終四半期に入りました。今どこにいるのか? 残り3か月の目標は何なのか? をもう一度確認しましょう。

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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