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2009年03月27日(金)更新

わたしはあなたの味方です

●私は出張が多いので、カバンにこだわりがあります。そのため、カバンの専門店やデパートのカバン売り場に立ち寄ることが多いのですが、いつも「買う所はAカバン店」と決めていました

●Aカバン店の店員では、30歳前後のY子さんをひいきにしていました。出張や旅行先でカバンがどのように使われるのかを熟知しているだけではなく、カバンの歴史からブランドの比較、商品知識から接客態度など、すべてに及第点がつけられる接客をしてくれるからです

●ところが、数年前のある「事件」をきっかけに、私はその後A店には一度も行かなくなりました。

●ある年の瀬のことです。私はいつものようにA店で出張用につかうS社製のキャスターバッグを買いました。気に入って使っていたのですが、購入して4か月後に、カバンを引っ張って歩くための取っ手部分が上に持ちあがらないというトラブルが起きました。

●さっそくA店に出向き、修理を依頼しました。Y子さんはその日お休みだったので、彼女の上司に事情を説明したのですが

「まだ4か月しか経っていないし、週に1回程度の出張でごく普通に使用していた。それが急にこんな具合になってしまったので、早急に直してほしい」という私の希望に対し、
「メーカーに修理に出しますので、1か月ほどお時間がかかる場合があります。また、修理費用が発生する場合は、お見積もりを電話にてご連絡します」という対応でした。
●「費用が発生する場合がある」という説明に多少の違和感をおぼえましたが、とにもかくにも今のままでは使えませんので修理を依頼し、その日から私は古いバッグを出張に使っていました。

●40日ぐらいたってから、Y子さんから電話がありました。

「遅くなりましたが、カバンの修理が完了しました。いつでも良いのでご都合のよい時に受け取りに来て下さい」ということでしたので、翌日A店に出向き、Y子さんからカバンを受け取りました。

●受け取るとき、Y子さんはこう言いました。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。フレーム部分がかなり歪んでいたようです。フレームの強度を超える荷重があったのだと思われます。メーカーの方でフレーム交換しましたが、お客様ご負担金として5,000円の請求があがってきました。まことに申し訳ありませんが、パーツ交換分のご負担をお願いします」と言われました。

●使って4か月目に壊れたカバンの修理に40日以上かかり、かつ修理代金として5,000円を負担してほしいという説明に私は納得がいかなかったので、「それはおかしいと思います。むしろ不良品に近いものだと私は思います。実費負担どころか、メーカーからお詫びをされるぐらいの話だと思っています。負担金を払えというのは、Y子さんからみてどう思いますか?」

●Y子さんのその後の説明は、これまで私のことを熟知してくれていた人が、向こう側に行ってしまったと思わせるようなものでした。メーカーのS社の立場を代弁するような説明を始めたからです。

「お客様、メーカーの方でもこのケースは異例なことだと驚いていました。例えば、取っ手を上に出した状態でカバンを長時間持ちあげ続けるとこのようになる場合があるそうですが、それ以外ではちょっと考えられないという話をしていました」

私がY子さんに期待したのは、メーカーの釈明ではありません。ましてや私の使用法に疑いの念をもつような発言はしてほしくありませんでした。極端に言うと、こんな発言を期待していたのです。

「武沢さん、もちろん私はあなたの味方です。40日も待たせた上に実費負担だなんて、ひどい話だと思います。もう少し私にお時間をくださいませんか。武沢さんはうちのお得意様ですから、メーカーか店長にかけあってみます。もし万一、それでもダメな時は私がその実費分をお支払いしますよ。とにかく、この大切なおカバンは今日お持ち帰りになって、さっそくお使いください」

Y子さんがもしそう言ってくれたら、私は大感激してその場で5,000円払って帰宅したことでしょう。なぜなら、Y子さんに余分な心配をかけさせたくないからです。

言葉の裏にあるスタンス(立ち位置)がどこにあるのか、顧客はそれを敏感に感じているのです

2009年03月19日(木)更新

挑戦者の顔つき

●読売ジャイアンツにいた頃と、ニューヨーク・ヤンキースに行ってからの松井秀喜選手の表情を比較してみると、後者の方が断然引き締まっていい表情になったように思います。それは、巨人時代の「花形選手」であった状態と、ヤンキースに行って「一人のチャレンジャー」となった状態の違いからきているのではないでしょうか

●かつて「文藝春秋」に松井選手の父親が手記を投稿したことがあります。それによると「『メジャーの方が楽だよ』と松井選手が言っている」とのことでした。といっても、野球の質やレベルが楽なのではなく、野球をする環境の話です。メジャーの方が野球に集中できるとのことでした。

●たとえば、メジャーは移動が大変で、試合が終わるとすぐに飛行機に乗って、遠征先のホテルには深夜に到着します。移動時間の長さやホテル住まいのわずらわしさは日本の比ではないでしょう。しかし、そういった環境だからこそ野球に集中できるらしいのです。

●また、日本と違って

・試合後の夜の付き合いがない(これは出来ないというべきか)
 ⇒酒もタバコもやらない選手が多く、わずらわしい付き合いがない。
  そもそも、お互いにそんな時間がない。

・試合後の移動は大変だが、飛行機横付けでバスが来る。
 ⇒それに乗れば自動的にホテルへ行ける。次の日は昼までぐっすり眠れる。

・日本に比べ、練習量が少ない

●精神的には、日本にいたときよりもハードでプレッシャーがかかる毎日のはずです。メジャー選手といえども、来年も在籍しているチームでプレイできる確信を持っている選手は少数派だと聞きます。強烈なライバルがチームの中に何人もいるなかで、メジャーリーガーとしての生き残りをかけているからこそ、毎日が真剣勝負となります。それが、野球好きにとってこの上なくありがたい環境なのでしょう。

●勝つか負けるかわからない勝負に挑戦しつづけ、それに勝った経験をすると、人は顔つきが変わります。私たちも一人のチャレンジャーとして良い顔になり、勝負に勝ってさらに良い顔になりましょう

2009年03月06日(金)更新

赤と青の情熱

●「革命を成就させるには三つのタイプの人材が揃う必要がある」と司馬遼太郎が言っています。彼のいう三つのタイプの人材とは
・思想家
・戦略家
・実務家や技術者
だそうです。

●たしかに司馬の指摘には一理あると思います。たとえば、明治維新をみても、吉田松陰を始めさまざまな「思想家」たちが徳川幕府の脆弱性や矛盾を指摘し、若者を鼓舞しました。
“徳川体制はおかしいんだ、天皇を担いで幕府を倒そう”
という機運を作ったのはそうした「思想家」たちです。

●次に「戦略家」が現れました。
高杉晋作や坂本龍馬、西郷隆盛など行動力に富んだ若者が思想を実現するための具体策を考案し、戦略的に動きました。その結果、山が動くのです。

●最後に、革命の総仕上げをしたのが「実務家」や「技術者」たちです。例えば、大久保利通や大村益次郎、伊藤博文、井上馨などいわゆる明治の元勲とよばれる人たちがそれです。

●企業にもこの三つのタイプの人材が揃っているのが理想でしょう。しかし、中小零細規模の場合には、そんなに揃っていることがまれなので、社長が一人で三役こなす必要があるのかもしれません
●先日、メルマガ読者から達筆なお手紙を頂戴しました。その最後にこんな一文がありました。

「武沢さんのメルマガを拝読していると、武沢さんという人が大変熱くて赤々とした、まるで溶岩のように思える」と書かれていました。
私が書いた文章からそのような印象を感じ取られたそうですが、実は私はまったくその正反対のタイプだと思います。

●どちらかというと控えめなタイプで、自分の考えを話すよりだまって聞いている方が好きです。人前で話すことは苦手だと言った方がよいでしょう。
経営者会報ブログのオフ会にも二度参加していますが、そのたびに「話すことだけはご勘弁を」と幹事さんに念を押して参加しているほどです。

したがって私は、“赤々”としているのではなく、むしろ“青々”としていると言ったほうが近いでしょう。

私は情熱には赤色と青色があると思っています

人の心に火を付け、いるだけで周囲が熱くなる赤色タイプが先に申し上げた「思想家」や「戦略家」の特徴でしょう。革命の総仕上げをするのに必要な「実務家」や「技術者」は青色タイプが多いように思いますが、その分け方が適切かどうかはわかりません。

●要するに、情熱には「赤」と「青」があるということをお伝えするのが今日のコラムの主旨です。熱さが言葉や態度に出る人と出ない人がいるということと、その両方が組織の中に必要だということです

赤と青の情熱、ともに大切にしていきましょう。

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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