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2009年05月29日(金)更新

老剣士のつぶやき

●先日、次のような寓話を聞きました。

●老剣士が研ぎたての青々とした刃先をもつ刀で、わら人形を一瞬で斬りました。力は入れていないようで、刀の重力を利用してシャープに振り抜いただけです。

●この老剣士は、今日も明日も明後日も、一日にわら人形を一体ずつ斬っていきました。

●それから3か月、刀の切れ味は鈍ってきているはずですが、本人も周囲もあまり気にしませんでした。

●さらに1年後、久々に老剣士の様子を見に行きましたが、今度ははっきりとわかるほど、様子がおかしくなっていました。

●研ぎたての刀を使っていたころは惚れ惚れするほどカッコよく斬っていたのに、今は「フムッ!」と力んだ声を出さないと斬れないのです。おまけに切断面もザラザラで、斬った後には息が乱れています。

●「大丈夫ですか?」と聞くと、老剣士は「大丈夫、ただ老いただけさ」と淋しそうに答えました。

●しかし、この息の乱れは老いが理由ではありません。剣を研いでいないだけなのです。
●なぜ研がないのか?

1.剣を研ごうと思っていない
2.剣の研ぎ方がわからない
3.剣を研ぐ時間がない

のいずれかです。

あなたの人生やビジネスにおいて「剣を研ぐ」ことに相当するものは何でしょうか? 本を読むことか、勉強することか、人と夢を語りあうことか、一人静かに考えることか。

今日の私の提案はこれです。

「剣を研ぐことを毎日の日課にしよう!」

あなたにあったやり方で、剣を研いでほしいのです。


●先日お会いした福島のAさん(47歳)は午前2時に起床し、2時間散歩するという習慣の持ち主だそうです。これは学生時代から続けている習慣で、心と身体を練るために欠かせない日課だといいます。

●それを聞いてビックリした私が「何時に寝るのですか?」と尋ねると、「午後7時半」という答えが返ってきて二度ビックリしました。私がネオン街に繰り出す時間に彼は休むのです。それが彼流の剣の研ぎ方です。

●ちなみに私は、早朝のカフェで読書と計画を練るときが剣を研ぐ時間になっています。

もういちど言います。

「あなたにあったやり方で、剣を研ぐことを毎日の日課にしましょう!」

2009年05月22日(金)更新

悪いサービスも悪くない

販売している商品や、提供しているサービスの質が高いことは大切ですが、質の高低のバラツキがないということも、同じように大切なことです。提供しているものやサービスに、当たり・はずれがあってはなりません。

●私は15年ほど前から、さまざまな理由により車を運転することをやめました。それ以来、市内の移動は大半がタクシーです。また、雨の日や歩きたくない日などは、たとえ数百メートルの距離でもタクシーに乗ります。

●数年前のある日のこと、こんな運転手に出会いました。

   私「悪いけど…、ヒルトンまでお願いします。」
運転手「えっ?」
   私「ヒルトンホテルです。」
運転手「伏見の…? ちっ!」

●はっきりと舌打ちが聞こえました。こちらも至近距離だということはわかっていますが、急いでいました。一方、運転手は運転手で駅のロータリーで何分もの間、客待ちしているのはわかっています。だから、運転手が気持ちのいい応対をしてくれれば、かかった運賃の釣り銭を受け取らないでいるつもりでした。でもこのような対応だったので、釣り銭はおろか、領収書までしっかり受け取ってやりました。

●今ではタクシー業界でも全国的なサービス競争が始まり、以前ほどひどい運転手は減りました。ですが、それでも私が友人や取引先のためにタクシーを拾うときには、タクシー会社を選別しています。もちろん、どのタクシー会社にもすばらしい運転手がいるのは知っていますが、嫌な態度の運転手は、教育にばらつきがある会社に多いのです。サービスとしての品質にこれほどばらつきがあるサービス業は、他に見あたらないと思えるのがタクシー運転手なのです
●冒頭のヒルトン行きの件があってから、私が名古屋駅でタクシーに乗るときには、必ず降車場で乗るようにしました。他の乗客が降りる降車場でタクシーを探し、それに乗るのです。そうすると不思議なもので、ワンメーターの行き場所を告げても嬉しそうに、「はい、ありがとうございます」と返事がきます。

●タクシーの顧客満足度のほとんどは、運転手の態度や人柄で決まるのではないでしょうか。もし、あなたがタクシー会社の経営者であり、運転手と顧客との関係を良好なものにしたいと願っているとしたら、どんな手をうちますか?

●ちなみに、私は次のような手を考えてみました。

1.ワンコインまたはツーコイン専用タクシーを作る
つまり、短距離しか乗せないことを売り物にしたタクシーを走らせるのです。先ほどの事例のようなトラブルがなくなるだけではなく、潜在的な顧客層を開拓できるはずです。

2.賃金制度を変える

最近、売上高に対する歩合制が主流ですが、それが諸悪の根元ではないでしょうか。大切なのは賃走回数、つまり、何人の顧客を乗せたかも成績評価に入れるようにすれば、逆に短距離客を歓迎することになり、タクシー会社の評判を高めることにもなるはずです。

3.基本訓練を徹底する
挨拶や言葉づかいはもちろん、人間性の教育を徹底します。また、運転手によって基本的な動作にもバラツキがありますので、それを解消します。たとえば、顧客の荷物をトランクに出し入れするとき、運転手が親切にやってくれるタクシーもあれば、全部自分でやらされるタクシーもあります。たとえ同じタクシー会社であっても、運転手によってサービスにばらつきがあるので、そうした基本訓練を再徹底します。

受けたサービスへの不満と感動を教訓にして自社に置きかえる訓練もしていけば、文字通り「他山の石」にもなるでしょう。そう考えれば、悪いサービスを受けるのもまんざら悪くないのではないでしょうか。

2009年05月15日(金)更新

ナンプレに熱中して

●このゴールデンウィークを利用して上海・香港を旅行してきました。雑誌を何冊か買って機内で読むのが好きなので、いつものようにまず空港の書店へ立ち寄り雑誌を数冊と、この日は「ナンプレ」(数学パズル)の本も一冊買って機内に乗り込みました。

●自宅で子どもが「ナンプレ」に熱中しているのを見て、私も一度やってみようと思ったのですが、最初はルールや解き方がよくわからなかったので、「標準時間5分」の問題に30分以上もかかりました。だんだん慣れてきて、上海に着く頃には15分そこそこで解けるようになったのですが、それでも標準時間の5分はクリアできませんでした。

●結局その日、上海に着いてからもホテルで「ナンプレ」に熱中していたのですが、その日の最短時間は9分。普通の人は5分で、上手な人はもっと短い時間で解いていると思うと悔しくてたまりませんでした。

こんなとき、私は新しい問題を解くのをやめて、発想を変えようと努めます。「なぜ5分で解けないのか」を考えるのではなく、「5分で解いている人はどのように発想しているのだろう」と考えてみるのです。その時に、ハッとするような新発想が生まれることもあります。このときは、残念ながらその新発想が出ませんでした。ということは、「解き方は正しいはずだ、あとは練習が足りないだけだ」という結論になります。
●部屋の冷蔵庫にあったコーラとチョコレートをほおばりながら、新しい問題を何問も何問も解いていくうちに、「ナンプレ」の本をまくらに眠っている私がいました。結局、その日はあきらめてベッドで休み、翌朝気分を一新して「ナンプレ」に立ち向かいましたが、やっぱり15分くらいかかります。

●朝食をすませ、シャワーを浴びて再挑戦するうちに、スコンと10分で解けるようになりました。今度は9分、次は8分…と一気に時間短縮がすすんでいき、約束のためホテルを出発する直前には5分台の記録を出すことができました。そのときの私は、興奮してアドレナリンが大量に分泌されていたはずです。

●これから紹介するのは、バスケットボールの神様、マイケル・ジョーダンの談話です。

・・・
大事なシュートを失敗しても、僕はその原因を考えたことは一度もない。失敗した原因をあれこれ考えると、必ず否定的な結果を考えるようになってしまうからだ。

人生で何かを達成したいと思うときは、積極的かつ、攻撃的にならなければならない。目標を決め、それに向かってひたすら努力するだけだ。受身の姿勢では絶対に達成することはできない。何かに挑戦するとき、僕はそれを達成すること以外、何も考えないことにしている。

スポーツにおいては、恐怖心は時に、集中力の欠如から生まれる。例えば、フリースローのとき、カメラの向こうで多くの人が僕を見ていると考えると、絶対にシュートを成功することはできない。

だから、こんな時自分の中にイメージを描くことにしている。試合でも、何千回と練習してきた方法やテクニックでシュートする。結果は考えない。そうすれば、リラックスしてシュートを放てるからだ。

僕は失敗を受け入れることができる。誰にでも失敗することがあるからだ。しかし、僕は挑戦することをあきらめることは絶対にできない。だからこそ、僕はチャレンジすることにも恐怖を感じたりしない。

成功できるかどうかなんて、僕にはどうでもいいことだ。情熱の全てを注ぎ、110パーセントの努力をしている限り、結果はどうでもいい。恐怖心は幻想だ!
・・・

●今、私は「標準時間5分」の問題であれば3分台で解くことができるまでになりました。なぜなら、何百問、何千問も解いているうちに、解いている間は何も考えず、脳と手が一体になって動くようになったからです

●トレーニングとは、何も疑わずに練習をくり返すことなのだと思いました。頭ではなく、身体で習得しなければならないことには、トレーニングが必要なのです

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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