武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
2011年04月25日(月)更新
唖然とする医師
●「人間は80歳まで強くなれる!」というキャッチコピーに惹かれて『武道の力』(時津賢児著 大和書房)という本を読みました。
●この本は、
野球でも相撲でも、サッカー、スキー、マラソン、格闘技など何でもが、20代や30代の若手選手が優勝する。つまりその年齢で選手としてのピークを迎え、それ以降は衰えていくばかりのスポーツの現状に対し、警鐘を鳴らしているのです。
●例外は剣道。剣道だけは、若手がハァハァと息を乱していても古老の剣士は微動だにせず勝つ。
このように、鍛え方次第でスポーツは80歳まで強くなれるということを教えてくれる本です。
また、それはスポーツだけではなく、人間の脳の働きも80歳までは強化できると著者は主張しているのです。
●単なる理論の書ではありません。著者が今なお実践中のことだけに大いに迫力があります。
身体というものは、鍛えないと弱っていく一方です。それにつれて脳まで弱っていくのがやっかいです。
情熱や欲望、闘争心、集中力、根気などといった精神力は、脳の働きに負うところが大きいわけですから、身体と脳は鍛えなければならないのです。
●また、かつて合気道・大東流の佐川幸義師範の弟子で、筑波大学の数学教授・木村達雄氏が、オリンピック候補になっていた柔道選手を片っ端から投げ飛ばし、全員を自信喪失にさせてしまったことがありました。
その木村氏が書いた本に、ビックリするエピソードが紹介されています。
・・・佐川先生は十七歳で合気の極意をつかんでしまった。それを強化するためにいろいろ鍛錬を考えているので、最初から普通の人と考え方もやり方も違っている。(中略)
そして何十年と今でも休みなく鍛錬を続けているのである。なお筆者は、最近先生が使っておられる鉄ゲタ、鉄槌、鉄棒、鉄パイプの槍を見せていただいたが、その重さに驚いた。筆者が実際にこれを持ってみて、これをいきなり使ったら腕をこわしてしまうと思った。
(中略)
佐川先生が九十歳の頃、東大病院に念のための再検査を受けに行ったことがある。医師が運動心電図を計るので何か運動してほしいというと、先生はすぐさま百五十回腕立て伏せをやってしまい、医師を唖然とさせた。
・・・
●これを読んだとき、私はすごいと思いました。
"継続は力なり"とは言いますが、そんな生やさしい表現ではもどかしい。
鍛えるという行為を継続するとミラクルが起きます。
●この佐川先生も、若いころは逆三角形の見事な筋肉質の肉体を作っていたらしいですが、その割に技に効果がないという理由で、考え方と鍛錬法を変えたそうです。
●身体も頭脳も80歳までは進化することが分かっただけで、やる気が出てくるではないですか。自分にあった鍛え方を見つけていきましょう。
★『武道の力』時津賢児著、大和書房
→ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4479791108/
2011年04月15日(金)更新
彼の流儀
●一定の年齢になると、自分独自のスタイルや流儀をもつように心がけたいものです。
私の場合は、平日は毎日メルマガなどの原稿を2~3本書き、ブログやFacebookでそれらを外部に発信しています。1本のメルマガ作成に要する時間はおおむね2時間です。原則として書き溜めをしません。その日のメッセージはその日に書くのが好きだからそうしています。従って、月曜日から金曜日まで毎朝最低でも3~4時間は原稿を書くのが私の10年来の日課になっています。
●そんなお話しをある所でしたところ、懇親会である経営者からこんな助言をいただきました。
「武沢さん、私もメルマガを発行していますが、基本的にはすきま時間を見つけてやっています。仕事に支障が出ないやり方があると思いますので、武沢さんももっとすきま時間を活用して書いてみられてはどうですか?」
●助言は大変ありがたいのですが、価値観や流儀が違うのです。
私の場合は、メルマガ発行が大切な仕事です。メインの仕事と言っても構いません。ですから、すきま時間でやることではないのです。
これが私の流儀です。流儀とは価値観を反映させたもの。こだわりのようなものです。
●ある経営者は、経営会議の時間の半分はメモをとっています。何をそんなに書いているのか尋ねると、
「部下の発言内容をメモるときもあるが、それから触発される自分のアイデアをメモることが多い。一回の会議で10頁以上のメモ量になることもある」ということでした。
これが彼の流儀です。
●ベートーベンは膨大な数の楽譜メモ断片を残していますが、作曲中にはそれらのメモを見ることはなかったといいます。「なぜそうするのか?」と尋ねられたベートーベンは、「一度書かないと忘れるが、一度書けば忘れない。だからもう見る必要はない」と答えたといいます。
これが彼の流儀です。
●自分が話すのを自分が聞いて学ぶ人もいます。GMの中興の祖とも言われるアルフレッド・スローンもその一人で、会議中には一切メモをとらなかった。部下の発言で、重要なものがあればスローンは自分の言葉でもう一度同じことを語り、その場で咀嚼してしまう人だったのでしょう。
これが彼の流儀です。
●このように人それぞれに仕事の流儀というものがあって、正解は一つではありません。自分にとって最も高い成果が得られるスタイルを見つけ、自覚し、磨き、貫きましょう。
なぜなら、会社経営とは流儀のかたまりのようなものだからです。
2011年04月08日(金)更新
部下に起業家が何人いるか
●成長著しい会社の多くはいつも社内が混乱しています。
部下:「部長、また変更ですか?」
部長:「おお、仕様を変更する。すぐに対応してくれ」
部下:「あっちの仕事とどっちが優先ですか?」
部長:「どっちも最優先だ。いつまでにできる?」
部下:「今日中になんとか……」
部長:「悪いが待てない、午前中にやってくれないか」
こんな会話が毎日のように起きています。さながら戦場のようなもの。部下にとっても、毎日が未知の仕事ばかりで、過去の前例などなにも頼りになりません。
●しかし、停滞している会社では通常、社内はとても静かで秩序だった毎日を送っています。そして深く静かに大企業病に犯されていくのです。
大企業病とは、大企業が陥りやすいからそう名づけられたのですが、中小零細企業でもそれは起こりますし、ベンチャー企業だってそうなる危険性をはらんでいるのです。
●それは、秩序を乱されるのが嫌いな人たちが権力を握ったときに生まれる"秩序維持病"のようなものです。
壊されるのが嫌いで守るのが大好きな人たちはこう言います。
・専務、またやり方を変えるのですか?
・また新しいことをやるのですか?
・前回このようにおっしゃったではありませんか
・もう絶対に変えませんね?
そんなとき、「もう絶対に変えないよ」「これが最後だから」などと言ってはなりません。上司がそう言った瞬間から大企業病が始まるのです。
●むしろ変革の必要性を説き、変えるのを嫌がる人たちを鼓舞し、リードするのが上司の役目です。優秀な人たちの多くは、秩序を大切にしたがります。そうした人を大切にしなければなりませんが、「何も変えない・何も始めない」のが素晴らしいのではないということも伝える義務があるのです。
●ドラッカーはこう言います。
「経営はマーケティングとイノベーションに尽きる。そのイノベーションを行うのは人であり、人は組織のなかで動く。したがってイノベーションを行うには、そこに働く人間一人ひとりがいつでも起業家になれる構造が必要である」
(『イノベーションと起業家精神』)
あなたの部下に起業家が何人いるかが勝負なのです。
●あなたの会社の経営幹部にはこう言ってあげましょう。
・サラリーマン同士でつるむなよ。たくさんの経営者や起業家と接触しなさい!
・自分でやりたいことを10以上あげることができるか(もちろん仕事で)?
・3年以内に社長になる計画をもっているか?
・その気があれば、私と組んでパートナー会社を立ち上げないか?
そういう働きかけに対して敏感に反応する人が頼もしいのです。
・人に言われたことをきちんとこなすか
・上司に気に入られる人間性をもっているか
・報告・連絡・相談がきちんとできるか
などはサラリーマンの評価尺度です。
それら以上に大切なことは、依頼主(顧客や上司)が望む成果を上げることができる人なのです。細かい指示をしなくても、望む結果を伝えれば分かってくれる人を登用しましょう。
●あなたの部下、特に経営幹部には大いに起業家精神を要求すべし。
この二年間で何を立ち上げたか、何を壊したか、を評価基準にしよう。そして今月は何を始め、何をやめるつもりなのか、お互いに明確にしながら仕事を進めていきたいものです。
2011年04月01日(金)更新
確認しよう「聖」と「俗」
●空海は高野山を開くにあたり、「結界」というものを設定しました。
「結界」とは、神聖な場所と世俗的な場所を厳しく区別する境界のことを言い、結界内には、修業の妨げになるような世俗的なものは一切が排除されたのです。
高野山を取り囲む尾根道など二箇所に境界線を設けた空海。宗教家にとっては、「聖」と「俗」とをきっちり区分けすることが大切なのでしょう。
●芸術家のピカソもこんなことを言っています。
「回教徒が寺院に入るとき靴を脱ぐように、私は仕事中、ドアの外に肉体を置いてくる」。
本来なら私たちの職場もそのような場所なのですが、パソコンとインターネットによってゲームも映画もアダルトも友だちとの私用メールも、なんでも一台で済ませられるようになってしまいました。それはある意味、大変便利なのですが生産性や集中力という点で由々しき問題でもあります。
●何年か前、ヨーロッパの企業で重役の一人がアダルトサイトにアクセスしていたことが発覚し、辞任に追いやられるという"事件"がありました。
本人にしてみれば、ちょっとした息抜きのつもりなのでしょうが、組織のリーダーが率先して禁止事項を破った代償はあまりに大きかったのです。
仕事中の息抜きが悪いのではありません。息抜きの内容です。
●オフィスの中には、仕事に関係しないモノは持ち込まないこと。それは新入社員教育で教えることです。すべての私物はロッカーに預け入れるのは当然のこと。問題はパソコンや携帯、スマートフォンなどです。
会社で使うパソコンは、
・ゲーム類のソフト削除
・インターネットサイトへのアクセス制限
・メール内容の監視(私用メールの禁止)
などの徹底が必要でしょう。
●人間として器量が大きい人のことを、"清濁あわせのむ"という表現で称賛しますが、「聖」と「俗」はあわせのむことはできないかもしれません。
パソコンは仕事と連絡手段の道具と割り切り、ゲームや映画などは専用機で楽しむのが一番賢明なのでしょう。
もういちど、部下のパソコン使用に関する規定を整備しておきましょう。
ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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