大きくする 標準 小さくする

2013年05月31日(金)更新

自分を気持ちよく動かす

●21世紀に入り、飛躍的に解明が進んできた分野のひとつに脳の分野がある。今までの脳に関する常識を鵜呑みにしていると危険だ。たとえば、「あなたの脳年令は何才?」というようなゲームも、脳の専門家からみれば誤用のひとつらしい。「世の中の脳に関する情報のほとんどは信用できない」とまで警告するのは、脳医学会での日本の権威・京都大学名誉教授の久保田競氏(くぼたきそう)だ。ある日、氏のセミナーを受講してきた。
 
●いくつかの点でとても新鮮な発見があったがその中からふたつほどご紹介したい。
1.GOとNO GO
「やれ」と「やるな」の両方が大切ということだ。やれた時に報酬を与えるだけでなく、やらなかった(やめた)時に報酬をあげることも脳にはすごく有効だということ。たとえば、毎日遅刻する習慣が直らないA君が、久しぶりに時間内に出社できたとする。会社にとってみれば、時間内に出社することは常識であって報酬の対象ではないだろうが、A君本人にとってみれば革命的なことなのだ。だからA君の上司は彼を祝ってやるべきだろう。中小企業なら、みんなの前でA君の快挙を祝おうではないか。遅刻しなかった、ふつうのことができた、だから祝うのだ。すると、もっとできる。
 
2.畳の上の水練
畳の上で水泳の練習をしてもうまくならないというのはウソだ。人は歩かなくても、歩いていることを想像しただけで歩いているに近い肉体反応を起こすことがわかっている。水泳の練習も然り、なのだ。
こうしたイメージトレーニングが有効なのはスポーツ分野だけでなく、いかなることにおいても好ましい行動のイメージをもつことが大切で、素振りしなくてもゴルフはある程度まで上達する。もちろん、練習による筋肉運動が大切なのは言うまでもないが、練習場だけが練習する場所ではないということだ。
 
●鈴木さん(仮称)は、どうしても直したい癖があった。毎晩深酒してしまい、おまけにそのまま朝まで眠ってしまう。夜の読書ができないし、家族とのコミュニケーションもすすまないので、深酒癖をなおしたい鈴木さんにとって、飲酒を制限することは私生活の最重要課題。
 
●そこでGO−NO GO法で報酬を与えることを考えればよい。飲まなかったら次の日のビールのつまみをグレードアップできる、でもよいし、「飲まないポイント」を貯めて家族で夕食にでかけるでも良い。欲望をコントロールすることがストレスを貯め込むことにならないようにすることが肝要なのだろう。
 
●さらには飲む量をコントロールし、読書したり家族と談話している自分の姿をイメージし、頭脳内で予行演習しておけばなお良いだろう。飲む量を制限すればどのような好ましい結果が待っているのかを想像し、それを実行している自分をビジュアライズ(鮮やかに想像)するのだ。
 
●このように脳の仕組みを勉強することで、もっと上手に自分や部下と付き合うことができるようになるだろう。
 
 

2013年05月17日(金)更新

三畏(さんい)

●小学生が、「織田く~ん、おださ~ん、オダちゃ~ん」とさけんでいる。人気俳優・織田裕二への歓声ではなく、なんと織田信長への歓声なのだ。
 
毎年10月22日は京都三大祭のひとつ、「時代祭」の日である。友人にお願いし手に入れておいた指定席に着座した。ちょうど行列ごしの反対側に小学生たちが座っていた。有名な英雄が通るたびに、「西郷(隆盛)さ~ん」とか「しんさく~ぅ(高杉)、こっち見て」などのかけ声が飛ぶ。まるで歌舞伎役者のようだ。
 
●明治維新から始まって江戸時代、安土桃山時代という順に歴史をさかのぼっていく。専門家が時代考証・衣装考証しているという本格的な時代ファッションショー的な色合いもあり、とにかく美しい。当然、外国人観光客も多く、興奮している。
 
●日本史上の有名人がたくさん登場するのだが、意外な大物がこの行列に登場しない。たとえば、信長・秀吉が出るのに徳川家康が出ない。西郷や坂本、桂、高杉が出るのに、大久保利通が出ない、など不思議な点もあるがそこまで詮索するのはよそう。
 
●そんな中、一番人気はやっぱり信長。冒頭にご紹介した小学生のかけ声がひときわ大きくて熱い。ヒーロー、ヒロインは子ども達のあこがれであり、心のなかでメンターであり続けるのだろう。
 
●そうした意味で、私はダウンタウンというお笑いコンビが嫌いだ。というより、彼らが司会する番組の多くに問題があると思っている。
すでに放送は終了したが、「HEY!HEY!HEY!」や「ジャンクスポーツ」などでは、歌謡やスポーツのヒーロー・ヒロインを登場させ、それをこき下ろして遊んでいる。あれでは青少年の情操教育にすこぶる悪い影響を与えると思うのだ。
 
●「スターを身近に感じてもらう」という彼らなりの言い分もあるのだろうが、孔子がこんな言葉を語っているのを番組制作者たちは思い出してほしいものだ。
「君子に三畏(さんい)あり。天命を畏(おそ)れ、大人を畏れ、聖人の言を畏る。小人は天命を知らずして畏れざるなり。大人に狎(な)れ、聖人の言を侮(あなど)る」
 
●その意味はこうだ。「リーダーは、三つのものを畏れる(尊重す)べきである。一つは天命を畏れ、大人(優れた徳のそなわった人)を畏れ、聖人の言葉を畏れる。
その逆に、つまらない人物は、その三つのものを大切にしない。つまり、天命(天から与えられた使命)を知ろうともせず、わがままに振る舞い、尊敬すべき人になれなれしく接し、聖人の言葉を馬鹿にする」
 
●「HEY!HEY!HEY!」などの番組から受ける嫌悪感は、大人に狎れる(なれなれしい)子供を育成しかねない危機感からくるものだ。
私はお笑い番組を否定するものではない。むしろお笑い番組が大好きである。いつでも明るく振る舞うタレントをある面では尊敬もしている。だが、笑いの質と影響を考えねばならない。お笑いタレントとして天命をもち、勉強してほしいと願う。
 
●子供たちの先輩のなかに、ヒーロー・ヒロインを持たせることは、教育上とても大切なことなのである。
 
 

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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