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2013年11月22日(金)更新

D社の貯蓄作戦

●前回の続き。
「会社にお金が貯まらない」のがD社長の悩みだった。自宅で好物の梅酒ロックを片手にそのことを妻に話すと、なんと彼女がとっておきの方法を教えてくれた。時には愚痴ってみるのも悪くないものだ。彼女のアイデアを聞いたとき、「それなら会社でもやれそうだ。最初はちょっと面倒だけどうまく回り出せば楽にお金が貯まるような気がする」とDは思った。

●D社の普通預金や当座預金にはいつも運転資金として必要な資金だけがプールされていて、積み立て預金や定期預金のたぐいはまったくない。20年以上会社をやってきてこんな状況では情けない。どうしたら資金力のある会社になれるだろうかとかねがね思ってきたD。

●奥さんの助言に従って口座管理のあり方を変えることにした。今までは、入金や出金の9割以上はひとつの普通預金口座でまかなってきた。まれにサブの口座や郵便局・ネットバンクを使うときもあるが、それは全体の1割程度だ。

●D社長は入金用口座と出金用口座を分けることにした。毎月3千万程度の売り上げ入金があるが、そちらは今までの普通預金口座「A」に振り込んでもらう。そして、この「A」をマスター口座と位置づけ、資金を蓄えるのもこの「A」が行う。

●次いで、出金(業者への支払い用や経費の支払い)専用口座「B」と、特別支出専用口座「C」の二つを新たに作った。「C」の口座では、社員の賞与や納税資金など不定期ながらも確実に出費することがわかっている性質の資金を貯めておく。そして毎月一回だけ、決めた日にマスター口座から「B」「C」へ資金移動するわけだが、必ずマスター口座にお金が貯まるように資金移動する。仮にマスターに100入金があっても、「B」と「C」には合計して90位しか資金移動しない。あとはそれで何とかやっていくのだ。そうするとマスター口座には常時、入金額の1割程度がプールされていくという考え方だ。

●果たしてこんなシンプルなやり方がうまくいくかどうかはまだ分からないが、彼の奥様の実績があるので心強い。大切なことは目的に向かってまず行動することだ。ところでこのやり方は奥様の特許ものアイデアかと思いきや、参考図書があるというのでさっそく私も読んでみた。

富を築く100万ドルのアイデア

●個人の家計管理についていえば、この本の通りに実行するのは簡単だろう。そして貯まるに違いない。だが企業の資金管理においてどれだけ通用するものかどうかは未知数だが、考え方はものすごく参考になるはずだ。D社の実験の推移をこれからも見守りたい。

2011年10月21日(金)更新

金策日記

●「お金がないということがどういうことなのかピンとこない」と五代目社長のAさん。
彼は生まれてから今まで、一度もお金に困ったことがないそうです。プライベートでも会社経営でもお金に困らないなんて、何とうらやましい。
私の場合、人生の半分はお金に困っていました。ですから、お金に困ったことがない人はいったい何に困るんだろうと思ってしまいます。
 
●親として、お金の苦労を子供にはさせたくないと考える人がいますが私はそれには反対です。お金に苦労させることは決して悪いことではありません。人の痛みや辛さが分かるようになるのです。
 
●あの坂本竜馬も、ずっとお金に困っていたという話を聞いたことがおありでしょうか?暗殺される直前まで、15両(約75万円)の金を友人に無心するほどいつもお金がなかったという記録もあります。
 
●竜馬は姉に宛てた手紙で「男が一年間暮らしていくには、どうしても六十両必要」と書いています。
一両の価値は時代によって変化しますが、幕末はおおむね一両が五万円程度でしょう。
土佐藩から支給される海援隊士の給料が月五両(25万円)なので、それで男は生活費トントンということです。
 
●維新回天の原動力となるほどの働きをした坂本竜馬ですが、ずっとお金には苦労していたとは意外でした。
彼が一声かければ、豪商や諸藩の殿様からいくらでも金が集められたように思えますが、それは幻想のようです。
 
●『龍馬の金策日記』(竹下倫一著、祥伝社新書)という本があります。
脱藩浪士の身分でありながら、いったいどのようにしてあのような東奔西走の志士活動が可能だったのか?特に資金面のことが気になっていた方にはおすすめの本です。
 
これを読むと、大変興味深い事実が幾つか浮かび上がってきます。
 
竜馬がゆく』で司馬遼太郎が描いた竜馬とはまったく別の、現実的な彼の一面が見えてくるのです。
 
いわく、
 
・脱藩時に竜馬が持参していた金は20~30両(100万円~150万円)。
かき集めた金とはいえ、せいぜい半年の生活費です。しかも案の定、脱藩四ヶ月後に竜馬は大坂でかなり生活に困窮していますし、飲まず喰わずの生活をしていた時期もあるようです。
 
・この時代は、刀が財産価値をもつようになっていました。実際、竜馬が持っていた刀も20~30両程度の価値があったとされ、それが質草になっています。彼が刀の柄を売ってしまったという記録も残っています。
 
・脱藩して一年近くたち、江戸で勝海舟に弟子入りしてからようやく生活が安定しましたが、それもつかの間でした。
 
・勝の海軍塾設立費用のうち、竜馬ら3名で50両をネコババした。それが発覚して「貸付金」で処理されましたが、結局返していないようです。
 
・新撰組の元になる「浪士隊」の最初の隊士候補メンバー12名に、竜馬の名前もありました。江戸デビュー当時の竜馬は剣術で名を馳せていただけに、竜馬が新撰組の局長になりうる可能性もあったのです。さすれば、維新はなかった?
 
・何をするにしても、まず概算費用を計算し、その調達方法も考えるという発想法は当時の武士には珍しい。竜馬はそうした発想法を、勝海舟から学んだようです。勝自身も若いころ、師から貴重なオランダ語辞書を借りてきて必死に二冊筆写し、一冊を売って30両得ているしたたかさをもっていました。
 
・今から思えば商売ベタの竜馬。亀山社中創立一年で65億円程度の武器取り引きを成立させているのに、斡旋手数料をまったく取っていません。せめて3%ほども取っていれば、2億円もの自己資金になったのに・・・。結果論ですが、後になって亀山社中は困窮し身売りしています。
 
●いかがでしょう。意外な竜馬の一面がこの本に綴られています。しかし、こんなことで竜馬の魅力が下がるわけではありません。
それどころか、人を魅了してやまない彼の人間力があったからこそ、資金的バックボーンが脆弱でも大業が果たせたのではないでしょうか。
 
 

2010年10月15日(金)更新

リストラと戦略コストを使い分ける

●肥っている人はもちろん、中高年になればほとんどの人がダイエットが必要だそうです。新陳代謝が不活発になるからでしょう。
それと似て、企業だって10年以上たてば常時リストラが必要です。経費の使い方を見直し、経費率を下げる取り組みをしないと自然に経費が増大していく宿命にあるのが会社というもの。

●一円でも無駄な経費は削減していきましょう。それは、経理部門に任せるのではなく、経費削減担当役員をおいてリーダーシップを発揮してもらいましょう。当然、その役員は兼任でも構いませんが、現場ににらみを利かせられる立場の人がよいでしょう。

●それと同時に、将来の売上げを増加させるための経費は「投資」と考えて、削減すべき経費とは別枠で管理したいもの。そうした費用をここでは「戦略コスト」とよびますが、あなたの会社にとっての「戦略コスト」とは何の費用でしょうか。

●知人のある会社は、日本全国を販売エリアとしています。しかし、営業マンは驚くほど少なく、日本中を役員3名だけで回っていた時期もあります。
それでも年商10億、粗利益9億、社員数40名、労働生産性2,000万超という結果を出していたから立派なものです。
この会社の当時の「戦略コスト」は「旅費交通費」でした。毎月コンスタントに300万円ほど使っていたのです。つまり、毎月300万円の交通費をかけて7500万円の月間粗利益を稼いでいたわけですから、25倍の利回りです。抜群の投資効果といえそうです。

●はじめてこの金額を聞いたとき、私はビックリしました。何たる自由奔放な経費の使い方。しかし、この社長は「戦略コスト」という言葉こそ使わないものの、「交通費は投資である」という考えをお持ちだったのです。
私も真似して月間100万円以上の交通費を使ってみましたが、25倍の2500万円も粗利益が稼げそうもなかったので、あわてて減らしたことがあります。

●「教育費」が戦略コストの会社もあります。また、「通信費」(電話・FAX代、切手代など)が営業成果に正比例するという会社もありますし、「家賃が戦略コストだ」という会社もあります。

●投資であるかぎりは、見返りを明確にしましょう。

たとえば、新しいオフィスに毎月50万円の家賃を支払うのであれば、その5倍から10倍の粗利益増加が見込めれば良いのですが、家賃倒れになるのであれば、投資から撤退すべきです。
そうしたコスト意識と投資利回りの観点から、無駄を排除し、ジリ貧にならない新しい機会創造も行っていくべきなのです。

2006年08月07日(月)更新

利益とは何か

●お客様にゴリヤクを提供し、社員の物心両面の幸せを実現しようという経営者にとって、大切なものは「利益」である

●なぜなら、お客様に対してより良いゴリヤクを提供していくためには、社員を教育してサービス水準を高めたり、新たな設備投資をしたりする必要がある。その原資は資金であり、資金調達のための大きな呼び水が「利益」なのだ。

●また、従業員の幸せを心から願う以上、一生の職場たるにふさわしい雇用条件や待遇の実現など、働きがいと誇りがもてる環境を作っていく必要がある。その原資もやっぱり「利益」なのだ。

●では、「利益とはいったい何なのだろう」か。たまには、まじめに考えてみたい。

●まず、私の考えを述べてみたい。

 1.利益とは、会社全体の社会に対するお役立ちの結果であり、お客様や市場がくれた通信簿である
 2.利益とは、単なる儲けではなく、お客様や従業員に対して今以上に喜んでいただくための唯一の資金源である
 3.利益を内部留保していくことによって、会社には安全性と柔軟性が増し、社員には新たな仕事の機会がもたらされることになる

 つまり、利益とは最終的な儲けの金額を指すのではなく、会社の存続と従業員の豊かな人生を実現するための「必要経費」なのである。

●これが模範解答という意味ではない。ご自分なりの回答で構わない。いずれにせよ、こうした利益観をじっくりと従業員に教え、対話をして理解を深めることが重要である。

●ある会社の営業部長某氏が、営業会議でこんな発言をしているのを聞いたことがある。

「先月までの上半期で利益目標は未達成ですし、前年の半分しか利益は出ていません。しかしながら、いまだに半期で1,000万円の儲けがあるわけですから、あわてる必要はないかと思います」

 私は唖然とした。残念だがこの部長氏、利益に対する理解が不十分だ。利益の半分が税金に取られ、その残りから借金返済の元金や株主への配当、役員賞与を払い、その残りだけが会社に蓄積されるという事実を知らないのだろうか。1,000万円の「儲け」では銀行返済さえままならない可能性だってあるのだ。

●もう一度申し上げる。「利益がなぜ、いくら必要なのか」「利益目標の達成がどれだけ大切なことなのか」、社員に対して真剣に教え込んであげてほしい。あなた自身の言葉で

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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