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2006年11月17日(金)更新

中小企業にとっての「戦略」とは

●毎年3月と9月は決算の会社が多く、おのずとこの時期には「経営計画発表会」が多くなります。私も縁のある会社の発表会に招かれることが多いのですが、こうした発表会を毎年行う会社は、その9割が黒字です。これも計画経営の成果でしょうか。

●しかし、最近の傾向から気になることもいくつかあります。

●数年前までは、どの会社にも中長期構想があり、そのなかに今期の単年度計画がありました。しかし、最近では単年度計画しか作れない、作らない会社が目立ちます。私見ですが、これでは「先行きがわからない」「夢が感じられない」などの印象を社員に与えているように思えるのです。

●「戦略なき国家は滅びる」といわれますが、企業も同じです。

●「戦略」という言葉は本来が軍事用語です。戦略とは、敵が存在し、その敵に対してどのように戦うかを考えるおおもとの作戦のことを意味します。したがって、逃げることも戦略、籠城作戦で日数をかせぐことも戦略、野戦で真っ向勝負することも戦略、奇襲作戦も和議などの外交交渉も、みな「戦略」です。

●敵に対する接し方は多数あるものの、相手の出方に応じて臨機応変に戦略を組み立てるのが大将の役割なのです。

●孫子の有名な言葉に、
彼を知り己を知らば、百戦殆うからず、彼を知らず己を知らば、一勝一負す。彼も知らず己も知らざれば戦う毎に必ず殆うし
 というのがあります。私は中小企業にとっての戦略を考えるとき、この言葉にすべてが集約されているように思います。
●敵情を知り、わが力をも知る場合は、戦いに敗れることはない。つまり、敵情とは、経済全体の流れや市場のニーズ、業界の動向、ライバル企業の動きのこと。そうした外部与件を経営陣全体で共有しておくことです。

●こうした情報のほとんどは、新聞などから入手できます。その都度切り抜いておけば充分なデータベースになります。

●とくに、ライバル企業の経営状況や商品戦略に関する情報は、意識して入手する必要があります。よく観察していくと、同業他社の売れている商品とそうでない商品がわかってくる。売れている商品は長く売られている商品であり、売れない商品はすぐに消えてしまう。さらに、組織図などを入手できれば、ライバル企業が経営上で打つ手も見えてくるのです。

●己を知るとは、内部与件のことです。人・物・金の状態がどのような競争力をもっているのかを再確認し、経営陣全体で認識を共有することです。具体的には、以下のポイントを押さえることです。
「人」のポイントとは、社員の士気や能力をいかに高めるかということ。
「物」のポイントとは、競争力ある商品やサービスをいかに作るかということ。
「金」のポイントとは、必要な資金をいかに調達するかということ。

●戦略や方針があいまいな会社には、このような視点が欠けています。経営方針を作る際には、いったん当事者であることを忘れて、軍師であるかのように今の会社の長短得失を洗い出し、企業の内部外部の与件も洗い出してみるべきです。

●そうした中から活路を見出し、成長の絵を描くのが経営者の大切な役割なのです。