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2007年06月01日(金)更新

仕事はすべてが「顧客へのサービス業」である

成功している営業マンと冴えない営業マンとでは、意識も行動も違います。以前、印刷会社に合い見積もりを依頼した際に出会った二人の営業マンを例にあげながら、そのことを考えていきましょう。

●最初にやって来たのは冴えない雰囲気のB君です。彼は、事前に依頼しておいた条件に沿った見積書を持ってきました。価格は想像よりちょっと高かったのですが、おおむね内容を理解できたので20分ほどで打ち合わせは終わりました。

●次にやってきたのがA君です。見積書を提示しながら説明するところまでは、B君と同じです。ところがそこから先が大きく違いました。的を射た質問を連発して私の業務の内容や今後の構想、現状で困っていることなどを実にうまく聞き出すのです。

●こうしてA君は、その日の見積り案件以外に、いくつかの課題を私から持ち帰ることに成功しました。印刷が必要になる他の案件を抱えていた私にとっても、一度に複数の用件が済んで助かったのです。

●私が伝えた案件の処理だけで終わったB君に比べ、A君は、一歩進んで顧客を理解しようとしました。仕事の案件に興味があるのか、顧客に興味があるのか、興味の持ち方によって仕事ぶりは大きく変わります。目の前の受注を取りたいという気持ちも大切ですが、お客様のために役立ちたいという気持ちはもっと大切なのです
●先日、設計事務所を訪問したときにも同じような出来事がありました。この会社は最近、大手ゼネコン出身者を営業部長として採用したばかりです。彼は入社早々、顧客からある不動産物件について問い合わせを受け、その土地を所有する大手運輸会社を訪問しました。

●普通の営業マンならその物件だけを話題に交渉して結果を持ち帰るはずです。ところが、彼はそうしませんでした。その大手運輸会社が保有するすべての遊休土地リストを入手して持ち帰ってきたのです。もちろん、日本中のリストです。

営業マンには、発注者と受注者、買い手と売り手という立場を超越したものの考え方を教えましょう。自社の製品やサービスをお客様に売ることが営業マンの仕事ではありません。“お客様の問題解決や潜在的な願望の実現のために自社がある”ということを、営業マンに叩き込むのです。言い換えれば、こういうことです。

「ビジネスはフィフティ・フィフティだ」
「ビジネスはギブ&テイクだ」

●冒頭のB君は、いまも見込み客を探して日夜奔走しているに違いありません。かたやA君は、顧客と太いパイプをもち、信頼関係を結ぶことで充実した仕事をしていることでしょう。

●印刷とは、顧客の望みを実現させるための一つの手段に過ぎません。にもかかわらず営業マンの意識と行動によって、これだけの差が生まれるのです。製造業も建設業もサービス業も飲食業も、およそ事業と呼ばれるものすべてが「顧客へのサービス業」だということを、決して忘れてはなりません。