大きくする 標準 小さくする

2008年11月14日(金)更新

昔? 今を見てくれ

●それぞれ別の場でですが、60代の経営者2人からこのような忠告を受けたことがあります。

「武沢さん、人間も50歳を超えるともう若くない。だから肉体トレーニングなどほどほどにして、体調を整える程度の運動にしておいたほうが身のためだよ」

「武沢さん、最近の理論では筋肉を鍛えるのに年は関係ないそうだ。いくつになっても鍛えたら丈夫になるのが人間の肉体らしいから、守りに入らずどんどん鍛えなさいよ。私もトレーニングジムに通って鍛えているけど、胸囲が2センチ厚くなった」

まったく正反対の忠告であり、どちらの考えも理解できるのですが、私は後者の方が気に入っています。

●日本人の平均寿命は80歳とか85歳だそうです。その中間地点にあたる40歳前後は、人生の折り返し地点にあたり、それ以降は後半戦という考え方もありますが、私はそのような考え方はあまり好きになれません

●野球の試合にたとえて1イニング=10年と見ると、54歳の私は5回表を戦っている状態に相当します。そして野球が一番盛り上がるのは7回から9回にかけて。この理屈でいうと、私の人生も70歳から90歳が一番おもしろくなるのでしょう。そう考えると、若い頃の思い出にふけりながら後半の人生を生きるのは、私の性に合いません。
●“昔の名前で出ています”ではないですが、昔のヒット曲を後生大事にし、今でも歌っている歌手がいる一方で、デビュー当時のヒット曲は一切歌わない歌手もいます。

●ローリングストーンズのミック・ジャガー(65歳)は、ある日「サティスファクション? 俺たちゃ、あんな古い曲を歌うために活動してるんじゃねぇよ」と言い放ち、今後この大ヒット曲を歌わないと誓ったそうです。と言いつつも最近歌っていましたが、あれは懐メロとして歌ったのではなく、今の時代へのメッセージをこめて歌ったものなのだと私は解釈しています。

●他の例も見てみましょう。年を感じさせない日本人歌手の代表格である桑田佳祐(52歳)が、「あんな60歳いるかい?」と評したポール・マッカートニー(66歳)。日本の音楽教科書にも載るほど世界中から受け入れられ、富と名声を集め尽くしたポールが、今なおミュージシャンとしてみずみずしいのはなぜでしょうか? たしかに、ミックもポールも外見上は老いました。しかし、そのあくなき挑戦者魂と全身から発散するオーラは、実際の年齢を超越しています

●同様に、桑田が「すごい好きだった」と語っているエリック・クラプトンは63歳。日本人の高年齢歌手でも、矢沢永吉(59歳)や井上陽水(60歳)などがおり、陽水なんかはこのように語っています。
「20代のころの自分のレコードをときどき聞くけど、自分では今の声のほうが断然気に入っている」

音楽に限らず、大切なことは個人であれ企業であれ、「昔より今のほうがすごいぜ」と胸を張って言えるような状況を作っていくことではないでしょうか。だから私も、高校生の息子を誘ってトレーニングジムに通うのです。