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2008年04月11日(金)更新

もう一度思い切り仕事がしてみたい

●「ワークライフバランス」という言葉が流行っています。仕事とプライベートを調和させることが大切だ、ということなのですが、言われなくても当たり前の話だと思います。仕事に没頭するだけではなく、生活とのバランスが大切であるという意味の「ワークライフバランス」ですが、仕事の中身や質が充実していなければ、そのバランスは成立しないのではないでしょうか。

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「もう一度思い切り仕事がしてみたい」
病床で井植は弟に向かってつぶやいた。でも井植には、女性に喜ばれる仕事ができたという充実感があった。
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●上に紹介したのは、NHK「プロジェクトX 家電元年・最強営業マン立つ」でのラストシーンで主人公が語ったセリフです。洗濯機の開発に命を懸けた男・井植が、余命いくばくもない状況に追い込まれ、病院のベッドから外を眺めて言ったのが、「もう一度思い切り仕事がしてみたい」という言葉だったのです。
●「もっと仕事がしたかった」と言える人生ってなんて素晴らしいのでしょう。仕事の時間がそれだけ光り輝いていた証明ではないでしょうか。

●以前目にした、「ソニーの重役は他社とどこが違うか」を分析した記事を紹介しましょう。株主総会で開示された主要企業5社の役員報酬を比較した「ソニーの重役 大研究」という特集で、「週刊現代」2002/7/20号に掲載されたものです。少し古い数字になりますが、役員一人当たりの平均年収データを引用します。

・新日本製鉄     2,883万円(役員数 41人)
・三井住友銀行   2,826万円( 〃   23人)
・東芝         2,456万円( 〃   16人)
・大同生命保険   1,872万円( 〃   22人)
・ソニー        8,307万円( 〃   13人)

●ソニーの役員は少数精鋭で報酬が高くなっていることがわかります。重役出勤が許されない激務のようですが、「週刊現代」の記事は、「ソニーのような“ハッピーワーカーホリック”で大金を勝ち取るなら非難されるいわれはない。めざせ、サラリーマンの夢」と結んでありました。

ささやかな幸せには目をつむり、気力・体力・知力のすべてに全力投入を要求されるようなタフな仕事こそが面白い。一生を通してそんな仕事をし続けることはできないかも知れませんが、そうした時間がどれだけあったかが勝負です。しかもその仕事は、他人が運んできてくれるわけではありません。自ら作り出すものでなければならないのです。

●洗濯機の開発に命を懸けた三洋電機の井植のように、私たちはいま思い切り仕事をしているか、と自問してみたいものです。