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2010年01月22日(金)更新

間違った二者択一

●マジック(手品)が、私の周辺でちょっとしたブームになっています。先日も、自宅で息子がトランプを使ったマジックを披露してくれました。

「さあ、お父さん。ハートのエースは左右どっち?」
「そりゃ、右でしょ」
「残念、右はダイヤの7でした」
「あれ? いつの間に。じゃあ、左かい」
「これまた残念、左でもないよ」
「えっ、左右どちらでもないの?」

このマジックでは「左右どっち?」と聞かれましたが、正解はいずれでもありませんでした。

●経営においても、「どちらにしたらよいか」などと二者択一を迫られる場面があります。そのとき、二択とも間違いであれば、当然、どちらを選んでも不正解になります。例えば、「進むべきか引き返すべきか」という選択がいずれも間違いであり、「立ち止まって様子を見る」ことが正しいという場合です。

●最近、愛知県のあるメーカーの経営者とお話ししました。多くの同業者が中国に進出するなか、ここの会社は断固として日本に留まる戦略をとっています。そこで、理由を聞いたところ、意外な答えがかえってきました。
●実はこの会社、20年以上も前に中国の地方都市に合弁会社を作り、現地パートナーと共同で事業を立ち上げたことがあるそうです。20年以上も前とはものすごい「先見の明」ですが、当時は中国の民主化が日本でもてはやされ、なかでも、上海の浦東地区の変貌ぶりは連日のように紹介されていました。「第一次中国投資ブーム」といってもよかったかもしれません。

●しかし、その合弁会社は数年で破綻。多大な損失を被った結果、中国から撤退することになりました。その余波で、儲かっていた国内事業にもしばらく悪影響が及びました。

●このことを受け、当時の経営会議で決まった結論が、次の二つだったそうです。

 ・今後、わが社は二度と合弁事業をやらない
 ・今後、わが社は外国への進出は一切考えない

●その話を聞いたとき、私は言葉がでませんでした。

「前回の中国進出は○だったか、×だったか」というならば、言うまでも無く×でしょう。だからといって、「今後、私たちの外国進出は○か×か」について、その時点で結論を固定してしまうのは、間違った二者択一ではないでしょうか。万物流転、諸行無常の世にあって、「今後二度と・・・」という結論を後世に残すことは、大きな誤りだと思うのです

二者択一の場面に遭遇したら、その二択は正しいかどうか、よく吟味しましょう

仕事から帰った亭主に対し、妻が「先にご飯にする、それともお風呂にする?」と質問して二択を迫るのも、実はトリックかもしれませんよ。