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2010年07月02日(金)更新

酒を飲むのも仕事

●サッカー日本代表の活躍で、支持率がV字回復した岡田武史監督。思いきった選手起用と自分達はやっぱり弱いんだという前提で泥臭い戦い方をしたのが功を奏しているようです。
この原稿を書いている段階ではまだ決勝トーナメント初戦(パラグアイ戦)が始まっていないので先行き不透明ですが、どこかの段階で祝勝会かご苦労さん会をやるでしょう。そんな時の酒は本当に美味いだろうと思います。これぞ勝利の美酒というもの。

●昔、戦国時代のある名将は戦に大勝し、部下に酒を振る舞おうとしましたが酒が足りなかった。そこで、酒を川に投じてみなでそれを汲んで飲んだといいます。川水で酔うわけがありませんが、名将の思いやりに部下は酔いしれたことでしょう。

●「福」を分かち合うということを「分福」といいます。一方、「福」を将来のために取っておくことを「惜福」といいます。
うまい酒はみんなで分かち合って飲もう!というのが「分福」で、うまい酒は一晩で飲まず、毎晩一人でチビチビやろうというのが「惜福」なのです。どちらも大切ですが、リーダーにふさわしいのは「分福」の方でしょう。

●私は仕事で各地を回りますが、旅先ではかならず現地の人と酒を酌み交わします。誘われることが多いのですが、時にはこちらから誘います。地酒や地の魚がうまい名店へ行くこともあれば、みなでワイワイと大衆酒場へ繰り出すこともあります。

●酒場ではお互いがもっている愉快な話題やおもしろい経験、アイデアなどを「分福」するのが目的で、司会者が話題を仕切って飲む酒はうまくありません。ゆったりと自然に話題が移ろっていき、面白おかしく談笑しながら料理と酒に舌鼓を打つような飲み会が好きです。

●ある時、私の講演を聞いた受講者からこんなメールを受け取ったことがあります。学生や子供じゃないのだから、もっと主体的に飲みなさいと返答申し上げたのですが、あなたはどのようにお考えでしょうか。

「武沢さん、先日の講演をお聞きした○○と申します。講演の内容はとても素晴らしく、参考になりました。二次会でももっと素の武沢さんのお話が聞けると思っていましたら、ほとんど皆さんとの雑談ばっかりで、私には時間がもったいなく感じられました。ご講演の内容を掘り下げるようなお話をして下さるか、逆に我々にむかってなにか質問して下さるような時間があれば良かったのにと、少々残念な思いでした。」

●酒場で仕事の話がガンガンできる人もいます。適度に酒を飲んで魂と魂のぶつかり合いをやろうという考えです。
たとえば、京セラの稲盛和夫名誉会長は「お酒を飲みながらコンパを命がけで行う事が大切」と説いています。経営にはフィロソフィーの共有化が大切であり、そのためにはコンパが一番だというのです。
私は酒を飲むとまじめな話をするのが苦手になるので稲盛さんのマネはできませんが、京セラ流コンパのやり方を知っておくことは経営者のためになると思うのでご紹介します。

・広い畳敷きの部屋を貸し切る(または作る)
・車座の中心人物もしくは司会者が一人一人を指して発言を求め、本音で議論を戦わせていく。
・上司が部下の酒をつぐ(なるべく部下に不要な気を使わせない)
・酒を飲むし、切らさない。だが、飲めない人には強要しない
・だいたいの終了時刻を決めておき、お開きのときには一人ひとこと決意表明する
・中座しない、させない(携帯電話禁止)
・テーマを明確にし、真剣な議論をする
・ジョークは必要だが、脱線話は許さない

●酒を「分福」の場にするか、それとも魂のぶつけ合いにするか。
「TPOによって酒の飲み方を使い分けられる人間になろうではないか」というのが面白みに欠ける今日の私の結論ですが、私はあなたの酒席の哲学をお聞きしてみたいと思っています。ご意見お寄せください。