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2006年06月08日(木)更新

中国の経営者(その1)

●今から10年ほど前の中国での話です。経営コンサルタントとして私は、顧問先のA社長の商談に同行するため、初めて中国を訪れました。連日、過密なスケジュールをこなし、最終日前夜の食事会のことです。この夜は、A社長と比較的親しくしている取引先企業の経営者ばかりを10人ほどを招いての会食で、出席者はもちろん全員が中国人です。

●自己紹介で私は若干、社交辞令もまじえてこうあいさつしました。
「私は日本で経営コンサルタントをやっています。子供のころから三国志や水滸伝を読んできて、中国には特別な思い入れがありますし、なにより中華料理がおいしい。そこで、将来は中国でもコンサルティング活動ができれば良いなぁと思っています。どうぞよろしく!」

●すると彼らがザワザワと何やら隣同士で囁きあうではありませんか。てっきり、私のスピーチの評判が良かったのだろうと思って通訳の顔をみると、彼の顔が曇っているのです。
「あのぉ、彼らは何を話しているのですか?」
 と私が尋ねると、通訳は言いづらそうな表情でこう言いました。

●「日本の経営コンサルタントが自分たちに何を教えてくれようとしているのだろう?むしろ自分たちの方が、このセンセイに中国でのビジネスのやり方とか儲け方を教えてあげるのが筋じゃないのかい
 などと私の悪口を言っているというのです。私は一気に興ざめしました。その後、会食で何を飲んだか、何を食べたか、まったく覚えていません。そして、内心で固く誓いました。
こんな国、二度と来るものか!」




●それから7年ほど経過した2003年のこと。ある日突然、中国人経営者から日本語でメールが届きました。彼は私のメールマガジンの読者で、青島(チンタオ)で貿易会社を経営しているといいます。そんな彼が、私に講演の打診をしてきたのです。理由を尋ねると、「がんばれ社長!」メルマガのおかげで彼の会社がグングン成長しており、青島の経営者仲間を集めるので2時間ほど講演を頼みたいということでした。

●私の心は動きました。なにしろ、美しいと評判がある青島へはいつか行ってみたいと思っていたからです。しかし、そのメールを無視しました。
「こんな国、二度と来るものか」
 と誓ったあの日のことを思い出してしまったからです。
しかし彼は熱心でした。一度や二度の無視ではめげません。さすが有名な「三顧の礼」の国だと感心もしました。

●半年後、私は青島で講演していたのです。数十名の中国人経営社長者が集まり、彼の逐次通訳によって私のメッセージを彼らに伝えたのです。
もし以前のように、
「日本のコンサルタントが我々に何を教えてくれるというの?」
 という態度の経営者がいたら、即刻ホテルに戻るつもりでいました。

●でも彼らの聞く姿勢は、以前のそうした経営者とは全然違っていました。私が変わったのか、それとも彼らが変わったのか? とにもかくにも講演が終わりました。私が、
「質問や意見はありませんか?」
 と聴衆に水を向けると、なんと半分くらいの人が挙手しました
。少々ドキドキし
ながら彼らの質問を聞きました。私は彼らから発せられたその質問内容に驚かされることになるのです。

<続きは次号で>