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2007年02月05日(月)更新

複数の報酬制度

●最後の最後までギリギリの交渉をした結果、松坂大輔投手のレッドソックス入りが決定しました。「実力が未知数なのだから、まずは早く契約して、あとは実力でお金を稼げばよいのに」とか「代理人がお金に細かすぎる」などの陰口が聞かれましたが、私は「これぞプロ同士の仕事」と感心しながら事の成りゆきをみていました。

●球団側と選手側、お互いが納得いく条件で合意しようと最後の最後まで調整をはかるような場面は、企業でも必要ではないかと思うのです。

●すでに一部の企業では、会社と社員が話し合って待遇を決めるケースも出ています。全社員画一の賃金制度ではなく、個別に話し合う「臨機応変」な対応をしているケースが増えているのです。

●アメリカのジョンソン&ジョンソンは、ヘルスケア企業として国際市場で事業を展開しています。かつてこの会社は、内視鏡手術の分野ではライバルに大きく立ち後れていました。そこで、ある有能な経営幹部にこの難しいミッションを依頼。彼は、「5年間で業界トップにしてみせます」と答えたといいます。そして、報酬制度についても話し合いました。

●会社側は当初、年度ごとの数値目標を決めて、達成した場合にはチームにボーナスを支払う方式を提案したそうです。反面、達成できない場合には、今まで受け取っていたボーナスがもらえなくなります。せっかく難しい仕事にチャレンジしようというのに、下手をしたら待遇が悪化しかねない。賃金交渉は難航しましたが、結局、今までの固定給を上回る条件で努力してもらうことにしたそうです。
●最初の2~3年間はお先真っ暗な状況だったといいます。もし、会社が提示した最初の条件のままだったら、彼のチーム全員が待遇悪化に苦しんだことでしょう。そんな状況では、今後、誰も火中の栗を拾うようなチャレンジをしなくなったに違いありません。

●結果的に、この内視鏡チームは、4年目にして業界首位の座を獲得したのです。

●大企業といえども賃金制度は一本ではありません。複数の報酬システムを使い分けているというか、無数の報酬システムが社内にある、と言った方がイメージしやすいかもしれません。大企業がこうした柔軟な対応をしてくる時代ですから、中小零細企業ではさらに小回りの効いた柔軟なシステムが要求されるでしょう。

●あなたの会社は、松坂大輔クラスの優秀な社員を十分満足させるような報奨制度を用意しているでしょうか。意欲的な社員の冒険や挑戦を後押しするような制度になっているでしょうか。再点検してみましょう。