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2009年10月16日(金)更新

腕が良い、とは

●「私は特別な人間だ。特別にカッコ良いし、特別に長生きしそうだし、特別な金持ちになりそうだし、歴史に名を残すような特別な何かをなし遂げる人間」だ、とひそかに思っている人がいるかもしれません。それどころか、真剣にそう思っている人もいることでしょう。

社長やリーダーの役目としては、そう思うことが正しいし、みながそう思うように応援してあげることが大事です。

●一方で、「言うだけならタダだとわかっていても、嘘つきになりたくないから軽率なことは言わない」という考えもあると思います。しかし、社長は正確なことを話すだけでなく、いつも明るい未来を語れる人間でなければなりません

●わかりやすくするために、たとえ話をしましょう。医者が頭痛で訪れた患者を診察し、薬を渡すという場面を思い浮かべてください。そのとき、医者Aは必ず「このクスリを飲めば、あなたは必ず良くなります」と言うようにしていました。

●一方、医者Bは、ものすごく几帳面なタイプで、「このクスリがあなたに効く可能性は、データに基づくかぎり60%です。また、副作用が出てしまう危険性も20%ほどあります」と言っていました。
●患者を前にした医師として、どちらが腕が良いのでしょうか。あなたならどちらの医師の病院に行きたいですか? 時と場合にもよりますが、頭痛程度ならば「私はAのほうにかかりたい」と思う人が多いのではないでしょうか。正確な診察という点ではBかもしれませんが、おそらく多くの患者を直してみせるのはAのほうだと、私は思うのです。

●“正確さ”と“腕の良さ”は一緒ではありません。一番よいのは、“正確さを背景にした腕の良さ”であり、顧客に勇気と確信を与えられる実力・実績を持ち、そして言葉を巧みに駆使することです

●「あなたは出来る」、「あなたは治る」、「あなたは良くなる」と言えるリーダーになりましょう。そもそも、夢やビジョンといった将来のことから今月の売上にいたるまで、未来のことはすべて不確かなものなのです。

●腕の良い経営コンサルタントは、赤字だらけのクライアント社長の前でこう断言します。
「社長、僕の言う通りにやって下さい。必ず儲かるようになりますから」
「本当かい?」
「信じてください。御社の未来を」
「わかった、信じよう」

そう言う社長の目に輝きが生まれます。それは、コンサルタントを信頼したのではなく、自分と自社の未来を信頼できた瞬間なのです

こうした言葉の威力と魔力を最も必要としているのは、自分自身です。自分の中の自分、つまり潜在意識に向かって、力強く明るい未来を断言してあげましょう。「私がうまくいく可能性は57%」などと正確に表現しようとするよりは、「私の前にもはや不可能の文字はない」と断言する社長のほうが“腕が良い”のです。