大きくする 標準 小さくする
前ページ 次ページ

2007年10月01日(月)更新

而今と全気全念

●友人にすすめられてから、定期的に寺へ行き坐禅を組むにようにしています。
あるとき、禅僧から而今(にこん)という言葉を聞きました。
今、この瞬間、そして、今ここ」という意味だそうです。

●私たちは今しか生きられませんし、ここしか生きられません。インターネットは時空を超えますが、生活はあくまで「而今」なのです。さっそくこの禅僧に「而今」という文字を揮毫していただき、部屋に飾って今後のモットーにして行こうと決意した次第。

●「而今」といえば、それに似た言葉が幸田露伴の『努力論』のなかに出てきます。それは、「全気全念」という言葉で、いまこの瞬間にすべての気を集中して、やるべきことに全力で取り組むことだそうです。

●もし、豊臣秀吉が信長の草履取りをしていたとき、「つまらない仕事だなぁ」「もっと重要な仕事をまかせてもらえないかな」などと思っていたら天下人にはなれなかったでしょう。まさしく、「全気全念」で草履を温めたからこそ信長に認められたし、「全気全念」で生涯を貫いたから天下人にまで登りつめたのでしょう。

●些細なことだからと軽んじている仕事があると、その些細なことに私たちの気がそがれます。私が真剣にやるべき仕事はもっと他にある、という思いがあると、「全気全念」にはならないのです。

社内で一番「全気全念」で仕事ができる人、それが社長です

●「而今」と「全気全念」、覚えておきましょう!

2007年09月14日(金)更新

目標リストの更新

●できる上司は、部下を混乱させないような頼み方をするものです。

●「これ急いでコピーを。でもその前に、これを宅急便で送ってきて。あ、それとコーヒーを一杯よろしく」などと無茶苦茶な頼み方をしていたら、「いい加減にしろ!」と、結局何もやってくれないでしょう。

●目標の発表だって同じです。一度にたくさんの目標を掲げて部下や組織を混乱させてはいけません

●「今期の目標は、あの数字とこの数字の達成。それから、新規事業を一刻も早く軌道に乗せることと、この問題の解決。あとは、この分野への着手に備えて布石を打って・・・」と長々と目標を聞かされたら、社員が混乱するだけでなく、肝心の自分自身が混乱しかねません。
●そこで、自分に対して定期的に、『Is this still valued?』(この目標はまだ本気?)という問いかけをしてみましょう。つまり、本当に価値があって新鮮な目標だけが、「目標リスト」に残されているようにするのです。逆に、まだ諦めてはいないが、実質的には達成にこだわっていない目標は、「ペンディングリスト」に回すのです。また、いつかはやりたいけど、今の段階では考える必要のないものも「ペンディングリスト」に入れておきましょう。

「目標リスト」は今の瞬間、フレッシュなものばかりでなければなりません

●決めた目標を、どこまで徹底してやりきるかどうかが企業体質を決めます。達成していない目標や着手すらしていない目標がたくさんあるのに、その上に新しいのが加わったりすると、文字どおり玉石混淆の「目標リスト」になってしまいます。そのままでは「悪貨は良貨を駆逐する」の言葉どおり、どうでもいいことが重要な目標を駆逐しかねません。

●『Is this still valued?』(これ本気?)というような目標に対し、「さあね」という答えが返ってくるような社風は払拭しなければなりません。『Is this still valued?』という問いに対して、『Yes!』と全員が声を揃えて返事してくれる会社にするのです。

●そのためには、「目標リスト」が常に新鮮で、整理されている必要があります。目標を毎月リフレッシュさせること、これが企業体質を決めるツボなのです

2007年07月13日(金)更新

禁止・抑制・義務

●先日、私のメタボを見かねた友人が、『BOOCSダイエット』という本を贈ってくれました。その中には従来のダイエット法とは違って、大脳に直接アプローチして脳を癒すことで肥満を解消する、といった内容が書いてありました。その根底にある2つの原理と3つのルールがなかなかユニークなので、ご紹介しましょう。

○2つの原理
・自分の嫌いなことをしない(禁止・禁止の原則)
・自分にとって快いことをする(快の原則)

○3つのルール
・たとえ健康によいことであっても、嫌いなことは決してしない
・たとえ健康によくないことでも、好きでたまらない場合は、とりあえず禁止しない
・自分にとって快く、かつ健康によいことをする

●さらに本文には、
「これを踏まえて1日に1食は好きなものを好きなだけ食べてもOKです。我慢して苦しい思いをせずに、食べる楽しさや食事のおいしさを満喫しながら、ダイエットによるストレスを減らし、自然とやせるカラダを手に入れましょう」とありました。

●意志の力よりも数倍強い、本能の力を味方に引き入れることで、ダイエットしようという作戦なのですが、これらの原理・ルールは、経営や人生に積極的に応用するべきでしょう。
●私たちは失敗しないために努力するのではなく、成功するために努力するのです。「○○したい」という内的な欲求があるからこそがんばれるのであって、決して「××したくない」という恐怖感や外的要求に屈してがんばるのではありません。

●先日、『2007年版新規開業白書』を見ていたら、すこし気になるデータがありました。「開業にふみきった直接のきっかけは?」という問いに対する回答内容だったのですが、そのなかで第一位の理由(20.4%)は、「勤務先に不満・不安があったから」というものでした。

●「○○したい」という積極的な理由ではなく、「このままでは不満や不安があるから」という消極的な理由で開業する人がトップであるということに対し、懸念せざるを得ません。

●もしかすると、背景には団塊の世代をはじめとする中高年が、一気に定年をむかえるという事情があるのかもしれません。ですが、「年金だけでは足りないから、やむなく開業した」というネガティブな理由では、開業してもうまくいきません。「○○したいから開業した」というポジティブな方向に自らを変えていく必要があります。

●経営者も同じです。事業計画書や経営方針書を毎年作るのは、「○○したい」という目的や目標を、いつも最新の状態に保つためです。冒頭のダイエットの原理と同じく、あなたの本能の力を味方にするような、モチベーション管理を行う必要があるでしょう。

●BOOCSダイエットの本には、「××したくない」「△△せねばならない」という禁止や抑制、義務感がたくさんある毎日を送っていると、「脳疲労」という現象を起こす、とありました。大切なのは、自分に厳しいだけではなく、時には脳に優しくしてあげることなのです。

2007年06月25日(月)更新

黄金の日々の始まり

●講演後に催された懇親会の席上で、ある初老の紳士からこんな話を聞きました。

「武沢さんはメルマガやブログで活躍されていますが、私は住宅業界だけで生きてきました。本当は住宅関係の記事を書く、プロのブロガーになりたいと思っているのですが、自分の経験や知識だけでは足りなくて、他人様に認めてもらえるようなものは書けそうもない」

●彼はどうみてもまだ60歳手前。前途洋々たるビジネスマンなのに、「できそうもない」と言うとは、なんて消極的なのだろうと思いました。

●もしかすると、他人の凄いブログやメルマガを見て、気後れしておられるのかもしれません。確かにすごいブロガーって言われている人はたくさんいますが、最初はみなさん見よう見まねのヨチヨチ歩きだったと思います。

●ところで、一生涯の持ち時間は約70万時間あるといわれています。その計算根拠は平均寿命が80年として、24時間×365日×80年=70万800時間というわけです。その中から仕事に割ける時間は、わずか10万時間。総持ち時間の7分の1しか私たちは仕事をしないのです。
●たとえば、上場企業のサラリーマンだったら、年間労働時間数2,200時間×定年までの40年間勤務として8.8万時間となります。中小企業で働く社員でしたら、もう少し多くなって年間3,000時間労働×40年勤務で12万時間。どちらにしたって、8.8万~12万時間という範囲内でしか仕事をしないのです。

●10万時間と一口に言っても、あまりに大きい単位なのでピンと来ないかもしれません。そこで、仮に一日24時間のすべてを仕事に回して不眠不休で働くと仮定すると、80年の生涯で12年間しか働かないという計算になります。

●同じように計算をすると、私たちは80年の生涯を次のように使っていることになります。

睡眠・・・・25年
学校・・・・ 3年
その他・・・40年(休日、生活、家族や友人との時間、自由時間)

●こうしてみても、やっぱり仕事時間は短いと言えます。学校で勉強する時間と仕事する時間を合計したとしても、それでも15年間に過ぎません。しかし、この15年間の過ごし方が、他の人生時間に多大なる影響を及ぼしている訳ですから、大切に使いたいものですね。

●ちなみに、この計算には一つトリックがあります。それは、60歳で引退するという古い前提にたっているのです。そこで、終生現役をめざす中高年のみなさんに、残り時間はまだまだたっぷりあるぞ、というお話をしようと思います。

●例えば私の場合、今年で53歳になりました。仮に80歳までバリバリと働くとすると、人生の残り時間が27年となり、次のような計算ができます。

・人生の残り総時間は、236,520時間(24時間×365日×27年)
・睡眠時間は、68,985時間(7時間×365日×27年)
・仕事時間は、67,500時間(10時間×250日×27年)
・休日は、52,785時間(17時間×115日×27年)
・他の生活時間・自由時間(47,250時間)

●この計算結果を簡単に要約すれば、睡眠7時間、仕事7時間、他の自由時間10時間(合計24時間)という一日を27年間繰り返すということになります。これから27年間、一日も休まずに7時間労働して10時間の自由時間があるのです。なんて素敵なことでしょう。

●まだまだ結構仕事ができるもの。もちろん、仕事ではなく、趣味やライフワークに打ち込んでも構いません。

●60歳で引退するのではなく、終生現役でいくと決めたら、まだまだ使える時間はたっぷりあります。むしろ、若いころと違って、子育てが終わり、家族サービスもほぼ終わった中高年にとって、睡眠時間以外の全時間が自分のものとなるのです。

●子どもや家族サービス、親戚や地域活動などといった、社会的雑事に割かれてきた時間の多くが、これからは自分のためだけに使えるという新事実に気づいてほしいのです。

●残された人生時間のマネジメントを上手にやれば、今からライフワークの一つや二つものにできるはず。ヘッセが言うような「人は成熟するにつれて若くなる」という人生を送るのも自由。他人の手助けを受けながら老醜をさらすのも自由。選ぶのはあなたなのです。

若いときと違い、金も時間も経験もある中高年こそ、人生でもっとも自由度が高い黄金期だと私は思います。そんな時期を大切に過ごすために、今から人生計画と人生ビジョンを作る必要があるでしょう。

●もちろん、冒頭の紳士にもそのようなお話をしました。そして彼は今、すでに毎日欠かさず1記事を執筆するブロガーになっておられます。これを一年続けたら、間違いなく人気ブロガーになられることでしょう。

●やるべきこと、やれることはまだまだ多いのです。

2007年06月11日(月)更新

夢を語る

●A産業という会社を訪問したときの話です。近くまで来たのですが、場所がわからなくなり、たまたま通りかかったビジネスマンに道を尋ねたところ、「A産業は私の勤務先です。すぐそこですからご案内しましょう」と言って、同行してくれました。

●歩きながら私は、「A産業さんって、どのような会社なのですか?」と聞いたところ、彼はほんの一瞬、間をおいた後、こう言ったのです。

「夢のある会社です!」

●私は思わずうなってしまいました。このようなセリフは、そう簡単に言えるものではありません。会社のビジョンと社員のやり甲斐とがリンクしているからこそ、出てくるセリフではないでしょうか。

●夢とは、誰かに与えられるものでなく、自ら作るべきものです。同様に、会社のビジョンも社長から与えられるばかりでは、優秀な社員ほど嫌になります。なぜなら、社員もビジョンを与えられるのではなく、作ることに参加したいと思っているからです。冒頭の彼が「夢のある会社です」と胸を張って言えるのは、きっと会社のビジョン作りに参加できているからに違いありません。
●話は変わりますが、私が20代の頃、毎月のようにお見合いをしていた時期がありました。最初は初対面の女性の前で緊張して、話題もとぎれがちでしたが、途中から作戦を変えました。

●自作の「人生25か年計画」を初対面の女性に話すようにしたのです。具体的に言うと、大学ノートに書きためたビジョンを熱心に語りました。その結果、それまでとは明らかに違う反応が返ってきました。

●いわゆる「ドン引き」というやつです。私が、自分のビジョンを熱っぽく語れば語るほど、彼女たちは逆に引いていくのです。最初はその理由がわからず、「きっと、計画のどこかが甘いからだろう」と思い、ますます詳細な計画を作っていったのですが、うまくいきません。

●そんなある日のことです。いつものように通り25か年ビジョンを語り終わったあと、女性からこのような質問をされました。

「それで奥さんは何をすればいいの?」

●私はこの質問を聞いたときにドキッとしました。とっさに、「できれば家庭を守って、家事に専念してもらえれば、ありがたいと思います」と答えながらも、男の自分が未来を全部切り開いていくものだ、と気負っていたことに気づいたのです。私はその女性に、理想の家庭像を聞き、自分の考えも述べました。それが今の妻です。

●経営でも同じことが言えます。詳細で完璧な計画を作れば作るほど、優秀な社員はかえって引きます。ある会社では、毎年一回、社内論文大会を開催しています。主眼はあくまで業務の改善改革ですが、論文のテーマは自由に設定できることとし、優秀作品の執筆者は、無料で2週間の米国企業視察旅行に派遣する、というものです。最初の頃はほとんど応募がなく、社長も困ったそうですが、10年たった今では、全社員のほぼ8割から応募があるほどのイベントになりました。

●最近では論文に限らず、小説やマンガ、映像、歌なども受け付けていて、昨年の受賞作品は、「2015年宇宙への旅」と題した会社の未来予想小説だったそうです。

●さて、あなたの会社の社員は、社外の人から会社のことを尋ねられたら何と答えるでしょうか。気になるところですね。
«前へ 次へ»