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2009年11月13日(金)更新

考えすぎると悩みがふえる

●以前、作家になりたいという、知り合いのAさん(35才、女性)から、次のように言われたことがあります。

「私の使命は書くことです。私の文章で日本の若者に生きる勇気を与えたい。それ一本で生計がなりたつようにしたいのです」

私はそう聞いて、「ほぉ、すばらしい。私と同志ですね。私も書くことを通じて、日本の経営者を応援したいと願っています」と申し上げました。

●以下、その時のやりとりです。

武沢 :具体的には今、どんな仕事をされているのですか?
Aさん:現実には、物書きの仕事がありませんので、人材派遣会社に登録して
    短期の派遣仕事を複数かけ持ちすることで、生計を維持しています。
武沢 :それは大変ですね。派遣仕事の合間をぬって、若者に勇気を与えるための
    ブログかメルマガをやっているのですか?
Aさん:いえ、まだ何もやっていません。
武沢 :え?
Aさん:物書きの仕事はまだ構想の段階でして、何も書いていません。
    この2~3年はリサーチしている段階です。
武沢 :2~3年もリサーチですか。あとどれくらいの期間、リサーチされるのですか?
Aさん:詳しく決めてはいませんが、「これで行こう!」と思える時がくるまで、
    周囲の成功事例を焦らずにウォッチしていくつもりです。

●私はそれを聞いて、「時間がもったいないから、粘土細工のように、あれこれ考えを練りながらかたちを作っていくほうが得策ですよ」と申し上げました。
●キリストは、布教に出かける弟子達に向かって次のようなアドバイスをしています。

=====
金も袋も下着も靴も杖も持たずに出かけなさい。
あなた方に必要な一日の糧は必ず満たされます。

そして、あなた達が語る神の教えを聞いても、誰も信仰をもたない村があれば、
とっととそこを引き上げて次の村へ行きなさい。

ついでに、その不信仰な村を後にするときには、足についた土ぼこりを
きれいに払い落としてから次へ行きなさい
=====

●キリストの言葉を私なりに解釈するとこうなります。

あなたたちは人類すべてに責任を負う必要はない。むしろ、あなたたちの責任は、誠意をもってたくさんの人にメッセージを伝えることである。それを相手がどう受け止め、どう反応するかはあなたの問題ではない」、と。

●「物を書く」、あるいは、「何かを伝える」といったとき、次のポイントについて考えておくことが大切ではないでしょうか。

1.あなたが伝えたいメッセージを要約すればなにか?
2.あなたのメッセージは誰に伝えたいか?
3.相手にメッセージを効果的に伝える方法はなにか?
4.今すぐできることはなにか?

●ここまで決めてあれば、あとは迷わずやるだけです。まだ決めてないのであれば、今すぐに決めてしまいましょう。こういうことは、考えれば考えるほど思考をめぐらせるだけになり、かえって行動できなくなってしまうものです

2009年11月06日(金)更新

社員に「上機嫌」を演じさせよう

●ある映画のロケ現場にて。

---

「シーン11、カット6、スタート!」。カシャッ。
「・・・」
「はい、カット」

以下、監督と俳優・渥美太(仮名)のやりとり。

監督:「渥美ちゃん、ムスッとした顔してどうしたの。ここはあんたがニコッと笑う絵が
    欲しいのよ。わかる? 笑顔だよ? じゃ、もう一回行ってみよう」
渥美:「・・・監督、たのむ。今日は勘弁してほしいんだ」
監督:「勘弁してほしいって何よ。笑顔くらい作れるでしょうが」
渥美:「実は、ちょっと今悩んでることがあって笑える気分じゃないんだよ」
監督:「はぁ?」

---

●もし、こんな役者が本当にいたらどうでしょうか。おそらく、二度と仕事は回ってこないでしょう。

役者の仕事は、台本通り、あるいはそれ以上に役を演じ切ることです。今の自分の気分がどうであれ、瞬時に期待された役を演じなければなりません。それがプロの役者です。

これは、別に役者に限った話ではありません。たとえば、ディズニーランドでミッキーの着ぐるみに入っているキャストが、今日はブルーな気分だからといってステップを踏まずに、パーク内をトボトボと歩きまわるでしょうか? そんなことはありえません。

●では、会社のなかではどうでしょう。私たちが演じるべきことは何でしょうか。
●会社や組織など複数の人で仕事をするならば、「笑顔をみせる」、「時間を守る」、「お辞儀をする」、「あいさつする」、「報告する」などが、基本的な演技です。もちろん、顧客に笑顔を見せてはいけない仕事や、あいさつしてはいけない仕事もあるでしょう。ですが、一般的な職場内では、それらが要求されます。これは、本人の気が向く・向かないかとか、納得できる・できないの問題ではありません。それが仕事なのです。それが演じるべき行為なのです

●「こうした行為が、仕事そのものなのだ」ということをしっかりと社員に教えましょう。仕事だから笑う、仕事だから時間を守るというような義務感で行なうのではなく、自然にできるように鍛えるのです

●経営者は社員の成長を期待しましょう。成長するとは、必要によって本能に逆らえるようなることでもあるのです

●フランスの哲学者・アランの言葉に、次のようなものがあります。

「もし道徳論を書くようなことがあったら、私は『上機嫌』を義務の第一位におくだろう」

「上機嫌」を演じきれる社員を、育てましょう

2009年10月30日(金)更新

利益を出す意欲

●フジテレビの軽部アナウンサーがトム・クルーズにインタビューしたときのことです。軽部アナに「私とあなたは同い年なのに、あなたがそんなに若々しいのはなぜですか。最近僕はすぐに疲れるようになってしまったので、なにか秘訣があれば教えてほしい」と聞かれたトム・クルーズは、ガッツポーズを作りながら、「僕は人生を生きる意欲が強いから」と明るく答えていました。

●私から見れば、軽部アナも一般的な同世代とくらべたらずいぶん若い感覚の持ち主だと思うのですが、それにしても「トムにかなわない原因が生きる意欲とは面白い」と感じました。

経営者も、生きる意欲を強くもつのは当然ですが、会社をよくする意欲も強くもつ必要があります。とくに大切なことは、目の前の現実を好転させることです。つまり、利益を出し、現金収支をプラスにすることに強い意欲をたぎらせるのです。それなくして、次のステージには進めません。

●私は経営者に会うことを職業にしてから25年になりますが、この間に何社もの経営者が世代交代しました。中小企業経営者の平均在任年数が30年だとすれば、世の中にある大半の企業で経営陣が入れ替わったことになります。
●世代別に比較すると、若い経営者はお金や利益に対する意欲が、戦前・戦中生まれの経営者より乏しくなってきているようです。とくに、団塊以前と団塊ジュニアの世代を比べると、あきらかに精神構造が違っています。

●「お金がそれほど欲しいわけでもなく、いい生活をしたいわけでもない。かといって、欲しいものがそんなにあるわけでもない。だから、儲けはホドホドにして好きなことをしていたい」という若手経営者がたくさんいますが、経営者が現状に満足してしまっては会社の未来がありません。経営者という立場にはいつもハングリー精神が求められ、それを養うことは社長の責任なのです。

利益を上げ、資金力をつけることにもっともっと強い意欲をもちましょう。「なぜ、当社は利益を追求するのか」について、社員にわかりやすく語りましょう。それを通じて、自分自身の気持ちを鼓舞するのです。

あなたが利益を求める理由は何かを自問してみてください。そして、トム・クルーズのようなパッションで、利益を追求する意味を語ってみてください

2009年10月23日(金)更新

コンサルタントの秘密

●スイスの哲学者・アミエルの言葉に、「より良い習慣を学ぶことが万事である」というものがあります。

たとえば、食習慣について考えてみましょう。

人間は食べることで体が作られるので、何を好んで食べるかが、その人の身体の骨格や構造、性能を決定し、さらにはメンタルにまで影響を及ぼします。私は甘いものが大好物なので、朝昼晩と口に入れていました。その結果として今の体が作られたのですが、最近はお酒も辛いものもよく口にするので、みるみるうちにメタボ体型に拍車がかかってきました。

●習慣とは、なにも食習慣に限りません。運動習慣、学習習慣、勤務習慣、生活習慣など、おおよそ人間のやることの大半は、習慣で行なわれています。

習慣とは、言い換えれば個々人がもっている常識や標準のことであり、自分のもつ常識や標準を変えていくということは、新しい自分をつくることと同義です。そうした常識や標準を変えるためには、自分から非常識な人や会社、本などに触れる必要があります。ただし、単に非常識なだけのものではだめで、成果が伴っているものでなければなりません
●私の書棚にも非常識な本が並んでいます。なかでも、『コンサルタントの秘密』(G・M・ワインバーグ著、共立出版)は、コンサルタント人生を歩み出した当時の私にとって非常識な内容が多く、読んで驚いた記憶があります。違和感をもったところも多々ありましたが、私がそれまでうまくいかなかった理由や、今後うまくやっていくためのヒントを、この本からたくさん見つけることができました。

●その中から、とりわけ印象的だったところを紹介します。なお、作者が「コンサルタント」や「依頼主」などと表現している箇所は、それぞれ「営業マン」や「取引先」など、あなたの状況にあわせて置きかえてください。

・・・
コンサルタントのあなたは、依頼主が「自分は問題を抱えている」ということを言わずに済ませてあげるようにしよう。それには、問題に対して「技術的問題」というレッテルを貼ることである。それは本当は依頼主の責任ではなく、専門分野に必要な人材を全部揃えておくなどということはまずできないので、外部の専門家を雇う必要性を認めてあげることなのだ。

予算レビューの時でも、経営上のコンサルティング料などの科目ではなく、技術上のコンサルティング料として計上することによって体面を保つチャンスを与えてあげることなのだ。誰だって外部からの助力を必要とすることがある。だったら、抵抗なくそれをさせてあげるよう配慮しよう。
・・・

相手のメンツを立てながら仕事を取る必要があると彼は言うのです。また、こんな箇所もあります。

・・・
仕事の成果を誰の手柄になるかを気にしていたら、何も達成できない。しかし、コンサルタントが手柄を認めてもらうためには、逆説的なことながら、一見何も達成していないように見える必要がある。あとでまた呼んでもらえるのは、そうしたコンサルタントだけである。

「有能な」コンサルタントがいる場所では、「依頼主が」問題を解決する、ということである
・・・

●私はこれを読んで、なるほどと膝を打ちました。それと同時に、「あの会社は、私の指導によって売上げが伸びた」などと吹聴するコンサルタントには、もしそれが事実であったとしても、次の依頼がこなくなるのだとわかりました

●コンサルタントや何かの専門家の方、それ以外の方でも、本書から得られる教訓はたくさんあると思います。ぜひ、読んでみてください。

★『コンサルタントの秘密』(G・M・ワインバーグ著、共立出版)
 http://www.amazon.co.jp/dp/4320025377

2009年10月16日(金)更新

腕が良い、とは

●「私は特別な人間だ。特別にカッコ良いし、特別に長生きしそうだし、特別な金持ちになりそうだし、歴史に名を残すような特別な何かをなし遂げる人間」だ、とひそかに思っている人がいるかもしれません。それどころか、真剣にそう思っている人もいることでしょう。

社長やリーダーの役目としては、そう思うことが正しいし、みながそう思うように応援してあげることが大事です。

●一方で、「言うだけならタダだとわかっていても、嘘つきになりたくないから軽率なことは言わない」という考えもあると思います。しかし、社長は正確なことを話すだけでなく、いつも明るい未来を語れる人間でなければなりません

●わかりやすくするために、たとえ話をしましょう。医者が頭痛で訪れた患者を診察し、薬を渡すという場面を思い浮かべてください。そのとき、医者Aは必ず「このクスリを飲めば、あなたは必ず良くなります」と言うようにしていました。

●一方、医者Bは、ものすごく几帳面なタイプで、「このクスリがあなたに効く可能性は、データに基づくかぎり60%です。また、副作用が出てしまう危険性も20%ほどあります」と言っていました。
●患者を前にした医師として、どちらが腕が良いのでしょうか。あなたならどちらの医師の病院に行きたいですか? 時と場合にもよりますが、頭痛程度ならば「私はAのほうにかかりたい」と思う人が多いのではないでしょうか。正確な診察という点ではBかもしれませんが、おそらく多くの患者を直してみせるのはAのほうだと、私は思うのです。

●“正確さ”と“腕の良さ”は一緒ではありません。一番よいのは、“正確さを背景にした腕の良さ”であり、顧客に勇気と確信を与えられる実力・実績を持ち、そして言葉を巧みに駆使することです

●「あなたは出来る」、「あなたは治る」、「あなたは良くなる」と言えるリーダーになりましょう。そもそも、夢やビジョンといった将来のことから今月の売上にいたるまで、未来のことはすべて不確かなものなのです。

●腕の良い経営コンサルタントは、赤字だらけのクライアント社長の前でこう断言します。
「社長、僕の言う通りにやって下さい。必ず儲かるようになりますから」
「本当かい?」
「信じてください。御社の未来を」
「わかった、信じよう」

そう言う社長の目に輝きが生まれます。それは、コンサルタントを信頼したのではなく、自分と自社の未来を信頼できた瞬間なのです

こうした言葉の威力と魔力を最も必要としているのは、自分自身です。自分の中の自分、つまり潜在意識に向かって、力強く明るい未来を断言してあげましょう。「私がうまくいく可能性は57%」などと正確に表現しようとするよりは、「私の前にもはや不可能の文字はない」と断言する社長のほうが“腕が良い”のです。
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