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2010年03月05日(金)更新

冬季五輪のメダル数より

●バンクーバー五輪が閉会しました。カーリングやフィギュアスケート、ジャンプ、モーグル、スピードスケート、複合競技などで熾烈なメダル争いをしてくれたおかげで連日楽しませてもらいました。そのおかげか、今回ほど「冬季五輪がおもしろい」と実感できた大会はなかったように思います。

●ただし、関係者にとって気になるのはメダルでしょう。

メダルの数という点で事前の期待や予想を下回るものになってしまいました。国別のメダル獲得数を金メダルの多い順に並べてみました。

 <2010年バンクーバー五輪 メダル獲得数>
 金  銀  銅  合計 
1位:カナダ 14  7  5  26個 
2位:ドイツ 10  13  7  30個 
3位:米国 9  15  13  37個 
4位:ノルウェー 9  8  6  23個 
5位:韓国 6  6  2  14個 
6位:スイス 6  0  3  9個 
7位:中国 5  2  4  11個 
7位:スウェーデン 5  2  4  11個 
9位:オーストリア 4  6  6  16個 
10位:オランダ 4  1  3  8個 
11位:ロシア 3  5  7  15個 
20位:日本 0  3  2  5個 


●日本のメダル5個という結果はトリノの1個よりは躍進しました。
しかし、他のアジア勢の韓国(金メダル数5位)や中国(7位)と比較すると見劣りするのは明らかです。選手個々はよく戦ったと思うので、イメージとしては選手任せの日本、国の総力をあげたカナダや韓国という図式でしょうか。

今回、ロシアの低調ぶりも目立ちました。プーチンが「我慢ならない」と激怒しているそうですので、次回のソチ(ロシア)大会でどれだけ巻き返しするか、注目ですね。
●国別メダル数=選手個人の力+国の強化費用

強化費用とは何でしょうか。
可能性ある選手を発掘し、練習に集中できる環境を与え、優秀なコーチをつけ、国外試合などの経験を豊富に積ませ、メダル獲得時のご褒美をしっかり与えればトータルとしてメダル数は伸びていって当然です。

●あとは、国として政府としてどれだけお金を拠出できるかという意志の問題が残っています。国の財政力の強い弱いも関係あるのでしょうが、他の国家予算に比べたら100億円程度など微々たる金額だと思います。多分に「意志」なのです。

●さて、上記の「メダル数」のところを「人材数」に変えてみたら、「国の強化費用」は「会社の教育予算」と置き換えることができそうです。

2010年01月22日(金)更新

間違った二者択一

●マジック(手品)が、私の周辺でちょっとしたブームになっています。先日も、自宅で息子がトランプを使ったマジックを披露してくれました。

「さあ、お父さん。ハートのエースは左右どっち?」
「そりゃ、右でしょ」
「残念、右はダイヤの7でした」
「あれ? いつの間に。じゃあ、左かい」
「これまた残念、左でもないよ」
「えっ、左右どちらでもないの?」

このマジックでは「左右どっち?」と聞かれましたが、正解はいずれでもありませんでした。

●経営においても、「どちらにしたらよいか」などと二者択一を迫られる場面があります。そのとき、二択とも間違いであれば、当然、どちらを選んでも不正解になります。例えば、「進むべきか引き返すべきか」という選択がいずれも間違いであり、「立ち止まって様子を見る」ことが正しいという場合です。

●最近、愛知県のあるメーカーの経営者とお話ししました。多くの同業者が中国に進出するなか、ここの会社は断固として日本に留まる戦略をとっています。そこで、理由を聞いたところ、意外な答えがかえってきました。
●実はこの会社、20年以上も前に中国の地方都市に合弁会社を作り、現地パートナーと共同で事業を立ち上げたことがあるそうです。20年以上も前とはものすごい「先見の明」ですが、当時は中国の民主化が日本でもてはやされ、なかでも、上海の浦東地区の変貌ぶりは連日のように紹介されていました。「第一次中国投資ブーム」といってもよかったかもしれません。

●しかし、その合弁会社は数年で破綻。多大な損失を被った結果、中国から撤退することになりました。その余波で、儲かっていた国内事業にもしばらく悪影響が及びました。

●このことを受け、当時の経営会議で決まった結論が、次の二つだったそうです。

 ・今後、わが社は二度と合弁事業をやらない
 ・今後、わが社は外国への進出は一切考えない

●その話を聞いたとき、私は言葉がでませんでした。

「前回の中国進出は○だったか、×だったか」というならば、言うまでも無く×でしょう。だからといって、「今後、私たちの外国進出は○か×か」について、その時点で結論を固定してしまうのは、間違った二者択一ではないでしょうか。万物流転、諸行無常の世にあって、「今後二度と・・・」という結論を後世に残すことは、大きな誤りだと思うのです

二者択一の場面に遭遇したら、その二択は正しいかどうか、よく吟味しましょう

仕事から帰った亭主に対し、妻が「先にご飯にする、それともお風呂にする?」と質問して二択を迫るのも、実はトリックかもしれませんよ。

2009年12月04日(金)更新

会社の動体視力

●スポーツでは、「動体視力」が大切だと言われます。「動体視力」とは、移動するひとつの目標物を連続して追い続ける眼の能力のこと。野球のバッティングでいうと、ボールに眼を追従させる能力がこれにあたります。

●ですが、動体視力だけが優れていても能力的に十分とはいえず、「眼球運動能力」も大切だといわれています。こちらは、サッカーのゴールキーパーが瞬時に移動するボールや相手選手にすばやく視線を動かすための、眼球自体の運動能力のことです。

●さらに眼の能力には、視野の広さと的確さをあらわす「周辺視力」、移動または静止する目標物に対して、瞬時にフォーカスを当てる「瞬間視力」などもあります。「ボールが止まって見える」と豪語した野球の川上哲治選手は、たぶん「瞬間視力」が異常に高かったのでしょう。

以上の能力が渾然一体となって、競技能力をサポートしているのです。

●ここで整理すると、スポーツ選手に求められるものは身体そのものの運動技能に加え、
・動体視力
・眼球運動能力
・周辺視力
・瞬間視力
などの、眼の能力も大切だということです

●では会社経営はどうでしょうか?

変化に対応できる会社のことを次のようにたとえることがあります。

・作業しながらでも、そのやり方を変えることができる
・車の運転をしながらタイヤ交換ができる
・実行しながら計画を変えることができる・・・etc.

いずれもおかしな話に聞こえますが、そうしたことを行なうのが経営というもの。変化に対して迅速かつ柔軟に対応できる経営組織を作りたいものです。

そのためには、計画→実行→評価→対策→計画→・・・と続くマネジメントサイクルが、一流アスリートたちの視力のようにきちんと機能しているかどうかがポイントです

●ですので、計画値と実績値の誤差を、可能なかぎり短いスパンで把握できなければなりません。「翌月に送られてくる月次試算表を見るまで、今月の業績がわからない」という状態をいち早く卒業し、週ごと、日ごとであっても実績値が把握できる状態を作りましょう。

●また、アイデアが浮かんでから実行に移すまでのリードタイム(準備時間)をどれだけ短くできるかも重要です。なぜなら、今日思いついたグッドアイデアが、明日も素晴らしいままであるとは限りません。鮮度が落ちないうちに実行してこそ、いいアイデアなのです

「変化にもっともよく適応したものが生き残る」、とダーウィンが『種の起源』で結論づけたように、私たちの会社も変化に適応できる俊敏さと柔軟さが欠かせません。会社全体の変化対応力を高めるのに必要なことを、着実に実行していこうではありませんか。

2009年11月27日(金)更新

喜怒哀楽の共有

●名古屋で冠婚葬祭センターを営んでいるA社長と会ったときのことです。

A:「武沢さん、ちょっと相談があるのですが・・」
武:「何でしょう」
A:「会社の方針や目標を社員に浸透させる方法がわからない。
   いろいろ手を尽くしているのですが、浸透していかない」
武:「もう少し詳しくお聞かせください」

●A社長の悩みは次のようなものでした。

・・・
毎年、決算期にあわせて方針書を作っているのだが、ときには2~3日社長室に閉じこもることもある。

そうして作った方針を発表し、その後も社内報や社内ネットを用いて繰り返し伝えているのだが、新しく決めたことが実行されることはめったになく、毎年変わりばえがしないまま終わってしまう。

「目標の浸透」というのか「目標の共有」というのか、表現はともあれ、会社全体が一体感をもって動いていくような経営をしたい。
・・・

●こうした経営上の課題をもっている会社は多いようですが、上意下達の意識だけでは、「目標を共有する」企業文化は生まれません。「共有すべきものは目標だけではない。まずその前に共有すべきものがある」というのが私の考えで、それには4つの段階があります。
●最初に試みるべきは、「事実の共有」です。
「事実の共有」なんて、決算書や報告書を公表さえすればそれで終わり、などと思わないでください。日々の出来事やそれに伴う感想、そして、ありのままの現実を共有し、そこから一歩進んで問題を共有するということが、「事実の共有」なのです

●そのためには、ネットやメールに頼るまえに、まず顔をつきあわせましょう。報告だけの会議なんて無用、と会議を廃止する前に、フランクに事実を交換しあう場を作るのです。雑談でも朝礼でもいいので、こうしたことを普段から行なうのが第一歩ではないでしょうか。

次に必要なのは「価値の共有」です
すでに価値観や使命、ミッションなどが決まっている会社は、それをトコトン社員の意識に刷り込んでいきましょう。ジョンソン&ジョンソン社の「我が信条」のように、大切なものを順位づけしていくのも効果的です。

★我が信条:http://www.jnj.co.jp/group/community/credo/index.html

一方、まだ価値観などが決まっていない会社では、社員との対話の中でそれを成文化していけばいいでしょう。

3番目にくるのが「目的や目標の共有」です
努力と奮闘の結果、どのようなゴールが期待できるのか。また、どのような面白いストーリーで自分たちの道を歩もうとしているのかを語り合いましょう。

そして最後が「結果の共有」です
結果を厳粛に受け止め、良い結果の場合は勝利の美酒を、悪い結果の場合は苦い冷や水を飲み明かし、改めて、最初の「事実の共有」というスタートラインに戻っていくのです。

1.事実の共有
2.価値の共有
3.目的・目標の共有
4.結果の共有
  ↓
1.事実の共有
  ・
  ・

このサイクルをくり返すことで、企業文化が発展していくのです。

2009年11月06日(金)更新

社員に「上機嫌」を演じさせよう

●ある映画のロケ現場にて。

---

「シーン11、カット6、スタート!」。カシャッ。
「・・・」
「はい、カット」

以下、監督と俳優・渥美太(仮名)のやりとり。

監督:「渥美ちゃん、ムスッとした顔してどうしたの。ここはあんたがニコッと笑う絵が
    欲しいのよ。わかる? 笑顔だよ? じゃ、もう一回行ってみよう」
渥美:「・・・監督、たのむ。今日は勘弁してほしいんだ」
監督:「勘弁してほしいって何よ。笑顔くらい作れるでしょうが」
渥美:「実は、ちょっと今悩んでることがあって笑える気分じゃないんだよ」
監督:「はぁ?」

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●もし、こんな役者が本当にいたらどうでしょうか。おそらく、二度と仕事は回ってこないでしょう。

役者の仕事は、台本通り、あるいはそれ以上に役を演じ切ることです。今の自分の気分がどうであれ、瞬時に期待された役を演じなければなりません。それがプロの役者です。

これは、別に役者に限った話ではありません。たとえば、ディズニーランドでミッキーの着ぐるみに入っているキャストが、今日はブルーな気分だからといってステップを踏まずに、パーク内をトボトボと歩きまわるでしょうか? そんなことはありえません。

●では、会社のなかではどうでしょう。私たちが演じるべきことは何でしょうか。
●会社や組織など複数の人で仕事をするならば、「笑顔をみせる」、「時間を守る」、「お辞儀をする」、「あいさつする」、「報告する」などが、基本的な演技です。もちろん、顧客に笑顔を見せてはいけない仕事や、あいさつしてはいけない仕事もあるでしょう。ですが、一般的な職場内では、それらが要求されます。これは、本人の気が向く・向かないかとか、納得できる・できないの問題ではありません。それが仕事なのです。それが演じるべき行為なのです

●「こうした行為が、仕事そのものなのだ」ということをしっかりと社員に教えましょう。仕事だから笑う、仕事だから時間を守るというような義務感で行なうのではなく、自然にできるように鍛えるのです

●経営者は社員の成長を期待しましょう。成長するとは、必要によって本能に逆らえるようなることでもあるのです

●フランスの哲学者・アランの言葉に、次のようなものがあります。

「もし道徳論を書くようなことがあったら、私は『上機嫌』を義務の第一位におくだろう」

「上機嫌」を演じきれる社員を、育てましょう
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