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社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
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2009年04月30日(木)更新
上質なクリーム
●生クリームは上質なものほど上に浮き、その部分だけをすくって食べるとおいしいだろうなと思うのですが、経営者にも同じことが言えるのではないでしょうか。経営者も上質な人ほど上に浮いてきますが、それは本人は上にいこうとしていなくとも、周囲が勝手に持ち上げてくれるからでしょう。
●かつての総理大臣のなかで、任命した大臣の不祥事が次々に発覚し、支持率を失って退任した人がいました。もし彼が周囲から担がれ、待望されて総理になった人ならそのような不祥事は起こらないはずです。結局、消去法で選ばれた総理の宿命で、彼を命がけで担ぐ人がいなかったのではないでしょうか。もちろん、今の政治家にそんな人がどれだけいるかと言われればお寒い限りではあります。
●経営者が消去法で選ばれることがあるとすれば、後継社長を選ぶときです。ある日突然トップの座に座るわけですから、その座にふさわしいかどうかは、そのトップが「おいしい」人かどうかで決まります。
●勝海舟は、かつて教え子に「あの親分子分の間柄をご覧ナ。何であんなに服しているのだい。精神の感激というものじゃないか」と語ったそうです。「精神の感激」が指導者と部下との間に必要だということでしょう。
●新しい社長が部下を感激させられるようなリーダーであれば、リーダーのために良い仕事をしようと必死になってがんばるので、自然とうまくいくはずです。要求されていない仕事まで進んで行うようになるでしょうし、そのための勉強もすると思います。
●人が育ちやすい会社と育ちにくい会社の違いとは、結局のところ、社長の人間的魅力によるところが大きいのです。特に中小零細企業であれば、社長の人間的魅力がすべてと言っていいでしょう。
●しかし、リーダーの属人的な魅力にも限界があります。社員数が10人を超え、20人、30人…となってくると、社長ひとりの魅力ですべてをカバーすることはできなくなります。経営幹部や部門リーダーが必要となり、その役を担う人物の魅力や実力が要求されるようになります。
●米国の海軍兵学校では、「ウソをつく」「人をだます」「人のものを盗む」を禁止条項の3つの教えとし、「そうする者たちを見逃さない」という4番目の教えを加えています。「見逃さない」という表現がポイントです。「そうさせない」のではなく、「そうする者たちを見逃さない」のです。この表現が組織に規律をもたらします。
●人が育つ会社では、遅刻者に対して上司や先輩だけでなく同僚も注意します。組織の決まりごと、つまり規律に反することがあれば、役職者が立場にもとづいて注意するというのではなく、誰もが注意しあう環境になります。このようにして、規律ある社風が作られていくのです。
●人が育ちにくい会社では、決めごとを破る社員がいても他の者が黙っています。そして社長だけが怒りをため込み、あるとき爆発する。これでは規律もなにもありません。規律ある組織にするにはどうするか。その答えは一つしかありません。
●「あなた以上に自己規律をもった人を役職者に据える」
これだけです。その結果、あなたは上質なクリームになる道が開けます。まずはあなたの自己規律を確認し、部下にどんな規律をもってほしいのかを明らかにしてみましょう。
●かつての総理大臣のなかで、任命した大臣の不祥事が次々に発覚し、支持率を失って退任した人がいました。もし彼が周囲から担がれ、待望されて総理になった人ならそのような不祥事は起こらないはずです。結局、消去法で選ばれた総理の宿命で、彼を命がけで担ぐ人がいなかったのではないでしょうか。もちろん、今の政治家にそんな人がどれだけいるかと言われればお寒い限りではあります。
●経営者が消去法で選ばれることがあるとすれば、後継社長を選ぶときです。ある日突然トップの座に座るわけですから、その座にふさわしいかどうかは、そのトップが「おいしい」人かどうかで決まります。
●勝海舟は、かつて教え子に「あの親分子分の間柄をご覧ナ。何であんなに服しているのだい。精神の感激というものじゃないか」と語ったそうです。「精神の感激」が指導者と部下との間に必要だということでしょう。
●新しい社長が部下を感激させられるようなリーダーであれば、リーダーのために良い仕事をしようと必死になってがんばるので、自然とうまくいくはずです。要求されていない仕事まで進んで行うようになるでしょうし、そのための勉強もすると思います。
●人が育ちやすい会社と育ちにくい会社の違いとは、結局のところ、社長の人間的魅力によるところが大きいのです。特に中小零細企業であれば、社長の人間的魅力がすべてと言っていいでしょう。
●しかし、リーダーの属人的な魅力にも限界があります。社員数が10人を超え、20人、30人…となってくると、社長ひとりの魅力ですべてをカバーすることはできなくなります。経営幹部や部門リーダーが必要となり、その役を担う人物の魅力や実力が要求されるようになります。
●米国の海軍兵学校では、「ウソをつく」「人をだます」「人のものを盗む」を禁止条項の3つの教えとし、「そうする者たちを見逃さない」という4番目の教えを加えています。「見逃さない」という表現がポイントです。「そうさせない」のではなく、「そうする者たちを見逃さない」のです。この表現が組織に規律をもたらします。
●人が育つ会社では、遅刻者に対して上司や先輩だけでなく同僚も注意します。組織の決まりごと、つまり規律に反することがあれば、役職者が立場にもとづいて注意するというのではなく、誰もが注意しあう環境になります。このようにして、規律ある社風が作られていくのです。
●人が育ちにくい会社では、決めごとを破る社員がいても他の者が黙っています。そして社長だけが怒りをため込み、あるとき爆発する。これでは規律もなにもありません。規律ある組織にするにはどうするか。その答えは一つしかありません。
●「あなた以上に自己規律をもった人を役職者に据える」
これだけです。その結果、あなたは上質なクリームになる道が開けます。まずはあなたの自己規律を確認し、部下にどんな規律をもってほしいのかを明らかにしてみましょう。
2009年02月20日(金)更新
雇用を守りたいのはやまやまだが その2
<前号の続き>
●派遣切りによって失業した人たちは、たしかにお気の毒だと思います。財布の中に50円しかないとか、おにぎりをもらって人の優しさに涙が出た、というような報道は、お涙ちょうだい話のネタとしては格好の題材でしょう。
●しかし、そうなった責任は派遣契約を解除した企業のせいではありません。前回も書いたとおり、企業は最初に結んだ契約にしたがって動いているだけです。失業して収入が途絶えたことの責任は誰か、それは半分以上が本人自身にあると私は思います。決して彼らを一方的な被害者扱いにしてはなりません。それが自由主義であり市場の原理なのですから。
●同時に、失業した彼らが今まで働いてきた勤務先の経営者にも責任の一端があります。いままでの勤務先が社員教育をきちんとやってくれる経営者であったならば、どこにも行き先がないという社員を作ることはなかったはずです。ですから、社員教育に力を入れるということは将来の失業者を作らないための貢献であることを、経営者は自覚しましょう。
●ところで、新聞やテレビを見ていると識者たちが「派遣切りの次は正社員切りだ。経営者は何があっても雇用を守れ!」などと語っていますが、第三者に言われるまでもなく、(特に中小企業の)経営者は雇用を守ることの責任を大変強く感じています。「いままで一緒にやってきた社員をクビにすることほど辛くて嫌なことはない」と、どの経営者も言っているのです。
●しかし、現実問題として「雇用を守っていたら、企業が守れない」という会社もたくさんあります。そんな会社に対しては、私は「勇気をもって、雇用よりも企業を守ってほしい」と申し上げています。もちろん、どさくさまぎれの安易な解雇は許されないので、ギリギリまで粘らなくてはなりません。そこで、順序としてやるべきことについて、解説しましょう。
1.助成金や緊急融資制度の勉強
雇用を守るために必死になってがんばっている会社には助成金が出ます。あなたの会社も該当するのかどうかも含めて、厚労省のホームページで調べるか、社労士さんに相談してみましょう。
*参考* 厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/index.html
同様に、国からの緊急制度融資もスタートしています。「うちはもう借金はできない」と決め込むのではなく、銀行や公庫などの金融機関に相談して、制度融資が受けられるよう努力しましょう。
2.役員報酬のカット
責任をまっさきに負うべきは経営陣です。業績が悪い会社はすぐにでも、社長の報酬を生活できるぎりぎりのラインまで大幅カットしましょう。他の役員の報酬も同様に、社長の減額幅に準じてカットしましょう。
3.正社員やパートアルバイトのボーナス支給ストップまたは大幅カット
夏の賞与、冬の賞与がゼロ円、またはゼロ程度のものになる見通しを今から発表しておきましょう。春の定期昇給についても同様です。ベアゼロまたは減給も検討すべきかもしれません。ただし、業績目標の達成状況に応じて、昨年並みあるいは昨年以上に支払うことも可能であることを、同時に示しておきましょう。
4.給与や時間給、手当などの削減
賞与の次に給与カットも検討しましょう。辛いことですが、雇用を守るためには正社員やパートアルバイトの給与カットを避けて通れない会社も多いはずです。また、残業が恒常化している会社は定時で仕事を終える体制に切り替え、残業代を払わずに済むようにしましょう。仕事が少ない場合は、早退や半日勤務、自宅待機などを組み合わせて、勤務時間を減らすことで給料を下げましょう。いわゆるワークシェアリングです。
あとは技術的な話ですが、必要によっては賃金体系を見直し、モデル賃金のベースを下げるか、本人の資格等級を下げましょう。こうした作業は雇用契約の変更でもあり、法律面も充分に押さえるべきなので、社労士などの専門家と相談しながら行なうほうがよいでしょう。
5.最終手段としての人員削減--部門、営業所の閉鎖とそれに伴う解雇
それでも業績改善が不十分なのであれば、そこではじめて社員を解雇します。とは言え、かねてから問題のあった社員を、「ここぞ」とばかりにどさくさに紛れて解雇するのは不当解雇になりかねませんので、企業の現状を鑑みたうえで、一部の部門や営業所、店舗などを丸ごと閉鎖し、該当者を全員解雇します。その後に、問題社員を除いた一部の人を再雇用するスタイルがよいでしょう。
実際に辞めさせたいような問題社員がいる場合は、企業業績に関係なく解雇すべきなので、それはそちらのルートでやるべきです。
●以上が雇用に手をつける際の手順です。いつ着手を始め、どの程度の早さで実行するかはあなたの判断です。ただし、こうした非常時において認識しておかねばならないのは、「混乱によって今月の業績が悪くなったことは社長の責任とはいえないが、半年後の業績は100%社長の責任である」ということです。社長の責任を自覚し、やるべきことを粛々とやっていきましょう。
●派遣切りによって失業した人たちは、たしかにお気の毒だと思います。財布の中に50円しかないとか、おにぎりをもらって人の優しさに涙が出た、というような報道は、お涙ちょうだい話のネタとしては格好の題材でしょう。
●しかし、そうなった責任は派遣契約を解除した企業のせいではありません。前回も書いたとおり、企業は最初に結んだ契約にしたがって動いているだけです。失業して収入が途絶えたことの責任は誰か、それは半分以上が本人自身にあると私は思います。決して彼らを一方的な被害者扱いにしてはなりません。それが自由主義であり市場の原理なのですから。
●同時に、失業した彼らが今まで働いてきた勤務先の経営者にも責任の一端があります。いままでの勤務先が社員教育をきちんとやってくれる経営者であったならば、どこにも行き先がないという社員を作ることはなかったはずです。ですから、社員教育に力を入れるということは将来の失業者を作らないための貢献であることを、経営者は自覚しましょう。
●ところで、新聞やテレビを見ていると識者たちが「派遣切りの次は正社員切りだ。経営者は何があっても雇用を守れ!」などと語っていますが、第三者に言われるまでもなく、(特に中小企業の)経営者は雇用を守ることの責任を大変強く感じています。「いままで一緒にやってきた社員をクビにすることほど辛くて嫌なことはない」と、どの経営者も言っているのです。
●しかし、現実問題として「雇用を守っていたら、企業が守れない」という会社もたくさんあります。そんな会社に対しては、私は「勇気をもって、雇用よりも企業を守ってほしい」と申し上げています。もちろん、どさくさまぎれの安易な解雇は許されないので、ギリギリまで粘らなくてはなりません。そこで、順序としてやるべきことについて、解説しましょう。
1.助成金や緊急融資制度の勉強
雇用を守るために必死になってがんばっている会社には助成金が出ます。あなたの会社も該当するのかどうかも含めて、厚労省のホームページで調べるか、社労士さんに相談してみましょう。
*参考* 厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/index.html
同様に、国からの緊急制度融資もスタートしています。「うちはもう借金はできない」と決め込むのではなく、銀行や公庫などの金融機関に相談して、制度融資が受けられるよう努力しましょう。
2.役員報酬のカット
責任をまっさきに負うべきは経営陣です。業績が悪い会社はすぐにでも、社長の報酬を生活できるぎりぎりのラインまで大幅カットしましょう。他の役員の報酬も同様に、社長の減額幅に準じてカットしましょう。
3.正社員やパートアルバイトのボーナス支給ストップまたは大幅カット
夏の賞与、冬の賞与がゼロ円、またはゼロ程度のものになる見通しを今から発表しておきましょう。春の定期昇給についても同様です。ベアゼロまたは減給も検討すべきかもしれません。ただし、業績目標の達成状況に応じて、昨年並みあるいは昨年以上に支払うことも可能であることを、同時に示しておきましょう。
4.給与や時間給、手当などの削減
賞与の次に給与カットも検討しましょう。辛いことですが、雇用を守るためには正社員やパートアルバイトの給与カットを避けて通れない会社も多いはずです。また、残業が恒常化している会社は定時で仕事を終える体制に切り替え、残業代を払わずに済むようにしましょう。仕事が少ない場合は、早退や半日勤務、自宅待機などを組み合わせて、勤務時間を減らすことで給料を下げましょう。いわゆるワークシェアリングです。
あとは技術的な話ですが、必要によっては賃金体系を見直し、モデル賃金のベースを下げるか、本人の資格等級を下げましょう。こうした作業は雇用契約の変更でもあり、法律面も充分に押さえるべきなので、社労士などの専門家と相談しながら行なうほうがよいでしょう。
5.最終手段としての人員削減--部門、営業所の閉鎖とそれに伴う解雇
それでも業績改善が不十分なのであれば、そこではじめて社員を解雇します。とは言え、かねてから問題のあった社員を、「ここぞ」とばかりにどさくさに紛れて解雇するのは不当解雇になりかねませんので、企業の現状を鑑みたうえで、一部の部門や営業所、店舗などを丸ごと閉鎖し、該当者を全員解雇します。その後に、問題社員を除いた一部の人を再雇用するスタイルがよいでしょう。
実際に辞めさせたいような問題社員がいる場合は、企業業績に関係なく解雇すべきなので、それはそちらのルートでやるべきです。
●以上が雇用に手をつける際の手順です。いつ着手を始め、どの程度の早さで実行するかはあなたの判断です。ただし、こうした非常時において認識しておかねばならないのは、「混乱によって今月の業績が悪くなったことは社長の責任とはいえないが、半年後の業績は100%社長の責任である」ということです。社長の責任を自覚し、やるべきことを粛々とやっていきましょう。
2009年02月13日(金)更新
雇用を守りたいのはやまやまだが その1
●先日、日産自動車は「最悪のシナリオが現実のものとなっている」として、業績見通しの大幅下方修正と2万人の人員削減を発表しました。その発言に対し、株式市場は比較的冷静な受け止め方をしており、同社の株価は上昇さえしています。
●「2万人削減」の内訳は、1.2万人が国内、残り8千人が国外だそうです。しかし、希望退職の募集や工場閉鎖などによるドラスティックなリストラではなく、新規採用の抑制と定年退職や通常退職などの自然減だけで、その程度の人員削減が可能ということでした。ひとまず、動的な人員削減により、失業者が一気に増えるというものではないようなので、一安心ではあります。
●「失業者」といえば、昨年より「派遣切り」が問題になっています。テレビや新聞では、派遣社員を切った企業が悪者で、切られて失業した人たちが被害者という図式で報道されていますが、本当にそんな単純な構図なのでしょうか? 派遣契約を解除した企業が、一方的に悪いわけではないと思うのです。
●企業側としては、契約通りに動いているに過ぎません。また、仮に契約を一方的に反故にする場合でも、違約金などを支払っています。派遣社員だけが一方的に被害を受けているように報じているマスコミの姿勢がおかしいことは、大多数の国民も気がついているはずですが、それを識者や評論家たちが誰も指摘しないのはどうしたことでしょう。
●失業することになった責任の半分(以上)は自己責任です。「自分株式会社」の社長として自分のマネジメントに失敗した結果ともいえるでしょう。もちろん、仕事やお金がないという辛さは大変気の毒だし、保護してあげるべきだとは思います。しかし、そうなった責任を周囲に押しつけることはできません。それを否定することは、自由主義、資本主義の否定につながります。
●残念ながら失業した人たちは、新しい知識や技術を習得したうえで、介護や通信技術のような有効求人倍率の高い分野に自分を売り込むべきです。行政や民間団体は、たんにお金を与えて保護するのではなく、彼らの転職を可能にするための教育訓練や、人生目標の設定支援などで彼らの自立を促すべきでしょう。
●では、「失業の半分(以上)は自己責任」だとしたら、残り半分は誰の責任でしょうか。それは、派遣社員になる前に正社員として勤務していたならばその会社の社長、新卒で派遣労働者になった若者の場合は、親や学校の先生ではないでしょうか。
●社員教育や人生教育をきちんとやれば、失業してどこにも行き先がないという社員を作ることはなかったはずなのです。
<次回に続く>
●「2万人削減」の内訳は、1.2万人が国内、残り8千人が国外だそうです。しかし、希望退職の募集や工場閉鎖などによるドラスティックなリストラではなく、新規採用の抑制と定年退職や通常退職などの自然減だけで、その程度の人員削減が可能ということでした。ひとまず、動的な人員削減により、失業者が一気に増えるというものではないようなので、一安心ではあります。
●「失業者」といえば、昨年より「派遣切り」が問題になっています。テレビや新聞では、派遣社員を切った企業が悪者で、切られて失業した人たちが被害者という図式で報道されていますが、本当にそんな単純な構図なのでしょうか? 派遣契約を解除した企業が、一方的に悪いわけではないと思うのです。
●企業側としては、契約通りに動いているに過ぎません。また、仮に契約を一方的に反故にする場合でも、違約金などを支払っています。派遣社員だけが一方的に被害を受けているように報じているマスコミの姿勢がおかしいことは、大多数の国民も気がついているはずですが、それを識者や評論家たちが誰も指摘しないのはどうしたことでしょう。
●失業することになった責任の半分(以上)は自己責任です。「自分株式会社」の社長として自分のマネジメントに失敗した結果ともいえるでしょう。もちろん、仕事やお金がないという辛さは大変気の毒だし、保護してあげるべきだとは思います。しかし、そうなった責任を周囲に押しつけることはできません。それを否定することは、自由主義、資本主義の否定につながります。
●残念ながら失業した人たちは、新しい知識や技術を習得したうえで、介護や通信技術のような有効求人倍率の高い分野に自分を売り込むべきです。行政や民間団体は、たんにお金を与えて保護するのではなく、彼らの転職を可能にするための教育訓練や、人生目標の設定支援などで彼らの自立を促すべきでしょう。
●では、「失業の半分(以上)は自己責任」だとしたら、残り半分は誰の責任でしょうか。それは、派遣社員になる前に正社員として勤務していたならばその会社の社長、新卒で派遣労働者になった若者の場合は、親や学校の先生ではないでしょうか。
●社員教育や人生教育をきちんとやれば、失業してどこにも行き先がないという社員を作ることはなかったはずなのです。
<次回に続く>
2009年02月02日(月)更新
K君が学んだこと
●K君のアルバイト先である、ディズニーランドにて
上司
「Kさん、長い間の勤務ご苦労様でした。書類に記入すべきことはすべて私が書いておきましたので、あとはあなたの署名が必要です。ここにサインをお願いします」
K君
「えっ? ちょ、ちょっと待ってくださいよ。これって退職届じゃないですか」
上司
「そうですよ?」
K君
「何回も遅刻したのは申し訳ないと思ってます。でも、僕はやめるつもりなんかないです。もう遅刻しませんから許して下さい」
上司
「Kさん、今日で何度目ですか? 遅刻は雇用契約違反になるということをご存知ですよね。自分から契約を破っておいて、いまさら『やめるつもりはない』なんて言えますか?」
K君
「……」
●これまでK君は、「自分は“単なる”バイトであり、正社員ではないので気軽な身分なんだ」と思っていた。事実、彼はディズニーランド以外に、近所のガソリンスタンドで働いており、そこでは「すいません、今日ちょっと体調悪いんで休ませてもらいます」と電話すれば、あっさり許可をもらえた。極端にいうと、ウソやごまかしでも通用した。
●今回の遅刻も、徹夜で遊んでて寝過ごしたのが理由だった。心のどこかでは、ディズニーランドでの仕事も、スタンドと同じ「“単なるバイト”のやること」と高をくくっていが、ここでは通用しなかった。
●上司はスタッフのしつけに普段から厳しく、彼自身も「おいK! おまえなぁ…」と何度となく叱られた。だが、この日は「Kさん」と呼び、それを聞いた瞬間、彼は「あっ、敬語だ。自分は大好きなこの上司に見放されようとしている。もしそうなれば、この先僕はどうなってしまうのだろう」と思った。
●自分を一人前の社会人とするべくここまで育ててくれたのは、その上司のおかげだった。「この人に見放されたくない」と思うと涙が自然とこみあげ、土下座して上司に謝った。そして、二度と同じことをしないと心に誓った。
●すると、「おまえなぁ、いいかげんにしろよ」と上司の口調が普段に戻り、彼は「やった、助かった」と歓喜すると同時に、社会人として大切なことを学んだ。
●その一件以来、私生活を自分でコントロールするようになった。それは社会人として当たり前のことではあるが、この時のできごとが彼自身にプロの自覚をもたらしたのだ。
●翌年、K君はディズニーランドの年間最優秀スタッフに選ばれ、シンデレラ城の前で全スタッフから喝采を浴びた。そのとき、彼とその上司の胸に去来したものは何だったのだろうか。
上司
「Kさん、長い間の勤務ご苦労様でした。書類に記入すべきことはすべて私が書いておきましたので、あとはあなたの署名が必要です。ここにサインをお願いします」
K君
「えっ? ちょ、ちょっと待ってくださいよ。これって退職届じゃないですか」
上司
「そうですよ?」
K君
「何回も遅刻したのは申し訳ないと思ってます。でも、僕はやめるつもりなんかないです。もう遅刻しませんから許して下さい」
上司
「Kさん、今日で何度目ですか? 遅刻は雇用契約違反になるということをご存知ですよね。自分から契約を破っておいて、いまさら『やめるつもりはない』なんて言えますか?」
K君
「……」
●これまでK君は、「自分は“単なる”バイトであり、正社員ではないので気軽な身分なんだ」と思っていた。事実、彼はディズニーランド以外に、近所のガソリンスタンドで働いており、そこでは「すいません、今日ちょっと体調悪いんで休ませてもらいます」と電話すれば、あっさり許可をもらえた。極端にいうと、ウソやごまかしでも通用した。
●今回の遅刻も、徹夜で遊んでて寝過ごしたのが理由だった。心のどこかでは、ディズニーランドでの仕事も、スタンドと同じ「“単なるバイト”のやること」と高をくくっていが、ここでは通用しなかった。
●上司はスタッフのしつけに普段から厳しく、彼自身も「おいK! おまえなぁ…」と何度となく叱られた。だが、この日は「Kさん」と呼び、それを聞いた瞬間、彼は「あっ、敬語だ。自分は大好きなこの上司に見放されようとしている。もしそうなれば、この先僕はどうなってしまうのだろう」と思った。
●自分を一人前の社会人とするべくここまで育ててくれたのは、その上司のおかげだった。「この人に見放されたくない」と思うと涙が自然とこみあげ、土下座して上司に謝った。そして、二度と同じことをしないと心に誓った。
●すると、「おまえなぁ、いいかげんにしろよ」と上司の口調が普段に戻り、彼は「やった、助かった」と歓喜すると同時に、社会人として大切なことを学んだ。
●その一件以来、私生活を自分でコントロールするようになった。それは社会人として当たり前のことではあるが、この時のできごとが彼自身にプロの自覚をもたらしたのだ。
●翌年、K君はディズニーランドの年間最優秀スタッフに選ばれ、シンデレラ城の前で全スタッフから喝采を浴びた。そのとき、彼とその上司の胸に去来したものは何だったのだろうか。
2009年01月16日(金)更新
仕様をくれ
●「日本のIT技術者は諸外国にくらべて向上心が乏しい」
こう嘆くのは、他国の技術者を使ってソフト開発のビジネスを展開し、帰国子女でもあるI社長。Iさん自身、技術解説書を書いているくらいの人なので、人並み以上にそう感じているのでしょう。
●「サラリーマン根性丸出しの技術者は論外として、独立志向の強い人であっても“そこそこの状態”というレベルで停滞している人が多く、さらに上を目指そうというエネルギーが不足しています。これは大手企業の技術者でもベンチャーの技術者でも、さほど変わりません」とIさんは続けます。
●私はそれを聞きながら頭のなかでは、「これは技術だけの問題ではないぞ。営業でも経理でもマネジメントでも、みんな同じかもしれない」と思っていました。
●その道のプロとして専門性を高めることを怠ってはいけないのは、どの分野でも同じです。でも、「専門バカ」になることなく、コミュニケーションや企画立案などのビジネスセンスを同時に磨いていくこともまた、重要ではないでしょうか。技術者だから技術だけを深める、と考えていてはすぐに行き詰まります。
●聞いた話では、二流以下のソフトウエア開発技術者がよく言う共通のセリフがあるそうです。それは
「仕様をくれ」
だそうです。
●例えばサイト構築の案件で、プロジェクトの会議でも頭のなかは仕様のことしかなく、サイトを面白くするためのアイデアが出ない。これでは技術者ではなく職人というべきでしょう。プロジェクト会議で出てくる他のアイデアに対しても、「私が気になるのは仕様だけなんです」という雰囲気が言葉の端々にあらわれたりします。そんな技術者をみたら言ってやりましょう。
「君はしようがないな」と。
●技術はあくまでも手段であって、決して目的ではありません。顧客は技術を買っているのではなく、それを通して自分(自社)が得られる利益を買っているのです。使い古された言葉ですが、「ソリューション(問題解決)を求めている」と言い換えることもできるでしょう。
●技術がわかる営業マン、あるいは営業ができる技術者のことをセールスエンジニアと言いますが、あなたの会社には、どれだけのセールスエンジニアを抱えているでしょうか? そのような人材は、育成には時間がかかりますが、時間をかけてでも育成に値する価値があります。
●ここでひとつたとえ話をしましょう。あなたはハンバーガーショップに行き、ダブルチーズバーガーとコーラセットのLサイズを注文したとします。
●ところが店員が、「まことに申し上げにくいのですが、お客様の体型からみて、かなりの体脂肪が付いていらっしゃるご様子。将来のことを考えて、フィレオフィッシュにウーロン茶をお勧めいたしますが、いかがでしょうか?」と言われたらきっと不愉快な気持ちになるでしょう。ここに「ソリューション」のヒントがあるような気がします。
●ハンバーガーショップの店員に期待されているのは、顧客の注文通りに迅速かつ気持ちよく仕事をすることであり、そうした仕事ぶりにこそ価値があるのです。それ以上でもそれ以下でもありません。
●では、IT技術者はどうあるべきなのでしょうか? ハンバーガーショップの店員とは明らかに違い、顧客のリクエストを正確に理解するだけでなく、その真意や奥にある価値観、理念なども理解しようとする姿勢が大切なのです。時には、それらを見抜いたうえで顧客のリクエストとは異なる代案を提示し、意見を闘わせる場面も必要かもしれません。
●ちなみに以下は、ある会社と共同で作った技術社員のソリューション表です。その会社では、ある時期、この表を評価表に転用していました。
◆レベル1.「技術フェチ」
関心の対象は自分の技術や知識である。それが使えない状況が続くと、
ストレスがたまり、顧客や会社の悪口を言い始める。仕事で良い結果が
出なかったときにも、自分を省みず周囲を非難する。
◆レベル2.「忠実なしもべ」
言われたことを正確に実行するという意味で、ハンバーガーショップの
店員と同じ。技術の確かさを証明するのが喜びであって、顧客の要望する
結果が出たかどうかは興味がない。
それは顧客側の問題であって自分には関係がないと思っている。
◆レベル3.「コミュニケーター」
関心の対象は“顧客”の成功である。“顧客の期待”を明確に知るために
コミュニケーションをとる。顧客の要求を実現するためには、
どうすべきかを技術問題はいったん後回しにして考える。
◆レベル4.「伝道師」
顧客が成功するためであれば、いかなる対応もしてみせる覚悟がある。
顧客の要望を鵜呑みにするだけでなく、代案を提出したり、アイデアを
練り上げる段階から献身的になることができる。
●「仕様をくれ」という人はレベル1か2の人なのです。「仕様をくれ」ではなく、「何がお望みですか?」と質問できるレベル3・4の人を育てていきましょう。
こう嘆くのは、他国の技術者を使ってソフト開発のビジネスを展開し、帰国子女でもあるI社長。Iさん自身、技術解説書を書いているくらいの人なので、人並み以上にそう感じているのでしょう。
●「サラリーマン根性丸出しの技術者は論外として、独立志向の強い人であっても“そこそこの状態”というレベルで停滞している人が多く、さらに上を目指そうというエネルギーが不足しています。これは大手企業の技術者でもベンチャーの技術者でも、さほど変わりません」とIさんは続けます。
●私はそれを聞きながら頭のなかでは、「これは技術だけの問題ではないぞ。営業でも経理でもマネジメントでも、みんな同じかもしれない」と思っていました。
●その道のプロとして専門性を高めることを怠ってはいけないのは、どの分野でも同じです。でも、「専門バカ」になることなく、コミュニケーションや企画立案などのビジネスセンスを同時に磨いていくこともまた、重要ではないでしょうか。技術者だから技術だけを深める、と考えていてはすぐに行き詰まります。
●聞いた話では、二流以下のソフトウエア開発技術者がよく言う共通のセリフがあるそうです。それは
「仕様をくれ」
だそうです。
●例えばサイト構築の案件で、プロジェクトの会議でも頭のなかは仕様のことしかなく、サイトを面白くするためのアイデアが出ない。これでは技術者ではなく職人というべきでしょう。プロジェクト会議で出てくる他のアイデアに対しても、「私が気になるのは仕様だけなんです」という雰囲気が言葉の端々にあらわれたりします。そんな技術者をみたら言ってやりましょう。
「君はしようがないな」と。
●技術はあくまでも手段であって、決して目的ではありません。顧客は技術を買っているのではなく、それを通して自分(自社)が得られる利益を買っているのです。使い古された言葉ですが、「ソリューション(問題解決)を求めている」と言い換えることもできるでしょう。
●技術がわかる営業マン、あるいは営業ができる技術者のことをセールスエンジニアと言いますが、あなたの会社には、どれだけのセールスエンジニアを抱えているでしょうか? そのような人材は、育成には時間がかかりますが、時間をかけてでも育成に値する価値があります。
●ここでひとつたとえ話をしましょう。あなたはハンバーガーショップに行き、ダブルチーズバーガーとコーラセットのLサイズを注文したとします。
●ところが店員が、「まことに申し上げにくいのですが、お客様の体型からみて、かなりの体脂肪が付いていらっしゃるご様子。将来のことを考えて、フィレオフィッシュにウーロン茶をお勧めいたしますが、いかがでしょうか?」と言われたらきっと不愉快な気持ちになるでしょう。ここに「ソリューション」のヒントがあるような気がします。
●ハンバーガーショップの店員に期待されているのは、顧客の注文通りに迅速かつ気持ちよく仕事をすることであり、そうした仕事ぶりにこそ価値があるのです。それ以上でもそれ以下でもありません。
●では、IT技術者はどうあるべきなのでしょうか? ハンバーガーショップの店員とは明らかに違い、顧客のリクエストを正確に理解するだけでなく、その真意や奥にある価値観、理念なども理解しようとする姿勢が大切なのです。時には、それらを見抜いたうえで顧客のリクエストとは異なる代案を提示し、意見を闘わせる場面も必要かもしれません。
●ちなみに以下は、ある会社と共同で作った技術社員のソリューション表です。その会社では、ある時期、この表を評価表に転用していました。
◆レベル1.「技術フェチ」
関心の対象は自分の技術や知識である。それが使えない状況が続くと、
ストレスがたまり、顧客や会社の悪口を言い始める。仕事で良い結果が
出なかったときにも、自分を省みず周囲を非難する。
◆レベル2.「忠実なしもべ」
言われたことを正確に実行するという意味で、ハンバーガーショップの
店員と同じ。技術の確かさを証明するのが喜びであって、顧客の要望する
結果が出たかどうかは興味がない。
それは顧客側の問題であって自分には関係がないと思っている。
◆レベル3.「コミュニケーター」
関心の対象は“顧客”の成功である。“顧客の期待”を明確に知るために
コミュニケーションをとる。顧客の要求を実現するためには、
どうすべきかを技術問題はいったん後回しにして考える。
◆レベル4.「伝道師」
顧客が成功するためであれば、いかなる対応もしてみせる覚悟がある。
顧客の要望を鵜呑みにするだけでなく、代案を提出したり、アイデアを
練り上げる段階から献身的になることができる。
●「仕様をくれ」という人はレベル1か2の人なのです。「仕様をくれ」ではなく、「何がお望みですか?」と質問できるレベル3・4の人を育てていきましょう。
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