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2010年02月05日(金)更新

木の五衰について

●幸田露伴の随筆『洗心廣録(洗心録)』に、「木の五衰」(木がどのようにして弱っていくのか)が書かれています。

●まず第一段階として、木が繁茂してくると「懐の蒸れ(ふところのむれ)」というものが始まります。枝葉がふんだんに茂ったために風通しが悪くなり、蒸れはじめるのです。そうなると、酸素の代謝が悪くなり、害虫が付きやすくなるなどの問題が出始めます。

●その結果、木が伸びなくなります。これを「末止まり(うらどまり)」といい、成長がストップします。これが第二段階です。

●次の第三段階目では、「裾上がり(すそあがり)」が始まります。本来、木が成長過程にあるならば、根は深く広く伸びなければなりません。しかし、「裾上がり」になると、根が地表に出てしまい傷ついたり腐ったりします。

●裾上がりした木は根っこからではなく木の上部から枯れ始めます。これを第四段階の「末枯れ(すえがれ)」といいます。

●そして最後、「虫食い」の発生です。末枯れした木は害虫によって完全に枯れていきます。木が枯れるプロセスをみると、最初から害虫に食われて枯れたように思われがちですが、実際に枯れるまでの過程には、こうした段階があるのだそうです。以上が「木の五衰」です。

人間も企業も、真の実力は根っこの充実によるところが大きいものです。果たして、私たちは広く、太く、地表の奥深くに根をおろしているでしょうか。どこかで「末止まり」や「裾上がり」を起こしていないでしょうか。また、根っこ以外にも、枝葉をつけすぎるあまり代謝を阻害してはいないでしょうか。

●芽生えたての木が一日で大木になれないのと同様に、個人や企業が社会に認知される前には、「実力はあるが、まだ無名」という時期が必ずあります。そのようなときは、見てくれだけをよくして売名行為にうつつを抜かすのではなく、根っこの充実を図ることを忘れないようにしましょう

2010年01月29日(金)更新

本質を変える

●小川の流れは優しく、弱いものですが、ダムを作ってその流れをせき止め、水を貯めてから一気に放流すると、大きな力を生みます。経営資金も同じで、貯めてから一気に使うと爆発的な効果をもたらします。松下幸之助氏は、それを「ダム式経営」と表現し、全国の経営者に訴えました。

●「それはそうやけど、それが出来んから困っとるんや」と苦笑する多くの社長に対し、松下さんが「まず強く願うことですな」と教えるのを聞いて「背中に電流が走った」と、京セラ創業者の稲盛和夫氏が回顧しています。

●当時青年だった稲盛さんは、まず強く願い、具体的な一歩の行動を開始することが、自分の経営者人生を切りひらくのだと悟ったのでした。

●正月を迎えて心機一転を誓ったにも関わらず、1月も下旬になると、結局なにも変わっていないということがあります。なにも変わっていない自分の本質に嫌気がさすこともあるでしょう。
●本質を変えるということに関して、こんな故事があります。

・・・
あるとき達磨(だるま)大師のもとに青年が訪ねてきました。「どうか私の心を落ちつかせてください」と青年は言いました。

達磨はそれにこう答えました。
「その不安な心をここに持ってきなさい。そうしたら私が落ちつかせあげよう」

青年は困って一晩中考えたあげく、翌朝、こう言うしかありませんでした。
「不安な心を探しましたが、とらえることができませんでした」

達磨は言いました。
「とらえることのできぬ心が君の心なのだ」
・・・

●目に見えない心=「自分の本質」を探していても、すぐ日が暮れてしまいます。「本質は行動に宿るもの。今日の生活の一コマ一コマにその本質が宿るとすれば、そのコマを変えれば良い」というのが達磨大師の真意だったのでしょう。

●「人間の再起は朝起きにある」と断言したのは倫理法人会の前身組織をつくった丸山敏雄氏です。ズボラな性格や強情、言い訳ぐせといった、悪い習慣の大本が朝寝にあると考えた丸山氏は、明け方目がさめると同時にふとんから起きるようにしたそうです。

●みなさんも、明日の朝から早起きをしてみましょう。そして、今までやろうと思って先のばししてきたことを始めてみましょう。

心構えと行動、行動と心構え、それは魔法のペアなのです

2009年11月20日(金)更新

常識は自分で塗りかえろ

●「武沢君は内向的で、一見すると茫洋とした性格の持ち主で・・・」

これが小学一年生のとき、私が最初にもらった通知表に書いてあったコメントです。小学校一年生の私にはその漢字が読めず、理解もできませんでしたが、母親に「要するにおとなしくてボーッとしてるってことだよ」と教えられて、納得しました。

●小学生ながら、自分が同級生に比べて口数が少なく、恥ずかしがり屋であることはわかっていました。
しかし、尊敬する先生から「おとなしくてボーッとしている」とハッキリ言われ、親もそれを認めるということは、相当に内気だったのでしょう。

●55歳になった今でも自分のことを内向的だとは思います。若いころは社交的な方がかっこいいとのでは、と思うこともありましたが、今では自分の性格のことをあまり気にしなくなりました。むしろ、内向的だからこそ、こうしてメルマガやブログで自己表現するようになったのかもしれません。もし私が活動的な人間だったら、こうした執筆作業が10年間も続いたかどうか疑問です。

●「あがり症で人前でまったく話せなかった少年が、コンプレックス克服のため弁論部に入り、自己改造した」というような話をよく聞きます。セブンイレブン躍進の立役者として知られ、現在はイトーヨーカ堂のCEOを務める鈴木敏文氏もその一人です。
●氏は、小学生のときは教科書の朗読をさせられたりするとあがってしまって読めず、中学でも口頭試問で頭がまっ白になってしまい、何も発言できずに叱られたといいます。しかし、鈴木少年は積極的に自己改造に取り組み、高校生のときには生徒会長をつとめたり、卒業式で送辞や答辞を読むほどになったそうです。

●また、自己改造の分野は性格だけではありませんでした。足が遅くてからかわれたことから陸上部に入り、県大会に出場するほどの選手にもなりました。肉体面・性格面の両方で、自分のイメージを塗り替える経験をしたのです

●その後、鈴木氏はトーハン(東京出版販売)に入社し、友人の斡旋で1963年にイトーヨーカ堂に転職しました。当時はまだ4~5店舗の中堅企業だったイトーヨーカ堂ですが、そこで出店説明の仕事や広報の仕事をするうちに、世間の常識に疑問を感じるような場面に遭遇したといいます。

●出店候補地に出向き、地元商店街の人たちを相手に説明会を開いた際に、「規模の小さい店が大きい店に勝てるはずがない」と激しい反対を受けしました。しかし、鈴木さんは、「規模が問題なのではなく、生産性が問題なんだ」といった確信のもとに商店主と接しました。このときの経験が、のちにセブンイレブンの立ち上げにつながったのです。

●セブンイレブンは当時のアメリカで成功をおさめていましたが、その独特な業態を日本に持ち込むことに対し、FC契約を検討していたヨーカ堂社内ですら賛否両論がありました。むしろ、「日本では無理」という意見が主流派で、鈴木氏も絶対的な自信があったわけではなかったそうです。

●ですが、商品の調達を多品種少量方式とし、店舗運営の情報システムをすべてアウトソーシングするなど、当時の業界の常識をすべて塗りかえ、日本独自の精緻なシステムを作ってきました。そこまでできたのはもしかすると、氏の内向的でコツコツ努力するタイプのおかげだったのかもしれません。

この記事をお読みのみなさんも、自分自身と社員の個性や強みをより活かせるビジネス展開を考えようではありませんか

2009年06月26日(金)更新

脳は違う状況を欲する

●中国の故事に、「男子三日会わざれば刮目(かつもく)して相待つべし」というのがあります。三日も会っていないと、男子たるもの「お前があのときの武沢か?」と、相手が目をこすって確認するくらいに成長しているべきだという意味です。

1か月ぶりに会っても半年ぶりに会っても前と顔つきが変わらず、話す内容も前と同じようなことしか口にできないようでは、ビジネスリーダーたる資格がありません

●大阪で30名ほどの建材卸業を営む山田会長(仮名)という方がいます。彼は、「人間、生涯が学習や。まだまだ若いモンにはまかせておけへん。来年でワシも60歳になるが、今からもう一度大学生として学校へ通うんや」と言い、二年間学生として毎週土曜日に学校に通う決心をしました。

●山田さんは去年、社長職を譲って会長に退いたのですが、ヒマができたから学校通いを決意したのではありません。建設関連の知識をブラッシュアップし、卒業後2年以内に新会社を設立するという将来の計画のためです。

●意気軒昂というか、この心がけが素晴らしいではありませんか。山田会長は、常にこうした新しいプロジェクトを抱えているから魅力的に映るのでしょう。

●体は加齢とともに衰えますが、脳だけは年齢に関係なく、鍛えれば鍛えるほど成長することがわかっています。しかも、脳は同じことの繰り返しだと活動が停滞していきますが、新しい状況を与えてあげることで活性化するそうです
●『図解 頭がよくなる、朝10分の習慣』(川島隆太著、PHP研究所)によると、脳の鍛え方は単純な“読み書き計算”で充分とのことです。同書より、私が“なるほど”とうなった箇所をご紹介しましょう。

●この本を読んでまずビックリしたことは、ワクワク楽しみながら頭を使っているほうが脳のためにも良いことだと思っていましたが、そうではないらしいのです。

●ワクワクやっていようが淡々とやっていようが関係なく、たとえば、単純な計算を10分程度やりさえすれば脳は著しく活性化し始めることがわかっています。この本にある実験では、テレビゲームを楽しんでいるときの脳の活性度と、単純なクレペリン検査(足し算を使った性格検査)のときの脳とを比較した結果、単純計算に分があったことを報告しています。

●同じように、10分間の読書(特に音読)やメモを取ることによって脳の活性度が高まることを証明しています。とくに大脳の活性度が高い午前中こそが、もっとも読み書き計算にふさわしい時間帯だというのです。

●また、トランプゲームで連勝したり連敗したりしても脳の活性度は変わらないが、連敗していたときに、そこから脱出する1勝をあげたりすると、にわかに脳は活性化し出すといいます。

●もう一度確認します。

「脳に刺激を与えましょう」

そのためには、読み書き計算が一番。具体的には、

・毎朝10分間の音読
どうせなら積極的でやる気が生まれるような本を読み、自社や自分の目標も朗々と音読しましょう。ただし、目標などはワンパターンにならないよう、ときどき内容を書き換えるといいでしょう。

・毎朝、目標や計画・アイデアなどを紙に書こう

●このように脳を活性化させ、新しい目標や計画を考えることで、ブレイクスルーできるすばらしいアイデアがいくつか出てくると思います。「脳はいつもと違う状況を欲している」ということを忘れずにいたいものです

2009年05月29日(金)更新

老剣士のつぶやき

●先日、次のような寓話を聞きました。

●老剣士が研ぎたての青々とした刃先をもつ刀で、わら人形を一瞬で斬りました。力は入れていないようで、刀の重力を利用してシャープに振り抜いただけです。

●この老剣士は、今日も明日も明後日も、一日にわら人形を一体ずつ斬っていきました。

●それから3か月、刀の切れ味は鈍ってきているはずですが、本人も周囲もあまり気にしませんでした。

●さらに1年後、久々に老剣士の様子を見に行きましたが、今度ははっきりとわかるほど、様子がおかしくなっていました。

●研ぎたての刀を使っていたころは惚れ惚れするほどカッコよく斬っていたのに、今は「フムッ!」と力んだ声を出さないと斬れないのです。おまけに切断面もザラザラで、斬った後には息が乱れています。

●「大丈夫ですか?」と聞くと、老剣士は「大丈夫、ただ老いただけさ」と淋しそうに答えました。

●しかし、この息の乱れは老いが理由ではありません。剣を研いでいないだけなのです。
●なぜ研がないのか?

1.剣を研ごうと思っていない
2.剣の研ぎ方がわからない
3.剣を研ぐ時間がない

のいずれかです。

あなたの人生やビジネスにおいて「剣を研ぐ」ことに相当するものは何でしょうか? 本を読むことか、勉強することか、人と夢を語りあうことか、一人静かに考えることか。

今日の私の提案はこれです。

「剣を研ぐことを毎日の日課にしよう!」

あなたにあったやり方で、剣を研いでほしいのです。


●先日お会いした福島のAさん(47歳)は午前2時に起床し、2時間散歩するという習慣の持ち主だそうです。これは学生時代から続けている習慣で、心と身体を練るために欠かせない日課だといいます。

●それを聞いてビックリした私が「何時に寝るのですか?」と尋ねると、「午後7時半」という答えが返ってきて二度ビックリしました。私がネオン街に繰り出す時間に彼は休むのです。それが彼流の剣の研ぎ方です。

●ちなみに私は、早朝のカフェで読書と計画を練るときが剣を研ぐ時間になっています。

もういちど言います。

「あなたにあったやり方で、剣を研ぐことを毎日の日課にしましょう!」
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