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社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
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2011年05月13日(金)更新
100%のノー
今日は、ちょっとした実話ベースの物語を紹介しましょう。
●「あのぉ、お父さん。ちょっといいかしら」
リビングで趣味のクラシック音楽を楽しんでいた父・芳夫がヘッドフォンを外す。
「ああ、恵子か、どうしたんだい?」
今年大学生になる娘の恵子は、ちょっと言いにくそうな表情をしながらも父に近よって話し始めました。
●「お父さんね、私も今年から大学生になるので、そろそろウチを出てマンションで生活してみたいの。それって許してもらえるかしら?」
まったく予期していなかっただけに、芳夫は面食らいました。
「え~、マンション生活?なんだよ、それ。そんなのダメだよ。ダメに決まってる。何か理由でもあるわけ?大学は家から通っても充分近いでしょう」
「うん、家から通えるけど、前から大学生になったら独り住まいするのが夢だったの」
「夢といったって恵子、そんなにウチがいやなのか?」
●そうした押し問答のあげく、いつもの会話のように結局、折れるのは娘のほうでした。
「やっぱりダメかぁ・・・」
恵子は力を落とし、自室に戻りました。
恵子は力を落とし、自室に戻りました。
恵子にとって大学生活をマンションで過ごすことが夢とはいえ、経済的にゆとりがないことも知っていたのでこの話はずっと黙っていたのです。
「アルバイトしようかしら・・・。でも美術をもっと勉強したくて入った大学なのだからアルバイトする時間がもったいないし」恵子は途方にくれました。
●一方、父の芳夫も音楽を止めてバーボンをかたむけながら考え込んでいます。
「娘の独り暮らしかぁ。恵子のやつ、相当思いつめた顔をしていたな。きっと、昨日や今日思いついた話じゃなかろう。もっとゆっくり話を聞いてやるべきだったな。でも、いくら話を聞いたところでマンション費用はどうする?それに心配のネタを増やしたくないし」
●この段階では、娘の希望に対して父が「NO」を宣告し、話は決裂したままです。
でも簡単には諦めきれない恵子は、友人の誘いで「がんばれ!ナイト」」という勉強会に参加し、コンサルタントの武沢先生に相談してみることにしました。
事の経緯を理解した武沢は、レターヘッドにペンを走らせました。
1.父はなぜ反対していると思うか
2.どのようにしたら父の反対理由を消し去ることができるか
と書いてあります。
●武沢は言います。
「アメリカには、『話す前に、相手の靴を履け』ということわざがあります。自己主張するまえに、まず自分の靴を脱ぎ、相手にも靴を脱いでもらい、許可を得てから相手の靴を履かしてもらう。それによって、お互いに深い理解が得られるということです。自分の立場だけに固執していると迷路にはまります。この場合、お父さんの気持ちとして、なぜ反対していると思うか、考えたことはありますか?」
恵子は、
「はい、あります。父もサラリーマンとしてがんばっていて尊敬しているのですが、自宅のローンが残っていて私のマンションの賃料を新たに負担するのは大変なのではないかと」
「じゃぁ、それを1番の欄に書きましょう」
と武沢は、「マンションの賃料負担が困難」と書きました。
●恵子はさらに続けて、
「反対理由は費用だけじゃないと思います。親として娘の独り暮らしが心配なのだと思います」
「ほぉ、それはなぜ」
「生活が乱れたりしないかと」
「生活が乱れるとは、例えばどのようなこと」
「う~ん、食生活が偏ったりとか、夜更かしして睡眠不足になったりとか、男性が遊びに来たりとか・・・」
「じゃあ、それも書こう」
●このようにして、次のようなものが完成しました。
1.父はなぜ反対していると思うか
・マンションの賃料負担が困難
・生活の乱れ(食事、睡眠などの健康管理や時間管理、友人と遊
びすぎて勉学がおろそかになること)
2.どのようにしたら父の反対理由を消し去ることができるか
・マンション賃料は10万円するので、その負担法について父と相
談する。
私としては、一年生のうちは特に学業に専念したいので、二年
になったら家庭教師と音楽のアルバイトで数万円以上稼ぐ。趣
味の洋服と旅行はしばらく我慢する。図書館利用で本代も浮か
す。
・生活の乱れについて
信頼してもらえるまでの間は、父と母にもマンションの鍵を渡
し、いつでも飛び入り査察を受け入れる。
毎日帰宅・就寝報告メールを両親に送る。
●恵子は完成したシートを見ながら、明るい笑顔を取り戻していました。
「これでもう一度、お父さんにぶつかってみる。私も、二年生になるまで我慢する覚悟ができたし、お父さんとお母さんには決して心配かけないという自信がもてたから。ありがとう、武沢さん。『がんばれ!ナイト』ってすごい会なのですね」
恵子は翌日からメルマガ読者になってくれました。
●「部長、そろそろホームページをリニューアルしたいのですが」
「ダメだ。今でも有効に使われていないのに。とんでもない」
「社長、新しいパソコンを買って欲しいのですが」
「ダメだ、あそこに機械が余っているだろう」
などなど、
あなたも時と場合に応じて恵子役や芳夫役を演じることがあるはずです。
家庭や仕事での人間関係は、対立する関係ではないはず。最初は困難に思えた対立的問題も、粘り強く接していくことによって解決の糸口が見つかることが多いのです。
「100%のノー」なんてそんなにあるものではありません。
2011年05月06日(金)更新
同じことをくり返す
●かつて「世界一受けたい授業」(テレビ番組)にメジャーリーグで活躍している松井秀喜選手が登場しました。彼の授業テーマは、"どのようにしたら緊張せずに、普段通りの力が発揮できるか"というテーマでした。授業の内容は記憶に残らなかったのですが、その後のちょっとしたパフォーマンスが素晴らしかった。
●日米通算で500本近い数のホームランを打っている松井選手ですが、そのすべてのホームランを覚えているというのです。そこで実験として出演者が「じゃあ、72本目は?」などと聞く。それに対して松井選手は、
「ん~、たしか広島市民球場で○○投手から直球を打ったホームラン」
と返答していくのです。
●全部正解しているので司会者が、「松井さんは覚えようと努力しているのですか?」と聞くと「いいえ、自然に覚えました」と。
毎打席終わるたびにベンチでバッティングを修正してきた証拠でしょう。きっと夜、自宅に戻ってからも日記などに記録を付けているに違いありません。
●そういえば、将棋でも囲碁でも試合後の感想戦で、今の対局をそのまま再現できるのはもちろん、ずっと以前の棋譜までを記憶のデータベースに格納し、それらを参照しながら今の対局に臨んでいるといいます。
恐るべし、プロの記憶力。
●「武沢さん、あなたはメルマガの1000号記念で何を書いたの?」と聞かれたら、私の場合は絶句してしまいます。
正直言って、いつ1000号に到達したのかも覚えていません。
●松井選手みたく、
「1000号目のメルマガ記事は?」と聞かれ、『不人気メルマガも悪くない』とスラスラ答えたいものです。
ですが、それらのことを覚えていることに価値があるのではないはずです。
毎回の体験を次に活かすために整理し、修正していくからこそ自然に覚えられるものなのでしょう。だから、自らの体験をふり返り、整理することに意味があると思います。
●高野山専修学院の添田隆俊大僧正は、「同じことをくり返すことが一番大切な修業である」と次のような主旨のことを語っておられました。
・・・
熱があろうが風邪をひいていようが、朝のお勤めを365日果たす。それを50年くらい厳粛にする。
修行するということは、水をかぶったり断食したりすることではない。
そんなのは、特別な人がやることであって、大切なのは誰でもできるものでなければ修行にならない。
だから、同じことをくり返すということが一番大切な修行の信心だ。
何を信心するかというと、同じことをくり返すこと、なのだ。
・・・
●どれだけ上手くできようが浮かれず、奢らず。また、どれだけミスし、失敗しようが決してくじけない。ただ淡々と自らの体験から学習し、他人の体験からもヒントや教訓をもらい、次に活かす。自らのテーマを決めてくり返す。真理はそんなシンプルなことのようですが、それに倦くことがあってはいけません。
2011年04月25日(月)更新
唖然とする医師
●「人間は80歳まで強くなれる!」というキャッチコピーに惹かれて『武道の力』(時津賢児著 大和書房)という本を読みました。
●この本は、
野球でも相撲でも、サッカー、スキー、マラソン、格闘技など何でもが、20代や30代の若手選手が優勝する。つまりその年齢で選手としてのピークを迎え、それ以降は衰えていくばかりのスポーツの現状に対し、警鐘を鳴らしているのです。
●例外は剣道。剣道だけは、若手がハァハァと息を乱していても古老の剣士は微動だにせず勝つ。
このように、鍛え方次第でスポーツは80歳まで強くなれるということを教えてくれる本です。
また、それはスポーツだけではなく、人間の脳の働きも80歳までは強化できると著者は主張しているのです。
●単なる理論の書ではありません。著者が今なお実践中のことだけに大いに迫力があります。
身体というものは、鍛えないと弱っていく一方です。それにつれて脳まで弱っていくのがやっかいです。
情熱や欲望、闘争心、集中力、根気などといった精神力は、脳の働きに負うところが大きいわけですから、身体と脳は鍛えなければならないのです。
●また、かつて合気道・大東流の佐川幸義師範の弟子で、筑波大学の数学教授・木村達雄氏が、オリンピック候補になっていた柔道選手を片っ端から投げ飛ばし、全員を自信喪失にさせてしまったことがありました。
その木村氏が書いた本に、ビックリするエピソードが紹介されています。
・・・佐川先生は十七歳で合気の極意をつかんでしまった。それを強化するためにいろいろ鍛錬を考えているので、最初から普通の人と考え方もやり方も違っている。(中略)
そして何十年と今でも休みなく鍛錬を続けているのである。なお筆者は、最近先生が使っておられる鉄ゲタ、鉄槌、鉄棒、鉄パイプの槍を見せていただいたが、その重さに驚いた。筆者が実際にこれを持ってみて、これをいきなり使ったら腕をこわしてしまうと思った。
(中略)
佐川先生が九十歳の頃、東大病院に念のための再検査を受けに行ったことがある。医師が運動心電図を計るので何か運動してほしいというと、先生はすぐさま百五十回腕立て伏せをやってしまい、医師を唖然とさせた。
・・・
●これを読んだとき、私はすごいと思いました。
"継続は力なり"とは言いますが、そんな生やさしい表現ではもどかしい。
鍛えるという行為を継続するとミラクルが起きます。
●この佐川先生も、若いころは逆三角形の見事な筋肉質の肉体を作っていたらしいですが、その割に技に効果がないという理由で、考え方と鍛錬法を変えたそうです。
●身体も頭脳も80歳までは進化することが分かっただけで、やる気が出てくるではないですか。自分にあった鍛え方を見つけていきましょう。
★『武道の力』時津賢児著、大和書房
→ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4479791108/
2011年04月15日(金)更新
彼の流儀
●一定の年齢になると、自分独自のスタイルや流儀をもつように心がけたいものです。
私の場合は、平日は毎日メルマガなどの原稿を2~3本書き、ブログやFacebookでそれらを外部に発信しています。1本のメルマガ作成に要する時間はおおむね2時間です。原則として書き溜めをしません。その日のメッセージはその日に書くのが好きだからそうしています。従って、月曜日から金曜日まで毎朝最低でも3~4時間は原稿を書くのが私の10年来の日課になっています。
●そんなお話しをある所でしたところ、懇親会である経営者からこんな助言をいただきました。
「武沢さん、私もメルマガを発行していますが、基本的にはすきま時間を見つけてやっています。仕事に支障が出ないやり方があると思いますので、武沢さんももっとすきま時間を活用して書いてみられてはどうですか?」
●助言は大変ありがたいのですが、価値観や流儀が違うのです。
私の場合は、メルマガ発行が大切な仕事です。メインの仕事と言っても構いません。ですから、すきま時間でやることではないのです。
これが私の流儀です。流儀とは価値観を反映させたもの。こだわりのようなものです。
●ある経営者は、経営会議の時間の半分はメモをとっています。何をそんなに書いているのか尋ねると、
「部下の発言内容をメモるときもあるが、それから触発される自分のアイデアをメモることが多い。一回の会議で10頁以上のメモ量になることもある」ということでした。
これが彼の流儀です。
●ベートーベンは膨大な数の楽譜メモ断片を残していますが、作曲中にはそれらのメモを見ることはなかったといいます。「なぜそうするのか?」と尋ねられたベートーベンは、「一度書かないと忘れるが、一度書けば忘れない。だからもう見る必要はない」と答えたといいます。
これが彼の流儀です。
●自分が話すのを自分が聞いて学ぶ人もいます。GMの中興の祖とも言われるアルフレッド・スローンもその一人で、会議中には一切メモをとらなかった。部下の発言で、重要なものがあればスローンは自分の言葉でもう一度同じことを語り、その場で咀嚼してしまう人だったのでしょう。
これが彼の流儀です。
●このように人それぞれに仕事の流儀というものがあって、正解は一つではありません。自分にとって最も高い成果が得られるスタイルを見つけ、自覚し、磨き、貫きましょう。
なぜなら、会社経営とは流儀のかたまりのようなものだからです。
2011年04月08日(金)更新
部下に起業家が何人いるか
●成長著しい会社の多くはいつも社内が混乱しています。
部下:「部長、また変更ですか?」
部長:「おお、仕様を変更する。すぐに対応してくれ」
部下:「あっちの仕事とどっちが優先ですか?」
部長:「どっちも最優先だ。いつまでにできる?」
部下:「今日中になんとか……」
部長:「悪いが待てない、午前中にやってくれないか」
こんな会話が毎日のように起きています。さながら戦場のようなもの。部下にとっても、毎日が未知の仕事ばかりで、過去の前例などなにも頼りになりません。
●しかし、停滞している会社では通常、社内はとても静かで秩序だった毎日を送っています。そして深く静かに大企業病に犯されていくのです。
大企業病とは、大企業が陥りやすいからそう名づけられたのですが、中小零細企業でもそれは起こりますし、ベンチャー企業だってそうなる危険性をはらんでいるのです。
●それは、秩序を乱されるのが嫌いな人たちが権力を握ったときに生まれる"秩序維持病"のようなものです。
壊されるのが嫌いで守るのが大好きな人たちはこう言います。
・専務、またやり方を変えるのですか?
・また新しいことをやるのですか?
・前回このようにおっしゃったではありませんか
・もう絶対に変えませんね?
そんなとき、「もう絶対に変えないよ」「これが最後だから」などと言ってはなりません。上司がそう言った瞬間から大企業病が始まるのです。
●むしろ変革の必要性を説き、変えるのを嫌がる人たちを鼓舞し、リードするのが上司の役目です。優秀な人たちの多くは、秩序を大切にしたがります。そうした人を大切にしなければなりませんが、「何も変えない・何も始めない」のが素晴らしいのではないということも伝える義務があるのです。
●ドラッカーはこう言います。
「経営はマーケティングとイノベーションに尽きる。そのイノベーションを行うのは人であり、人は組織のなかで動く。したがってイノベーションを行うには、そこに働く人間一人ひとりがいつでも起業家になれる構造が必要である」
(『イノベーションと起業家精神』)
あなたの部下に起業家が何人いるかが勝負なのです。
●あなたの会社の経営幹部にはこう言ってあげましょう。
・サラリーマン同士でつるむなよ。たくさんの経営者や起業家と接触しなさい!
・自分でやりたいことを10以上あげることができるか(もちろん仕事で)?
・3年以内に社長になる計画をもっているか?
・その気があれば、私と組んでパートナー会社を立ち上げないか?
そういう働きかけに対して敏感に反応する人が頼もしいのです。
・人に言われたことをきちんとこなすか
・上司に気に入られる人間性をもっているか
・報告・連絡・相談がきちんとできるか
などはサラリーマンの評価尺度です。
それら以上に大切なことは、依頼主(顧客や上司)が望む成果を上げることができる人なのです。細かい指示をしなくても、望む結果を伝えれば分かってくれる人を登用しましょう。
●あなたの部下、特に経営幹部には大いに起業家精神を要求すべし。
この二年間で何を立ち上げたか、何を壊したか、を評価基準にしよう。そして今月は何を始め、何をやめるつもりなのか、お互いに明確にしながら仕事を進めていきたいものです。
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