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2009年09月11日(金)更新

ビジュアル化の必要性

●人生とは、「小さなプロジェクトが集まってできた、大きなプロジェクト」と考えることができます。小さなプロジェクト(家庭とか健康とか教育とか)も、大きなプロジェクト(志とか夢など)も成功させたいもの。そのためには、効果的な計画立案やプロジェクト管理、タイムマネジメントの技法を身につけることが必要です。当然、企業経営にも同じことが言えるでしょう。

●ある日、計画立案に関する二日間のセミナーを受講し、「計画→実行→評価(Plan→Do→Check)」という管理のサイクルだけではうまくいかない、と教えられました。

「計画」をする前に、「ビジュアル化」というもっと大切なプロセスがあるというのです。「ビジュアル化」は、規模の大小を問わず、あらゆるプロジェクトで最初に取り組むべきであり、期待するイメージが曖昧なのに「計画」を立てても、その後のプロジェクトが頓挫しやすいということです

●なるほど、と私は膝を打ちました。「ビジュアル化」といえば、近年、マインドマッピングなどの技法が流行しています。論理的思考に長けた左脳型人間でも、特別な練習を積むことなく作成出来るのがウケているのでしょう。最近では「マンダラチャート」という技法も人気ですが、イメージを明確にするためにこうした技法を覚えておくといいかも知れません。
●しかし、やり方を間違えると逆効果になります。ロシアの心理学者シェレシェフスキー(1892~1958)は、記憶力の問題で悩んでいたといいます。といっても、すぐに忘れてしまうのではなく、なんでも覚えてしまう記憶力のために苦しんでいたそうです。

●そこで、「少しでも多く忘れたい」といろいろな方法に挑戦し、行き着いた一つの方法が「聞いたことをそのまますべて書き写す」ことでした

●この画期的な方法によって、悩みを軽減させていたというから皮肉な話です。私たちは日々のことを書き出し、その中から優先順位づけをして行動しようとしていますが、別の視点からみると、大切なことを忘れるための方法かもしれないのです。

●最近、『ストーリービジョンが経営を変える』(酒井光雄著、日本経営合理化協会出版局刊)という本が売れていますが、従来の経営計画だけでなく、将来のイメージを明確にする取り組みがますます必要とされている現われなのかもしれません

「まず計画ありき」ではなく、「まずビジュアル化ありき」ということを念頭に置いて、会社運営、人生運営をしていきましょう

2009年06月12日(金)更新

ミッション・インポッシブル

プロならば、「ミッション・インポッシブル(不可能と思える指令)」に挑戦し、以前は不可能だったことでも、可能にしていくことが大切です。実績に裏打ちされた自信というものは、自己概念をより強固にしてくれるからです

●卑近な例で恐縮ですが、私も「ミッション・インポッシブル」を何度かクリアしてきました。特に大きな節目となったのは、次の5つのミッションです。

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最初のミッション…企画スタッフ職で成功せよ(27歳)

20代半ばまでは、町工場の工員や小売業の販売員として経験を積み、それなりに責任を果たしていましたが、27歳のときに初めての頭脳労働となる企画職を命じられました。そのとき与えられたテーマは人事教育。直属の上司は社長でしたので、勤務先のオフィスに出社したときにはとにかく頭が真っ白だったのを覚えています。

しかし、1年後に私が考案した社員教育制度が動きだし、それが機能し始めたときの手応えと自信は相当なものがありました。

二つ目のミッション…フルコミセールスマンとして成功せよ(31歳)

結婚、未知の街だった名古屋への引っ越し、完全歩合制(フルコミ)のセールスマンへの転職、と初めてづくしに挑み、すべて乗り切ったのが31歳のときでした。

完全歩合制だったので、どこで何をしていても自由です。売りまくって億万長者になる可能性もあれば、一文無しになって夜逃げすることもある、という状態でした。

「収入がほしい」「仕事をしよう」と思っても、セールスとは相手があってのことです。思うように成果が上がらないときはやる気も低下し、数か月間収入が途絶えたこともありました。

しかし、最終的には国内ベスト10の販売実績をあげ、その後、組織のマネジャーとして表彰されるくらいの実績をあげることができました。ここで私は、新たな自己概念を獲得したのです。


三つ目のミッション…経営コンサルタントとして成功せよ(40歳)

経営コンサルタントという仕事が何なのかもよくわからないまま、とにかくやりたくて開業しました。これも大変むずかしいミッションでした。

友人が何社か顧問先を紹介してくれたので、初期の苦しさを緩和することはできましたが、自分で自分を売り込むことには長い間慣れることができませんでした。

最初こそ自転車操業でしたが、開業して1年経ったころには、安定した収入が得られるようになりました。その頃になると、「自分の労働がストレートに収入になる」という実感をもてるようになり、感無量だったことを覚えています。


四つ目のミッション…インターネットで成功せよ(46歳)

コンサルタントの仕事が軌道にのってから数年が経ち、もっとエキサイティングな冒険がしたくてインターネットに取り組みました。

最初はホームページを作ってアクセスを集めることしか眼中になかったのですが、メールマガジンの存在を知り、やってみることにしました。ネットバブルの崩壊により業界が閑散としていたころの話です(もっとも、当時の私はそんなタイミングだったとは、まったく知りませんでした)。

最初はメルマガを発行すること自体が恥ずかしく、自分の原稿が稚拙にみえて耐えられないほどでした。しかし、毎日継続していると、それが習慣化して度胸もついてきました。

読者数が1,000人、5,000人、10,000人、20,000人、30,000人とハードルを越えていくたびに大騒ぎし、私のビジネスも人生も自己概念も大きく変わっていきました。


五つ目のミッション…本の作家として成功せよ(49歳)

読者数が多いメルマガとして、「がんばれ社長!」の知名度も上がり、ネットからの収入も増えてきましたが、当時の私はまだ著作がなく、書いたとしてもそれが売れるかどうか自信がありませんでした。

しかし、49歳のときに処女作となる『経営の教科書』(明日香出版社)を執筆し、発売3日後に増刷がかかるくらい売れました。これをきっかけに出版の依頼が増えるようになり、今では5冊の著作があります。

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六つ目のミッション…????

六つ目となるミッションの内容は、まだ決まっていません。ですが、これからも「ミッション・インポッシブル」を乗り越えていきたいと思っています。

2009年04月24日(金)更新

劇団四季はなぜ強い

●10数年前、当時小学生だった長女にせがまれて『キャッツ』を見て、私はミュージカルと劇団四季のファンになりました。『キャッツ』だけでも十数回観ていますし、本場ブロードウエイの『キャッツ』まで観劇したほどです。最近は夫婦で行くことも多くなり、『マンマ・ミーア』の名古屋公演にも何度か足を運びました。

●劇団四季の年間公演回数は3,000回強、売上高は230億円強と、この数年ほど高原状態が続いています。大不況のあおりを受けてチケットを値下げするなど、先行きは楽観視できませんが、報道によれば当面の業績はまだまだ底堅いようです。

●そんな劇団四季の強さの秘訣について知りたいと思い、あるとき同社のサイトをくまなく見ていたら、ヒントになりそうなコンテンツを発見しました。それは「理念」の力ではないか、ということです

●劇団四季のサイトには、1953年(昭和28年)に四季を創立したときの仲間、浅利慶太氏と日下武史氏の「二人の仲間」と題した対談記事が掲載されていました(今はリニューアルに伴って削除されています)。
●その対談のなかで浅利氏は、「僕の一生を決めた」として『演劇論』(ルイ・ジュヴェ著)の一節を紹介しています。そのなかから一部を引用してみましょう。

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日下:フランスの大演出家で、プロデューサーでもあったルイ・ジュヴェの
   「演劇論」を讀んで以来だね。

浅利:そう。そこに「演劇の問題」というエッセーがある。それが僕の一生を決めた。

日下:内容を話してみてよ。

浅利:最近朝日新聞の読書面に連載したエッセーの中で紹介した。ちょっと
   堅い文章だし、長くなるけれど、読んでみようか。

日下:是非やってよ。

浅利:「演劇に諸問題などありはしない、問題はただ一つだけだ。それは当るか
   当らないかの問題だ。当りなくして演劇はない。大衆の同意、その喝采、
   これこそこの芸術の唯一の目的と断じて憚らぬ。演劇は先づ一つの事業、
   繁昌する一つの商業的な企業であらねばならぬ。

   然る後に初めて演劇は芸術の領域に自己の地位を確保することを許容される。
   二つの目標を同時に結びつけねばならぬ怖るべき二者選一、それは演劇の
   地位をあらゆる追従とあらゆる妥協の面の上に置く。

   現実的なものと精神的なものとが結びつき、相対立する必然とは正にかくの
   如きものであって、これを以てすればわれわれの職業の苦い快楽も、
   その憐れむべき偉大さも一挙に説明することが出来る。(鈴木力衛訳)」

   こういうことなんだよ。

日下:四季の理念の根本にはこの考え方がある。
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●いかがでしょうか。「演劇の問題はただ一つだけだ。それは当たるか当たらないかの問題だ。当たりなくして演劇はない。」とは何たる痛快な断言でしょう。

そしてのちにこう続くのがまたまた明快です。

「演劇は先づ一つの事業、繁昌する一つの商業的な企業であらねばならぬ。然る後に初めて演劇は芸術の領域に自己の地位を確保することを許容される。(後略)」

これは演劇の問題だけではありません。一般の事業においてもまさしく当てはまるはずです。それはこうなります。

事業の問題はただ一つだけだ。それは利益が出るか出ないかの問題だ。利益なくして事業はない。事業はまず一つの繁昌する商業的な企業であらねばならぬ。然る後に初めて事業は理念や思想の領域に自己の地位を確保することを許容される。」(「がんばれ社長!」訳)

●劇団四季の考え方がすばらしいというよりは、ルイ・ジュヴェの「演劇論」の方を賛美すべきかもしれませんが、劇団四季の場合はその徹底度合いが並外れているから、賞賛に値するのではないでしょうか。

●昨今の経営環境のなかでも最高益を更新している会社のほとんどが、理念を際だたせている会社であることにも注目したいものです。

2009年04月17日(金)更新

リーダーの魅力

●ある日、無精ひげを剃らないままいつも行っているカフェにいったところ、女性店員に「ちょい悪オヤジみたいですね」と言われました。

●気をよくした私は、それから一週間ひげを剃らなかったのですが、外見をちょっとだけ不良オヤジっぽくしてみたところで、中味が変わらなきゃ意味がないと悟り、結局、ひげはきれいさっぱり落としました。人の中味は生き様で決まるので、どうせならそちらを魅力的にしたいものです

●特に企業のトップである社長は、表面的なビジュアルや発言内容ではなく、生き様が一貫していなければ、魅力が生まれてきません。もちろん、人間ですから悪戦苦闘し、失敗もすることもあるでしょうが、目指すものがぶれてはいけません。

●また、欠点がいくつかあったとしても、人にはない長所があればそちらのほうが魅力となるでしょう。魅力とは、人として欠点がないこと大事なのではありません。たとえ欠点があっても、それ以上に大きな長所があるからこそ、魅力が生じてくるのです
●旧約聖書でも、ダビデがゴリアテを倒したとき、街中大騒ぎになり彼をイスラエルの英雄として扱いました。そのダビデ自身は欠点も多く、ひどいケースだと、自分の部下の奥方に惚れてしまい、奥様ほしさに部下を戦死させたりしています。そんなひどい悪事もしていますが、それを上回るだけの大きな魅力があったからこそ、旧約聖書を代表するヒーローになったのでしょう。

●論語のなかで孔子はこう語っています。

「その知及ぶべし、その愚及ぶべからざるなり」

その意味は、彼の賢い点は真似ができるけれども、馬鹿っぷりは到底まねができないということです。めずらしく孔子が、ある人物の愚のみごとさをほめたたえているのです。

●ダビデにも論語にも共通する人間の魅力とは、次の5つにまとめられるのではないでしょうか。

1.誰にも負けない強みがある(長所)
2.人よりはるかに劣るような弱みがある(短所)
3.それらを隠そうとしない(裏表なし)
4.バカなことができる(愚)
5.周囲が想像できないほど高い志がある(イチローのような孤高な「志」)

2009年04月10日(金)更新

情熱のマネジメント

●フランスの啓蒙家、ラ・ロシュフーコーは「人間の心の中では情熱の不断の生殖が行われていて、一つの情熱の消滅はもう一つの情熱の出現と、ほぼ決まっている」と語っています。この意見が正しいかどうかはわかりませんが、『孟子』も「心を養うには欲をすくなくするよりいい方法はない」と教えています。情熱は、ここぞという時に一気呵成に使うべきであって、チョロチョロと小出しにしていては大した仕事はできないという意味でしょう。

●情熱量の最大値が100ポイントのAさんがここにいるとします。彼は何事にも才能豊かで、本業の経営も、業界活動も、趣味のスポーツも、子供の教育も、地域活動も熱心に行なっています。彼が、それぞれに情熱を分散して使った結果、本業経営に投入できた情熱を60ポイントとしましょう。

●さらにAさんは、本業経営の中で動いている6つのプロジェクトに関心を分散しています。本業に注ぎ込んだ60ポイントを6で割ると、1つの案件にはそれぞれ10ポイントずつ投入していることになります。

●一方、情熱量はAさんよりはるかに見劣りするBさんは、最大で60ポイントの情熱しかもっていません。ところが、彼は不器用なため本業の経営に徹していること、その中でも事業の領域をしぼりこんでいるので、1つのプロジェクトに15ポイントずつ割くことができたとします。もし、AさんとBさんが同じ業界で働いていたとすると、きっとBさんの会社が勝つことでしょう

●ここに「小」が「大」に勝ち、「弱者」が「強者」に勝つ戦略があるのです。才能でも資金でも人材でも、見劣りする企業や個人が勝つときは、こうした一点集中しているときだけなのです
●さらにロシュフーコーはこうも言っています。

「小さなことに熱中してしまう人は大きなことができなくなる」

量の個人差はあるにしろ、人は情熱の対象なしでは生きていけません。その情熱の対象はしっかりとマネジメントすべきであり、あなた自身の大切な仕事なのです。小さなことに熱中してしまって、大きなことをおろそかにしていないかどうか、ときどき点検する必要があるでしょう

●私は一年に四冊の手帳を使います。いつも同じ手帳を使うのですが、四半期ごとにまっさらな手帳を卸しているのです。そうすることで、お正月のときの神聖な気分を奮い起こし、大きなことに挑もうとしているのです。今年も第一四半期が終わって、今の私の手帳はまっさらです。

あなたは「情熱のマネジメント」をどのようにされているのでしょうか
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