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2006年10月20日(金)更新

使いにくい社員

●すぐれた経営者は現実的な視点を忘れません。夢や理想を追い求めながらも思考回路は現実を直視しています。

●では、何が非現実的なことで、何が現実的なことなのでしょうか。

●非現実的なこととは、変えることができないことを変えようとすることです。
それは、「過去」と「他人」。過去と他人を変えようとすることほど非現実的なことはありません。他人が変わろうとすることを手助けすることは出来ても、他人を変えることはできない。親子や夫婦といえども同様でしょう。

●すぐれた経営者が持ち合わせている現実的な考え方とは、未来と自分を変えるために今できることに関心を集中することです。

●ギャラップ調査でおなじみのギャラップ社には膨大な数におよぶインタビュー調査レポートがあります。その中におもしろいものがありました。
あなたも一緒に考えてみてください。
あなたはマネージャーとして、次の2人の部下のうち、どちらを選ぶか?
1.一人で2億円を売り上げるが独立心が強く一匹狼のような人間
2.売上は半分だが、和気あいあいでチームプレイする人間

●私がお付き合いしている人たちにこの質問をしたことがないので、結果はわかりませんが、おそらく日本の中小企業では、2番の方を選ぶ人が多いと思われます。

●しかし、ギャラップ調査によるとすぐれたマネージャーは1番を選択すると答えています。これは、才能に重きをおくのか、管理しやすさに重きをおくのかの選択の問題です。

●すぐれたマネージャーは、管理しやすい人材をさがすのでなく、世界水準をめざせる才能の持ち主を求めています。管理しやすいからという理由で、生産性の劣る人を重用して、しかもそのタイプを才能ある人に変えようということは、上記の「非現実的」な考え方なのでしょう。

●こんなことを書くと、「当社は、価値観や理念の共有をいちばんに重要視している」という批判をもらいそうです。それは、たしかに大切なことです。

●ところが、実際には自分の手に余るような部下を総称して、すべて、「うちには合わないヤツ」と切って捨てているケースも多いです。
・報告・連絡・相談が出来ないが、飛び抜けたセールス実績を上げる営業社員
・ずば抜けたデザインセンスをもったデザイナーだが、遅刻の常習犯
・完璧な月次決算をまとめるが、社内親睦会にはすべて欠席する経理社員

強い会社には、こうした人材が必ずいる。いるだけではなく、いきいきと活躍しています。そして、こういうタイプがどんな会社にも一人や二人いるはずです。あるいはかつて、いたはずです。このような人材が一人もいなくなった会社が、その後、強くなることはありません。

●この稿、次回に続きますが、ひとつ質問をお出しします。
才能ある部下が遅刻の常習犯。あなたならどうする?
お考えいただきたい。優秀なマネージャーの答えはひとつです。

2006年09月29日(金)更新

経営のプロになろう

●いわゆる“養子社長”と話し合う機会がありました。奥さん方の姓を名乗り、奥さんの父親が経営する会社の役員になり、やがて社長になったそうです。

●家庭内でさえ気苦労の多い立場に加えて、企業内でも養子の立場がついて回り、従業員もそうしたリーダーの出現に対して、お手並み拝見とでもいった形で傍観する……。そのやりにくさは、容易に想像がつきます。

●しかし、私の知るかぎり、こうしたケースが決して悪い結果につながるわけではありません。むしろ、養子の立場だからかえって甘えがなく、責任ある経営をする例が多いのです

●実の父親の会社を継いだ息子が、「会社の資産=家族の資産」と考えやすいのに対し、養子社長は経営を私物化するようなマネはできません。先代社長が存命であれば、なおのことです。

●そういえば、江戸時代末期において、名君と誉れが高かった大名にも養子が多いようです。越前の松平春嶽、会津の松平容守、土佐の山ノ内容堂、宇和島の伊達宗城、長岡の牧野忠訓など、積極的に大名たらんとすることを欲した者はすべて養子でした。

●「俺は大名としてお家のために足跡を残すのだ」という気概が、養子大名には強かったのでしょう。これに対して、世襲の大名で聡明な働きをしたのは、薩摩の島津と佐賀の鍋島くらいでしょうか。

●養子社長と話していて気づくことは、経営成果に対する責任感がオーナー社長以上に強いということです。具体的には、株主配当を支払う責任であったり、株主総会で納得のいく経営経過報告や今後の見通しを発表する責任などです。

●第三者に対する経営責任を負う立場の社長は、無意識のうちに、透明性・納得性の高い経営を志すのです。

●サラリーマンから出世して社長になったという場合も、養子のケースと似ているかもしれません。あるサラリーマン社長は、旅費規程で定められているにも関わらず、グリーン車に乗ったことがなく、新幹線はいつも自由席だとか。せめて指定席に、と私などは思うのですが、「株主のために無駄な経費は使えない」と言うのです。

●私は、オーナー企業の養子になることや、サラリーマン社長を薦めているのではありません。立場が違うと、責任感や経営への考え方は変わってくる、ということを言いたいのです。

●社長になったからには、株主のために、経営のプロとして2年契約を交わしたつもりで会社のありようを見直しましょう。プロ野球の監督のように、優勝請負人として手腕を買われたつもりで組織全体を見直しましょう。

●会社すべてが自分の所有物ではなく、経営資源の運用を託されたプロとして経営を考えることの大切さを、改めて強調したいのです。

●社長というポストは永遠のものでなく、リストラ対象から免除される聖域であってはなりません。結果が出なければ自分を解雇する、という覚悟が社長には必要なのです。

2006年07月19日(水)更新

非エリートの戦略

●大手建設会社のA社長は、会社設立時に《非エリートがエリートに勝つ》という戦略を打ち立てたそうです。そして、真っ先に社員に誇りを植え付けるための取り組みをはじめました。

●なにしろ会社を作ったばかりなので知名度も実績もなく、非エリートの社員しか入社してきません。当然、自信や誇りをもった人よりも劣等感をもった人のほうがたくさん入社してきます。そんな条件のもと、社員に誇りを植えつけるにはどうした良いのか、A社長は真剣に考えました。

●そして、まっさきに取り組んだのは「時間を守る」というテーマでした。「これなら非エリートでもできる。才能はいらない。簡単ではないが、だれでも心がけ次第で時間は守れる」と思い立ち、時間厳守を徹底をしました。

●それから何か月かたったある日、A社が受注した物件の施工会議がありました。当然、全員が時間厳守です。そんななか、ある施工店の社長が遅れて到着してきました。A社長は、烈火の如く怒りました。
「うちの社員は1日に何件もの訪問や打合せをこなしながらも、全員がこうして時間を守っている。どうしてお宅が時間を守れないのか」

●そして、その施工店社長を会議の間、立たせたままにしたそうです。カリスマ社長ならではのエピソードですね。

●ここで注目したいのは、外部の人の前で社員を誉めるということ。しかも、時間を守るという具体的事実で誉められると、社員はますます守ろうとするものです。こうした達成感や義務感が、やがて使命感へと高まっていくのではないでしょうか。
「うちの会社は世間のどんな会社よりも時間を守っている」という事実が、会社の誇りや自分自身の誇りにつながっていくのです。

●時間を守るということが浸透したら、次のステップへ進みましょう。




●たとえば、「うちの会社では、お客様との約束をすべて紙に書く」という新たな誇りづくり(約束事づくり)に着手するのです。

●こうした「当たり前だがなかなか徹底できない」というテーマに目をつけて、それを徹底させることによって、自己イメージや自社イメージを高めていくという戦略は、どの企業でも使えます。

●私自身も40才で経営コンサルタントで独立したとき、全国・全世界から必要とされる経営コンサルタントになるという夢を掲げましたが、現実的には会社所在地(愛知県名古屋市)周辺から一歩も外へ出ることができませんでした。私の理念やビジョンは、現実の前で上すべりしていたように思います。

●しかし、2000年8月に意を決して、「メールマガジンを毎日出そう! 読者が必要としてくれるかぎり、メルマガは欠かさず発行しよう!」と動き始めました。

●これは自分に課した義務でした。こだわりというべきかも知れません。このように、背伸びしてでも続けられる義務感をもてたことは幸せでした。文字どおり、自己イメージ向上に一役買ったからです。

●非エリートが何かの分野で頭角をあらわし、エリートを打ち負かすようになるには、小さな約束を自分に課してそれをクリアし続けて、自信を深めていくことが大切なのではないでしょうか。

2006年07月14日(金)更新

リーダーの4種類の力

●「世界の社長1,000人に聞いた、理想的なリーダー像はだれ?」なんて特集があると楽しそうですね。

●理想のリーダー像は「ところ変われば・・・」ではないかと思うのです。たとえば、ヨーロッパではナポレオンやシーザー、英国の騎士(ナイト)などが上位にくるでしょう。アメリカでは強さとタフさの象徴のような人物が、日本では信長、秀吉、家康といった戦国の英傑に人気が集まることでしょう。

●一口に戦国の英傑といっても、さまざまなタイプが存在します。上杉謙信はたとえ自らが単騎でも敵の陣地に乗り込んで攻撃をしかけるタイプですし、武田信玄は陣地最後尾で軍配を振るうのみ、というタイプです。まさしく両極にあるリーダー像です。これは、どちらが正しいかというより、どちらが好きかという好みの問題でもあります。

●リーダーシップに関する専門書によれば、リーダーシップとは、対人影響力のことであり、それは4種類の力から生じるものだといいます。あなたのリーダーシップを強化するヒントがここに隠されていると思いますので、参考のためにご紹介しましょう。

リーダーの4種類の力
1.賞罰を与える力
2.正当性の力
3.同一化の力
4.権威の力

●「賞罰を与える力」とは、年収や役職、権限などを与える・減らせる力を言います。
社長であればこの力は絶大でしょう。また管理職でも、部下の収入や出世に対して大きな権限をもつ場合には、この力が強いことになります。

●「正当性の力」とは、部下を心から納得させる力を言います。仮にそれが部下にとって嫌な要求であったとしても「なるほど、そういう理由ならやむを得ない」と納得させることができれば、一生懸命やってくれるものです。そうした力を行使できるのが「正当性の力」といいます。



●「同一化の力」とは、部下と一心同体のつながりがあって、あの社長のためなら無理してでもやろうぜ、と思わせるような人間的魅力のことをいいます。同じ釜の飯を食うという表現がありますが、いっしょに苦労をともにし、時には食事したり酒を酌み交わしながら本音で交流し、太い信頼関係をつくっていくなかで生まれるものだと思います。

●「権威の力」とは、専門的な知識や技術、実績などを背景に、誰もが認めざるを得ない存在であることです。強運をもっているとか、先見性があるなど、常人では計り知れないカリスマ性をもつ人は、この力を存分に発揮していると言えましょう。

●あなたがどのようなリーダー像を目指すかは自由ですが、4種類の力それぞれを自己採点し、めざすリーダー像に近づくために何をすべきかを決めましょう。

●ただし、、これだけは断言できます。天性の“名リーダー”という人はいない。すべて本人の後天的な努力によって培われていくものだと言うことです。
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