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2012年03月09日(金)更新

社長だから正しい

●「社内の人間関係がうまくいっていないので、一度ミーティングの様子を見にきてほしい」と知人からメールが入りました。その方はエステサロンを経営される女性社長で最近起業されたばかりです。
 
●約束の時間にお店へ入っていくと、いきなり奧の方からけんか腰のやりとりが聞こえてきました。どうやら私のことに気づいていない様子です。
 
「ちょっとあなたさぁ、さっきから聞いてると何様のつもり? 社長は誰だと思ってるの。あなたじゃなくて私なのよ」
「ええ、わかってますよ、そんなこと」
「だったら社長に対する口のききかたってものがあるでしょうよ」
「社長社長って社長風をふかさないでください。私は自分の気持ちを正直にしゃべっただけなんですから」
「ここでは私が最終責任者なんだから、ちゃんと決めたことは守ってもらわないと困ります!」
「ああ、そうですか。今日はこれで帰ります」
「ちょっと、今からみんなでミーティングよ。コンサルタントの先生もお呼びしてあるんだから」
「私には関係ありません。じゃあ失礼します」
「・・・・・」
 
●他のスタッフもその場にいましたが、結局この日のミーティングは中止され、このスタッフはこれをかぎりに退職しました。
 
スタッフルームの壁面には、『お客さまの美しさと笑顔が私たちの喜びです。私たちはお客さまのために専門的サービスを提供するプロフェッショナル集団です』と額が掲げてありました。
エステの技術は高くても、店舗運営やコミュニケーションの技術はあまりお上手ではないようです。
しばしばスタッフと意見の衝突があるそうで、この日のトラブルもお客さまに対してシャンプーなどの商品販売のノルマを課そうとする社長と、それを嫌がるスタッフとの対立だったそうです。
 
●会議の原則は「衆議独裁」。つまり、全員で議論を尽くし、最終的に意志決定するのはリーダーという意味で、衆議をつくしたあとは多数決ではなく独裁で決めるのです。会議やミーティングの場で全員の意見をひとつにまとめようとして時間を浪費させるわけにもいきません。
 
●しかし「私が社長よ」というスタンスには問題があります。それをやり過ぎるとパワーハラスメントになってしまいます。
誰が社長かは言われなくてもみんなわかっています。そんなことが問題の本質なのではなく、「誰が正しいか、ではなく、何が正しいか」で議論されることが大切なのです。
 
社長だから、役員だから、スタッフだから、アルバイトだから・・という立場の違いを持ちだすようではいけません。
「経営理念や企業目標と照らし合わせたとき、何が正しいのか」を皆で論じたいものです。そうした組織の秩序を作っていくことは良い会社を作っていく重要なインフラなのです。