大きくする 標準 小さくする
前ページ

2014年02月07日(金)更新

かわいい子には・・・

●ある社長の息子が中学校に入ると不良グループに入り、生活が荒れ始めた。更生させるためにアラスカの高校に留学させた。そこで良い友人と出逢い学問に目ざめた。シアトルの大学に入り MBA を取得。今年、大学を卒業してバンコクの大学院に留学する。アジアビジネスのマネジメントを学んでみたいというわけだ。

「もうそろそろ勉強をやめてうちの会社を手伝ってほしいんですがね」
そう言いつつも、勉強好きに変身した我が子をみて目を細めている。

●昔から「かわいい子には旅をさせよ」というが、若いうちにしか経験できないようなことは早めにやらせてあげよう。
・かわいい子には都会や外国を見せよう
・かわいい子には挑戦させよう
・かわいい子には早めに挫折を経験させよう
・かわいい子にはクヤシイ思いをさせよう
・かわしい子にはさみしい思いをさせろう
・かわいい子には辛い思いをさせよう

これらすべてが貴重な体験となり本人の財産になる。
人生最後の日に、我が人生を振り返ったとき、何が思い出としてよみがえるかである。楽しいことも辛いことも、すべてに同等に価値があるのだと思う。
「私は何も失敗していません」「私は馬鹿なことは一度もしていません」という人は、リーダーにはなれない。

●もちろん、体験の価値は人生最後の日だけにあるのではない。過去に体験したことは必ず今、活きているはずだ。だから経営も、「かわいい社員には経験させよ」ということになる。
ジョブローテーション(人事異動)という意味での変化でもよい。たとえば、職場が変わる、職務や職位が変わるということも大きな変化だ。

●また、そこまで大きな人事異動ができない会社であれば、営業方法が変わるとか、担当客先が変わる、チームが変わる、ツールが変わる、システムが変わる、職場環境が変わるなど、何でも良いので変化を作ってあげよう。旅行の好き嫌いは体質の問題だろうが、変化の好き嫌いは心構えの問題だと思う。優秀な社員ほど変化を好むものである。


2013年08月30日(金)更新

真摯(しんし)

●会社の不祥事に対して経営者が、「悪いのは部下だ。私は何も知らないし、むしろ私も被害者だ」などと声高に訴えたところで誰も信用しない。むしろ、おのれの無能と不徳をPRしているようなものである。
 
●「彼らは、高い目標を掲げ、それらの目標が実現されることを求める。だれが正しいかではなく、何が正しいかだけを考える。自分自身、頭がよいにもかかわらず、頭のよさよりも真摯さを重視する。つまるところ、この資質に欠ける者は、いかに人好きで、人助けがうまく、人づきあいがよく、あるいはまた、いかに有能で頭がよくとも、組織にとっては危険な存在であり、経営管理者および紳士として、不適格と判断すべきである」
(ドラッカー『現代の経営』下巻より)
 
「真摯さ」は1954年からドラッカーが説いている経営管理者の資質であり、今日、ますます経営者に問われているものの一つだろう。
 
●「真摯」という単語を辞書でひいてみたら「まじめでひたむきなこと。事を一心に行うさま」とあった。
一貫性があってブレないことが大切なようで、そのあたりドラッカーはこう続けている。
 
「仕事の真摯さが必要なのはいかなる職業でも同じだが、それらのほとんどは仕事上の真摯さにすぎない。だが、経営管理者であるということは、親であり教師であるということに近い。そのような場合、仕事上の真摯さだけでは不十分であり、人間としての真摯さこそ決定的に重要である」。
 
●「仕事の真摯さ+人間としての真摯さ」が経営者には必要なのだ。
起業して社長になることは誰にでもできるが、真摯な経営者として人と組織を育て上げていくには覚悟と時間が必要である。
しかもこの資質は、読書やセミナー受講によって修得できるものではなく、お金で買えるものでもない。誰かに補ってもらえるものでもなく、あくまで本人の個人的努力によって身につけていかなければならないものなのだ。
 
経営計画書を通して会社の未来を語ることは、あなたを真摯な経営者にしていくための最初のステップと言えるだろう。
 
 

2013年04月12日(金)更新

酒を贈る

●久しぶりにお目にかかった関西のG社長(40才)が、ちょっと相談があるという。酒癖がわるい営業部長(58才)の処遇をどうすべきか悩んでいるらしい。創業者の父が急逝し、急きょG氏が実家に戻って社長に就任して今年で4年目。
 
●G社長は営業部長の酒癖が悪いということをウワサで知ってはいたが、酒席をともにすることがないまま4年を経過していた。だが、今年から社員と会食する機会を増やしているG社長。当然、営業部長との酒席も増えたことから、聞きしにまさる酒乱ぶりをまのあたりにすることとなる。
 
●先日も部下の営業マンにからんだ。
「おい、山田。お前の大ボラは聞き飽きた。いつだって発表した目標の半分しかやれないじゃないか君は。社内でみんな、お前のことを何て呼んでるか知ってるか? え? 知らない、教えてやろう、『狼少年』だ、ダーッハッハッハ! 言い得て妙だ、悔しかったら目標どおりやってみろっつうの」
最初は適当にあしらっていた山田君も、あまりにしつこいので反論・抗議すると場はますます炎上するという。
 
●ところがこの営業部長、日ごろは真面目で仕事はできる。むしろ、まったく別人であるかのように大人しく、コツコツと実績を積み上げていくタイプだという。
 
●G社長も思いあぐねたが、思い切って昼間に二人で喫茶店へ行った。「部長、酒席も仕事の一部だと思ってください。酒に酔っているとは言え、部下をおとしめるようなことはあなたらしくない。二度とあのような発言はしないようにしてほしい。どうしても部下に指導したいことがあれば、昼間に会社でやって下さい」と忠告をあたえた。
 
●営業部長は深々とお辞儀し、「はい、そのような失言を発したことを他の者からお聞きして恥じ入っております。実は憶えがないのです。大変失礼をいたしました。二度とかような失態がないよう、慎みます」と、ものすごく反省している様子。
 
●だが、その後も酒席があるたびに営業部長の乱心が続くので、G社長は、降格または解雇も辞さない構えでいるという。だが、たとえ降格しようが解雇しようが、彼自身の酒癖を直さないことには彼に一生、酒の失態がついてまわる。
 
●だから「リーダーとしてどうすべきか?」というのがG社長の相談内容だった。
 
●私はその時、ある逸話を思い出した。南北戦争当時、リンカーンがグラントを最高司令官に任命したとき、グラント将軍の酒好きを危惧する部下がいた。「あの酒飲みに最高司令官がつとまるのか?」というのだ。グラントの酒好きを聞いたリンカーンは、「この国家非常事態のときくらい酒はやめてほしい」なんて野暮なことは言わない。むしろその逆にこう言ったのだ。「銘柄をしらべて贈りなさい」
 
●そして、グラントを最高司令官に任命したことが南北戦争のターニングポイントとなっていく。酒好きという人間の弱みの部分ではなく、戦上手という仕事の強みにもとづいて人事を行うのがリンカーン流だった。
 
●弱みに基づいて人事を行えば、社内に誰もいなくなる。強みに基づいて人事を行うのが大原則である。ただし、強みをも帳消しにしかねない弱みについては、本人と一緒になって克服プログラムを作り、実際に克服させていくのが中小企業における社長のリーダーシップだと思う。
 
●その後、G社長は営業部長にどのような対処をされたのかは聞いていない。自宅に部長好みの焼酎をドーンと贈ってあげるくらいの度量があれば良いのだが・・・。
 
 

2012年08月10日(金)更新

強そうな組織

●相手のオーラを見た瞬間、「あっ、今日は負ける」と思った。
ある年の高校野球・東海地区秋季大会でのこと。私が応援する岐阜県代表の学校と戦うのは愛知県代表の愛工大名電でした。体の大きさからして愛工大名電に分があるだけでなく、キャッチボールの正確さ、投げる玉のスピード、ノックの打球の早さや守備の軽快さなど、すべてにおいて相手が上回っているのがスタンドから観ていてもはっきり分かりました。
 
●「今日は負けるぞ」と思ったのは私だけではなかったはずです。岐阜県代表の高校生たちも息を飲むようにして愛工大名電の練習をみていました。戦う前から相手の迫力に飲み込まれてしまったのでしょう、結果はコールドゲームで岐阜代表が敗れ、春の選抜出場への道は断たれたのでした。
 
●この時のように、試合が始まる前から勝敗が分かっていることがよくあります。
2005年にイラクのサマーワの復興支援群長を務めた番匠幸一郎・陸将補の言葉が月刊『致知』に紹介されていました。それによれば、「強い軍隊と弱い軍隊は一目で分かります。『弱そうだ』と思われたらそれまでです。そしてそれは服装の着こなし、目つき、武器の手入れ、清掃など些細なところに表れます」とありました。
 
●野球の強さも軍隊の強さも、ひと目みたら分かるもののようです。
番匠群長による日の丸復興支援群が無事にイラクから帰還できたのは、幸運だけによるものではなく、一糸乱れぬ規律がもたらすオーラが備わっていたからでしょう。「こりぁ、かなわん」と相手に思わせることが大切です。
 
●会社の強さも同様です。会社の強さ、すなわち実力とは、その会社の主力製品や財務内容、ホームページなどを分析しなくてもすぐにわかるものです。オフィスを訪問し、応接セットで10分も座っていれば、強い会社か弱い会社か一目瞭然です。それは社員の活気、清掃レベル、会話などから判明するものです。
 
●あなたも積極的に他社を訪問してみましょう。
 
かつて私は株式投資をしている時期がありました。そのころには、投資候補企業の本社を訪問し、IR部や総務部をおじゃましたことが何度かあります。たかが個人投資家のわずかな資金なのですが、個人投資家を大切にしてくれる企業は株価も堅調でした。それと同時に、会社におじゃますることで雰囲気がよく分かり、とても重要な投資判断材料になりました。あなたも企業訪問を積極的に行ってそこで感じるものを大切にしてみましょう。同時にあなたの会社が来訪者からどう思われているのかもこの際、きびしくチェックしてみよう。
 
 

2012年08月03日(金)更新

Myカタログ発表会

●呉竹光学株式会社(仮名)の醍醐社長(仮名)は、20年前から毎年秋の連休を利用して二泊三日の社員合宿を定期開催しているといいます。合宿の初日は経営理念や方針を実践するための行動計画づくりの一日で、ユニークなのは二日目。朝から全員が「Myカタログ」の発表をおこなう。
 
●「Myカタログ」は A4サイズのファイルに綴じることだけが統一されていますが、あとはすべて各自の自由。少なくとも次の項目だけは必ず盛り込むように指導されているそうです。
 
・My ミッション (個人の志)
・My キャリア 私のこんにちまでの歩み、特徴のある経験や実績
・My profession 誰にも負けない私の専門分野の実績およびこれからの開発計画
・My Vision 私の20年後の姿をイメージ画像やイラスト、デザインなどで表現する
 
●秋の社員合宿は、精魂込めて作り上げた「Myカタログ」をお披露目する一世一代のプレゼンの場。一人7分間の発表+3分間の質疑応答で、社員40名全員が発表を終えるまでに7時間以上かかります。しかし、誰一人この7時間が長いと感じることがないほど、各自の「Myカタログ」は充実し、個性的なのです。
 
●それもそのはず、社名にちなんだ「呉竹賞」(最優秀者)を受賞すると、ベネチアングラスの盾に副賞として50万円の賞金がもらえるのだ。しかも昨年、一昨年と該当者なしだったため、今年の受賞者は繰越金と合わせて150万円もの副賞賞金がもらえるのです。
 
●先日、醍醐社長にお目にかかり、社長自身の「Myカタログ」も見せていただいたが、実に楽しげな内容で私も作りたくなりました。社内のデザイナーに "アルバイト" して書いてもらったというマンガが駆使され、全ページフルカラーで美しい仕上がりでした。時間をかけ、手塩にかけた「Myカタログ」は手放せないし、人に見せたくなるものだといいます。
 
●醍醐社長の談話。
 
・・・25年前に今の会社を起こしたころ、産業能率大学出版部から出ていたナポレオン・ヒル著の『成功哲学』を読んで感動しました。その本のなかに転職を有利にする「私のカタログ」という記載があり、それを社内に応用しようと考えたのです。最初のうちは、社員数も少なくて盛り上がりも乏しかったのですが、年々社員の実力と比例するように「Myカタログ」のレベルも向上し、賞金額もアップしてきて、今では社内最大のお祭りになっています。お客さんの会社から合宿を見学したいという希望も多くなっているのですが、これだけは私と社員とのサシの勝負としたいのでご勘弁願っているのです。・・・と誇らしげ。
 
●醍醐社長のひそかな喜びは、独立するために退職した社員や、転職していった社員が、「Myカタログ」発表会にOBとしてゲスト参加してくれること。そうしたOB社員の中には、今でも呉竹光学とビジネスしている会社の経営者も少なくないそうです。
 
●いずれにしても、レベルの高い「Myカタログ」を全員が作れるようになるには、毎年こうした発表会があり、きちんと評価される場があるという点がカギだと思います。
 
 
«前へ