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2014年02月07日(金)更新

かわいい子には・・・

●ある社長の息子が中学校に入ると不良グループに入り、生活が荒れ始めた。更生させるためにアラスカの高校に留学させた。そこで良い友人と出逢い学問に目ざめた。シアトルの大学に入り MBA を取得。今年、大学を卒業してバンコクの大学院に留学する。アジアビジネスのマネジメントを学んでみたいというわけだ。

「もうそろそろ勉強をやめてうちの会社を手伝ってほしいんですがね」
そう言いつつも、勉強好きに変身した我が子をみて目を細めている。

●昔から「かわいい子には旅をさせよ」というが、若いうちにしか経験できないようなことは早めにやらせてあげよう。
・かわいい子には都会や外国を見せよう
・かわいい子には挑戦させよう
・かわいい子には早めに挫折を経験させよう
・かわいい子にはクヤシイ思いをさせよう
・かわしい子にはさみしい思いをさせろう
・かわいい子には辛い思いをさせよう

これらすべてが貴重な体験となり本人の財産になる。
人生最後の日に、我が人生を振り返ったとき、何が思い出としてよみがえるかである。楽しいことも辛いことも、すべてに同等に価値があるのだと思う。
「私は何も失敗していません」「私は馬鹿なことは一度もしていません」という人は、リーダーにはなれない。

●もちろん、体験の価値は人生最後の日だけにあるのではない。過去に体験したことは必ず今、活きているはずだ。だから経営も、「かわいい社員には経験させよ」ということになる。
ジョブローテーション(人事異動)という意味での変化でもよい。たとえば、職場が変わる、職務や職位が変わるということも大きな変化だ。

●また、そこまで大きな人事異動ができない会社であれば、営業方法が変わるとか、担当客先が変わる、チームが変わる、ツールが変わる、システムが変わる、職場環境が変わるなど、何でも良いので変化を作ってあげよう。旅行の好き嫌いは体質の問題だろうが、変化の好き嫌いは心構えの問題だと思う。優秀な社員ほど変化を好むものである。


2013年08月30日(金)更新

真摯(しんし)

●会社の不祥事に対して経営者が、「悪いのは部下だ。私は何も知らないし、むしろ私も被害者だ」などと声高に訴えたところで誰も信用しない。むしろ、おのれの無能と不徳をPRしているようなものである。
 
●「彼らは、高い目標を掲げ、それらの目標が実現されることを求める。だれが正しいかではなく、何が正しいかだけを考える。自分自身、頭がよいにもかかわらず、頭のよさよりも真摯さを重視する。つまるところ、この資質に欠ける者は、いかに人好きで、人助けがうまく、人づきあいがよく、あるいはまた、いかに有能で頭がよくとも、組織にとっては危険な存在であり、経営管理者および紳士として、不適格と判断すべきである」
(ドラッカー『現代の経営』下巻より)
 
「真摯さ」は1954年からドラッカーが説いている経営管理者の資質であり、今日、ますます経営者に問われているものの一つだろう。
 
●「真摯」という単語を辞書でひいてみたら「まじめでひたむきなこと。事を一心に行うさま」とあった。
一貫性があってブレないことが大切なようで、そのあたりドラッカーはこう続けている。
 
「仕事の真摯さが必要なのはいかなる職業でも同じだが、それらのほとんどは仕事上の真摯さにすぎない。だが、経営管理者であるということは、親であり教師であるということに近い。そのような場合、仕事上の真摯さだけでは不十分であり、人間としての真摯さこそ決定的に重要である」。
 
●「仕事の真摯さ+人間としての真摯さ」が経営者には必要なのだ。
起業して社長になることは誰にでもできるが、真摯な経営者として人と組織を育て上げていくには覚悟と時間が必要である。
しかもこの資質は、読書やセミナー受講によって修得できるものではなく、お金で買えるものでもない。誰かに補ってもらえるものでもなく、あくまで本人の個人的努力によって身につけていかなければならないものなのだ。
 
経営計画書を通して会社の未来を語ることは、あなたを真摯な経営者にしていくための最初のステップと言えるだろう。
 
 

2013年04月12日(金)更新

酒を贈る

●久しぶりにお目にかかった関西のG社長(40才)が、ちょっと相談があるという。酒癖がわるい営業部長(58才)の処遇をどうすべきか悩んでいるらしい。創業者の父が急逝し、急きょG氏が実家に戻って社長に就任して今年で4年目。
 
●G社長は営業部長の酒癖が悪いということをウワサで知ってはいたが、酒席をともにすることがないまま4年を経過していた。だが、今年から社員と会食する機会を増やしているG社長。当然、営業部長との酒席も増えたことから、聞きしにまさる酒乱ぶりをまのあたりにすることとなる。
 
●先日も部下の営業マンにからんだ。
「おい、山田。お前の大ボラは聞き飽きた。いつだって発表した目標の半分しかやれないじゃないか君は。社内でみんな、お前のことを何て呼んでるか知ってるか? え? 知らない、教えてやろう、『狼少年』だ、ダーッハッハッハ! 言い得て妙だ、悔しかったら目標どおりやってみろっつうの」
最初は適当にあしらっていた山田君も、あまりにしつこいので反論・抗議すると場はますます炎上するという。
 
●ところがこの営業部長、日ごろは真面目で仕事はできる。むしろ、まったく別人であるかのように大人しく、コツコツと実績を積み上げていくタイプだという。
 
●G社長も思いあぐねたが、思い切って昼間に二人で喫茶店へ行った。「部長、酒席も仕事の一部だと思ってください。酒に酔っているとは言え、部下をおとしめるようなことはあなたらしくない。二度とあのような発言はしないようにしてほしい。どうしても部下に指導したいことがあれば、昼間に会社でやって下さい」と忠告をあたえた。
 
●営業部長は深々とお辞儀し、「はい、そのような失言を発したことを他の者からお聞きして恥じ入っております。実は憶えがないのです。大変失礼をいたしました。二度とかような失態がないよう、慎みます」と、ものすごく反省している様子。
 
●だが、その後も酒席があるたびに営業部長の乱心が続くので、G社長は、降格または解雇も辞さない構えでいるという。だが、たとえ降格しようが解雇しようが、彼自身の酒癖を直さないことには彼に一生、酒の失態がついてまわる。
 
●だから「リーダーとしてどうすべきか?」というのがG社長の相談内容だった。
 
●私はその時、ある逸話を思い出した。南北戦争当時、リンカーンがグラントを最高司令官に任命したとき、グラント将軍の酒好きを危惧する部下がいた。「あの酒飲みに最高司令官がつとまるのか?」というのだ。グラントの酒好きを聞いたリンカーンは、「この国家非常事態のときくらい酒はやめてほしい」なんて野暮なことは言わない。むしろその逆にこう言ったのだ。「銘柄をしらべて贈りなさい」
 
●そして、グラントを最高司令官に任命したことが南北戦争のターニングポイントとなっていく。酒好きという人間の弱みの部分ではなく、戦上手という仕事の強みにもとづいて人事を行うのがリンカーン流だった。
 
●弱みに基づいて人事を行えば、社内に誰もいなくなる。強みに基づいて人事を行うのが大原則である。ただし、強みをも帳消しにしかねない弱みについては、本人と一緒になって克服プログラムを作り、実際に克服させていくのが中小企業における社長のリーダーシップだと思う。
 
●その後、G社長は営業部長にどのような対処をされたのかは聞いていない。自宅に部長好みの焼酎をドーンと贈ってあげるくらいの度量があれば良いのだが・・・。
 
 

2012年08月10日(金)更新

強そうな組織

●相手のオーラを見た瞬間、「あっ、今日は負ける」と思った。
ある年の高校野球・東海地区秋季大会でのこと。私が応援する岐阜県代表の学校と戦うのは愛知県代表の愛工大名電でした。体の大きさからして愛工大名電に分があるだけでなく、キャッチボールの正確さ、投げる玉のスピード、ノックの打球の早さや守備の軽快さなど、すべてにおいて相手が上回っているのがスタンドから観ていてもはっきり分かりました。
 
●「今日は負けるぞ」と思ったのは私だけではなかったはずです。岐阜県代表の高校生たちも息を飲むようにして愛工大名電の練習をみていました。戦う前から相手の迫力に飲み込まれてしまったのでしょう、結果はコールドゲームで岐阜代表が敗れ、春の選抜出場への道は断たれたのでした。
 
●この時のように、試合が始まる前から勝敗が分かっていることがよくあります。
2005年にイラクのサマーワの復興支援群長を務めた番匠幸一郎・陸将補の言葉が月刊『致知』に紹介されていました。それによれば、「強い軍隊と弱い軍隊は一目で分かります。『弱そうだ』と思われたらそれまでです。そしてそれは服装の着こなし、目つき、武器の手入れ、清掃など些細なところに表れます」とありました。
 
●野球の強さも軍隊の強さも、ひと目みたら分かるもののようです。
番匠群長による日の丸復興支援群が無事にイラクから帰還できたのは、幸運だけによるものではなく、一糸乱れぬ規律がもたらすオーラが備わっていたからでしょう。「こりぁ、かなわん」と相手に思わせることが大切です。
 
●会社の強さも同様です。会社の強さ、すなわち実力とは、その会社の主力製品や財務内容、ホームページなどを分析しなくてもすぐにわかるものです。オフィスを訪問し、応接セットで10分も座っていれば、強い会社か弱い会社か一目瞭然です。それは社員の活気、清掃レベル、会話などから判明するものです。
 
●あなたも積極的に他社を訪問してみましょう。
 
かつて私は株式投資をしている時期がありました。そのころには、投資候補企業の本社を訪問し、IR部や総務部をおじゃましたことが何度かあります。たかが個人投資家のわずかな資金なのですが、個人投資家を大切にしてくれる企業は株価も堅調でした。それと同時に、会社におじゃますることで雰囲気がよく分かり、とても重要な投資判断材料になりました。あなたも企業訪問を積極的に行ってそこで感じるものを大切にしてみましょう。同時にあなたの会社が来訪者からどう思われているのかもこの際、きびしくチェックしてみよう。
 
 

2012年08月03日(金)更新

Myカタログ発表会

●呉竹光学株式会社(仮名)の醍醐社長(仮名)は、20年前から毎年秋の連休を利用して二泊三日の社員合宿を定期開催しているといいます。合宿の初日は経営理念や方針を実践するための行動計画づくりの一日で、ユニークなのは二日目。朝から全員が「Myカタログ」の発表をおこなう。
 
●「Myカタログ」は A4サイズのファイルに綴じることだけが統一されていますが、あとはすべて各自の自由。少なくとも次の項目だけは必ず盛り込むように指導されているそうです。
 
・My ミッション (個人の志)
・My キャリア 私のこんにちまでの歩み、特徴のある経験や実績
・My profession 誰にも負けない私の専門分野の実績およびこれからの開発計画
・My Vision 私の20年後の姿をイメージ画像やイラスト、デザインなどで表現する
 
●秋の社員合宿は、精魂込めて作り上げた「Myカタログ」をお披露目する一世一代のプレゼンの場。一人7分間の発表+3分間の質疑応答で、社員40名全員が発表を終えるまでに7時間以上かかります。しかし、誰一人この7時間が長いと感じることがないほど、各自の「Myカタログ」は充実し、個性的なのです。
 
●それもそのはず、社名にちなんだ「呉竹賞」(最優秀者)を受賞すると、ベネチアングラスの盾に副賞として50万円の賞金がもらえるのだ。しかも昨年、一昨年と該当者なしだったため、今年の受賞者は繰越金と合わせて150万円もの副賞賞金がもらえるのです。
 
●先日、醍醐社長にお目にかかり、社長自身の「Myカタログ」も見せていただいたが、実に楽しげな内容で私も作りたくなりました。社内のデザイナーに "アルバイト" して書いてもらったというマンガが駆使され、全ページフルカラーで美しい仕上がりでした。時間をかけ、手塩にかけた「Myカタログ」は手放せないし、人に見せたくなるものだといいます。
 
●醍醐社長の談話。
 
・・・25年前に今の会社を起こしたころ、産業能率大学出版部から出ていたナポレオン・ヒル著の『成功哲学』を読んで感動しました。その本のなかに転職を有利にする「私のカタログ」という記載があり、それを社内に応用しようと考えたのです。最初のうちは、社員数も少なくて盛り上がりも乏しかったのですが、年々社員の実力と比例するように「Myカタログ」のレベルも向上し、賞金額もアップしてきて、今では社内最大のお祭りになっています。お客さんの会社から合宿を見学したいという希望も多くなっているのですが、これだけは私と社員とのサシの勝負としたいのでご勘弁願っているのです。・・・と誇らしげ。
 
●醍醐社長のひそかな喜びは、独立するために退職した社員や、転職していった社員が、「Myカタログ」発表会にOBとしてゲスト参加してくれること。そうしたOB社員の中には、今でも呉竹光学とビジネスしている会社の経営者も少なくないそうです。
 
●いずれにしても、レベルの高い「Myカタログ」を全員が作れるようになるには、毎年こうした発表会があり、きちんと評価される場があるという点がカギだと思います。
 
 

2012年06月29日(金)更新

穴吹社長のオフサイト・ミーティング

●今年の4月に入社したばかりの新入社員と昼食会を開いたある社長。
幕の内弁当を食べながら、ひとりひとりの社員に感想を聞いていったそうです。すると、一人の新人が意外な指摘をしました。
「入社する前はもっと俊敏な会社だと思っていたのですが、意外に官僚的で意思決定が遅いです」
 
●とても新入社員とは思えぬ発言に社長は驚きました。企業体質をよく見抜いたと感心もしたといいます。新人はフレッシュであるがゆえに、長年会社にいる人よりも敏感なのでしょう。そうした若者の声は普通、会議で発言されるようなことはまずないでしょう。おそらく議題にものぼらないはずです。積極的に社員の声を吸収しようとしない会社では、上司や経営者の耳にこれらの声が届かないはずです。きっと居酒屋でのグチとして虚空に消えていくことが多いのではないでしょうか。
 
●この社長のように、昼食会という場で気軽にいろんなことが言い合える場を作るのも有効でしょう。また、上司面談や社長面談など、定期的な面談の場を通して話し合える機会を作るのも効果的です。
また、“オフサイト・ミーティング”も有効です。これは、真面目な話題を気軽な雰囲気で行うミーティングのことで、こちらのホームページに詳しくあります。
 
★オフサイト・ミーティング→ http://www.scholar.co.jp/fuudo/offsite-m_s.html
 
●旅行会社の穴吹観光(仮名)の穴吹社長は、「みんな、キリがついたらここへ集まってくれ」と午後5時にオフィス全体に声をかけました。
スタッフ8名全員にお茶菓子が行き届くのをみてこう切り出しました。
 
「今日はおつかれ。今からみんなで会社をよくするためのミーティングをやりたい。ミーティングとはいっても、いつもみたいにオレが司会をするわけでもないし、特定の議題やテーマがあるわけでもない。フランクに誰からでも自由に意見を言ってほしい。だれか口火を切ってくれるヤツはいるか?」
 
●穴吹社長の予想通り、みんな下を向いて押し黙っています。彼らは普段はよくおしゃべりするのに、なぜか会議になるとおとなしくなってしまうのです。
そこで、穴吹社長は個人的な話をはじめることにしました。今の会社を作ったときの経緯からはじまって、初めての受注の感動、お客様が感謝の絵ハガキをスペインから送ってくれたときの実物の絵ハガキも回覧したのです。
 
●約15分、社長の話を聞く社員たち。かなり興味をもって聞いてくれているのですが、このミーティングの主旨がわかっていないせいか、どことなく落ち着きがありません。この日は結局、失敗に終わりました。
 
●翌週、穴吹社長は別のやり方でオフサイト・ミーティングを開始しました。
各自の席には、5センチ四方のメモ用紙が10枚ずつ配られていました。
 
「みんな、まずメモを一枚使って今まで誰にも言っていなかった自分の自慢話をひとつ書いてくれ。どんなささいなことだって構わない。1分くらいの時間で思い出して書いてくれ」
 
●各自が書いたものを読み上げ、それを言葉で補足するようにしました。
 
・ちびっ子相撲の大会で3年連続優勝したことがある鈴木君
・小学生のとき作文コンクールで全校佳作をもらい、校長先生から筆箱をもらったという伊藤君
・不良だったので父親から勘当され、田舎から東京に来て10年。去年ようやく父親に許されたのがうれしくて、両親に温泉旅行をプレゼントしたという斉藤君
・年末ジャンボ宝くじで3等100万円を当てたことがある水谷さん
・スキーのジャンプ競技で国体にも出たことがある加納君
・バスガイド時代にお客様アンケートの結果でいつも社内ナンバーワンだった玉城さん
・・・etc.
 
お互いがけっこうスゴイ、ということがわかりムードが盛り上がってきました。穴吹社長はこの雰囲気が社内にほしかったのです。
 
●各自の自慢話を披露しあってムードが盛り上がってきたところで、穴吹社長はこう言いました。
 
「じゃ、次に仕事のことや会社のこと、個人的なことなどで今頭の中にあることを一件一枚で書き出していこう。互いに読めるていねいな文字でわかりやすく書いてほしい。5分くらいでやっちゃおう!」
 
穴吹社長自身もサインペンでサラサラと書きました。それにつられるように、一人、また一人という具合にやがては全員がペンをひたすら走らせました。
 
●皆のペンが止まらないので結局3分延長するほどでした。一人あたり数枚のカードを書いたようです。
 
書いたカードを一枚読み上げ、テーブルのしかるべき場所にそれを置きます。次の人が自分のカードを一枚読み、また置く。このようにして約30分、全員が自分のカードを読み上げ、テーブルの上にはカテゴリー分けされた状態のカードが島になっています。
 
●それを模造紙に貼り付けていきます。最後にその模造紙そのものも壁に貼る。こうして各自の意見がすべて貼り出され、一覧できるようになりました。
ここで大切なことは、本人にとっては重要なことが上司はそのように思っていないことがあることに気づくことです。
 
●子供が生まれたばかりの若い父親は、週に一度は子供を風呂に入れてやりたいと思っていました。だが、勤務が不規則でなかなかそれが実現できない。それはストレスになります。もし可能であれば、週に一回ぐらいは平日に早く帰宅できる方法を皆で考案できるはずです。助け合えばよいのですから。
こうした議論が遠慮なくできる会社のほうが、業績面に好影響をあたえることは容易に想像できるでしょう。
 
●各自の発言の中味も大切ですが、気軽になんでも発言できる機会があることのほうがもっと大切なことなのです。

 

2012年06月01日(金)更新

ある会社の社員総会

●父の会社を継ぐために大企業の管理職という立場を投げすてて、地元にもどったA社長(43歳)。
世界規模の製造業で20年間勤務し、営業、製造、品質管理、安全管理、労務管理や人事管理など、あらゆる経験と知識と技術を手みやげに父の会社に凱旋されました。いや、「凱旋」するはずでした。
 
●ところが、まるで異国に初めてやってきた外国人のように「言葉が通じない、常識が通じない」という思いをすることになります。トップダウンもボトムアップも通用しません。人対人のハートの振動が同じ波長にならない。立場や言葉だけでは人を動かせないことを痛感することになります。A社長にとっての本格的な格闘がはじまったのでした。いや「格闘」なんて表現でもきれい過ぎるかもしれません。彼が社長でなかったらとっくに胃潰瘍で入院しているか、会社を辞めていたはずです。それほどのもがき苦しみが「凱旋」のあと数年続いたそうです。
 
●つい先日、A社長の会社の第一回「社員総会」が開かれることになり、私も招かれました。百名近い社員が制服で勢揃いする中、第一部が「経営方針発表会」、第二部が「安全大会」という構成で行われました。
 
創業50年近くになるそうですが、こうした社員総会が開催されるのは初めてのこと。A社長が考えていることを伝えるだけでなく、各現場からあがった目標も部門長が発表されました。ようやくここまでたどり着いたというべきでしょうか。
 
●「経営方針書」の内容はまだ緒についたばかりの段階。
目指す全員参加型経営は今日が実質上の初日です。よちよち歩きではありますが、門出を祝ってあげたいという気持ちと、本当の格闘は今日からが本番! とゲキを飛ばしてきました。
 
 「がんばれA社長!」
 
 

2012年05月18日(金)更新

ある会社の真摯さ

●「うちは研修教育に力を入れています」と社長自身が胸をはる会社から研修を頼まれました。訪問してみると案の定すばらしい。
その日は新任部課長研修だったのですが、社長が最前列に座って私の講義を聴いておられました。しかも誰よりも大量にメモをとっていて、私の顔を見るより下をむいてノートをとる時間のほうが長いくらいでした。
 
●「背中で語る」という言葉がありますが、社長が一生懸命になってノートをとる姿を見ながら居眠りできる社員などいません。社長の存在と受講の姿勢によって会場内の空気がピーンとするのが講師として大変ありがたかったことを思い出します。
 
●そうした会社は研修後の懇親会までひと味違います。お酒が回るのですが、世間話のような会話はなにひとつ出ません。「今日の研修で何を学びましたか、順番に発表してください」と研修部長が音頭をとるので、私もうかうかビールも飲めないほど。実はそれぐらいの方がうれしいのです。ビールなんていつでも飲めますから。
 
●懇親会終了時にまたまた驚きました。研修部長のこんな締めの言葉で会がお開きになるのです。
 
「皆さん、それではいつも通り今日の研修レポートは明日の正午までにメールしてください。交通費はそれとひき替えに口座振込されます。レポートが遅れた場合は交通費支給ができませんから気をつけて下さい」
 
●この会社のレポート提出はすべてが翌日。それを怠ると交通費が出ないばかりか次回の研修を受けられなくなるそうです。研修も懇親会も仕事である以上、当然のしつけなのでしょう。
 
社長の真摯さが社員にも真摯さを求めるのです。

 

2012年04月13日(金)更新

社長の癖が会社の癖

●「経営体質が良い」とか「財務体質が強い」などと表現することがあります。先日もセミナーでそんなお話をしたところ、ある経営者から「"体質"ってなんですか?」と聞かれました。
かしこまってそう聞かれると言葉を失いそうでしたが、私はそのとき「時間をかけてできあがった『癖』のようなものです」とご説明しました。
 
●「癖」とは、積極的に選んでそうしている場合もあれば、何となくそれを続けるうちに癖になってしまったものもあるでしょう。朝寝坊や深酒のように、直したいと思いつつも、なかなか直らない癖だってあるでしょう。
浪費癖、遅刻癖、怠け癖、寝坊癖、散らかし癖などネガティブなものもあれば、努力癖、読書癖、勉強癖、売り癖、儲け癖、掃除癖、節約癖、貯蓄癖など好ましいものもあります。
 
●よい会社を作っていくということは、社員によい癖を作らせていくということでもあります。「よい癖とはどういうものか、悪い癖とはなにか」を教え、みなでそれを実行していくことが会社全体の癖になり、風土になり、体質になるのです。
 
●船井総研の船井幸雄さんは、社長には次の四つの癖が必要だと雑誌のコラムに書いておられました。
それは、
(1)働き癖
(2)学び癖
(3)節約癖
(4)儲け癖
の四つでした。
 
●私はそれを読んで「なるほどなぁ」と思うと同時に、その中でも「儲け癖」が一番大事なのではないかと思いました。なぜなら、他の三つにくらべてマスターするのが難しいからです。むしろ「儲け癖」の反対の「損癖」の方が一度でもついてしまうと、少し儲けが出ただけですぐに舞い上がったりお金を使ってしまったりすることが多いからです。
 
●「儲け癖」を養う一番てっとり早い方法は、「儲け癖」がある人と一緒にビジネスをすることです。しかし、現実にはなかなかそうした機会には遭遇しません。そこで、「儲け癖」がある経営者が書いた本を読むか、セミナーを受けるなどして儲け癖の心をあなたのなかに養っていくことが大切です。そして、その思いや決意を経営計画書にきっぱりと明記していくのです。
 
 

2012年03月09日(金)更新

社長だから正しい

●「社内の人間関係がうまくいっていないので、一度ミーティングの様子を見にきてほしい」と知人からメールが入りました。その方はエステサロンを経営される女性社長で最近起業されたばかりです。
 
●約束の時間にお店へ入っていくと、いきなり奧の方からけんか腰のやりとりが聞こえてきました。どうやら私のことに気づいていない様子です。
 
「ちょっとあなたさぁ、さっきから聞いてると何様のつもり? 社長は誰だと思ってるの。あなたじゃなくて私なのよ」
「ええ、わかってますよ、そんなこと」
「だったら社長に対する口のききかたってものがあるでしょうよ」
「社長社長って社長風をふかさないでください。私は自分の気持ちを正直にしゃべっただけなんですから」
「ここでは私が最終責任者なんだから、ちゃんと決めたことは守ってもらわないと困ります!」
「ああ、そうですか。今日はこれで帰ります」
「ちょっと、今からみんなでミーティングよ。コンサルタントの先生もお呼びしてあるんだから」
「私には関係ありません。じゃあ失礼します」
「・・・・・」
 
●他のスタッフもその場にいましたが、結局この日のミーティングは中止され、このスタッフはこれをかぎりに退職しました。
 
スタッフルームの壁面には、『お客さまの美しさと笑顔が私たちの喜びです。私たちはお客さまのために専門的サービスを提供するプロフェッショナル集団です』と額が掲げてありました。
エステの技術は高くても、店舗運営やコミュニケーションの技術はあまりお上手ではないようです。
しばしばスタッフと意見の衝突があるそうで、この日のトラブルもお客さまに対してシャンプーなどの商品販売のノルマを課そうとする社長と、それを嫌がるスタッフとの対立だったそうです。
 
●会議の原則は「衆議独裁」。つまり、全員で議論を尽くし、最終的に意志決定するのはリーダーという意味で、衆議をつくしたあとは多数決ではなく独裁で決めるのです。会議やミーティングの場で全員の意見をひとつにまとめようとして時間を浪費させるわけにもいきません。
 
●しかし「私が社長よ」というスタンスには問題があります。それをやり過ぎるとパワーハラスメントになってしまいます。
誰が社長かは言われなくてもみんなわかっています。そんなことが問題の本質なのではなく、「誰が正しいか、ではなく、何が正しいか」で議論されることが大切なのです。
 
社長だから、役員だから、スタッフだから、アルバイトだから・・という立場の違いを持ちだすようではいけません。
「経営理念や企業目標と照らし合わせたとき、何が正しいのか」を皆で論じたいものです。そうした組織の秩序を作っていくことは良い会社を作っていく重要なインフラなのです。
 
 
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ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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