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2010年10月22日(金)更新

本を買ったら一気に読もう

●アメリカの思想家・エマーソンは、「人々は驚きを愛する」と言いました。
絶叫マシンやおばけ屋敷にお金を払うのもそのためですし、ホラーやサスペンスの映画や小説が人気なのも人々が驚きを愛するからでしょう。

●アガサ・クリスティ原作の映画『情婦』も驚きを愛する人にはうってつけの映画でしょう。
法廷で繰り広げられる裁判の最後の最後にどんでん返しがあり、観るものの意表を突きます。
「やられた~」と思いながらエンドロールを見ていたら、「この結末は誰にも話さないでください」と念が押されていました。それも当然で、先にネタばらしされたら驚きがなくなってしまうからです。

●おもしろい小説を読みだすと「この先、どうなるのだろう?」と気になって途中でやめられなくなり、結局、朝まで寝ずに読んでしまったということがよくあります。

『本を読む本』(J・モーティマー・アドラー著、講談社学術文庫)は、60年前に書かれ読書指南書として世界的に有名な本ですが、その中でも「小説は一気に読むもの。忙しいときでもなるべく短時間で読むよう努めるべき」と書いてあるのです。

●本も鮮度が命、買ったその日が一番読みたいという気持ちが強い日なのです。その点、読みたい本をまとめ買いしておくと「読みたい」衝動が薄れていって、結局“積ん読”になる場合があります。

読みたい本を見つけたらその日に買ってその日に読み始め、一気に読んでしまうのが正しい読み方なのでしょう。

私もこれからは、未読の本をたくさんストックするのはやめようと思っています。

2010年10月15日(金)更新

リストラと戦略コストを使い分ける

●肥っている人はもちろん、中高年になればほとんどの人がダイエットが必要だそうです。新陳代謝が不活発になるからでしょう。
それと似て、企業だって10年以上たてば常時リストラが必要です。経費の使い方を見直し、経費率を下げる取り組みをしないと自然に経費が増大していく宿命にあるのが会社というもの。

●一円でも無駄な経費は削減していきましょう。それは、経理部門に任せるのではなく、経費削減担当役員をおいてリーダーシップを発揮してもらいましょう。当然、その役員は兼任でも構いませんが、現場ににらみを利かせられる立場の人がよいでしょう。

●それと同時に、将来の売上げを増加させるための経費は「投資」と考えて、削減すべき経費とは別枠で管理したいもの。そうした費用をここでは「戦略コスト」とよびますが、あなたの会社にとっての「戦略コスト」とは何の費用でしょうか。

●知人のある会社は、日本全国を販売エリアとしています。しかし、営業マンは驚くほど少なく、日本中を役員3名だけで回っていた時期もあります。
それでも年商10億、粗利益9億、社員数40名、労働生産性2,000万超という結果を出していたから立派なものです。
この会社の当時の「戦略コスト」は「旅費交通費」でした。毎月コンスタントに300万円ほど使っていたのです。つまり、毎月300万円の交通費をかけて7500万円の月間粗利益を稼いでいたわけですから、25倍の利回りです。抜群の投資効果といえそうです。

●はじめてこの金額を聞いたとき、私はビックリしました。何たる自由奔放な経費の使い方。しかし、この社長は「戦略コスト」という言葉こそ使わないものの、「交通費は投資である」という考えをお持ちだったのです。
私も真似して月間100万円以上の交通費を使ってみましたが、25倍の2500万円も粗利益が稼げそうもなかったので、あわてて減らしたことがあります。

●「教育費」が戦略コストの会社もあります。また、「通信費」(電話・FAX代、切手代など)が営業成果に正比例するという会社もありますし、「家賃が戦略コストだ」という会社もあります。

●投資であるかぎりは、見返りを明確にしましょう。

たとえば、新しいオフィスに毎月50万円の家賃を支払うのであれば、その5倍から10倍の粗利益増加が見込めれば良いのですが、家賃倒れになるのであれば、投資から撤退すべきです。
そうしたコスト意識と投資利回りの観点から、無駄を排除し、ジリ貧にならない新しい機会創造も行っていくべきなのです。

2010年10月12日(火)更新

コッテージ・チーズを洗う

●友人が「 Education is power 」と書かれたリストバンドをはめていました。彼は、いつも左手にあるその白いリストバンドを見るたびに、学習の大切さを思い出すそうです。

このように、大切なことを思い出せるようにしておくことはとても重要なことです。なぜなら大切な目標に至るにはずいぶん時間がかかるからです。

●石油の鉱脈にたどりつくためには、杭打ち機によって何度も何度もくり返しくり返し、杭を打ち込む必要があります。強烈な一発で杭が鉱脈にたどりつくことはあり得ません。

限界の突破にはエネルギーが必要なのです。

『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』の著者コリンズは、「飛躍にいたる条件は、規律ある考えと規律ある行動が大切」としてコッテージ・チーズを洗うたとえ話を紹介しています。

●これは、ハワイの鉄人レースで六回優勝したトライアスロンの世界的スター、デーブ・スコットの話です。彼の練習がすさまじい。

毎日の練習で平均して自転車で120キロ、水泳で2万メートル、長距離走で27キロというトレーニングを一日も欠かさずこなしているというのです。
毎日の練習だけで5,000キロカロリーも消費しているのです。
私の場合、最高にがんばった日にはマシンで1時間ほど走ったことがあります。それでも消費カロリーはわずか500キロカロリーでしたから、その10倍を毎日やっているのです。

●それでもスコットは、さらに能力を高めるために栄養にも万全の気配りをしているそうです。
少しでも脂肪分が少なく、炭水化物が多い食事をとっているのです。さらにさらに、コッテージ・チーズを食べる前には入念に洗って、少しでも脂肪分を落としてから食べるようにしているといいます。

●この行為を『ビジョナリー~』のコリンズはこう表現します。

・・・
鉄人レースに勝つにはコッテージ・チーズを洗わなければならないことを示す証拠があるわけではない。核心はそこにはない。チーズを洗うのは小さなことではあるが、この小さな方法によって自分の力がさらに少しでも強まると本人が確信している点にこそ核心がある。この小さな方法を他の多数の方法に付け加えることによって、強烈なほど規律のある一貫した計画を作り上げているのだ。
・・・

●あなたにとって、コッテージ・チーズを洗う行為とは何でしょうか?

★『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822242633/

2010年10月01日(金)更新

変わる経営理念

●その日、私はA社長にむかって少し強い口調でこう申し上げました。

「もう逃げるのはやめましょう。今作ってください。今です。今、この場で作ることができますから、やってみましょう!」と。

A社長は「経営理念を作りたい。そして、中長期の経営ビジョンもまとめ上げたい」ということで、私が主催するセミナーに参加されました。

●複数回にわたって経営理念の作り方をご説明し、そのための書式も差し上げました。でも二ヶ月たった、そのときになっても理念が一行も出来ていないというのです。

その理由は「あと延ばし」の誘惑に負けているからではないでしょうか。
経営理念を教科書的に理解すると金縛りにあってしまい、結局「あと延ばし」してしまいます。

●教科書いわく、「経営理念は未来永劫変わらないもので、それこそ社長が何世代も代替わりしようとも変わらない我社の根本的価値観と理想を文章にしたもの」

今までそれに近いものが何もなかったのに、そんな理想的な理念がすぐに作れるわけがないのです。もし作れるとしたら、他社事例を参考にして作った模範解答的な理念に過ぎなく、社長の魂が入っていない借りものの理念でしょう。

●私はセミナーで幾度となく「経営理念は変えても良い」と申し上げてきましたが、今後はもっと大胆にこう申し上げることにしました。

「経営理念はどんどん変わっていくべきだ」
「経営理念は毎年、いや、当面は毎月変わっても構わない」
と。

●ドラッカーはこう述べています。

「私は父とシュンペーターとの会話に同席し、三つのことを学んだ。一つは、人は何によって人に知られたいかを自問しなければならない。二つは、その問いに対する答えは、歳をとるにつれて変わっていかなければならないということである。成長に伴って、変わっていかなければならない。三つめは、本当に知られるに値することは人を素晴らしい人に変えることであるということである」
( ドラッカー『プロフェッショナルの条件』(ダイヤモンド社)より )

●成長と自己変革に応じて理念はもちろん、理想も変わっていくものです。

ドラッカーも語っているように人も会社も「何によって人に知られたいか」を自問しなければならないし、それは、歳をとるにつれ、成長するにつれ、変わっていかなければならない性質のものだと思います。

●経営理念も長期ビジョンもどんどん変わるべし。

ただし、どうせ変わるから作らない、というのでなく、変わるために今作るのです。

明日でも今晩でもなく、5分の時間があれば今すぐにでも作り始められるもの、それが「経営理念」です。

●まずは、「今月の経営理念」を毎月作りましょう。だんだん変える必要がない理念に仕上がっていくことでしょう。そうしたら今度は、「年度経営理念」に格上げし、やがて年度も取ってしまえば良いのです。

それが理念を成文化するときの正しい姿勢だと思います。

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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