大きくする 標準 小さくする

2007年09月21日(金)更新

二大欲求、三大ニーズ

●いきなりですが、クイズです。

鰯(いわし)はいたみやすい魚として知られていますが、その鰯を遠距離まで普通に輸送すると、何匹かは弱ってしまうなど、ロスが出てしまいます。ところが、あるものを鰯と一緒に、輸送用のイケスにいれておくと、鰯のロスが減り、長距離輸送をしても活きがいいそうです。その、“あるもの”とはいったい何でしょうか?

●正解は「なまこ」。鰯はなまこが大の苦手なので、逃れるために元気よく泳ぎ続けるからだそうです。大好きなものより、大嫌いなものと同居させるほうが活気づくとは、少々意味深なものがあります。

●鰯と人間を一緒にしてはいけないのですが、私たち人間もそれに近いところがあります。「何で買うのか?」という問いに対し、「大好きだから買う」「大嫌いなものから逃れたいから買う」という両方の答えがあります。言いかえると、消費者が購買の意思決定をする理由として、

◇利益が得られるとき
◇損失が避けられるとき

の二つがあるということです。
●「得られる利益」と「避けられる損失」の二つが、支払金額よりも大きいとわかったとき、人は即座に購買します。よってマーケティングとは、この二つの欲求に直接働きかける活動をさすのです

●ここでいう「利益」「損失」とは経済的な側面に限りません。時間や情緒、知性、肉体などあらゆる分野における利益・損失です。それぞれについて、いくつか例を書き出してみました。

◇経済的側面:「儲かる」「経費を減らせる」「得をする」など
◇時間的側面:「手間が省ける」「楽になる」「余裕ができる」など
◇情緒的側面:「楽しい」「リラックスできる」「日常から解放される」など
◇知性的側面:「ためになる」「情報が得られる」「刺激がある」など
◇肉体的側面:「苦痛から逃れられる」「快適になる」「おいしい」など

●私たちは、商品やサービスそのものを売っているのではありません。消費者が「得られる利益」や「避けられる損失」を売っているということを深く理解しておくべきでしょう。そうすれば、おのずと販売方法なども変わってきます。

●さらに、別の角度から消費者のニーズについて考えてみましょう。消費者には、どんな世の中になっても変わることがない、「永遠不滅の三大ニーズ」というものがあります。それは、次の3つです。

◇ディスカウントニーズ(安い)
◇コンビニエンスニーズ(ありがたい)
◇スペシャリティニーズ(他に比べるものがない)

●3つのうちのどのニーズを満足させていくのかを、ハッキリと決めましょう。もちろん、複数でも構いません。そして、決めたニーズを満たすために自社の商品・サービスの品質や価格、提供方法はどうあるべきかを決めるのです。

このように、「消費者の二大欲求と三大ニーズ」という視点で、自社のあり方を定期的に点検することが大事なのです

2007年09月14日(金)更新

目標リストの更新

●できる上司は、部下を混乱させないような頼み方をするものです。

●「これ急いでコピーを。でもその前に、これを宅急便で送ってきて。あ、それとコーヒーを一杯よろしく」などと無茶苦茶な頼み方をしていたら、「いい加減にしろ!」と、結局何もやってくれないでしょう。

●目標の発表だって同じです。一度にたくさんの目標を掲げて部下や組織を混乱させてはいけません

●「今期の目標は、あの数字とこの数字の達成。それから、新規事業を一刻も早く軌道に乗せることと、この問題の解決。あとは、この分野への着手に備えて布石を打って・・・」と長々と目標を聞かされたら、社員が混乱するだけでなく、肝心の自分自身が混乱しかねません。
●そこで、自分に対して定期的に、『Is this still valued?』(この目標はまだ本気?)という問いかけをしてみましょう。つまり、本当に価値があって新鮮な目標だけが、「目標リスト」に残されているようにするのです。逆に、まだ諦めてはいないが、実質的には達成にこだわっていない目標は、「ペンディングリスト」に回すのです。また、いつかはやりたいけど、今の段階では考える必要のないものも「ペンディングリスト」に入れておきましょう。

「目標リスト」は今の瞬間、フレッシュなものばかりでなければなりません

●決めた目標を、どこまで徹底してやりきるかどうかが企業体質を決めます。達成していない目標や着手すらしていない目標がたくさんあるのに、その上に新しいのが加わったりすると、文字どおり玉石混淆の「目標リスト」になってしまいます。そのままでは「悪貨は良貨を駆逐する」の言葉どおり、どうでもいいことが重要な目標を駆逐しかねません。

●『Is this still valued?』(これ本気?)というような目標に対し、「さあね」という答えが返ってくるような社風は払拭しなければなりません。『Is this still valued?』という問いに対して、『Yes!』と全員が声を揃えて返事してくれる会社にするのです。

●そのためには、「目標リスト」が常に新鮮で、整理されている必要があります。目標を毎月リフレッシュさせること、これが企業体質を決めるツボなのです

2007年09月06日(木)更新

鉄は熱いうちに打つ

鉄は熱いうちに打て、とは良くいったものです。逆に、「あの時がんばっておけば良かった」と感じることもしばしばあります。

●この春もワンセグ対応の携帯電話を買ったのですが、いまだに使い方がよくわかっていません。買ったばかりの頃に、説明書を見ながらある程度の時間を投資しておけば良かったと、後悔しています。

●そういえば、私が経営コンサルタントとして独立した三年目のときも、こんなことがありました。

●ある日、使い慣れたワープロ専用機をお払い箱にして、パソコンセット一式を購入しました。当時、インターネットにはまだ興味がなかったので、パソコンにはもっぱら機能の向上を期待していたのですが、ワープロ専用機に比べてあまりに多機能なこともあり、かえって使い方に困った記憶があります。

●そこで、自分に時間とお金を投資することにしました。パソコン学校へ通うことにしたのです。
●そこでは、パソコン入門講座やWindows入門からはじまり、ワード・エクセル・アクセスといったMS Officeの講義などを経て、最後に応用・実践編といった具合でカリキュラムが進んでいきました。それと同時に、タッチタイピングソフトを買ってきて、一か月の間に毎日一時間以上練習をしたものです。ですので、今の私のパソコンレベルはほとんどこの頃に学んだものであって、それ以上でも以下でもありません。

●それから4年後、今度はインターネットに興味をもった私は、一週間オフィスにこもってホームページ作りを一人で行いました。それが今日の「がんばれ社長!」サイトの原型になっているのですが、この一週間がなかったら、メールマガジンを始めていたかどうかもわかりません。今の私からメールマガジンを取り去ったとして、一体なにが残るのかと思うとゾッとします。

●孫子の言葉に「兵は拙速を尊ぶ」というものがあります。何事も、グズグズしているとやれなくなってしまうことが多いので、タイミングをとらえて一気に事を運びたいもの。特に、完璧主義者は要注意でしょう。完璧さを求めるこだわりが、かえってグズの原因になります。

『いまやろうと思ってたのに…』(リタ・エメット著、光文社知恵の森文庫)という本でも、次のような例が出ています。

ある営業部長が、新しいオフィスを飾るために、やる気スローガンが入った額を何万円分も買い込みました。ところが、引っ越しから5か月たっても、額は未開封のままで、オフィスの壁も殺風景な状態。
たかがオフィスの壁を飾るよりも大切な仕事がたくさんあるし、人にまかせるとどこに飾るかわからない。そうして延ばしているうちに、いつのまにかそれが、「やりたくない仕事」になってしまいました。理由は特にないのに、やりたくないのです。
ところがある日の昼休み、思い切って着手してみると、あっけないほど簡単に出来てしまい、オフィスの雰囲気は一変しました。部下はやる気にあふれたオフィスの雰囲気を称賛するのですが、部長は「この5か月間はいったい何だったのか」と思いました。


「彫ることは彫りだすことだ」とはミケランジェロの言。同様に、「書くとは書き始めることだ」「作るとは作り始めることだ」などとも言えるのではないでしょうか。

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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