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2013年08月30日(金)更新

真摯(しんし)

●会社の不祥事に対して経営者が、「悪いのは部下だ。私は何も知らないし、むしろ私も被害者だ」などと声高に訴えたところで誰も信用しない。むしろ、おのれの無能と不徳をPRしているようなものである。
 
●「彼らは、高い目標を掲げ、それらの目標が実現されることを求める。だれが正しいかではなく、何が正しいかだけを考える。自分自身、頭がよいにもかかわらず、頭のよさよりも真摯さを重視する。つまるところ、この資質に欠ける者は、いかに人好きで、人助けがうまく、人づきあいがよく、あるいはまた、いかに有能で頭がよくとも、組織にとっては危険な存在であり、経営管理者および紳士として、不適格と判断すべきである」
(ドラッカー『現代の経営』下巻より)
 
「真摯さ」は1954年からドラッカーが説いている経営管理者の資質であり、今日、ますます経営者に問われているものの一つだろう。
 
●「真摯」という単語を辞書でひいてみたら「まじめでひたむきなこと。事を一心に行うさま」とあった。
一貫性があってブレないことが大切なようで、そのあたりドラッカーはこう続けている。
 
「仕事の真摯さが必要なのはいかなる職業でも同じだが、それらのほとんどは仕事上の真摯さにすぎない。だが、経営管理者であるということは、親であり教師であるということに近い。そのような場合、仕事上の真摯さだけでは不十分であり、人間としての真摯さこそ決定的に重要である」。
 
●「仕事の真摯さ+人間としての真摯さ」が経営者には必要なのだ。
起業して社長になることは誰にでもできるが、真摯な経営者として人と組織を育て上げていくには覚悟と時間が必要である。
しかもこの資質は、読書やセミナー受講によって修得できるものではなく、お金で買えるものでもない。誰かに補ってもらえるものでもなく、あくまで本人の個人的努力によって身につけていかなければならないものなのだ。
 
経営計画書を通して会社の未来を語ることは、あなたを真摯な経営者にしていくための最初のステップと言えるだろう。
 
 

2013年08月23日(金)更新

社長の自主トレ・キャンプ

●今日、何も予定がないからとっても幸せな気分だ。のんびり本でも読んで早めに仕事のキリをつけてジムにでも行くか。
だが、そういうワケにはいかない。なぜなら、無理やり算段して今日という日を確保したのだから。仕事の遅れをとりもどすためだけでなく、今後のための企画や立案もせねばならない今日という貴重な一日を捻出したわけだ。
 
●経営者のスケジューリング技術とは、こうしたノーアポデーをひねり出すためにあると言っても過言ではない。
以前の私は半年先まで予定でビッシリ詰まったスケジュール帳を見ながらウットリしたものだ。だって、こんなにも世間が私を必要としていると思えるからだ。だが、そんなことを誇りにしていては進歩がない。
 
●手帳が予定で真っ黒になっているのを自慢して良いのは営業マンと人気作家くらい。少なくとも経営者は、予定が白いことを誇りにしよう。そして、本当にやるべきことをやるのだ。
 
『超・手帳法』の野口悠紀雄氏は、3ヶ月以上の先の予定は決して入れないそうだ。どうしても予定を入れなくてはならないときは、「仮予定でもよければ」という前提で約束するという。その時に意味がある約束でも3ヶ月後にも意味があるとは限らないからだ。もしお互いに意味がない約束であるにも関わらず手帳にその案件が居座っているかぎりそれは履行されねばならない。だから3ヶ月以上先のスケジュールは組まない、というのは理にかなった考え方である。
 
●他人とのアポイントや会議・会合への参加約束、食事会やゴルフコンペなどの参加約束は最小限にしておこう。それよりも個人の企画や立案、執筆などができる時間を確保しよう。幹部や社員とのコミュニケーションの時間も確保しよう。
 
●どうしても相手優先、客先優先でスケジュールを組まねばならないときは、プロ野球のポストシーズンのように自主トレ、合宿、キャンプなどの日付を決めて手帳に入れておこう。
ひとつの案として、「一人合宿」を四半期に一度やると決めてはどうだろう。三ヶ月に一回、理想は二泊三日以上が望ましいが、まずは一泊二日でも構わないので一人合宿をやる。まとまった時間がとれるので、その間に欲ばらずにひとつのことだけをやるのだ。
 
集中読書するもよし、企画、開発、計画に集中するもよし。
次のように季節ごとにテーマを分けても良いだろう。
 
・春(3月)・・・経営計画合宿
・夏(6月)・・・読書合宿
・秋(9月)・・・新事業企画合宿
・冬(12月)・・開発合宿
 
なるべく日常空間を離れよう。旅館やホテル、別荘でもよい。急用以外は電話やメールをするなと関係者に言っておこう。
 
ドラッカーが言うように社長の時間はいつもお客や社員に奪われる運命にある。個人の時間も友人や家族のために奪われる。無防備に奪われるだけでなく、せめて一年に何日かは予防策として一人になれる時間を前もって確保しておこうではないか。
 
 

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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