武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
2009年02月27日(金)更新
エグゼクティブとは
●下位打線にも福留選手や岩村選手などの現役メジャーリーガーを擁する侍ジャパンに、期待が集まっています。なによりWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)連覇が期待されていますが、北京五輪で苦い思いもしているだけに、期待と不安が入りまじった気持ちです。
●テレビのキャスターは「こんな豪華なメンバーを預かればオレが監督でも勝てるよ」と言ってましたが、本当にそうでしょうか。私は、こんなチームだからこそ相応の力量がある監督でないと務まらないと思うのです。ある意味、監督勝負の大会ともいえるのではないでしょうか。
●監督は会社でいうところの社長です。社長のことを英語では「ボス(Boss)」といいますが、「エグゼクティブ(executive)」ともいわれます。エグゼクティブは一般に「重役、取締役、経営幹部」などと訳されますが、語源は「エグゼキューション(execution)」という単語だそうです。
●この単語は「処刑、死刑執行、強制執行、破壊行為」などと、強制力を行使するという意味をもちます。このことから、なにがあっても独りで決断し、断固として実行する(あるいはやめさせる)力が求められていると理解すべきでしょう。
●もちろん、試合によっては監督がいらないような展開になる場合もあるでしょうが、舞台裏でも監督業は大変でしょう。現に、全日本で不動の四番だった松中選手や、国際経験豊富な和田投手を最後になって外した決断に対し、楽天の野村監督やスポーツキャスターの一部から批判の声があがっています。
●どのような布陣にしたところで、批判はつきものです。外部の批判を封じるには、前回の王ジャパンのように優勝するしかないのです。
●また、「オレが監督なんだ」と言わんばかりにリーダーの権力を振りかざすだけでは、メンバーがついてこなくなります。メンバーと目標や価値観を共有し、勝つための方策や役割分担について綿密に話しあっておく必要があるでしょう。ときにはけが人が出たり、主力が不振に陥るなど、予期せぬことも起こると思います。しかし、エグゼクティブには、たとえそうなっても勝つことが義務づけられているのです。
●もし、監督が「勝て」とか「ホームランを打て」というサインしか出せなかったら、即刻クビになるでしょう。同様に、「目標を達成しろ」「何やってるんだお前は」としか言えないのも大問題です。攻撃と防御、それぞれの場面で一球ごとにサインを送る監督。人間ドラマを観るようで、いまからワクワクしてきます。
がんばれ! 侍ジャパン。
●テレビのキャスターは「こんな豪華なメンバーを預かればオレが監督でも勝てるよ」と言ってましたが、本当にそうでしょうか。私は、こんなチームだからこそ相応の力量がある監督でないと務まらないと思うのです。ある意味、監督勝負の大会ともいえるのではないでしょうか。
●監督は会社でいうところの社長です。社長のことを英語では「ボス(Boss)」といいますが、「エグゼクティブ(executive)」ともいわれます。エグゼクティブは一般に「重役、取締役、経営幹部」などと訳されますが、語源は「エグゼキューション(execution)」という単語だそうです。
●この単語は「処刑、死刑執行、強制執行、破壊行為」などと、強制力を行使するという意味をもちます。このことから、なにがあっても独りで決断し、断固として実行する(あるいはやめさせる)力が求められていると理解すべきでしょう。
●もちろん、試合によっては監督がいらないような展開になる場合もあるでしょうが、舞台裏でも監督業は大変でしょう。現に、全日本で不動の四番だった松中選手や、国際経験豊富な和田投手を最後になって外した決断に対し、楽天の野村監督やスポーツキャスターの一部から批判の声があがっています。
●どのような布陣にしたところで、批判はつきものです。外部の批判を封じるには、前回の王ジャパンのように優勝するしかないのです。
●また、「オレが監督なんだ」と言わんばかりにリーダーの権力を振りかざすだけでは、メンバーがついてこなくなります。メンバーと目標や価値観を共有し、勝つための方策や役割分担について綿密に話しあっておく必要があるでしょう。ときにはけが人が出たり、主力が不振に陥るなど、予期せぬことも起こると思います。しかし、エグゼクティブには、たとえそうなっても勝つことが義務づけられているのです。
●もし、監督が「勝て」とか「ホームランを打て」というサインしか出せなかったら、即刻クビになるでしょう。同様に、「目標を達成しろ」「何やってるんだお前は」としか言えないのも大問題です。攻撃と防御、それぞれの場面で一球ごとにサインを送る監督。人間ドラマを観るようで、いまからワクワクしてきます。
がんばれ! 侍ジャパン。
2009年02月20日(金)更新
雇用を守りたいのはやまやまだが その2
<前号の続き>
●派遣切りによって失業した人たちは、たしかにお気の毒だと思います。財布の中に50円しかないとか、おにぎりをもらって人の優しさに涙が出た、というような報道は、お涙ちょうだい話のネタとしては格好の題材でしょう。
●しかし、そうなった責任は派遣契約を解除した企業のせいではありません。前回も書いたとおり、企業は最初に結んだ契約にしたがって動いているだけです。失業して収入が途絶えたことの責任は誰か、それは半分以上が本人自身にあると私は思います。決して彼らを一方的な被害者扱いにしてはなりません。それが自由主義であり市場の原理なのですから。
●同時に、失業した彼らが今まで働いてきた勤務先の経営者にも責任の一端があります。いままでの勤務先が社員教育をきちんとやってくれる経営者であったならば、どこにも行き先がないという社員を作ることはなかったはずです。ですから、社員教育に力を入れるということは将来の失業者を作らないための貢献であることを、経営者は自覚しましょう。
●ところで、新聞やテレビを見ていると識者たちが「派遣切りの次は正社員切りだ。経営者は何があっても雇用を守れ!」などと語っていますが、第三者に言われるまでもなく、(特に中小企業の)経営者は雇用を守ることの責任を大変強く感じています。「いままで一緒にやってきた社員をクビにすることほど辛くて嫌なことはない」と、どの経営者も言っているのです。
●しかし、現実問題として「雇用を守っていたら、企業が守れない」という会社もたくさんあります。そんな会社に対しては、私は「勇気をもって、雇用よりも企業を守ってほしい」と申し上げています。もちろん、どさくさまぎれの安易な解雇は許されないので、ギリギリまで粘らなくてはなりません。そこで、順序としてやるべきことについて、解説しましょう。
1.助成金や緊急融資制度の勉強
雇用を守るために必死になってがんばっている会社には助成金が出ます。あなたの会社も該当するのかどうかも含めて、厚労省のホームページで調べるか、社労士さんに相談してみましょう。
*参考* 厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/index.html
同様に、国からの緊急制度融資もスタートしています。「うちはもう借金はできない」と決め込むのではなく、銀行や公庫などの金融機関に相談して、制度融資が受けられるよう努力しましょう。
2.役員報酬のカット
責任をまっさきに負うべきは経営陣です。業績が悪い会社はすぐにでも、社長の報酬を生活できるぎりぎりのラインまで大幅カットしましょう。他の役員の報酬も同様に、社長の減額幅に準じてカットしましょう。
3.正社員やパートアルバイトのボーナス支給ストップまたは大幅カット
夏の賞与、冬の賞与がゼロ円、またはゼロ程度のものになる見通しを今から発表しておきましょう。春の定期昇給についても同様です。ベアゼロまたは減給も検討すべきかもしれません。ただし、業績目標の達成状況に応じて、昨年並みあるいは昨年以上に支払うことも可能であることを、同時に示しておきましょう。
4.給与や時間給、手当などの削減
賞与の次に給与カットも検討しましょう。辛いことですが、雇用を守るためには正社員やパートアルバイトの給与カットを避けて通れない会社も多いはずです。また、残業が恒常化している会社は定時で仕事を終える体制に切り替え、残業代を払わずに済むようにしましょう。仕事が少ない場合は、早退や半日勤務、自宅待機などを組み合わせて、勤務時間を減らすことで給料を下げましょう。いわゆるワークシェアリングです。
あとは技術的な話ですが、必要によっては賃金体系を見直し、モデル賃金のベースを下げるか、本人の資格等級を下げましょう。こうした作業は雇用契約の変更でもあり、法律面も充分に押さえるべきなので、社労士などの専門家と相談しながら行なうほうがよいでしょう。
5.最終手段としての人員削減--部門、営業所の閉鎖とそれに伴う解雇
それでも業績改善が不十分なのであれば、そこではじめて社員を解雇します。とは言え、かねてから問題のあった社員を、「ここぞ」とばかりにどさくさに紛れて解雇するのは不当解雇になりかねませんので、企業の現状を鑑みたうえで、一部の部門や営業所、店舗などを丸ごと閉鎖し、該当者を全員解雇します。その後に、問題社員を除いた一部の人を再雇用するスタイルがよいでしょう。
実際に辞めさせたいような問題社員がいる場合は、企業業績に関係なく解雇すべきなので、それはそちらのルートでやるべきです。
●以上が雇用に手をつける際の手順です。いつ着手を始め、どの程度の早さで実行するかはあなたの判断です。ただし、こうした非常時において認識しておかねばならないのは、「混乱によって今月の業績が悪くなったことは社長の責任とはいえないが、半年後の業績は100%社長の責任である」ということです。社長の責任を自覚し、やるべきことを粛々とやっていきましょう。
●派遣切りによって失業した人たちは、たしかにお気の毒だと思います。財布の中に50円しかないとか、おにぎりをもらって人の優しさに涙が出た、というような報道は、お涙ちょうだい話のネタとしては格好の題材でしょう。
●しかし、そうなった責任は派遣契約を解除した企業のせいではありません。前回も書いたとおり、企業は最初に結んだ契約にしたがって動いているだけです。失業して収入が途絶えたことの責任は誰か、それは半分以上が本人自身にあると私は思います。決して彼らを一方的な被害者扱いにしてはなりません。それが自由主義であり市場の原理なのですから。
●同時に、失業した彼らが今まで働いてきた勤務先の経営者にも責任の一端があります。いままでの勤務先が社員教育をきちんとやってくれる経営者であったならば、どこにも行き先がないという社員を作ることはなかったはずです。ですから、社員教育に力を入れるということは将来の失業者を作らないための貢献であることを、経営者は自覚しましょう。
●ところで、新聞やテレビを見ていると識者たちが「派遣切りの次は正社員切りだ。経営者は何があっても雇用を守れ!」などと語っていますが、第三者に言われるまでもなく、(特に中小企業の)経営者は雇用を守ることの責任を大変強く感じています。「いままで一緒にやってきた社員をクビにすることほど辛くて嫌なことはない」と、どの経営者も言っているのです。
●しかし、現実問題として「雇用を守っていたら、企業が守れない」という会社もたくさんあります。そんな会社に対しては、私は「勇気をもって、雇用よりも企業を守ってほしい」と申し上げています。もちろん、どさくさまぎれの安易な解雇は許されないので、ギリギリまで粘らなくてはなりません。そこで、順序としてやるべきことについて、解説しましょう。
1.助成金や緊急融資制度の勉強
雇用を守るために必死になってがんばっている会社には助成金が出ます。あなたの会社も該当するのかどうかも含めて、厚労省のホームページで調べるか、社労士さんに相談してみましょう。
*参考* 厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/index.html
同様に、国からの緊急制度融資もスタートしています。「うちはもう借金はできない」と決め込むのではなく、銀行や公庫などの金融機関に相談して、制度融資が受けられるよう努力しましょう。
2.役員報酬のカット
責任をまっさきに負うべきは経営陣です。業績が悪い会社はすぐにでも、社長の報酬を生活できるぎりぎりのラインまで大幅カットしましょう。他の役員の報酬も同様に、社長の減額幅に準じてカットしましょう。
3.正社員やパートアルバイトのボーナス支給ストップまたは大幅カット
夏の賞与、冬の賞与がゼロ円、またはゼロ程度のものになる見通しを今から発表しておきましょう。春の定期昇給についても同様です。ベアゼロまたは減給も検討すべきかもしれません。ただし、業績目標の達成状況に応じて、昨年並みあるいは昨年以上に支払うことも可能であることを、同時に示しておきましょう。
4.給与や時間給、手当などの削減
賞与の次に給与カットも検討しましょう。辛いことですが、雇用を守るためには正社員やパートアルバイトの給与カットを避けて通れない会社も多いはずです。また、残業が恒常化している会社は定時で仕事を終える体制に切り替え、残業代を払わずに済むようにしましょう。仕事が少ない場合は、早退や半日勤務、自宅待機などを組み合わせて、勤務時間を減らすことで給料を下げましょう。いわゆるワークシェアリングです。
あとは技術的な話ですが、必要によっては賃金体系を見直し、モデル賃金のベースを下げるか、本人の資格等級を下げましょう。こうした作業は雇用契約の変更でもあり、法律面も充分に押さえるべきなので、社労士などの専門家と相談しながら行なうほうがよいでしょう。
5.最終手段としての人員削減--部門、営業所の閉鎖とそれに伴う解雇
それでも業績改善が不十分なのであれば、そこではじめて社員を解雇します。とは言え、かねてから問題のあった社員を、「ここぞ」とばかりにどさくさに紛れて解雇するのは不当解雇になりかねませんので、企業の現状を鑑みたうえで、一部の部門や営業所、店舗などを丸ごと閉鎖し、該当者を全員解雇します。その後に、問題社員を除いた一部の人を再雇用するスタイルがよいでしょう。
実際に辞めさせたいような問題社員がいる場合は、企業業績に関係なく解雇すべきなので、それはそちらのルートでやるべきです。
●以上が雇用に手をつける際の手順です。いつ着手を始め、どの程度の早さで実行するかはあなたの判断です。ただし、こうした非常時において認識しておかねばならないのは、「混乱によって今月の業績が悪くなったことは社長の責任とはいえないが、半年後の業績は100%社長の責任である」ということです。社長の責任を自覚し、やるべきことを粛々とやっていきましょう。
2009年02月13日(金)更新
雇用を守りたいのはやまやまだが その1
●先日、日産自動車は「最悪のシナリオが現実のものとなっている」として、業績見通しの大幅下方修正と2万人の人員削減を発表しました。その発言に対し、株式市場は比較的冷静な受け止め方をしており、同社の株価は上昇さえしています。
●「2万人削減」の内訳は、1.2万人が国内、残り8千人が国外だそうです。しかし、希望退職の募集や工場閉鎖などによるドラスティックなリストラではなく、新規採用の抑制と定年退職や通常退職などの自然減だけで、その程度の人員削減が可能ということでした。ひとまず、動的な人員削減により、失業者が一気に増えるというものではないようなので、一安心ではあります。
●「失業者」といえば、昨年より「派遣切り」が問題になっています。テレビや新聞では、派遣社員を切った企業が悪者で、切られて失業した人たちが被害者という図式で報道されていますが、本当にそんな単純な構図なのでしょうか? 派遣契約を解除した企業が、一方的に悪いわけではないと思うのです。
●企業側としては、契約通りに動いているに過ぎません。また、仮に契約を一方的に反故にする場合でも、違約金などを支払っています。派遣社員だけが一方的に被害を受けているように報じているマスコミの姿勢がおかしいことは、大多数の国民も気がついているはずですが、それを識者や評論家たちが誰も指摘しないのはどうしたことでしょう。
●失業することになった責任の半分(以上)は自己責任です。「自分株式会社」の社長として自分のマネジメントに失敗した結果ともいえるでしょう。もちろん、仕事やお金がないという辛さは大変気の毒だし、保護してあげるべきだとは思います。しかし、そうなった責任を周囲に押しつけることはできません。それを否定することは、自由主義、資本主義の否定につながります。
●残念ながら失業した人たちは、新しい知識や技術を習得したうえで、介護や通信技術のような有効求人倍率の高い分野に自分を売り込むべきです。行政や民間団体は、たんにお金を与えて保護するのではなく、彼らの転職を可能にするための教育訓練や、人生目標の設定支援などで彼らの自立を促すべきでしょう。
●では、「失業の半分(以上)は自己責任」だとしたら、残り半分は誰の責任でしょうか。それは、派遣社員になる前に正社員として勤務していたならばその会社の社長、新卒で派遣労働者になった若者の場合は、親や学校の先生ではないでしょうか。
●社員教育や人生教育をきちんとやれば、失業してどこにも行き先がないという社員を作ることはなかったはずなのです。
<次回に続く>
●「2万人削減」の内訳は、1.2万人が国内、残り8千人が国外だそうです。しかし、希望退職の募集や工場閉鎖などによるドラスティックなリストラではなく、新規採用の抑制と定年退職や通常退職などの自然減だけで、その程度の人員削減が可能ということでした。ひとまず、動的な人員削減により、失業者が一気に増えるというものではないようなので、一安心ではあります。
●「失業者」といえば、昨年より「派遣切り」が問題になっています。テレビや新聞では、派遣社員を切った企業が悪者で、切られて失業した人たちが被害者という図式で報道されていますが、本当にそんな単純な構図なのでしょうか? 派遣契約を解除した企業が、一方的に悪いわけではないと思うのです。
●企業側としては、契約通りに動いているに過ぎません。また、仮に契約を一方的に反故にする場合でも、違約金などを支払っています。派遣社員だけが一方的に被害を受けているように報じているマスコミの姿勢がおかしいことは、大多数の国民も気がついているはずですが、それを識者や評論家たちが誰も指摘しないのはどうしたことでしょう。
●失業することになった責任の半分(以上)は自己責任です。「自分株式会社」の社長として自分のマネジメントに失敗した結果ともいえるでしょう。もちろん、仕事やお金がないという辛さは大変気の毒だし、保護してあげるべきだとは思います。しかし、そうなった責任を周囲に押しつけることはできません。それを否定することは、自由主義、資本主義の否定につながります。
●残念ながら失業した人たちは、新しい知識や技術を習得したうえで、介護や通信技術のような有効求人倍率の高い分野に自分を売り込むべきです。行政や民間団体は、たんにお金を与えて保護するのではなく、彼らの転職を可能にするための教育訓練や、人生目標の設定支援などで彼らの自立を促すべきでしょう。
●では、「失業の半分(以上)は自己責任」だとしたら、残り半分は誰の責任でしょうか。それは、派遣社員になる前に正社員として勤務していたならばその会社の社長、新卒で派遣労働者になった若者の場合は、親や学校の先生ではないでしょうか。
●社員教育や人生教育をきちんとやれば、失業してどこにも行き先がないという社員を作ることはなかったはずなのです。
<次回に続く>
2009年02月02日(月)更新
K君が学んだこと
●K君のアルバイト先である、ディズニーランドにて
上司
「Kさん、長い間の勤務ご苦労様でした。書類に記入すべきことはすべて私が書いておきましたので、あとはあなたの署名が必要です。ここにサインをお願いします」
K君
「えっ? ちょ、ちょっと待ってくださいよ。これって退職届じゃないですか」
上司
「そうですよ?」
K君
「何回も遅刻したのは申し訳ないと思ってます。でも、僕はやめるつもりなんかないです。もう遅刻しませんから許して下さい」
上司
「Kさん、今日で何度目ですか? 遅刻は雇用契約違反になるということをご存知ですよね。自分から契約を破っておいて、いまさら『やめるつもりはない』なんて言えますか?」
K君
「……」
●これまでK君は、「自分は“単なる”バイトであり、正社員ではないので気軽な身分なんだ」と思っていた。事実、彼はディズニーランド以外に、近所のガソリンスタンドで働いており、そこでは「すいません、今日ちょっと体調悪いんで休ませてもらいます」と電話すれば、あっさり許可をもらえた。極端にいうと、ウソやごまかしでも通用した。
●今回の遅刻も、徹夜で遊んでて寝過ごしたのが理由だった。心のどこかでは、ディズニーランドでの仕事も、スタンドと同じ「“単なるバイト”のやること」と高をくくっていが、ここでは通用しなかった。
●上司はスタッフのしつけに普段から厳しく、彼自身も「おいK! おまえなぁ…」と何度となく叱られた。だが、この日は「Kさん」と呼び、それを聞いた瞬間、彼は「あっ、敬語だ。自分は大好きなこの上司に見放されようとしている。もしそうなれば、この先僕はどうなってしまうのだろう」と思った。
●自分を一人前の社会人とするべくここまで育ててくれたのは、その上司のおかげだった。「この人に見放されたくない」と思うと涙が自然とこみあげ、土下座して上司に謝った。そして、二度と同じことをしないと心に誓った。
●すると、「おまえなぁ、いいかげんにしろよ」と上司の口調が普段に戻り、彼は「やった、助かった」と歓喜すると同時に、社会人として大切なことを学んだ。
●その一件以来、私生活を自分でコントロールするようになった。それは社会人として当たり前のことではあるが、この時のできごとが彼自身にプロの自覚をもたらしたのだ。
●翌年、K君はディズニーランドの年間最優秀スタッフに選ばれ、シンデレラ城の前で全スタッフから喝采を浴びた。そのとき、彼とその上司の胸に去来したものは何だったのだろうか。
上司
「Kさん、長い間の勤務ご苦労様でした。書類に記入すべきことはすべて私が書いておきましたので、あとはあなたの署名が必要です。ここにサインをお願いします」
K君
「えっ? ちょ、ちょっと待ってくださいよ。これって退職届じゃないですか」
上司
「そうですよ?」
K君
「何回も遅刻したのは申し訳ないと思ってます。でも、僕はやめるつもりなんかないです。もう遅刻しませんから許して下さい」
上司
「Kさん、今日で何度目ですか? 遅刻は雇用契約違反になるということをご存知ですよね。自分から契約を破っておいて、いまさら『やめるつもりはない』なんて言えますか?」
K君
「……」
●これまでK君は、「自分は“単なる”バイトであり、正社員ではないので気軽な身分なんだ」と思っていた。事実、彼はディズニーランド以外に、近所のガソリンスタンドで働いており、そこでは「すいません、今日ちょっと体調悪いんで休ませてもらいます」と電話すれば、あっさり許可をもらえた。極端にいうと、ウソやごまかしでも通用した。
●今回の遅刻も、徹夜で遊んでて寝過ごしたのが理由だった。心のどこかでは、ディズニーランドでの仕事も、スタンドと同じ「“単なるバイト”のやること」と高をくくっていが、ここでは通用しなかった。
●上司はスタッフのしつけに普段から厳しく、彼自身も「おいK! おまえなぁ…」と何度となく叱られた。だが、この日は「Kさん」と呼び、それを聞いた瞬間、彼は「あっ、敬語だ。自分は大好きなこの上司に見放されようとしている。もしそうなれば、この先僕はどうなってしまうのだろう」と思った。
●自分を一人前の社会人とするべくここまで育ててくれたのは、その上司のおかげだった。「この人に見放されたくない」と思うと涙が自然とこみあげ、土下座して上司に謝った。そして、二度と同じことをしないと心に誓った。
●すると、「おまえなぁ、いいかげんにしろよ」と上司の口調が普段に戻り、彼は「やった、助かった」と歓喜すると同時に、社会人として大切なことを学んだ。
●その一件以来、私生活を自分でコントロールするようになった。それは社会人として当たり前のことではあるが、この時のできごとが彼自身にプロの自覚をもたらしたのだ。
●翌年、K君はディズニーランドの年間最優秀スタッフに選ばれ、シンデレラ城の前で全スタッフから喝采を浴びた。そのとき、彼とその上司の胸に去来したものは何だったのだろうか。
ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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