大きくする 標準 小さくする

2007年04月27日(金)更新

社長の評価

●いよいよゴールデンウイークです。休日を利用して旅行や買い物に出かける人も多いと思いますが、景気をさらに良くするためにも、みんなでドシドシお金を使いましょう。かく言う私も、この連休は大分県の湯布院の名旅館に泊まって、ゆっくりかみさん孝行をさせてもらうつもりです。

●さて、今回は評価について考えてみたいと思います。評価とは言っても、今回とりあげるのは社長の評価についてです。

●社員の評価については書籍やセミナーなどのテーマとして頻繁に取り上げられるため、そこで得た知見をベースとしてオリジナルの評価表を作成し、運用している会社が多いようです。

●しかし、オーナー企業の社長に限ってみますと、昇進や昇格がないため、評価されるような機会はほとんどありません。金融機関が決算書を判断基準として評価するということはありますが、それはあくまで企業としての評価であって、必ずしも社長自身のマネジメント能力やリーダーシップの評価に結びつくものではありません。

●サラリーマン社長ならば、株主総会で評価され、場合によっては更迭されることもあります。他方、オーナー社長は、たとえ業績が悪いからといって、自ら退任するようなことは滅多にしません。
●そこで、経営力を甘くさせないために、定期的な社長評価が必要になってきます。2005年に日本能率協会が「役員の業績評価と報酬に関するアンケート」を行いました。一部上場企業のトップに対して行った調査で、詳細は下記のURLからご覧いただけます。
http://www.jma.or.jp/release/23.html

●結果から言えることは、役員の評価と報酬との関係は、依然としてブラックボックスの中にあるということです。成果主義で社員を評価する風潮が、すごい勢いで浸透しているのに対し、役員の評価に対してはなかなか浸透していきません。

●そこで、社長自身のために、一年に1~2回は自己評価をしてみましょう。場合によっては、部下に経営能力を評価してもらうのもいいでしょう。

●あくまで一例ですが、社長を評価する項目を考えてみました。

■定量的評価項目
 1.利益額(率)
 2.売上高
 3.目標達成度
 4.ROAまたはROE
 5.キャッシュフロー

■定性的評価項目
 1.経営方針とビジョンの明確化
 2.当期重点課題の実行進捗度
 3.部下の採用・定着・育成
 4.社風の向上とリーダーシップ
 5.経営力向上のための個人的な取り組み
 
●これらを評価表のスタイルに落とし込んで、各10点、合計100点の評価シートにするのです。
上半期と下半期それぞれで評価し、結果を毎回記録しましょう。当然、役員報酬の額を結果に連動させるべきです。

●他の役員も同様の方法で評価します。もし、社長より経営力がありそうな人物がいたら、その人に社長を任せてみるのも一つの手でしょう。自分は最大株主であっても、経営の最前線からは離れ、新社長に会社の舵取りを任せるのです。

●このように、社長自身も社員と同じように評価対象になり、自らの競争原理にさらすことが、会社を健全に保つ秘訣なのです。

●勇気をもって「社長の評価」を始めてみませんか。

2007年04月20日(金)更新

営業マンは自動販売機にあらず

●「営業社員を自動販売機のように扱ってはなりません
そんなことは言われなくても当たり前のことなのですが、本当にそう言い切れるでしょうか。

●ある会社でこんなことがありました。ただし、名前はすべて仮名です。

●A電子株式会社の営業部に配属された山下君と金原君は、同期入社。二人は幼なじみの仲良しで、互いに誘いあってA電子に昨年入ったそうです。ちょうど一年を経過した頃、営業成績を比較してみたら、なんと5倍もの開きがありました。山下君の圧勝だったのです。

●二人の営業成績を引き合いに、A電子の社長は全社員会議で、次のように話しました。
「山下君は本当によくがんばってくれた。もともと期待してはいたが、その期待をも大きく上回る実績を残してくれた。ご苦労様と言いたい。一方、金原君の成果は平凡だったと言わざるを得ない。努力不足だとは言わないが、身近に山下君という良きお手本がいるので、彼を見習い、今後はより一層発奮してもらいたい」

●社長の言った、ライバル心をあおり、奮い立たせるようなハッパのかけ方にはある種の効果があるかも知れません。しかし、直属上司(営業部長)までもが、社長と同じようなハッパをかけるだけの指導に終始しているのだとしたら、問題があります。金原君が今後何をどうすべきかを示し導いてあげるような、具体的な行動計画を立てるべきでしょう。
●実際に二人に会ってみました。仲良しというから似たもの同士だと思っていたら、性格はまるで違いました。山下君は社交的な性格で、気配りもできるし話術も巧みです。一方、金原君は社交性に乏しくて、内向的な印象があり、話す言葉も途切れがちです。その部分だけを見た場合、金原君は営業マンに向いていないように思えます。

●山下君のように社交的で人から好かれやすい性格は、営業マンとしての武器になるのは間違いありません。しかし、営業は性格だけではないはずです。金原君は金原君の性格のままでも、他の部分を磨き上げることにより、山下君とは違ったタイプの優れた営業マンになれるはずです。

●営業マンを育成するためには、知識や技術といったテクニカル面と、心構えやモチベーションといったメンタル面の2つに分けてアプローチしていく必要があります。セールス能力開発というテーマをこれら2つに分類するとすれば、次のように分けることができるでしょう。

【テクニカル面のアプローチ】
<知識>
 ・商品知識(自社製品や他社製品)
 ・業界全般の知識と会社知識
 ・顧客心理や顧客ニーズに関わる知識
 ・計数の知識

<技術>
 ・コミュニケーション技術(聞き方や話し方)
 ・見込み客発見の技術
 ・アポイント電話の技術
 ・商談におけるプレゼンの技術
 ・提案書や企画書、見積書の作成技術
 ・クロージングの技術
 ・契約を締結までもっていく技術
 ・アフターフォローの技術
 ・良好な人間関係を構築する技術
 ・スケジュール管理やタスク管理、勤務習慣の技術

【メンタル面のアプローチ】
<心構え>
 ・対人関係における心構え
 ・自社製品に対する信頼と自信
 ・営業力を磨くことに対する意義
 ・目標を達成するための強い意志
 ・お客様に感謝される喜びを知る

<モチベーション>
 ・自社そのものと自社製品に対する誇り
 ・自分個人として夢や目標
 ・仕事上の目標達成と個人での目標達成の同一視
 ・自社のビジョンと個人の価値観における接点の再確認
 ・目標と実績を対比し、常に行動計画を更新する
 ・小さな成功体験を積み重ねることで、自信を深める

●直属上司である営業部長は、金原君は山下君に比べ、これらのどこが劣っていたのかを把握し、克服策を作らなければなりません。単に実績だけを比較してハッパをかけるだけでは、上司として失格です。それでは営業マンを自動販売機と同じに扱っていると批判されても反論できません。

上司がなすべき仕事は、部下同士が励まし合い、成長することで新たな高みへ到達できるよう、それぞれにあった指導計画をつくり、導いていくことなのです。

2007年04月13日(金)更新

幸せホルモンを分泌させよう

仕事をする以上は、それ自体を思いっきり楽しみたいものです

●大好きなゴルフで腕を磨くために練習場でボールを打ち、コーチにレッスンを受ける時のような熱心さと向上心をもって仕事ができたら、どんなに幸せでしょう。
「仕事と趣味を一緒にするのはおかしい」
という意見もあるでしょう。もちろん、一緒にするつもりはありませんが、やっぱり仕事は楽しくなければならないと思うのです。

●最初は好きで始めた仕事でも、毎日同じことを単調にくり返しているだけだと、やがて仕事は義務と化し、好きだった仕事も好きではなくなってしまうものです。

●つい数年前に、「脳内モルヒネ」という言葉が流行しました。ベストセラー本で紹介された「脳内モルヒネ」とは、「βエンドルフィン」といわれるホルモン。私たちの体内で分泌されるもので、麻薬以上に快感を得ることができる、と紹介されました。

●こうした "幸せホルモン" は、私たちが心の底から喜んでいる時や、楽しいと思っている時に分泌されやすいと言われています。楽しいことを想像しただけでも脳内モルヒネが出るときがありますが、それは一時的な話。大切なのは、持続的に幸せホルモンが出ることです
●たとえば、次のようなケースでは、ある程度持続して "幸せホルモン" が出ていると考えられます。

◇マラソンランナーが苦しさを乗り越えたときに訪れる「ランナーズ・ハイ」
◇登山家が険しい登山の最中にいっさいの恐怖心がなくなる「クライマーズ・ハイ」
◇ダイエットで空腹の辛さを乗り越えたときに訪れる「ダイエット・ハイ」
◇猛烈に忙しいはずなのに、疲れを全然感じない「ハードワーク・ハイ」

●幸せホルモンが持続的に分泌された結果、ふだんなら出せないような力を発揮できることだってあるのです。これを「潜在能力の発揮」ともいいますが、それは長時間労働や義務的な労働では決して得ることはできません。無上の喜びや、極上の楽しみを感じているときだけ得られるのです。

●ゴルフや趣味に熱中するのも悪くありませんが、しょせんゴルフはゴルフ、趣味は趣味。現実のビジネスや会社経営という仕事は、本来、ゴルフや趣味などとは比べものにならないくらいに面白いはずです。いや、面白くしなければおかしいのです。

●そのために、経営者をはじめとして社員全員の脳にある「βエンドルフィン」が分泌するような仕事のスタイルに変えましょう

●そこで、定期的に次の四つの視点で仕事をチェックされることをご提案します。

1.仕事そのものが刺激的か?
2.仕事の進め方が刺激的か?
3.仕事仲間や顧客が刺激的か?
4.仕事の報酬が刺激的か?

●この四つに対して「YES」「NO」「どちらでもない」で回答してみましょう。
四つともが「YES」であれば最高。あなたは今、仕事に熱中しているはずです。

●最悪なのは、すべてが「NO」のとき。これでは、仕事がつまらないどころか、「ノルアドレナリン」という不幸せ感とストレスを増幅させるホルモンが分泌し始めます。それを断固として阻止しなければ、うつとか出社拒否といった結果を招きかねません。

仕事が面白いか、面白くないか。仕事が楽しいか、楽しくないか。そうした素直な感情を大切にキャッチし、幸せホルモンが途切れないよう、早めに手を打っていきましょう。

2007年04月06日(金)更新

決断力の本質とは何か

●ソフトバンクの孫さんは、こう語ります。
「インターネットが普及しなかったら、当社はただのは石ころみたいな会社だったでしょうね」
創業時、パソコンソフトの卸売り会社だったソフトバンクは、インターネットの普及で大変身を遂げました。この大変身以降も、孫さんは大胆な決断を何度もしてきたことは、みなさんご存知のとおりです。

●あるとき、経営者が冗談めかして語ってくれました。

「武沢さん、ソフトバンクの孫さんがナスダックジャパンへの出資を決めたときは、たった5分での決断だったそうですよ。やっぱり優れた経営者は決断が早いのですね。それに比べて私は優柔不断でしてねぇ。昼にうどん屋に入ってからも何を注文するか、迷っちゃう時があるのですよ」

私が笑っていると、さらに続けてこう言いました。

「そこで最近、即断即決の訓練をしているんです。座る前に『きつねうどん』と頼んじゃう。結構できるものですね。もちろん昼食に何を食べるかという事くらいなら簡単に即決できるようになるのですが、経営の問題、たとえば人の採用や投資案件などは、なかなか即断できるものではないですね」

●決断は早いに越したことはありませんが、間違った決断ばかりしていては意味がありません。適切なタイミングで正しい決断をすることが必要です。それと同時に、今何を決めるべきかという「問いの正しさ」も必要です。

●そこで、決断力の総合値を公式にしてみました。

決断力=「問いの正しさ」×「決断のタイミング」×「決断の正しさ」

ではないかと思うのです。一つひとつの要素について、チェックしてみましょう。

●「問いの正しさ」

経営会議においてどのような案件が議題にのぼり、討議されるかという段階で、すでに企業間格差がついています。ドラッカーは『現代の経営』の中で、次のように語っています。

「戦略的な意思決定において重要かつ複雑な仕事は、正しい答えを見つけることではない。それは正しい問いを探すことである。間違った問いに対する正しい答えほど、危険とまではいわないまでも、役に立たないものはない」
(以下、中略)
「したがって、意思決定において最初の仕事は、本当の問題を見つけ、それを明らかにすることである。この段階では、いくら時間をかけてもかけすぎるということはない」

つまり、経営における決断力を考えるうえでは、まず決断すべき事柄の選択が正しいことが前提条件なのです。

●「決断のタイミング」

決断すべきタイミングにも賞味期限があります。鮮度がみずみずしいうちに決定しなければ、永久にタイミングを失することすらあります。朝令暮改をおそれず、まず決断し、後から決断のよし悪しを再チェックしても良いのです。まずは、すばやく決断できる癖は身につけておきたいものです。

●3.「決断の正しさ」

決断の正しさは、その結果において証明するしか方法がありません。仮に二者択一の決断の場合、どちらか一方を決めるしかなく、残った一方の結果がどうであったかは知るよしもないのです。自分の決断が正しかったかどうかは客観的にはわからないもの。大切なことは、決断する前の段階で、成功と失敗の定義をしておくことです。

私は、7割の満足度が得られれば大成功だと思います。なぜなら、プロの世界におけるに次の勝率をみれば一目瞭然でしょう。

◇プロ将棋・・・年間約70の対局で勝率7割で一流
◇プロ野球・・・年間135試合で勝率6割で優勝
◇プロ野球の投手・・・バッターに対して勝率7割5分以上で一流
◇大相撲横綱の勝率・・・8割以上の勝率で一流

●賢明な経営者ならば、決断の勝率が5割を切ることはまずありません。それならば、理論的に考えて決断の数が多いほど有利になるという計算が働くでしょう。
プロスポーツでは、年間の試合数が決められていますが、経営では決断すべき数に制限はないのです。よって決断の勝率にこだわるのでなく、決断の勝数を重視しましょう

●決断力が鈍いと感じているあなた、うどん屋での即断即決訓練も楽しいと思いますが、いかがでしょうか?

ボードメンバープロフィール

board_member

武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

バックナンバー

<<  2007年4月  >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30