武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
2006年07月19日(水)更新
非エリートの戦略
●大手建設会社のA社長は、会社設立時に《非エリートがエリートに勝つ》という戦略を打ち立てたそうです。そして、真っ先に社員に誇りを植え付けるための取り組みをはじめました。
●なにしろ会社を作ったばかりなので知名度も実績もなく、非エリートの社員しか入社してきません。当然、自信や誇りをもった人よりも劣等感をもった人のほうがたくさん入社してきます。そんな条件のもと、社員に誇りを植えつけるにはどうした良いのか、A社長は真剣に考えました。
●そして、まっさきに取り組んだのは「時間を守る」というテーマでした。「これなら非エリートでもできる。才能はいらない。簡単ではないが、だれでも心がけ次第で時間は守れる」と思い立ち、時間厳守を徹底をしました。
●それから何か月かたったある日、A社が受注した物件の施工会議がありました。当然、全員が時間厳守です。そんななか、ある施工店の社長が遅れて到着してきました。A社長は、烈火の如く怒りました。
「うちの社員は1日に何件もの訪問や打合せをこなしながらも、全員がこうして時間を守っている。どうしてお宅が時間を守れないのか」
●そして、その施工店社長を会議の間、立たせたままにしたそうです。カリスマ社長ならではのエピソードですね。
●ここで注目したいのは、外部の人の前で社員を誉めるということ。しかも、時間を守るという具体的事実で誉められると、社員はますます守ろうとするものです。こうした達成感や義務感が、やがて使命感へと高まっていくのではないでしょうか。
「うちの会社は世間のどんな会社よりも時間を守っている」という事実が、会社の誇りや自分自身の誇りにつながっていくのです。
●時間を守るということが浸透したら、次のステップへ進みましょう。
●たとえば、「うちの会社では、お客様との約束をすべて紙に書く」という新たな誇りづくり(約束事づくり)に着手するのです。
●こうした「当たり前だがなかなか徹底できない」というテーマに目をつけて、それを徹底させることによって、自己イメージや自社イメージを高めていくという戦略は、どの企業でも使えます。
●私自身も40才で経営コンサルタントで独立したとき、全国・全世界から必要とされる経営コンサルタントになるという夢を掲げましたが、現実的には会社所在地(愛知県名古屋市)周辺から一歩も外へ出ることができませんでした。私の理念やビジョンは、現実の前で上すべりしていたように思います。
●しかし、2000年8月に意を決して、「メールマガジンを毎日出そう! 読者が必要としてくれるかぎり、メルマガは欠かさず発行しよう!」と動き始めました。
●これは自分に課した義務でした。こだわりというべきかも知れません。このように、背伸びしてでも続けられる義務感をもてたことは幸せでした。文字どおり、自己イメージ向上に一役買ったからです。
●非エリートが何かの分野で頭角をあらわし、エリートを打ち負かすようになるには、小さな約束を自分に課してそれをクリアし続けて、自信を深めていくことが大切なのではないでしょうか。
●なにしろ会社を作ったばかりなので知名度も実績もなく、非エリートの社員しか入社してきません。当然、自信や誇りをもった人よりも劣等感をもった人のほうがたくさん入社してきます。そんな条件のもと、社員に誇りを植えつけるにはどうした良いのか、A社長は真剣に考えました。
●そして、まっさきに取り組んだのは「時間を守る」というテーマでした。「これなら非エリートでもできる。才能はいらない。簡単ではないが、だれでも心がけ次第で時間は守れる」と思い立ち、時間厳守を徹底をしました。
●それから何か月かたったある日、A社が受注した物件の施工会議がありました。当然、全員が時間厳守です。そんななか、ある施工店の社長が遅れて到着してきました。A社長は、烈火の如く怒りました。
「うちの社員は1日に何件もの訪問や打合せをこなしながらも、全員がこうして時間を守っている。どうしてお宅が時間を守れないのか」
●そして、その施工店社長を会議の間、立たせたままにしたそうです。カリスマ社長ならではのエピソードですね。
●ここで注目したいのは、外部の人の前で社員を誉めるということ。しかも、時間を守るという具体的事実で誉められると、社員はますます守ろうとするものです。こうした達成感や義務感が、やがて使命感へと高まっていくのではないでしょうか。
「うちの会社は世間のどんな会社よりも時間を守っている」という事実が、会社の誇りや自分自身の誇りにつながっていくのです。
●時間を守るということが浸透したら、次のステップへ進みましょう。
●たとえば、「うちの会社では、お客様との約束をすべて紙に書く」という新たな誇りづくり(約束事づくり)に着手するのです。
●こうした「当たり前だがなかなか徹底できない」というテーマに目をつけて、それを徹底させることによって、自己イメージや自社イメージを高めていくという戦略は、どの企業でも使えます。
●私自身も40才で経営コンサルタントで独立したとき、全国・全世界から必要とされる経営コンサルタントになるという夢を掲げましたが、現実的には会社所在地(愛知県名古屋市)周辺から一歩も外へ出ることができませんでした。私の理念やビジョンは、現実の前で上すべりしていたように思います。
●しかし、2000年8月に意を決して、「メールマガジンを毎日出そう! 読者が必要としてくれるかぎり、メルマガは欠かさず発行しよう!」と動き始めました。
●これは自分に課した義務でした。こだわりというべきかも知れません。このように、背伸びしてでも続けられる義務感をもてたことは幸せでした。文字どおり、自己イメージ向上に一役買ったからです。
●非エリートが何かの分野で頭角をあらわし、エリートを打ち負かすようになるには、小さな約束を自分に課してそれをクリアし続けて、自信を深めていくことが大切なのではないでしょうか。
2006年07月14日(金)更新
リーダーの4種類の力
●「世界の社長1,000人に聞いた、理想的なリーダー像はだれ?」なんて特集があると楽しそうですね。
●理想のリーダー像は「ところ変われば・・・」ではないかと思うのです。たとえば、ヨーロッパではナポレオンやシーザー、英国の騎士(ナイト)などが上位にくるでしょう。アメリカでは強さとタフさの象徴のような人物が、日本では信長、秀吉、家康といった戦国の英傑に人気が集まることでしょう。
●一口に戦国の英傑といっても、さまざまなタイプが存在します。上杉謙信はたとえ自らが単騎でも敵の陣地に乗り込んで攻撃をしかけるタイプですし、武田信玄は陣地最後尾で軍配を振るうのみ、というタイプです。まさしく両極にあるリーダー像です。これは、どちらが正しいかというより、どちらが好きかという好みの問題でもあります。
●リーダーシップに関する専門書によれば、リーダーシップとは、対人影響力のことであり、それは4種類の力から生じるものだといいます。あなたのリーダーシップを強化するヒントがここに隠されていると思いますので、参考のためにご紹介しましょう。
<リーダーの4種類の力>
1.賞罰を与える力
2.正当性の力
3.同一化の力
4.権威の力
●「賞罰を与える力」とは、年収や役職、権限などを与える・減らせる力を言います。
社長であればこの力は絶大でしょう。また管理職でも、部下の収入や出世に対して大きな権限をもつ場合には、この力が強いことになります。
●「正当性の力」とは、部下を心から納得させる力を言います。仮にそれが部下にとって嫌な要求であったとしても「なるほど、そういう理由ならやむを得ない」と納得させることができれば、一生懸命やってくれるものです。そうした力を行使できるのが「正当性の力」といいます。
●「同一化の力」とは、部下と一心同体のつながりがあって、あの社長のためなら無理してでもやろうぜ、と思わせるような人間的魅力のことをいいます。同じ釜の飯を食うという表現がありますが、いっしょに苦労をともにし、時には食事したり酒を酌み交わしながら本音で交流し、太い信頼関係をつくっていくなかで生まれるものだと思います。
●「権威の力」とは、専門的な知識や技術、実績などを背景に、誰もが認めざるを得ない存在であることです。強運をもっているとか、先見性があるなど、常人では計り知れないカリスマ性をもつ人は、この力を存分に発揮していると言えましょう。
●あなたがどのようなリーダー像を目指すかは自由ですが、4種類の力それぞれを自己採点し、めざすリーダー像に近づくために何をすべきかを決めましょう。
●ただし、、これだけは断言できます。天性の“名リーダー”という人はいない。すべて本人の後天的な努力によって培われていくものだと言うことです。
●理想のリーダー像は「ところ変われば・・・」ではないかと思うのです。たとえば、ヨーロッパではナポレオンやシーザー、英国の騎士(ナイト)などが上位にくるでしょう。アメリカでは強さとタフさの象徴のような人物が、日本では信長、秀吉、家康といった戦国の英傑に人気が集まることでしょう。
●一口に戦国の英傑といっても、さまざまなタイプが存在します。上杉謙信はたとえ自らが単騎でも敵の陣地に乗り込んで攻撃をしかけるタイプですし、武田信玄は陣地最後尾で軍配を振るうのみ、というタイプです。まさしく両極にあるリーダー像です。これは、どちらが正しいかというより、どちらが好きかという好みの問題でもあります。
●リーダーシップに関する専門書によれば、リーダーシップとは、対人影響力のことであり、それは4種類の力から生じるものだといいます。あなたのリーダーシップを強化するヒントがここに隠されていると思いますので、参考のためにご紹介しましょう。
<リーダーの4種類の力>
1.賞罰を与える力
2.正当性の力
3.同一化の力
4.権威の力
●「賞罰を与える力」とは、年収や役職、権限などを与える・減らせる力を言います。
社長であればこの力は絶大でしょう。また管理職でも、部下の収入や出世に対して大きな権限をもつ場合には、この力が強いことになります。
●「正当性の力」とは、部下を心から納得させる力を言います。仮にそれが部下にとって嫌な要求であったとしても「なるほど、そういう理由ならやむを得ない」と納得させることができれば、一生懸命やってくれるものです。そうした力を行使できるのが「正当性の力」といいます。
●「同一化の力」とは、部下と一心同体のつながりがあって、あの社長のためなら無理してでもやろうぜ、と思わせるような人間的魅力のことをいいます。同じ釜の飯を食うという表現がありますが、いっしょに苦労をともにし、時には食事したり酒を酌み交わしながら本音で交流し、太い信頼関係をつくっていくなかで生まれるものだと思います。
●「権威の力」とは、専門的な知識や技術、実績などを背景に、誰もが認めざるを得ない存在であることです。強運をもっているとか、先見性があるなど、常人では計り知れないカリスマ性をもつ人は、この力を存分に発揮していると言えましょう。
●あなたがどのようなリーダー像を目指すかは自由ですが、4種類の力それぞれを自己採点し、めざすリーダー像に近づくために何をすべきかを決めましょう。
●ただし、、これだけは断言できます。天性の“名リーダー”という人はいない。すべて本人の後天的な努力によって培われていくものだと言うことです。
2006年07月03日(月)更新
彫りながら考える
●昨年、フィレンツェのアカデミア美術館で初めて「ダビデ像」(ミケランジェロの代表作)を見たとき、鳥肌がたつ思いをしました。写真撮影禁止でしたので、市庁舎前にあるレプリカ像を撮影したものがこれです。
その大きさと迫力に圧倒されそうになっただけでなく、何だか後光が差しているように見えました。
●美術館の廊下の端からダビデ像の立っているところまで数十メートルありますが、その廊下の両側に、未完成ながらミケランジェロの彫刻作品が並べられています。それらの作品を見て私は「はっ!」としたのを覚えています。それらの未完成作品は、ちょうど子供の出産みたく、大理石の中から作品が今にも生まれ落ちそうになっているように見えたのです。
●鎌倉時代の仏師・運慶の作品も、木を彫って作品を作ったというよりは、木の中に隠れている作品を彫りだしてあげたようだと評されています。大理石のミケランジェロ、木の運慶、東西の天才に共通する仕事術なのかもしれません。
●では、会社経営を彫刻に例えるならばどうなるのでしょう。ミケランジェロや運慶の
ように、彫る前から中に埋まった完成像が見えているような会社経営なら楽しいでしょうね。しかし現実的には、"彫りながら考える"という経営に軍配があがるように私は思います。
●「戦略は前もって計画され、書式に記入できるもの」というのは、環境がそれほど大きく変化しない前提で成り立つもののようです。『ビジョナリーカンパニー』(日経B
P刊)では、「崩れた神話」と題して私たちが無意識にもっている常識が、実態とはか
け離れていることを指摘しています。その中に次のようなことが書かれているのです。
神話1.すばらしい会社をはじめるには、すばらしい事業構想か画期的製品が必要である。
神話2.大きく成長している企業は、綿密で複雑な戦略を立てて、最善の動きをとる。
この2項目はいずれも「現実的ではない」という指摘なのです。
●今でこそ世界を代表するような企業になったところでも、初期の段階では実験や試行錯誤、臨機応変、あるいは偶然によって生まれたものが少なくないというのです。むしろ、「大量のものを試し、うまくいったものを残す」というドロナワ的な方針の勝利だともいうのです。
●誤解しないでいただきたいのは、戦略も目標も計画も必要ないという意味ではありません。むしろ緩やか戦略や目標をもち、あとは行動しながら考えて変更を加えていくという程度の方が、実際上は有効だという意味です。
●時々、勘定科目ごとに円単位で経費予算をたて、円単位で毎日の実績をチェックしているような会社がありますが、それが効果的だったのは環境が大きく変化しない時代です。今はあらゆる業界が乱世です。
●アメリカには「戦略クラフティング(工芸)」という単語があります。ちょうど粘土
をこねながら造形物を作るようなものに似ているからこうしたネーミングが生まれたのでしょう。会社経営は、ミケランジェロや運慶のような天才を必要とせず、彫りながら考える、考えながら彫るという非・天才のやり方に勝ち目があると私は思うのです。
●大切なことは、定期的に立ち止まって考えることと、必要な軌道修正を行い続けることなのです。
その大きさと迫力に圧倒されそうになっただけでなく、何だか後光が差しているように見えました。
●美術館の廊下の端からダビデ像の立っているところまで数十メートルありますが、その廊下の両側に、未完成ながらミケランジェロの彫刻作品が並べられています。それらの作品を見て私は「はっ!」としたのを覚えています。それらの未完成作品は、ちょうど子供の出産みたく、大理石の中から作品が今にも生まれ落ちそうになっているように見えたのです。
●鎌倉時代の仏師・運慶の作品も、木を彫って作品を作ったというよりは、木の中に隠れている作品を彫りだしてあげたようだと評されています。大理石のミケランジェロ、木の運慶、東西の天才に共通する仕事術なのかもしれません。
●では、会社経営を彫刻に例えるならばどうなるのでしょう。ミケランジェロや運慶の
ように、彫る前から中に埋まった完成像が見えているような会社経営なら楽しいでしょうね。しかし現実的には、"彫りながら考える"という経営に軍配があがるように私は思います。
●「戦略は前もって計画され、書式に記入できるもの」というのは、環境がそれほど大きく変化しない前提で成り立つもののようです。『ビジョナリーカンパニー』(日経B
P刊)では、「崩れた神話」と題して私たちが無意識にもっている常識が、実態とはか
け離れていることを指摘しています。その中に次のようなことが書かれているのです。
神話1.すばらしい会社をはじめるには、すばらしい事業構想か画期的製品が必要である。
神話2.大きく成長している企業は、綿密で複雑な戦略を立てて、最善の動きをとる。
この2項目はいずれも「現実的ではない」という指摘なのです。
●今でこそ世界を代表するような企業になったところでも、初期の段階では実験や試行錯誤、臨機応変、あるいは偶然によって生まれたものが少なくないというのです。むしろ、「大量のものを試し、うまくいったものを残す」というドロナワ的な方針の勝利だともいうのです。
●誤解しないでいただきたいのは、戦略も目標も計画も必要ないという意味ではありません。むしろ緩やか戦略や目標をもち、あとは行動しながら考えて変更を加えていくという程度の方が、実際上は有効だという意味です。
●時々、勘定科目ごとに円単位で経費予算をたて、円単位で毎日の実績をチェックしているような会社がありますが、それが効果的だったのは環境が大きく変化しない時代です。今はあらゆる業界が乱世です。
●アメリカには「戦略クラフティング(工芸)」という単語があります。ちょうど粘土
をこねながら造形物を作るようなものに似ているからこうしたネーミングが生まれたのでしょう。会社経営は、ミケランジェロや運慶のような天才を必要とせず、彫りながら考える、考えながら彫るという非・天才のやり方に勝ち目があると私は思うのです。
●大切なことは、定期的に立ち止まって考えることと、必要な軌道修正を行い続けることなのです。
ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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