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2013年03月15日(金)更新

なにが幸運か

●小学生になる息子とデパートに買い物に出かけたお父さん。ネクタイを品定めをしていると、息子が公衆電話のところでしゃがんでいる。
「気分でも悪いのか」と思って駆けよってみたら、「お父さん、これが落ちてたよ」と一万円札を見せた。どうやら拾ったらしい。
 
●周囲を見回したが、近くに人はいない。
「お父さん、交番に届けようと」と息子。お父さんは言った。
「わかった。今から行こう。でもここはデパートなので交番ではなくて、落とし物係の人に届けよう」
 
●書類を書いて一切の謝礼の権利も放棄し、ふたたび売場にもどって買い物を続けた親子。
 
私はその話を聞かされて痛く関心した。そして、「なぜそうしたのですか?」と聞いてみた。するとまったく予期しない答えが返ってきた。
 
●「武沢さん、もしうちの息子に拾ったお金で得するところを見せたら、子供にとって一生の不幸でしょう。本当にツイている人はお金を拾っても着服しないし、謝礼も受け取らないものだということを教えたかったのです」
 
●立派な考えだと思う。
告白するが、その2年ほど前に道路に落ちていた5千円札を息子が拾って二人で交番に届けたことがあった。それから1年経っても落とし主が現れなかったので、我々はそれを頂戴して帰り道にゲームを買ったのだった。
 
・財布を拾う
・万馬券を当てる
・パチンコで大儲けする
 
などはよほどお金にツキのない人間に起こりうることだと『ツキの大原則』(西田文郎著、現代書林)に書いてあったのを思い出す。
 
●私の友人のある経営者もツキに関しては独特の哲学をもっている。
ある日のこと、その友人がマカオのカジノで大金を稼いだ。中国人が大好きなバカラを一晩中やったらしい。
 
バカラとは、「大」か「小」かを当てるだけのいたって単純かつ単調なカードゲームのこと。そのくり返しだけで彼は数百万円稼いだという。彼いわく、
「マカオの場合はラスベガスより稼ぎやすいですね。ディーラーも他のお客もアマチュアが多いので隙だらけですよ」と前置きし、「要はツイている人に乗り、ツイてない人の逆をやる。たったそれだけです」と。
 
●そして自分の方に好調のリズムが乗りうつってきたとき、大きく賭けて大きく稼ぐ。このとき、金銭感覚をマヒさせてしまわないことだ。目的は遊ぶことなのか、勝つことなのかをよくわきまえないと、最後にはゼロにしてしまう。好調の潮が引いたら休むのだ。
 
ドリンクを飲みながらショーでも観ることによって脳をリフレッシュさせ、勘を取り戻す。
こうして元金数万円で始めたバカラゲームは12時間で百倍に膨らんだという。
 
●大切なことは、カジノで稼いだツキで本業のツキまでもって行かれないことだとか。だから、そのお金をきれいさっぱり忘れることが大切だ。
従って知人の会社に投資し、儲けたお金のことを忘れてしまう。
 
●本業以外のことで儲かった余韻に浸っていると、本業がダメになる。
 
ツキとはなにか、それは私たちが一見幸運だと思うことをむやみにありがたがらないこと。同時に、不運に思えることを幸運につなげるしたたかさを忘れないことだ。
 
 

2013年03月08日(金)更新

大きなテーマ、大きな疑問符

●考えても考えても答えがみつからない。そんなテーマをあなたはお持ちだろうか。
たとえば、ビジネス目標。是が非でもこの目標を達成したい。だが、どうやったらそれができるのか分からない。だからこそ、学ぶのであり人の話を聞くのである。
だが、やり方が分からない目標を考えるのが面倒くさいのか、やれそうなことしか目標にしない会社が多いのはもったいない話である。
 
●私たちのビジネスや人生でブレイクスルーを起こすためには、心にいつも大きな疑問符を灯しつづけることが大切だ。スケールを大きく考えて、ノーベル賞を取れるくらいの大きな社会変革を起こそうではないか。
ひとつのテーマに対してひとつのアイデアだけで終わらせず、あらゆる角度からアプローチした答えを用意する。しかもひたすら掘りさげて掘りさげて、心の芯に届くまで考えぬきフィールドで検証していく。
 
●そもそもノーベル賞をとるような学者の多くは、先人の業績を尊重し学びながらも同時に、その上にさらに新しいことを積み上げようとするものである。日本では京都にそうした気性のもちぬしが多いのだろうか、自然科学分野における日本人のノーベル賞受賞者15名のうち、なんと5名が京都大学出身者(旧帝大含む)なのだ。
ゆかりのある人も加えると倍になるだろう。
 
●京都大学出身のノーベル賞受賞者(自然科学部門)
 
<物理学賞>
湯川秀樹氏
朝永振一郎氏
<化学賞>
福井謙一氏
野依良治氏
<医学生理学賞>
利根川進氏
 
●そのあたり、元・京大総長の平澤興氏は『現代の覚者たち』(致知出版社)で次のように話す。
 
・・・湯川、朝永、江崎の三氏は物理学での受賞です。これにはいろいろの原因があり、京都の自然とか、京大の個性を尊ぶ自由の空気なども関係しているでしょう。しかし京都の三高に物理学の先生で、森総之助という素晴らしい独創的な物理学の先生がおられたんです。この三氏は、森先生の教え子です。つまり、ノーベル賞のもとは森総之助なんです。で、湯川君なんかは頭の回転の早い、いわゆる頭のいい人じゃなかったようです。大体、頭がいいとか悪いということが、実際どういうことなのか私にもよくわかりませんが、湯川君なんかは、すぐわかったような気持ちになる粗末な頭ではなく、わかるまで徹底的に考えぬく、限りない深さをもった頭ですね。(後略)
・・・
 
※『現代の覚者たち』(致知出版社)
 
 
●偶然かどうか、私が京都で定例勉強会をひらいていたころ、講義のあとにかならず議論を吹きかけてくる若者がいた。「武沢さんの講演を聞いてどうにも納得できない箇所があるのでお尋ねしたい」と二次会の宴席になって執拗にくいさがってくる好青年・T君もたしか京都大学の理工系出身者だったことを思い出す。
 
●安易にわかったようなふりをしないことが学ぶ上では大切なことだ。だからといって、錯覚してはならないことがある。わかったふりをしないとは言っても、熱心に聞くことが大切なのは言うまでもない。聞く姿勢まで懐疑的・批判的・傍観者的であってはならないのだ。
 
●そのためには、最前列正面に腰かけるのが良い。それができなければ、少なくとも前から3列目までに腰かけることが重要だ。そうした学習者に対しては講師としても真剣に接しようという気になる。そもそも後方で聞くと、それだけで人間心理として講師や会に対して傍観者的になってしまうものである。
そんなもったいない聴き方にならないためにも、まずは大きなテーマをもつことである。そのテーマに関するヒントを求めて人の話を聞こうとする。そうすればおのずと前の方に座りたくなるものである。
 
 

2013年03月01日(金)更新

独自の世界

●好きなことと得意なことをかけ算すると、世の中に存在しない独自の世界を作ることができる。
 
社会保険労務士の K さんは、中小企業の賃金制度に関する第一人者としてのブランドを築いてきた。それを武器に、社労士として多数の企業と顧問契約をむすび、経営を安定させてもきた。
その K さんがある年、戦国武将物の本を著した。それを聞いて驚いていたら、あれよあれよと大ヒットになってしまった。
 
●K さんは 子供の頃から大の信長フリークだったそうで、いつかは自分の本業からみた信長の天才ぶりを書いてみたいと思っていたそうだ。
ある日、K さんが Google 検索をつかって「織田信長」を調べてみたところ、なんと170万サイトもヒットしたという。ライバルは多い、と思ったそうだ。
しかし「織田信長 労務」で検索すると一挙に8万サイトに減った。20分の1になってしまったのだ。
さらに「織田信長 労務 賃金」にすると1,190サイトになった。実は、その1,190サイトはすべて K さんとその仲間のサイトばかりなのだ。つまり、織田信長という大人気キーワードを使っても、ライバル不在のマーケットがそこにあった、ということだ。
 
●専門分野は「人事 労務 賃金」
得意技術は「書くこと」
好きな分野は「織田信長」
その三つをかけたのが K さんの著作であり、世界に一冊しかないライバル不在の本なのである。
 
「専門分野×得意技術×好きな分野=独自の世界」というわけだ。
 
●私の友人の T さんがやっているブログもそうだ。
 
専門分野「インターネット 英語 アメリカ事情」×得意技術「書くこと」×好きな分野「発想法 アイデア 楽しいこと」=『彼の世界』となる。
 
●また私が尊敬している経営者の T さんは、
専門分野「建築設計 デザイン 特定業界の建築事情」×得意技術「書くこと」×好きな分野「会社経営 旅 時事問題 志」=『彼の世界』になった。
 
 
●「得意分野×得意技術×好きな分野」=独自の世界
 
あとは、それをどのようにしてビジネスにつなげるかを考えるだけだ。だが、そちらは大してむずかしい問題ではないように思う。
まず大切なことは、あなたが今以上に独自の世界を作れるということに気づくことである。

 

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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