大きくする 標準 小さくする

2010年08月27日(金)更新

安心領域の破壊

●"私は毎朝○時に起きています"とか、"私は毎日こんな修行を積んでいます"などと人に吹聴しないほうが良いでしょう。なぜなら、「陰徳あれば陽報あり」、つまり良いことはひっそりとやるから報われるものであって、あまり自分の努力を吹聴すると、「すごいね」と誉められることによって報いが完了してしまうからです。

●では、ひっそりと何をやるか?

できれば、自分自身に対してもっともインパクトの大きいことをやりましょう。それは、誰もが持っている「自らの安心領域(コンフォートゾーン)を脱出する」作戦を開始することです。

●人は無意識のうちに自分の殻(心地よい世界・安心領域)に閉じこもろうとします。
その領域内にいれば、心地良くて安心して自分らしく過ごすことができます。しかし、そこは心地よいがゆえに、なかなかその外側には出たいと思いません。その結果、なかなか進歩成長できないのです。

・そこに居ると落ち着く(空間)
・その事をしていると落ち着く(行為)
・その人(物)と一緒にいると落ち着く(仲間)

そうしたものを壊していきましょう。

●ヤドカリが成長のたびにすみかを替えるように、私たちも意図的に自分の安心領域をぶち壊し、別の次元の領域に移っていくのです。

そのために何ができるか、まずは、なるべく大胆なアイデアを描いてみましょう。

●私も時々、自分の小さな殻をぶち壊すために、こんなことを考えています。

・海外で生活する(一年の半分は○○、残り半分を日本で過ごす)
・本社を××に移転する
・新しい職業「△△△」に挑戦する
・メルマガの発行をやめる
・家族を解散し、林住する。その後、遊行する。
・65歳で完全引退し、その後の人生を○○として送る

●なるべく大胆な発想で自分の小さな世界観を打破しましょう。そうしたことを実行することに比べたら、目先の小さな挑戦や改善改革などたやすいものに感じてくることでしょう。
最近、「コンフォートゾーンを作ろう」という主旨の本が売れているようですが、そんなの大間違い。誰だって、都合の良いコンフォートゾーンをすでにもっていて、それを破る必要があると私は思うのです。

2010年08月13日(金)更新

辞令を自分で書く

●甲子園で全国高校野球大会が始まりました。この大会からも将来、プロ野球で活躍しファンに夢を与える選手が出てくるのでしょう。プロの世界で活躍し続けるためには、素質の良さに加えて、それに磨きをかけるための練習が好きな選手でないと通用しません。
そこを見抜くのもスカウトマンの腕のみせどころ。


●ファスナー大手・YKKの創業者・吉田忠雄氏(1908~1993)は、晩年になってからも「私は人を見る目がない」と周囲に語っていました。なぜなら、お世話になった方から推薦状までもらって鳴り物入りで入社した優秀な学生がパッとしないままサラリーマン人生を終えていくのを何人も見てきたからだそうです。その反対に、入社当時はまったく目立たなかった若者が、やがてグイグイと頭角を現し会社の大黒柱になっていく。そうした実例を何度も見てきた吉田氏は、「私は人を見る目がない」というのです。


●たしかに人の評価ほどあてにならないものはなく、吉田氏は一般的な人事考課制度にも疑問をもっていたほど、人が人を評価することはあてにならないと思っていたそうです。
ですから、相手がまだ若くて未成熟な段階で「君こそ将来の役員だ」とか、「君に将来社長をまかせたい」などと甘いことを言うのは危険なことです。


●辞令は人事部がつくるものではなく、「辞令は自分で書くものだ」とも語る吉田氏。
YKKでも、自ら「ロンドン支店へ行かせてほしい」と積極的にアピールしてくるような人材は、たとえ能力が70しかなくても空きポストが出たらロンドンに行かせるようにしてきたそうです。仮に能力が100あっても、渋々ロンドンに行くようでは大した仕事をしてくれないというのです。サラリーマンも自分の辞令は自分で書きなさいということなのでしょう。


●プロ野球選手でもサラリーマンでも、持って生まれた能力や素質を超えるためには、情熱や工夫や知恵が必要です。それさえあれば、いくらでも自分の辞令を自分で書くことができるのです。
あなたは今、どんな辞令を自分のために書きますか?

2010年08月06日(金)更新

今の自分で勝負

「女(男)だったら、今の自分で勝負しな」 (フジTVドラマ『ショムニ』で江角マキコ演じる坪井千夏のセリフ)

●15年前、絶世の美女だったころの写真を見せるA子。

「うわぁキレイ」「この子、誰?」などと周囲を騒がせつつも、内心では、色気が失せてしまった今の自分に嫌気がさしていたA子。そんな彼女に向かって江角マキコが放ったセリフが冒頭の言葉です。
やがてA子は昔の自分ではなく今の自分で勝負しようと変身していきます。その結果、ついにA子に求婚者が・・、というハッピーエンド。

●ビジネスだってA子と同じです。
「昔の名前で出ています」ではなく、今の我社で勝負しましょう。昔の私ではなく、今日の私で勝負しましょう。社長とか部長、課長といった社内の役職は名誉職ではなく現役職です。現役とは今の自分で勝負できる人のこと。その役職には社内で今もっともふさわしい人が就かねばなりません。

●現役ばかりの集団、それが会社です。
そのためには、本人も会社も力を磨くための費用と時間を確保し、計画的に経験と学習を付与していきましょう。

●何年か前の統計値ですが、日本企業が使う研修費用は、社員一人あたり年間で数千円というデータがありました。
「年間教育費がたったの数千円?」と驚く方も多いと思いますが、この統計数字には、従業員数が何万人もいるような大企業の製造ラインで働く人たちも含まれています。

●したがって、これからドンドン成長しようという中小企業の場合は、もっと多額の教育費用が必要になります。
私が以前に勤務していたスポーツ用品専門の小売店は、経営目標として「株式公開企業目指して急成長する。そのためには、人材の成長スピードがどの同業者よりも高い会社になる」という方針を打ち出しました。

●そのためにもっとも注力したことが社員教育だったのです。その会社では、まず社員一人あたりの年間教育予算を20万円と定めました。その当時、社員数が100人ほどの会社だったので2,000万円の教育費用を予算化しました。
そしてそれを一年かけてきっちりと使い切るための計画作成を行ったのです。

●鍵を握るのは店長クラスの人材を短期間で育成すること。まさしく人材の促成栽培です。同業他社が5~10年かけて店長になれるかどうかというペースの中、その会社では3年で店長になっていきます。そのための知識や技術、あるいは心構えといったものを猛スピードでマスターできる人材にとっては、若くして責任者になれるので大変楽しい職場でした。

●ただ、反動も二つほどありました。ひとつは、日常業務への支障です。研修のために若手社員が東京や大阪へ出張します。ふだんでも忙しい現場なのに、研修で二日も三日も職場を不在にすると、困るのは現場です。
ですが、そんなときこそトップの信念が必要になります。その会社では、社長が社内報に「教育は日常業務よりも優先する」という方針をハッキリと打ち出したことで、現場からの不平や不満も出なくなりました。

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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