大きくする 標準 小さくする

2008年11月28日(金)更新

掛け替えのない存在になる

人は「いけない」と言われたことはやりたくなるものです。聖書には、イブが神から唯一禁止されていた禁断の果実を口にしたと書かれていますし、プラトンは少年時代、「禁じられていることをするのがかえって面白かった」という理由で梨を盗んだりしました。私も「のぞくな!」と書かれた壁の穴はのぞきたくなります。

●禁止されていることを守るのは、人間にとってなかなか困難なことです。ところが、ビジネスでは禁止されている事柄がたくさんあります。遅刻厳禁、納期に遅れてはいけない、ウソはつくな……etc.

●私たちは悪いことをしないために生まれてきたのではなく、なにか意味あることをするために生まれてきたはずです。なのに世間では、「悪いことはするな」と強調こそすれ、「何か意味あることをしろ」とはあまり言いません。

大切なのは消極的禁欲ではなく、積極的禁欲です。言いかえれば、行動的かつ能動的な目標が必要なのだということです
●初対面の人から信用され、評価され、やがて掛け替え(かけがえ)のない人物として扱われるために、人はどのようなプロセスをたどるでしょうか。たしかに、時間を守ることやマナーの遵守など、悪いことをしないのは大切ですが、それは必要条件であっても十分条件ではありません。

大きく分けると、
1.不安・不信・不満・不快を与えない。
2.期待に応えつづける
3.期待を上回りつづける

この三段階を経ていくものだと思います。

●まずは悪いことをしない人だという印象をあたえてから、善いことを行う人なんだという印象を経て、最終的に他には替えられない人なのだという立場になるのです。

悪いことをしないのは第一ステップにすぎず、その先が大切です。それは、どのように良いことをしてくれる人なのかが相手に伝わることなのです。これは個人でも企業でもまったく同じことではないでしょうか。

2008年11月25日(火)更新

どれになさいますか?

●たとえば、あなたが「ロシアビジネス研究会」に参加し、「よし、我が社もロシア進出を前向きに考えよう」と思ったとしましょう。そこで問題になるのは次のアクションです。

●多くの経営者はそこで立ち止まってしまい、何もしません。次に来るであろう、何かの機会を待ってしまうのです。しかし、次に何かがくることはありません。新しい行動の扉は、こちら側にしか取っ手がないのです。

●思えば私たちは、子供のころからすでに用意されているお膳立ての中から選択するという生き方をしてきました。

・レストランで出されたメニューの中から食事を注文する
・パックツアーのカタログを見てどの旅行にするか決める
・「MBAホルダーが読んでいるビジネス書100」などの本から次に読む本を選ぶ
・学校の先生が紹介してくれた学校や企業から次の進路を選ぶ
・幹部社員やコンサルタントが提案した中から次の戦略を選ぶ ……etc.

●これでは何かに依存しすぎではないでしょうか。メニューの中から選ぶのは確かに楽です。しかし、会社を経営するにあたり、メニュー表が差し出されることはまずありません
●数年前、私が主催する中国視察旅行に参加した、名古屋のある屋根瓦販売会社があります。そこのM専務は、現地に「チャンスがある」と思い、翌月は単身で上海、北京、広州などの主要都市を回りました。

●さらに、その半年後には中国人アルバイトを採用し、現地の住宅会社にメールと電話で営業をかけ、また半年が経過したころには中国との取引をはじめました。当時はまだ若かったM専務(現在は社長)の、メニュー表をアテにしない行動力には感服しました。

将来に備えて視察や研究をするのは大変結構ですが、帰ってきて何も行動しなかったら視察や研究はムダになりかねません。帰ってきて、もう少し主体的に行動してみることで、初めて視察や研究の成果が活かされるのです。

誰にでも当てはまる成功公式は本やセミナーで学べますが、あなたの会社にしか当てはまらない正解は、あなたが行動してみないと見つけられません

当然、それはメニュー表として差し出されるものではない、いうことを覚悟しておきましょう

2008年11月14日(金)更新

昔? 今を見てくれ

●それぞれ別の場でですが、60代の経営者2人からこのような忠告を受けたことがあります。

「武沢さん、人間も50歳を超えるともう若くない。だから肉体トレーニングなどほどほどにして、体調を整える程度の運動にしておいたほうが身のためだよ」

「武沢さん、最近の理論では筋肉を鍛えるのに年は関係ないそうだ。いくつになっても鍛えたら丈夫になるのが人間の肉体らしいから、守りに入らずどんどん鍛えなさいよ。私もトレーニングジムに通って鍛えているけど、胸囲が2センチ厚くなった」

まったく正反対の忠告であり、どちらの考えも理解できるのですが、私は後者の方が気に入っています。

●日本人の平均寿命は80歳とか85歳だそうです。その中間地点にあたる40歳前後は、人生の折り返し地点にあたり、それ以降は後半戦という考え方もありますが、私はそのような考え方はあまり好きになれません

●野球の試合にたとえて1イニング=10年と見ると、54歳の私は5回表を戦っている状態に相当します。そして野球が一番盛り上がるのは7回から9回にかけて。この理屈でいうと、私の人生も70歳から90歳が一番おもしろくなるのでしょう。そう考えると、若い頃の思い出にふけりながら後半の人生を生きるのは、私の性に合いません。
●“昔の名前で出ています”ではないですが、昔のヒット曲を後生大事にし、今でも歌っている歌手がいる一方で、デビュー当時のヒット曲は一切歌わない歌手もいます。

●ローリングストーンズのミック・ジャガー(65歳)は、ある日「サティスファクション? 俺たちゃ、あんな古い曲を歌うために活動してるんじゃねぇよ」と言い放ち、今後この大ヒット曲を歌わないと誓ったそうです。と言いつつも最近歌っていましたが、あれは懐メロとして歌ったのではなく、今の時代へのメッセージをこめて歌ったものなのだと私は解釈しています。

●他の例も見てみましょう。年を感じさせない日本人歌手の代表格である桑田佳祐(52歳)が、「あんな60歳いるかい?」と評したポール・マッカートニー(66歳)。日本の音楽教科書にも載るほど世界中から受け入れられ、富と名声を集め尽くしたポールが、今なおミュージシャンとしてみずみずしいのはなぜでしょうか? たしかに、ミックもポールも外見上は老いました。しかし、そのあくなき挑戦者魂と全身から発散するオーラは、実際の年齢を超越しています

●同様に、桑田が「すごい好きだった」と語っているエリック・クラプトンは63歳。日本人の高年齢歌手でも、矢沢永吉(59歳)や井上陽水(60歳)などがおり、陽水なんかはこのように語っています。
「20代のころの自分のレコードをときどき聞くけど、自分では今の声のほうが断然気に入っている」

音楽に限らず、大切なことは個人であれ企業であれ、「昔より今のほうがすごいぜ」と胸を張って言えるような状況を作っていくことではないでしょうか。だから私も、高校生の息子を誘ってトレーニングジムに通うのです。

2008年11月10日(月)更新

アンチ・カリスマ

●「酔った勢いで言わせてもらえば、あなたはたぐい稀なる凡人だ。平凡な凡人だったらこうして夕食をご一緒したいとは思わない。並はずれた凡人だから武沢さんは面白いんだよ。あなたのメルマガにあった『凡人が勝つ』の記事、たいへん面白かったよ」

「え、私が凡人ですか。日ごろは非凡でありたいと思っているのですが、こうして面とむかってハッキリ言われると、何だかイヤミには思えませんね」

●上記は、先日ある人と夕食をともにしたときに言われた内容です。昔は私も「カリスマコンサルタント」を目指していましたが、今ではそんな気持ちはありません。そもそもカリスマ俳優、カリスマ美容師などといった、「カリスマ」という言葉がもてはやされたのは20世紀の話です

●思えば、映画でも石原裕次郎や高倉健などの二枚目俳優は、どれだけカリスマ性を打ち出せるかでしのぎを削っていた感があります。そういう意味でカリスマとは、格好良さと勝ち組の代名詞でもあり、有名な俳優やスポーツ選手などは決してバラエティ番組には登場しませんでした。

しかし21世紀になった今、カリスマとは別のものが求められる時代です。その新しい基準になるのが、「等身大であること」ではないでしょうか。あるいは、「すごい人」「格好良い人」ではなく、「愛される人」「普通の人」と言ってもいいでしょう。お笑い芸人がバラエティ番組からニュース番組、スポーツニュースなど、いろんなところに進出しているのも、等身大で振舞うところがウケているのでしょう。
●「等身大」とは、以下に示すように「カリスマ」へのアンチテーゼでもあります。

・失敗や挫折が当たり前
・カッコ悪いことや、世間の評判を気にしない
・判断基準は、損得や格好ではなく、面白いか面白くないか
・飽きっぽい大衆にあわせていつも新しいことに挑戦し、
 その結果、常に進歩・進化しつづける
・人間は人間の値打ちを計るとき、どれだけ優秀かと同時に、
 どれだけバカ(凡人)になれるかを同時に観ている。   etc.

自分らしく等身大に、それが今の時代のテーマです。当然、経営に求められるものも変わってきています

巨大企業や有名企業を目指すより、自分らしい企業づくりをしていきましょう。あなたらしい等身大の経営を作り上げるのです

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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